日本口腔インプラント学会誌
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31 巻, 4 号
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ポジションペーパー
  • 大久保 力廣, 井汲 憲治, 佐藤 裕二, 白井 麻衣, 梅原 一浩, 大橋 功, 柴垣 博一, 二木 由峰, 正木 千尋, 三上 格, 村 ...
    原稿種別: ポジションペーパー
    2018 年 31 巻 4 号 p. 259-278
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/02/20
    ジャーナル フリー

    超高齢社会に突入した日本では要介護高齢者が増加し,自立度の低下した高齢者を対象とするインプラント治療のガイドライン策定が強く求められていた.本ポジションペーパーは,口腔内にインプラントが存在する要介護者に生じるトラブルを整理し,その対応法の実際と留意点を示すことを目的とした.(公社)日本口腔インプラント学会から,実際に訪問歯科診療においてインプラントのトラブルを多数経験し,その対応に詳しいエキスパートパネル12名を選出した.パネル会議で協議を行い,訪問歯科診療におけるインプラント治療の問題点を抽出した.

    訪問歯科診療においては,自身で口腔ケアができない要介護者の口腔内や全身状態,患者背景を把握し,これらの要因が時間の経過に伴って変化していくことを医療者,介護者,患者は十分に理解する必要がある.また,診療設備や環境,医療従事者の経験の差,患者背景によって可能となる治療や対応は大きく異なり,各状況に応じて適切で安全な処置を選択することが重要である.インプラントメーカーの判別不能は大きな問題であり,インプラントカードの普及を積極的に促し,患者の口腔管理に有益な情報を共有できるシステムを構築するべきである.

    現時点では,臨床経験をもとにした意見が多く,今後は臨床研究の実施やエビデンスの蓄積により,訪問歯科診療におけるインプラント管理に関する診療ガイドラインが策定されることが望まれる.

特集 インプラント治療における抜歯基準の再考
  • 阪本 貴司, 原 宜興
    原稿種別: 特集 インプラント治療における抜歯基準の再考
    2018 年 31 巻 4 号 p. 279
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/02/20
    ジャーナル フリー
  • 水上 哲也
    原稿種別: 総説
    2018 年 31 巻 4 号 p. 280-288
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/02/20
    ジャーナル フリー

    抜歯の判断は,今も昔も歯科治療における難しい問題のひとつである.そもそも歯を抜いて欲しいとの希望で訪れる患者は少なく,多くは歯の治療による痛みや腫脹の緩和,咀嚼機能の回復を目的として来院する.インプラント治療のノウハウの蓄積と中長期的な良好な予後成績はインプラント適応に拍車をかけてきた.一方で歯周治療においても同様に,技術面での向上と中長期の良好な予後成績は自身の歯を保存したいとする患者の希望を叶えてきた.双方の結果は抜歯の判断をますます困難にさせている.われわれは天然歯の延命保存に極力努めつつも,抜歯適応が妥当とされる症例において最適なインプラント治療を行わなければならない.進行した歯周病罹患歯における抜歯の判断は,歯周病学パラメーターの評価のみならず補綴設計や患者の心理的背景などの総合的な評価が求められる.

  • 林 美加子
    原稿種別: 総説
    2018 年 31 巻 4 号 p. 289-299
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/02/20
    ジャーナル フリー

    徹底したプラークコントロールによって,細菌感染症であるう蝕や歯周病を予防することができても,歯根破折への対応にはいまだに苦慮する場面がしばしばある.

    特に,発症した多くが抜歯となる垂直歯根破折について,アメリカの歯内療法専門医が分析したところ,破折は40代以上の上顎小臼歯および上下顎大臼歯に集中し,歯内療法の有無にかかわらず圧倒的に失活歯に多発していることが示された.日本のデータからも同様の傾向が認められ,興味深いことに,歯根破折は歯頸部からと根尖部から,ほぼ同頻度で発生していることが報告されている.

    基本的に,垂直性歯根破折をきたした歯は,抜歯,あるいは破折歯根の分割抜去の対象となることは,臨床家のコンセンサスが得られているところである.一方で,歯科用マイクロスコープやコーンビームCTの導入により,垂直性歯根破折のきわめて早期の微小な亀裂段階での発見が可能となっている.このような場合には,最新の接着技術を駆使することにより,垂直性歯根破折歯を長期に保存できる症例を経験するようになってきた.ただし,保存した破折歯には,つねに再破折と,それに伴う歯周組織破壊の拡大が懸念要因として残ることも現実である.本稿では,口腔保健を長期に守る観点から,補綴治療との連携を踏まえつつ,救済すべき,あるいは救済できる垂直性歯根破折歯の要件は何かを考えたい.

    また,歯根破折を回避するための最善の方策は,歯髄を保存することであることは,長年の疫学研究より明らかである.本稿の結びとして,歯髄保存のための暫間的間接覆髄についても言及したい.

  • 福西 一浩
    原稿種別: 総説
    2018 年 31 巻 4 号 p. 300-308
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/02/20
    ジャーナル フリー

    第47回日本口腔インプラント学会学術大会で「インプラント治療における抜歯基準の再考」と題されたシンポジウムにおいて講演を行った.筆者は,歯内療法専門医の立場として依頼があったため,歯内疾患でどのような病態であれば抜歯という診断をするのかについて検討した.

    臨床において,歯内療法学的見地より抜歯を考慮する要因として,大きく以下の5つが挙げられる.

    1.完全垂直性歯根破折を起こしているケース

    2.健全な残存歯質が不足しているケース

    3. 修正できないジップや除去できないファイルなどの破折がある根の根尖部に病変が存在しており,かつ解剖学的に歯根端切除術の適用が難しいケース

    4.大きな穿孔があるケース

    5.エンド‐ペリオ病変が交通しているケース(歯周組織再生療法が期待できないケース)

    本シンポジウムでは,4の穿孔について検討した. 穿孔への対処法はその発生場所によって決定され,穿孔部が肉眼で確認できる場合は,MTAなどの生体材料を用いて物理的に封鎖を行い,確認できない場合は,水酸化カルシウム薬剤を作用させることにより硬組織(セメント質)の誘導を期待する.しかし,物理的封鎖に限界がある場合や生物学的な治癒機転が及ばない場合は,抜歯に至ることもある.ここでは,歯根の側壁と分岐部の穿孔を取り上げ,症例を通じてその原因と対処法について考察を加える.

原著
  • 友竹 偉則, 後藤 崇晴, 石田 雄一, 内藤 禎人, 荒井 安希, 清野 方子, 渡邉 恵, 市川 哲雄
    原稿種別: 原著(臨床研究)
    2018 年 31 巻 4 号 p. 309-319
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/02/20
    ジャーナル フリー

    顆粒が配合された歯磨剤では,その顆粒がインプラント周囲溝に侵入,残留することで,インプラント周囲組織の炎症を惹起する可能性が懸念される.そこでメインテナンス受診者において,歯磨剤の使用状況とインプラント周囲組織の状態を調査し,顆粒配合歯磨剤を使用した歯磨き試験を行い,インプラント周囲組織の炎症と顆粒の侵入に関して検討した.

    メインテナンス受診の55名,臼歯部に装着したスクリュー固定式の上部構造78装置を支持するインプラント145本を対象とした.上部構造周囲の歯垢付着とインプラント周囲粘膜の炎症の有無を評価した.顆粒配合歯磨剤の使用者では顆粒の残留を観察した.インプラント周囲粘膜の形態を計測した後,上部構造を再装着して顆粒配合歯磨剤を使用した歯磨き試験を行い,顆粒侵入の有無を確認した.観察調査と歯磨き試験から,周囲組織の炎症の有無とインプラント周囲粘膜の形態における顆粒の侵入の有無との関連について分析した.

    日常での顆粒配合歯磨剤の使用は19名で,6名14本のインプラントに顆粒が残留していたが,炎症の有無とは相関を認めなかった.顆粒配合歯磨剤を使用した歯磨き試験では55名中13名22本のインプラントで顆粒が侵入しており,炎症の有無と相関を認めなかった.

    本研究の結果から,歯磨剤に配合された顆粒がインプラント周囲溝に侵入して残留することと周囲粘膜の炎症との関連は少ないことが推察された.

  • 岩田 雅裕, 松田 健男, 臼井 龍一, 秋本 清, 河野 恭範, 植木 普, 村上 智, 伊藤 充雄
    原稿種別: 原著(基礎研究)
    2018 年 31 巻 4 号 p. 320-329
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/02/20
    ジャーナル フリー

    本研究は,インプラントを埋入する角度によってインプラントの最大曲げ荷重とカラー部のひずみがどのように影響されるのかについて検討を行った.インプラントは2ピース型で,インプラント体とアバットメントは同種で組み合わせを行った.JIS 2種純チタンを加工硬化した材料はGWGW,JIS 4種純チタンはG4G4そしてチタン合金はG5G5と表示した.カラー部にストレインゲージを貼付け,10°,20°と30°に傾斜させ万能試験機を用い,それぞれのインプラントの最大曲げ荷重とカラー部のひずみの測定を行った.また,測定前後のインプラントの内部についてエックス線CTを用いて観察を行った.その結果を以下に示す.

    GWGW,G4G4とG5G5のそれぞれの最大曲げ荷重は傾斜角度10°が最も大きく,傾斜角度20°におけるGWGWの最大曲げ荷重は10°と比較して58.5%,G4G4は60.9%そしてG5G5は60%減少した.傾斜角度30°におけるGWGWの最大曲げ荷重は傾斜角度10°と比較して75.8%,G4G4は78.2%そしてG5G5は76%の減少を示した.各インプラントの最大曲げ荷重は傾斜角度が増加するにしたがって減少した.荷重300Nを負荷した傾斜角度30°のG5G5を除いたすべてと荷重400Nの10°,20°そして荷重500Nおよび600Nの10°におけるGWGW,G4G4とG5G5のカラー部のひずみは0.10%以下であった.しかしながら,傾斜角度30°における荷重400N以上での各インプラントのひずみは0.1%以上であり,GWGWのひずみが最も大きい結果であった.CTで観察した最大曲げ荷重の測定前のインプラントの上部におけるインプラント体とアバットメントは隙間なく嵌合していたが,下部においては隙間が観察された.測定後,ねじの破折は隙間が存在する部分で生じていた.アバットメントが破折していない場合はアバットメントが塑性変形し,ところどころに亀裂が観察された.傾斜角度20°以上で植立する場合はインプラントカラー部の強度が大きいことが必要であると考えられた.

  • 林 昌二, 志村 公治郎, 杉山 秀太, 鳥羽山 剛, 澁谷 勝男, 富樫 敏夫
    原稿種別: 原著(基礎研究)
    2018 年 31 巻 4 号 p. 330-337
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/02/20
    ジャーナル フリー

    目的:偶発症が生じた場合,上部構造体の撤去に苦労する.そこで放電加工によりボックス型スロットを製作し,セメントタイプ上部構造体の撤去方法を新たに考案した.その評価として仮着用セメントによる合着力と可撤用ツールとの関係,さらにはセメント皮膜厚さについて検討したので報告する.

    方法:インプラント上部構造体のメタルフレームとアバットメント間に,放電加工装置を用いて型彫り加工を施しボックス型スロットを製作した.加工終了後,仮着用セメントにて合着し,スロット内に18°と24°の角度を有する2種類の可撤用ツールをそれぞれ挿入し,インプラント上部構造がアバットメントから離脱が可能であるか試みた.同時にセメント合着力を測定し,セメント皮膜測定後,多重比較検定を行った.

    結果:可撤用ツールを比較すると角度の大きな24°は18°に比較して撤去が容易でt検定では相互間に有意差(p<0.01)が認められた.セメント皮膜厚さの最小値はTBで最大値はTHであった.テンプボンドとテンパックの2項目間においてのみ有意差(p>0.01)は認められなかった.

    結論:この撤去方法は放電加工技術の歯科技工への応用範囲を広め,セメントタイプ上部構造体の新たな撤去方法として認識できた.この方法を用いた場合,臨床的にはインプルーブとフジテンプが理想的な仮着用セメントであると考えられた.

  • 村上 高宏, 田中 譲治, 小林 平, 菅野 岳志, 上里 ちひろ, 坂倉 美和子, 木村 健二
    原稿種別: 原著(基礎研究)
    2018 年 31 巻 4 号 p. 338-345
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/02/20
    ジャーナル フリー

    近年,インプラント補綴におけるデジタル技術は大きく進歩しており,口腔内スキャナーを用いた光学印象法に注目が集まっている.しかし,フルアーチインプラントケースにおけるインプラント位置再現性についてはいまだ不明な点が多い.そこで本研究の目的は,16,14,12,22,24,26相当部に6本のインプラント体を埋入した上顎無歯顎模型(マスターモデル)を用いて,口腔内スキャナーを用いた光学印象法と従来のシリコーン印象材を用いた印象法のデータを取得し,三次元解析ソフトにて比較検討した.まず,マスターモデルにスキャンボディを装着し,基本データを取得した.その後,メーカー推奨の光学印象を行った場合(IOS1)と,スキャニング過程を省略して光学印象した場合(IOS2)でデータを取得した.つぎに,マスターモデルの印象採得をオープントレー法にて行い,通法の一回で石膏を注入した場合(IMP1)と,ストローを用いて2回で石膏を注入した場合(IMP2)で作業模型を製作し,データを取得した.データ解析は基本データとIOS1,IOS2,IMP1,IMP2をソフトウェアにて重ね合わせ,適合率とカラーマッピング像にて評価を行った.その結果,各印象法における6本のスキャンボディの適合率はIOS1,IMP1,IMP2において統計学的な有意差を認めなかった.以上より,口腔内スキャナーを用いた光学印象法とシリコーン印象材を用いた印象法のインプラント位置再現性は同等であることが示唆された.

症例報告
  • 橘 寛彦, 尾崎 尚, 遊佐 和之, 川口 太郎, 飯野 光喜
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 31 巻 4 号 p. 346-353
    発行日: 2018/12/31
    公開日: 2019/02/20
    ジャーナル フリー

    無歯顎の上顎左側歯肉上皮内癌切除後に,ロケーターアタッチメントを応用した広範囲顎骨支持型補綴装置を用いて咬合の再建を行うことができたので報告する.

    患者は87歳の女性.上顎左側歯肉の疼痛を主訴に当科を受診した.病理診断は,上顎左側歯肉は上顎歯肉上皮内癌,上顎右側歯肉は白板症であった.両側上顎歯肉切除と5 4 部に2本のインプラント体を埋入したが,術後は義歯の維持力が著しく低下し,咀嚼機能がきわめて低下した.また,経過中に上顎左側前歯部に壊死骨の露出を認めた.よって最初の手術から約7カ月後に腐骨除去術と5 4 部の健常骨に2本のインプラント体を埋入した.上顎左側歯肉上皮内癌の術後1年3カ月経過時にロケーターアタッチメントを応用したインプラントオーバーデンチャーを装着した.これにより咀嚼機能ならびにQOLを著明に向上させることができた.現在,上部構造装着から約4年が経過しているが良好である.

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