第47回日本口腔インプラント学会学術大会で「インプラント治療における抜歯基準の再考」と題されたシンポジウムにおいて講演を行った.筆者は,歯内療法専門医の立場として依頼があったため,歯内疾患でどのような病態であれば抜歯という診断をするのかについて検討した.
臨床において,歯内療法学的見地より抜歯を考慮する要因として,大きく以下の5つが挙げられる.
1.完全垂直性歯根破折を起こしているケース
2.健全な残存歯質が不足しているケース
3. 修正できないジップや除去できないファイルなどの破折がある根の根尖部に病変が存在しており,かつ解剖学的に歯根端切除術の適用が難しいケース
4.大きな穿孔があるケース
5.エンド‐ペリオ病変が交通しているケース(歯周組織再生療法が期待できないケース)
本シンポジウムでは,4の穿孔について検討した. 穿孔への対処法はその発生場所によって決定され,穿孔部が肉眼で確認できる場合は,MTAなどの生体材料を用いて物理的に封鎖を行い,確認できない場合は,水酸化カルシウム薬剤を作用させることにより硬組織(セメント質)の誘導を期待する.しかし,物理的封鎖に限界がある場合や生物学的な治癒機転が及ばない場合は,抜歯に至ることもある.ここでは,歯根の側壁と分岐部の穿孔を取り上げ,症例を通じてその原因と対処法について考察を加える.
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