日本口腔インプラント学会誌
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34 巻, 2 号
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総説
  • 矢島 安朝
    原稿種別: 総説
    2021 年 34 巻 2 号 p. 105-114
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/09/10
    ジャーナル フリー

    私たちは現在,新型コロナウイルスによって多くのことを学んでいる.この感染症は,私たち各人の行動変容が積み重なって,ようやく社会全体が変化し,そしてコロナ禍は終息することになる.約10年前,このコロナ禍と同じ社会現象がインプラント治療にも発生し,本学会最大の危機が訪れた.「インプラント禍」である.この大問題を解決するために本学会は数多くの事項を成し遂げた.標準的治療方法の普及,卒前・卒後教育の充実,患者・社会への正しい情報の発信などにより,社会的評価の再構築に成功した.この経験から,今後「インプラント治療のプレゼンスの向上」が本学会の最大の目標であると考えられた.

  • 窪木 拓男
    原稿種別: 総説
    2021 年 34 巻 2 号 p. 115-123
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/09/10
    ジャーナル フリー

    これまで日本口腔インプラント学会は,オッセオインテグレーションの発見を基に,治療技術の開発と教育に強く携わってきた.今後,本学会の最も重要なミッションとなるのは,口腔インプラント治療により,患者がどのようなメリットを享受でき,負担を強いられるのかを科学的に説明できるようにすることである.一方,治療技術のイノベーションにも率先して取り組むべきで,遠からず,自家骨移植は,間葉系幹細胞,生体材料や成長因子の応用により必要最小限になるだろう.インプラント周囲炎は,予防,もしくは治療可能とならなければならない.また,介護現場の問題や非感染性疾患(NCDs)である歯槽骨減少症や硬化症の問題,ひいては,薬剤関連性顎骨壊死の問題も解決されなくてはならない.もしかすると,歯根膜をもつインプラントや歯の再生が可能となるかもしれない.これらにより,患者が享受できるメリットが最大化され,国民が安心して口腔インプラント治療を受けられるようになるはずである.願わくは,これらのイノベーションがわれらJSOIから生まれてほしいということである.

  • 塩田 真
    原稿種別: 総説
    2021 年 34 巻 2 号 p. 124-130
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/09/10
    ジャーナル フリー

    インプラント治療は,抜歯を行う前の状態より優った機能や審美性を口腔内に創り出しうる欠損補綴の優等生といえる治療法である.一方,天然歯との顎骨における植立様式の違いや周囲組織構成の違いは,インプラント咬合への十分な配慮を求めるものである.しかし,MISCHがImplant-Protected Occlusionを提唱して以来現在まで,インプラント咬合の最適解は得られていない.そこでインプラントの咬合に対する考え方の変遷を顧みると,集積されたエビデンスに基づくコンセンサスをすくい上げることが可能である.

    インプラントは顎口腔系を構成する要素の1単位であり,インプラント咬合の目指すものは,天然歯の咬合と変わるものではないことが基本と考えられる.しかし,非圧変位性と感覚受容性において天然歯と大きく異なるインプラントには,咬合接触関係で特有の配慮が必要になる.インプラントへの応力集中回避を第一義的に考えたImplant-Protected Occlusionはその意味で妥当性をもっている.ところが,その後の臨床研究はインプラントの咬合負担能力が当初の予想を超える可能性を明らかにし,インプラントの過度な保護は必要ないと考えられるようになった.ただし,ブラキシズムなどから発せられる非機能的な力に対しては十分な配慮が欠かせない.また,日本補綴歯科学会ポジションペーパーは対合歯の状態に応じた咬合調整法を提言しており,対合歯を含む口腔内全体を考慮した咬合付与が必要であることが改めて理解される.

  • 田中 譲治
    原稿種別: 総説
    2021 年 34 巻 2 号 p. 131-140
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/09/10
    ジャーナル フリー

    デジタルデンティストリーの発展には目を見張るものがある.模型から補綴装置を製作するCAD/CAM技術は成熟期にきているなか,印象採得においても精度の優れた汎用性の高い口腔内スキャナーが開発され注目されている.著者はすでに自費治療のほぼすべてに口腔内スキャナーを用いているが,次のようにさまざまな利点やインプラント治療においても多くの臨床応用が可能となり,良好な成果を得ているので報告する.

    1.避けることのできなかった印象材歪や石膏歪を解消,不快感の軽減/2.ソフトウェアを利用したバーチャルならではの診査と応用/3.材料コスト削減,感染防止,搬送時間短縮/4.動揺が大きい歯でも印象採得が可能.抜歯後即時荷重への応用/5.プロビジョナルレストレーションを忠実に再現/6.インプラントオーバーデンチャーへの応用,在宅診療への応用/7.「IOSデンチャーコピー法」および「IOSコピーデンチャー法」の利用

    以上のように口腔内スキャナーはさまざまな利点があり,広く普及することは確実と考えられ,口腔内スキャナー時代の到来といえよう.

原著(基礎研究)
  • 河野 恭範, 臼井 龍一, 上野 憲秀, 村上 智, 名取 健寿, 輿 秀利, 伊藤 充雄
    原稿種別: 原著(基礎研究)
    2021 年 34 巻 2 号 p. 141-150
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2021/09/10
    ジャーナル フリー

    目的:本研究はインプラントカラー部の肉厚が最大曲げ荷重,変形量とひずみに及ぼす影響を明らかにすることを目的に行った.

    材料および方法:カラー部の肉厚は0.7 mm(T07),0.8 mm(T08)および0.9 mm(T09)に変化させ,アバットメントは三者とも同じ寸法に純チタンを加工し用いた.最大曲げ荷重,変形量,カラー部のひずみ(荷重100 Nから800 Nまで)の測定およびCTによる内部観察を行った.各測定はインプラントの傾斜角度20°(傾斜20°)および30°(傾斜30°)にて行った.

    結果および考察:傾斜20°における最大曲げ荷重は肉厚が増加するほど大きくなった.一方,傾斜30°における最大曲げ荷重はT07が最も小さく,T08とT09の差は認められなかった.変形量は両傾斜角度ともT07が最も大きく,T08とT09の差は認められなかった.傾斜20°におけるT07の0.1%以上のひずみは荷重500 Nで生じ,T08とT09は荷重600 Nであった.傾斜30°におけるT07とT08の0.1%以上のひずみは荷重400 Nで生じ,T09は荷重500 Nであった.荷重800 Nにおける傾斜20°のひずみは三者とも0.3%以下であり,傾斜30°においてT09以外は0.3%以上であった.T09のひずみは荷重300 Nから両傾斜角度の差が認められなかった.内部観察の結果,アバットメントとカラー部の先端に隙間が認められ,スクリューの上部は塑性変形し切削粉の排出孔に侵入していた.

    結論:最大曲げ荷重が小さく変形量の大きいT07は機械的偶発症に配慮することと,傾斜30°でひずみの大きいT07とT08は生物学的偶発症に配慮する必要性が示唆された.

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