日本口腔インプラント学会誌
Online ISSN : 2187-9117
Print ISSN : 0914-6695
ISSN-L : 0914-6695
35 巻, 3 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
総説
  • 今宮 圭太
    原稿種別: 総説
    2022 年 35 巻 3 号 p. 153-162
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/10/30
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症が日本で確認されてから3回目の夏を迎えた.まさかここまで長引くとは思いもしなかった方も多いのではないかと思う.コロナ禍が始まった当初は,情報が錯綜し国民や歯科医療従事者を不安に陥れるような情報も多かったように感じた.そのようなときに社会に働きかけていくうえで,学会や歯科医師会のような組織団体からの迅速な情報発信は非常に大きな影響力をもつものとなる.国民の健康な生活を確保するとともに,歯科医療従事者の生活を守ることは組織として最も大切な役割であると考える.国民と歯科医療従事者がともに安全・安心に歯科医療を行えるよう,学会や歯科医師会,行政が密に連携を図り信頼関係を構築していくことが,歯科医療の価値向上につながり,ひいては国民の公衆衛生を向上していくものと信じている.

特集 口腔機能回復から全身の健康へ 4学会の連携と目指す方向性
  • 住友 雅人, 阪本 貴司
    原稿種別: 特集 口腔機能回復から全身の健康へ 4学会の連携と目指す方向性
    2022 年 35 巻 3 号 p. 163
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/10/30
    ジャーナル フリー
  • 宮﨑 隆
    原稿種別: 特集 口腔機能回復から全身の健康へ 4学会の連携と目指す方向性
    2022 年 35 巻 3 号 p. 164-169
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/10/30
    ジャーナル フリー

    日本口腔インプラント学会は前身の学会創設から半世紀を経過して,我が国歯科系最大の学会へと成長し,インプラント歯科臨床に責任を有する学会として活動を続けている.歯科医療では薬機法で医療機器に分類される歯科材料を多用している.インプラント治療ではリスク分類でリスクが高いクラスⅢ,Ⅳに分類されるインプラント本体や骨移植材を頻用するので,生体反応を制御する必要がある.骨形成の足場としてインプラント表面の改質が行われてきたが,今後は成長因子や培養細胞の利用など再生治療とのドッキングが期待される.また,治療計画から外科手術,補綴処置までさらなるデジタル技術の活用が期待される.一方,超高齢社会に突入した我が国では,インプラントが国民の健康維持のみならず健康リスクにならないように,生涯にわたるインプラントの管理が重要になっている.本学会は引き続き,治療指針の改訂,生涯研修プログラムの充実と専門医の育成,国民への情報提供を通じて,国民の健康寿命延伸に向けて活動する.

  • 馬場 一美, 安部 友佳
    原稿種別: 特集 口腔機能回復から全身の健康へ 4学会の連携と目指す方向性
    2022 年 35 巻 3 号 p. 170-176
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/10/30
    ジャーナル フリー

    我が国の疾病構造は少子高齢化に伴い大きく変化し,医療には,生まれてきた命を大切に育み,そして長くなった人生をより良く生きること,つまり健康寿命の延伸という大きな課題が突きつけられている.公益社団法人日本補綴歯科学会はいち早く「咬合と咀嚼がつくる健康長寿」をスローガンとし,きたるべき超高齢社会に備えてきた.2020年に開催した第129回学術大会では要支援,要介護を視野に入れた補綴歯科治療のあり方について,シンポジウム「食力向上による健康寿命の延伸:補綴歯科の意義」を日本学術会議と共催した.その後,公益社団法人日本老年精神医学会と共同でECCOプロジェクトを立ち上げ,咀嚼機能回復,食支援,栄養摂取を介した認知症対策という社会的に重要な課題に挑んでいる.

    併せて,認知症の発症やその他の全身疾患により要介護,要支援となった場合の補綴歯科治療のあり方,つまり補綴歯科治療後の合理的な長期的管理についても取り組んでいる.そのなかで,三次元形態デジタルデータベースを活用したデータベース基盤型補綴歯科治療と呼ばれる,術後管理も含めた補綴歯科治療の合理化・省力化を提案してきた.

    本稿では超高齢社会における補綴歯科治療について,認知機能低下あるいは認知症発症の予防において担う役割やその可能性について,また長期的な術後管理におけるデジタルデンティストリーの役割に焦点を当てて考察する.

  • 小方 賴昌
    原稿種別: 特集 口腔機能回復から全身の健康へ 4学会の連携と目指す方向性
    2022 年 35 巻 3 号 p. 177-181
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/10/30
    ジャーナル フリー

    2011年に「歯科インプラント治療に係る問題─身体的トラブルを中心に─」が国民生活センターから公表され,関係学会などで適切なインプラント治療の推進のための対策が行われたが,同センターは,2019年に「あなたの歯科インプラントは大丈夫ですか─なくならない歯科インプラントにかかわる相談─」を報道発表した.日本歯周病学会と日本臨床歯周病学会は,本発表に対し「両学会は歯周治療の一環として重要性の高まるインプラント治療を適切に推進する責任を有する学会として,今後も会員一同が,患者の皆様の声に耳を傾け,国民に信頼される歯周治療および口腔インプラント治療の確立に向けて,誠心誠意研鑽をして参ります」との共同声明を発出した.

  • 桐田 忠昭
    原稿種別: 特集 口腔機能回復から全身の健康へ 4学会の連携と目指す方向性
    2022 年 35 巻 3 号 p. 182-185
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/10/30
    ジャーナル フリー

    口腔インプラント治療は,口腔機能回復にとって欠くことのできない重要な治療アイテムであることはいうまでもない.そのため,インプラント治療医は国民からの期待と信頼に十分に応える必要があり,学会は名実ともに信頼されるインプラント専門医の育成と厳格な専門医の資格認定要件の設定が必要である.(公社)日本口腔外科学会としては,国民から真に信頼される歯科専門医としてのインプラント歯科専門医(仮称)が早期に認定されることを期待し,要望を示した.

特集 CAD/CAM上部構造におけるマテリアル選択について
  • 加倉 加恵, 近藤 祐介
    原稿種別: 特集 CAD/CAM上部構造におけるマテリアル選択について
    2022 年 35 巻 3 号 p. 186
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/10/30
    ジャーナル フリー
  • 伴 清治
    原稿種別: 特集 CAD/CAM上部構造におけるマテリアル選択について
    2022 年 35 巻 3 号 p. 187-196
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/10/30
    ジャーナル フリー

    インプラント上部構造用材料は,レジン系,セラミックス系,金属系に大別でき,多くの選択肢がある.セラミックス系はさらにガラスセラミックス系とジルコニア系に二分される.一方,デジタル技術の進歩により,CAD/CAMシステムを使用して高い適合精度でインプラント上部構造を製作することが可能となってきている.また,CAD/CAMシステムは年々多様化し,使用可能な材料が増える傾向にあり,その選択に苦慮する場合がある.たとえば,金属系材料は機械的性質においては満足できるが,審美性およびアレルギー問題により使用は限定される.PEEKおよびPEKKなどのスーパーエンジニアリングプラスチックは化学的性質に優れているが,硬さが低く主にフレーム(コア)として用いられる.また,ガラスセラミックスやコンポジットレジンは微視的には不均質組織であり,機械的性質および化学的性質が各微細組織部分で異なり,上部構造体として口腔内に長期に使用した場合,表面が荒れ,変色しやすくなる.結果として,対合歯の摩耗は大きくなってくる.一方,ジルコニアは均質組織であり,すべての上部構造用材料のなかで最も化学的耐久性が高く,強く,硬く,鏡面研磨仕上げをすれば,対合歯の摩耗は最も小さいと判断できる.したがって,材料学の立場からは,種々の歯科修復材料のなかでジルコニアがインプラント上部構造として最適の性質を有していると判断される.

  • 土屋 嘉都彦, 土屋 直行, 髙江洲 雄
    原稿種別: 特集 CAD/CAM上部構造におけるマテリアル選択について
    2022 年 35 巻 3 号 p. 197-203
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/10/30
    ジャーナル フリー

    近年,CAD/CAMテクノロジーの発展に伴い,材料の選択肢としてジルコニアを用いた補綴装置が注目されている.ジルコニアは,その破折強度,生体親和性,審美性などの点から幅広く使われるようになってきており,インプラント補綴装置特有の併発症を回避するためにジルコニアの使用は有効と考えている.ただ,ジルコニアの長期予後を示した論文は少なく,その使用にあたっては,三つの要点,①力のかかるところはジルコニアで覆う,②スクリュー固定にする(フリクション固定も可),③Intraoral Lutingを行う(口腔内でコーピングを合着する)に留意して使用することをお勧めする.

    ジルコニアのような新しい材料の使用にあたっては,エビデンスの不足の観点からも,物理的・理論的に正しく使用することが重要である.今回提示した要点はその使用上の手助けになると考える.

原著(臨床研究)
  • 今 敬生, 小林 恒, 田中 祐介, 古館 健, 小山 俊朗, 伊藤 良平, 佐竹 杏奈, 木村 博人
    原稿種別: 原著(臨床研究)
    2022 年 35 巻 3 号 p. 204-211
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/10/30
    ジャーナル フリー

    目的:インプラント治療を行う際に下顎骨の幅径は非常に重要であるが,咬合状態と下顎骨の幅径を検討した研究はない.そこで本研究は,咬合状態を含めた下顎骨の幅径と関連する要因を明らかにすることを目的とした.

    対象および方法:インプラント手術とは関係しない疾患で撮影したCT画像を用いて,正常咬合群と下顎前突症群の2群における下顎正中部の骨幅径と下顎枝前縁部の骨幅径および咬筋最大幅径を測定した.

    結果:統計学的に検討した結果,女性において下顎正中最小幅径と下顎枝前縁部最小幅径が有意に反対咬合群で薄い結果となった.また,男女ともに咬筋最大幅径が反対咬合群で有意に薄い結果となった.咬筋最大幅径と下顎骨幅径の相関をみたところ,女性では下顎正中部の最小幅径(r=0.429,p=0.014)と下顎枝前縁部の最小幅径(r=0.354,p=0.047)において咬筋最大幅径と有意な相関関係を認めた.下顎骨最小幅径に影響を与える因子を重回帰分析で検討したところ,下顎正中部骨幅(β=-0.244,p=0.042)と下顎枝前縁部幅径(β=-0.267,p=0.026)ともに咬合のみが有意に関連する因子であった.

    結論:今回の研究で,咬合状態が下顎骨幅径と咬筋幅径に関与していることが明らかとなり,下顎前突症群では下顎が正常咬合群に比較して薄い傾向があることが判明した.

  • 五十嵐 三彦, 玉木 大之, 篠崎 泰久, 齋藤 真規, 熱田 亙, 山田 明日美, 加藤 仁夫, 岡田 裕之
    原稿種別: 原著(臨床研究)
    2022 年 35 巻 3 号 p. 212-221
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/10/30
    ジャーナル フリー

    目的:軽度の全身疾患保有者,喫煙者および歯周炎罹患者を特に排除せずに定期的なメインテナンスの回数を基準にしてインプラント周囲炎の発生頻度を調査することを目的とした.

    方法:歯科医院1施設にてインプラント補綴を行った患者に対して,インプント治療終了後3年以上経過した患者を対象とし,2019年1月~2020年12月の2年間にメインテナンスを目的に4回以上来院した患者をregular compliers群(RC群),4回未満の患者をirregular compliers群(IC群)に分類して,それぞれのインプラント周囲粘膜炎およびインプラント周囲炎の罹患を対比した.

    結果:インプラント残存率は99.76%(補綴後Mean±SD:75.21±30.53カ月経過)であった.RCの被験者においては,埋入したインプラント263本のうちインプラント周囲炎に罹患したものは93本で罹患率は35.5%であった.ICの被験者においては,埋入本数126本に対して周囲炎に罹患したものは79本で罹患率は62.7%であった.RCとICにおいて,周囲炎罹患に関して統計学的有意差を示した(p<0.001).また,歯周炎を認めずかつRC群であった者においてはインプラント周囲炎の罹患率が26.2%であった.インプラント周囲炎罹患のオッズ比は,インプラント周囲粘膜炎罹患の有無(4.825),歯周炎の罹患の有無(4.290),定期健診来院の有無(3.054)であった.

    考察および結論:インプラント周囲炎発症予防には,定期的なインプラントメインテナンスと同時に天然歯に対する歯周炎の維持療法(SPT)の併用が重要であることが示唆された.

調査・統計・資料
  • 矢野 尚一, 神村 正人, 川前 通朗, 加倉 加恵, 向江 富士夫, 山田 俊介, 柳 束, 藤垣 雅士, 大森 桂二, 松浦 正朗
    原稿種別: 調査・統計・資料
    2022 年 35 巻 3 号 p. 222-230
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/10/30
    ジャーナル フリー

    目的:本多施設共同研究の目的は,インプラントオーバーデンチャー(以下IOD)で治療された下顎無歯顎患者でのインプラント体の残存率,インプラント体辺縁骨吸収,および経過観察期間中のトラブルなどを分析することとした.

    材料および方法:福岡口腔インプラント研究会会員の8施設において,2019年3月までに治療が終了した下顎のIOD 64例(インプラント体183本)を分析対象とした.64例の経過観察期間は平均8.7±4.0年であった.使用されたアタッチメントはロケーターが32例,バー15例,マグネット7例,ボールが10例であった.

    結果:インプラント体喪失は6例の10本(5.5%)で起こり,喪失例に使われたアタッチメントはロケーターが4例(6本),マグネット,およびボールが各1例(計4本)で,バーの症例に喪失例はなかった.インプラント周囲の骨吸収は52例の156本で測定された.骨吸収量は全観察期間を通して大部分で0~2 mmであったが,5年を超えて15年までの期間の110本では5本が3 mmを超えた骨吸収を示した.しかし,16年以上経過した14本では3 mmを超える骨吸収はみられなかった.メインテナンス中の補綴的不具合として,ロケーターではリテンションディスクの交換,バーではクリップの交換が多く,その他,義歯のリライン,破折はすべてのアタッチメントで少数みられた.

    結論:多くの症例でIODは長期間安定していた.

  • 塩田 真, 西村 正宏, 懸田 明弘, 加藤 英治, 上林 毅, 岸本 博人, 興 秀利, 津賀 一弘, 西郷 慶悦, 宮﨑 隆
    原稿種別: 調査・統計・資料
    2022 年 35 巻 3 号 p. 231-236
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2022/10/30
    ジャーナル フリー

    口腔インプラント治療相談窓口は,2013年3月に開設されて以来,現在までに2015年,2017年,2018年,2019年,2021年と5回のアンケート調査が行われている.今回,口腔インプラント治療相談窓口の実態を把握するために8年間のアンケート調査の結果をまとめた.平均回答率は81.6%と高く,担当施設の意識の高さが示された.相談のあった施設の平均割合は17.7%,平均相談件数は94.8件であり,1~5件の相談を受けた施設がほとんどであった.相談内容は他院での治療にかかわるものが多かった.口腔インプラント治療相談窓口の担当施設からは,相談窓口をより周知する必要性が寄せられた.口腔インプラント治療相談窓口はインプラント診療の信頼性を堅持するための重要な制度であり,体制をより強化することが必要と考えられる.

feedback
Top