第54 回大会でのシンポジウム「インプラント治療における口腔機能の維持回復」は(一社)日本老年歯科医 学会,(公社)日本補綴歯科学会との共催で開催され,超高齢社会におけるインプラント治療の真の価値について3名の先生(九州インプラント研究会の森永大作先生,昭和医科大学の大澤淡紅子先生,大阪大学の池邉一典先生)から貴重な症例やデータをお示しいただいた.
池邉先生からは,インプラントに限らず口腔機能の変化やその重要性についてお話しいただいた.その内容はすでに他の文献にて紹介されているため,本企画ではインプラントに特化した内容をご講演されたお二人の先生より,その内容を総説として寄稿いただいた.
森永先生からは最初に,口腔機能の低下は(身体,オーラルともに)フレイルの自覚症状および口腔関連QOL の低さと関連することが多施設共同の調査研究より紹介され,生活の質における口腔機能の維持の重要性が改めて示された.次に「両側」遊離端欠損症例において,固定性インプラント義歯治療を受けた患者は可撤性義歯による治療を受けた患者と比べて,口腔機能低下症の有病率が明らかに低く,欠損をもたない患者と同程度の口腔機能を維持していることが紹介された.本研究は横断研究にはなるが,固定性のインプラント治療がいかに口腔機能,口腔関連QOL ならびにフレイルの自覚症状に良い状況をもたらしているかが示唆された.
大澤先生からは,高齢期においては,咬合の回復が口腔機能の回復と同義とはならないために,口腔機能の継続的管理が重要であることを症例を通して紹介いただいた.下顎の高度吸収顎堤患者に対して2 インプラントオーバーデンチャー(いわゆるMcGill Consensus)が口腔機能の維持に有効であるとする症例と,インプラントアシステッドリムーバブルパーシャルデンチャー(IARPD)の補綴装置の修理による対応の様子に加えて,嚥下内視鏡検査の結果から適切な食支援を行った症例である.そして各ライフステージと個々の患者の状態に応じてインプラントを活用可能な状態で計画することの重要性を示唆いただいた.
お二人のお話から,確かにインプラント治療は口腔機能の維持に実際に有効であることは間違いないうえに,インプラント治療そのものが口腔機能管理のモチベーション向上にも有効であることがうかがえる.
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