日本口腔インプラント学会誌
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総説
  • 勝山 裕子, 勝山 英明
    2025 年38 巻3 号 p. 159-172
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/11/15
    ジャーナル フリー

    インプラント治療は欠損に対する第一の選択肢として世界中で認められてきている.上顎臼歯部は,抜歯後にダイナミックな骨のリモデリングが起こることで垂直的および水平的骨高径の減少が起こりやすい.また,その解剖学的特性・複雑性により,上顎洞を含むインプラント治療はハードルが高い治療であり,難症例として分類されている.上顎洞底挙上術には臨床状況によるさまざまなバリエーションと治療オプションがあり,エビデンスに基づいた的確な治療プランの決定と遂行が重要である.歴史的に最も文献的エビデンスが蓄積されている分野でもあり,従来は入院下でのみ治療可能であった状況も外来での治療を可能とするまでに進歩した.

    しかし,合併症が起こった際のインパクトは大きく,ときに歯科医師では解決できない状況に遭遇する.術前の詳細なリスク評価と入念な治療戦略と合併症への対応の準備が不可欠である.筆者とデンマークのProf. Simon Jensenとにより2011年に出版した『ITI Treatment Guide Vol. 5:Sinus floor elevation procedures』は世界10か国以上の言語に翻訳され,上顎洞底挙上術の治療ガイドラインとして世界的に評価されている.本稿においては,最新のアップデートを踏まえ,現時点での到達点と治療プロトコルのコンセンサスについて言及する.

  • 澤瀬 隆, 中野 貴由, 黒嶋 伸一郎
    2025 年38 巻3 号 p. 173-178
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/11/15
    ジャーナル フリー

    オッセオインテグレーションにより咀嚼荷重を骨組織で直接支持するインプラント体においては,インプラント周囲骨組織の荷重応答,すなわちメカノバイオロジーの理解がきわめて重要となる.

    我々の研究グループでのこれまでの研究結果から,実験動物に埋入されたインプラント体への繰り返し荷重の負荷により,荷重応答性に骨量の変化がもたらされるとともに,その変化は,顎骨と長管骨では異なることも明らかとなった.さらに骨量だけでなく,コラーゲン線維,生体アパタイト結晶の配向性,ならびにメカノセンサーの中心的役割を担う骨細胞などで構成される骨質が,荷重方向に相関して適応変化することが見いだされた.すなわちスカラー量としての骨量のメカノバイオロジーから,荷重というベクトル量に呼応する骨質のメカノバイオロジーへの展開が図られている.

    本稿では,研究結果が示すインプラント周囲骨のメカノバイオロジーの一端を示すとともに,骨質のメカノバイオロジーを基盤とした,骨質制御インプラントデザインの開発,インプラント早期荷重の科学,そして骨質制御がもたらすインプラント周囲炎への新機軸について紹介する.

特集 インプラント治療における口腔機能の維持回復
  • 西村 正宏, 野村 智義
    2025 年38 巻3 号 p. 179
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/11/15
    ジャーナル フリー

    第54 回大会でのシンポジウム「インプラント治療における口腔機能の維持回復」は(一社)日本老年歯科医 学会,(公社)日本補綴歯科学会との共催で開催され,超高齢社会におけるインプラント治療の真の価値について3名の先生(九州インプラント研究会の森永大作先生,昭和医科大学の大澤淡紅子先生,大阪大学の池邉一典先生)から貴重な症例やデータをお示しいただいた.

    池邉先生からは,インプラントに限らず口腔機能の変化やその重要性についてお話しいただいた.その内容はすでに他の文献にて紹介されているため,本企画ではインプラントに特化した内容をご講演されたお二人の先生より,その内容を総説として寄稿いただいた.

    森永先生からは最初に,口腔機能の低下は(身体,オーラルともに)フレイルの自覚症状および口腔関連QOL の低さと関連することが多施設共同の調査研究より紹介され,生活の質における口腔機能の維持の重要性が改めて示された.次に「両側」遊離端欠損症例において,固定性インプラント義歯治療を受けた患者は可撤性義歯による治療を受けた患者と比べて,口腔機能低下症の有病率が明らかに低く,欠損をもたない患者と同程度の口腔機能を維持していることが紹介された.本研究は横断研究にはなるが,固定性のインプラント治療がいかに口腔機能,口腔関連QOL ならびにフレイルの自覚症状に良い状況をもたらしているかが示唆された.

    大澤先生からは,高齢期においては,咬合の回復が口腔機能の回復と同義とはならないために,口腔機能の継続的管理が重要であることを症例を通して紹介いただいた.下顎の高度吸収顎堤患者に対して2 インプラントオーバーデンチャー(いわゆるMcGill Consensus)が口腔機能の維持に有効であるとする症例と,インプラントアシステッドリムーバブルパーシャルデンチャー(IARPD)の補綴装置の修理による対応の様子に加えて,嚥下内視鏡検査の結果から適切な食支援を行った症例である.そして各ライフステージと個々の患者の状態に応じてインプラントを活用可能な状態で計画することの重要性を示唆いただいた.

    お二人のお話から,確かにインプラント治療は口腔機能の維持に実際に有効であることは間違いないうえに,インプラント治療そのものが口腔機能管理のモチベーション向上にも有効であることがうかがえる.

  • 森永 大作, 加来 敏男, 永井 省二
    2025 年38 巻3 号 p. 180-185
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/11/15
    ジャーナル フリー

    我が国において健康寿命の延伸は重要な課題である.近年,口腔機能の低下は,身体的虚弱,サルコペニア,認知症などの危険因子とされ,高齢者の社会的離脱にも関連することが示されている.2016年に日本老年歯科医学会から口腔機能低下症が発表され,2018年には保険収載された.しかし,口腔機能低下症は,口腔機能障害の前段階であるため,患者の口腔機能低下に対する自覚症状や生活の質(QOL)の低下は見逃されている可能性がある.

    一方,歯科インプラント治療は口腔機能の維持や回復に有効な手段として確立されてきた.しかしながら,臨床で頻繁に遭遇する両側遊離端欠損症例において,歯科インプラント治療と部分床義歯の選択基準は明確には確立されていない.

    本稿では,九州インプラント研究会が多施設共同研究として行った口腔機能低下症の実態調査と歯科インプラント治療との関係についてと,口腔機能低下症の現状や両側遊離端欠損に対する補綴方法の違いが口腔機能や口腔関連QOLへ及ぼす影響について解説する.

  • 大澤 淡紅子, 古屋 純一
    2025 年38 巻3 号 p. 186-195
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/11/15
    ジャーナル フリー

    超高齢社会の現代において,健康寿命を延伸し,高齢者が心身ともに健全で自立し続けるためにはオーラルフレイルの予防が大切である.特にサルコペニアの原因となる食品摂取の多様性低下は,歯の欠損や,補綴装置の不具合などによる咀嚼機能低下と関連すると思われる.これらを改善するためにインプラント治療は非常に有効な手段である.しかしながら真の健康増進を図るためには,単に補綴治療を行うだけでは不十分であり,口腔機能の管理が大切である.当講座ではインプラント患者の術前と術後の口腔機能の変化を調査しており,その研究結果を踏まえると,壮年期から高齢期における,高齢期の第一ステージにおいては,口腔機能の維持向上のためのインプラント治療が重要となる.

    一方で,健康寿命が延長しても,いずれ人生の最終段階は訪れる.超高齢社会になり,寿命が延びたからこそ,患者が要介護状態になることを想定したインプラント治療が求められる.たとえば,自立度の低下により,外来ではできていたインプラントのケアが,介護施設や自宅ではできないことを多く経験する.そのため,高齢期の第2ステージとして,患者がある程度の年齢になった段階で,外来通院が困難になる場合を想定し,可及的に咀嚼機能やQOLを低下させず,かつ,家族や介護者が口腔ケアを行いやすい補綴装置を選択することも有用と考えられる.

原著(臨床研究)
  • 武村 幸彦, 冨田 尚充, 安藤 琢真, 須藤 信幸, 両角 俊哉, 讃岐 拓郎, 河奈 裕正, 向井 義晴
    2025 年38 巻3 号 p. 196-203
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/11/15
    ジャーナル フリー

    目的:インプラント治療は,心理的・生理的ストレスが高い治療とされる.欠損補綴治療およびインプラント関連治療に対するストレス反応を心理的・生理的評価により明らかにする目的で,治療法の相違を患者群(通常患者・歯科恐怖症患者)間で比較した.

    方法:2019年から2024年に神奈川歯科大学附属病院で治療を受けた患者130名(通常患者75名,歯科恐怖症患者55名)を対象とした.各治療法の説明後に想起によるVisual Analog Scale (VAS)で心理的ストレスを評価し,唾液a-アミラーゼ(sAA)活性を同時に測定した.

    結果:歯科恐怖症患者では,インプラント埋入に対するVASスコアの中央値が93.0(通常患者は60.5),sAA活性が83.0 kIU/L(同33.5)と有意に高値を示した.また治療法別では,インプラントはブリッジより高いストレス反応を示した.

    結論:インプラント治療は他の欠損補綴治療より高いストレスを生じさせ,歯科恐怖症患者において顕著であった.

  • 大橋 順太郎, 山下 佳雄, 中山 雪詩, 合島 怜央奈
    2025 年38 巻3 号 p. 204-210
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/11/15
    ジャーナル フリー

    局所麻酔下での歯科処置においては,多くの患者が治療に対する不安や恐怖を抱いたまま施行されることが多い.インプラント手術においても同様であり,患者に大きなストレスを加えている.これまで我々は,局所麻酔下で施行される口腔外科処置時の恐怖,不安をVRの使用によって軽減できることを報告してきた.今回,インプラント手術時にVR視聴を行うことで不安軽減効果を得られるかを検討した.

    対象は,局所麻酔下でインプラント埋入手術を行った患者47名をランダムに2群に分け,VR未使用群(24名),VR使用群(23名)とした.術前術後に処置中の不安,恐怖の軽減に変化があるのかをVAS値を含めたアンケート調査にて比較検討を行った.

    VR未使用群では術前術中のVAS値の変動は少なく-6.25±25.0mmであったのに対して,VR使用群ではVAS値が-23.3±24.2mmと有意差をもって減少することが判明した.また,VR使用群は術後アンケートによる5段階評価において87.0%に満足度を得ており,さらに78.2%で不安軽減も確認された.一方,サイバー病様の症状を示す患者は認められなかった.

    今回の結果より,VR使用群はVR未使用群と比較して有意に処置に伴う恐怖,不安の軽減が認められた.インプラント埋入手術においてもVRの使用は不安・恐怖を軽減させるのに有用であると考える.

原著(基礎研究)
  • 柳 束, 根来 香奈江, 石河 佳乃, 千嶋 俊亮, 松本 彩子, 江頭 敬, 谷口 祐介, 加倉 加恵
    2025 年38 巻3 号 p. 211-218
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/11/15
    ジャーナル フリー

    目的:本研究は,生成AIが専門教育において学生の育成を支援する教育ツールとして活用できる可能性を検討するため,歯科医師国家試験の口腔インプラント学に関する問題に対する3種類の生成AI(GPT-4o,GPT-o1,Claude 3.5 Sonnet)の解答能力を比較・評価することを目的とした.

    材料および方法:第99~117回歯科医師国家試験のうち,インプラント関連92問(文章36問,写真56問)を各モデルに3回ずつ出題し,正答率を比較した.また全問題を英訳し,言語差による正答率への影響も検討した.統計解析には一元配置分散分析,Holmの多重比較検定およびt検定を用いた.

    結果:3モデルすべてが文章問題で高い正答率(83.3~96.3%)を示したが,写真問題に関しては正答率の低下がみられた(62.5~73.2%).文章問題,写真問題ともに正答率の高さはGPT-o1,Claude 3.5 Sonnet,GPT-4oの順となっており,合算した正答率でGPT-o1が最も高い正答率(82.2%)を記録した.Holmの多重比較検定の結果,文章問題ではGPT-o1がGPT-4oと比較して有意に高い正答率となり,合算した正答率においても同様の結果が得られた.言語間の比較では有意差は認められなかった.

    結論:本研究により,生成AIは歯科医師国家試験の口腔インプラント関連問題において,特に文章問題で高い正答率を示し,教育支援ツールとしての有用性が示唆された.今後はプロンプトエンジニアリングやファインチューニングなどの技術を活用し,解答精度と信頼性を高めることで,生成AIを学生の育成に寄与する教育支援システムへと発展させる可能性が期待される.

症例報告
  • 土屋 浩昭, 大場 達裕, 片山 広大, 土屋 崇明, 下野 賢吾
    2025 年38 巻3 号 p. 219-226
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/11/15
    ジャーナル フリー

    ブレードインプラント除去後に過大な垂直的骨吸収を認めた場合,インプラント再治療が困難となることが多い.本症例では下顎両側臼歯部のブレードインプラント除去後に,オトガイ孔間へインプラント体を段階的に埋入することで良好に機能的・審美的な回復を得たので報告する.

    患者は80歳,男性.下顎両側大臼歯の咬合痛を主訴に当院を受診した.下顎両側大臼歯部にはブレードインプラントが埋入されており,インプラント体の動揺を認めた.ブレードインプラントの除去後,下顎前歯部を支台歯とした暫間補綴装置を使用した状態で下顎両側小臼歯部にインプラント体を傾斜埋入した.4か月の免荷期間後,下顎前歯部残存歯の抜歯と同時にインプラント体を埋入し,下顎両側小臼歯部のインプラント体と連結させ,アンテリアガイダンスを付与した暫間補綴装置を装着した.下顎の治療と並行して動揺が認められた上顎左側大臼歯部に埋入されていたサファイアインプラントも除去し,インプラント体の再埋入と咬合再構成を行った.暫間補綴装置で顎口腔系の機能回復を確認後,最終上部構造を装着した.術後8年が経過した現在も良好な経過をたどっている.

調査・統計・資料
  • 関 真理子, 晴佐久 悟, 谷口 祐介, 柳 束, 加倉 加恵, 城戸 寛史
    2025 年38 巻3 号 p. 227-235
    発行日: 2025/09/30
    公開日: 2025/11/15
    ジャーナル フリー

    訪問看護師の口腔アセスメント・ケア実施状況,インプラントの知識・認識,およびそれらの関連因子を調査し,在宅医療での歯科・看護連携の問題点抽出と推進材料を得ることを目的とした.福岡県内の訪問看護事業所312施設に勤務している訪問看護師を対象とし,Webアンケート調査を行った.66名(21.2%)がアンケートに回答した.口腔アセスメント,口腔ケアの実施割合は,それぞれ56.1%,54.5%であった.50%以上の対象者がインプラント周囲炎・周囲粘膜炎,治療後のメインテナンスの必要性の知識がなかった.60%以上の対象者がインプラント上部構造の不具合やインプラント体の動揺を見分けることができないと回答した.口腔アセスメント・ケアの実施は,インプラントの知識・認識と関連し,また,歯科医師・歯科衛生士の連携レベルと関連した.40%以上の訪問看護師が口腔アセスメント・ケアを実施していないことから,在宅高齢者の口腔疾患予防・早期発見,誤嚥性肺炎予防のために,さらなる普及が期待される.また,インプラントの知識,異常をアセスメントする認識が低いことから,インプラントに関する情報提供の必要性が示唆された.歯科医療従事者の訪問看護師へのインプラントに関する情報提供とさらなる連携が,訪問看護師の口腔アセスメント・ケアをさらに推進し,インプラント異常のアセスメント能力の向上,歯科紹介にもつながる可能性が示唆された.

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