日本口腔腫瘍学会誌
Online ISSN : 1884-4995
Print ISSN : 0915-5988
ISSN-L : 0915-5988
14 巻, 3 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 西田 光男, 安田 真也, 山村 功, 村上 賢一郎, 瀬上 夏樹, 藤田 茂之, 横江 義彦, 飯塚 忠彦
    2002 年 14 巻 3 号 p. 71-77
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1990年から2000年までの10年間に, 京都大学医学部口腔外科にて治療を行った口腔粘膜原発扁平上皮癌の1次症例327症例につき臨床的検討を行った。このうち根治的治療を施行し得た症例は286例であった。
    当科の治療方針として, 原発巣早期癌 (T1, early T2) では原発巣の切除を第1選択とし, 同進行癌 (T3, T4) では術前照射の後, 原発巣切除を施行している。また原則的に, 早期Stage症例に対する予防的頸部郭清, あるいは全身化学療法は適用していない。この結果, 5年累積生存率は全症例では74.1%, 根治的治療症例では84.3%であった。
    根治的治療症例の検討を行った結果, Stage分類別5年累積生存率はI (58例) : 98.3%, II (90例) : 86.1%, III (58例) : 88.4%, IV (80例) : 66.6%であった。また, 原発部位別5年累積生存率は, 舌 (121例) : 84.9%, 下顎歯肉 (60例) : 82.6%, 頬粘膜 (42例) : 75.5%, 上顎歯肉 (34例) : 83.2%, 口底 (29例) : 92.2%であった。原病死40例の内訳は, 原発巣11例, 所属リンパ節6例, 遠隔転移16例, 頸部所属外リンパ節 (副・後咽頭リンパ節) 4例, 手術2例, 合併症 (化学療法) 1例であった。
  • 笠原 清弘, 武田 栄三, 山内 智博, 矢島 安朝, 野間 弘康
    2002 年 14 巻 3 号 p. 79-87
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    全身性炎症反応症候群 (SIRS) は術後合併症や臓器不全などの警告信号としてとらえられ, これらの発生を予防するうえで高い臨床的意義をもつと報告されてきた。しかし, これまで手術侵襲とSIRSとの関係についての報告は主に消化器外科領域からのみであり, 口腔外科領域においては検討されてこなかった。今回我々は1998年1月より2001年12月までに当科で行った, レベルIII以上の頸部郭清術を伴った口腔癌手術55例を対象として検索を行った。
    SIRS診断基準のうち2項目以上を満たし, その状態が24時間以上持続した25例をSIRS群, その他30例を非SIRS群とした。SIRS群では56.0%に術後合併症の発生がみられ, 非SIRS群では6.7%であり両者間に有意差が認められた。さらに6例において血中インターロイキン6の術前後の変動を測定した。これらの結果からSIRS患者に対しては, 術後合併症の予防を考慮した注意深い管理が大切であることが示唆された。
  • 黒川 英雄, 山下 善弘, 松本 忍, 福山 宏, 高橋 哲
    2002 年 14 巻 3 号 p. 89-93
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    上皮性異形成は口腔粘膜の前癌病変における病理組織学的な用語として用いられている。しかしながら, その診断には様々な診断基準が用いられているのが現状である。そこで, 舌扁平上皮癌50例 (1985-1998) の切除断端部における上皮性異形成について, 数種の診断基準により検討し, 局所再発との関連性を検討した。
    1) 上皮性異形成の出現率ではBurkhardtの診断基準が, 他の診断基準より高くなっていた。
    2) それぞれの診断基準のModerateおよびSevereでの80%以上に局所再発が認められた。しかしながら, 上皮性異形成の頻度および程度と局所再発率では, それぞれの診断基準に有意差は認められなかった。
    3) 口腔粘膜の上皮性異形成の診断にはWHO (1997) の診断基準が有用であることが示唆された。
  • 松浦 正朗, 佐藤 淳一, 川口 浩司, 関谷 秀樹, 長浜 悦子, 野村 隆祥, 瀬戸 〓一
    2002 年 14 巻 3 号 p. 95-100
    発行日: 2002/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    近年, 同一患者での悪性腫瘍の多発が増加しており, これは寿命の延長や初発癌の治癒率の向上, 等に起因すると思われる。我々は25年間に, 最初の口腔癌を治療して10年以上経過後, 口腔内に再び新たな癌が発生した3例を経験した。3症例の第一癌および第二癌の組織型はすべて扁平上皮癌であった。
    第1症例は60歳の女性で, 右側舌癌に罹患した。腫瘍に対しては放射線治療を行った。第二癌は13年後に右上顎に発生し, 外科的に切除した。
    第2症例は52歳の男性で, 右口峡咽頭癌に罹患, 放射線治療を行なった。第二癌は12年後に左舌に発生した。第二癌に対しては, 腫瘍切除が実施された。
    第3症例は51歳の女性で, 左口底癌に罹患し, 上頚部郭清と併せて腫瘍を切除した。第二癌は12年後に右側舌に発生し, 腫瘍切除手術を行った。第二癌治療2年後に左側口峡咽頭に第三癌が発生し, 放射線治療を実施した。
    第1症例のみが肝硬変により死亡したが, 他の2例は第二癌あるいは第三癌治療後, 腫瘍は制御され生存している。
feedback
Top