1990年から2000年までの10年間に, 京都大学医学部口腔外科にて治療を行った口腔粘膜原発扁平上皮癌の1次症例327症例につき臨床的検討を行った。このうち根治的治療を施行し得た症例は286例であった。
当科の治療方針として, 原発巣早期癌 (T1, early T2) では原発巣の切除を第1選択とし, 同進行癌 (T3, T4) では術前照射の後, 原発巣切除を施行している。また原則的に, 早期Stage症例に対する予防的頸部郭清, あるいは全身化学療法は適用していない。この結果, 5年累積生存率は全症例では74.1%, 根治的治療症例では84.3%であった。
根治的治療症例の検討を行った結果, Stage分類別5年累積生存率はI (58例) : 98.3%, II (90例) : 86.1%, III (58例) : 88.4%, IV (80例) : 66.6%であった。また, 原発部位別5年累積生存率は, 舌 (121例) : 84.9%, 下顎歯肉 (60例) : 82.6%, 頬粘膜 (42例) : 75.5%, 上顎歯肉 (34例) : 83.2%, 口底 (29例) : 92.2%であった。原病死40例の内訳は, 原発巣11例, 所属リンパ節6例, 遠隔転移16例, 頸部所属外リンパ節 (副・後咽頭リンパ節) 4例, 手術2例, 合併症 (化学療法) 1例であった。
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