日本口腔腫瘍学会誌
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15 巻, 1 号
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  • 永井 健夫, 中村 英典, 吉村 仁志, 内藤 晋一, 吉村 安郎, 白川 律子, 原田 孝之
    2003 年 15 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    初回手術から24年後に多形性腺腫から悪性転化した腺様嚢胞癌のまれな1例を報告した。患者は60歳, 男性, 上顎右側歯肉腫瘍の加療を目的とし当科に紹介された。患者は右側涙腺腫瘍にて過去に2回手術を受けていた。初回手術では, Krnlein法にて腫瘍摘出術が行われ, その手術材料の病理組織診断は多形性腺腫であった。24年後, 右眼球突出を訴えて眼科を受診した際のCT・MRIにて, 腫瘍は右側眼窩上外側部を占拠し, また, 頭蓋内にも進展発育していたことが明らかとなった。この第2回目の手術により摘出された手術標本は腺様嚢胞癌と病理組織学的に診断された。約10か月後には腫瘍は上顎洞, さらには口腔内にも進展した。この著しく進展発育した腫瘍に対して放射線療法, および超選択的動注化学療法が施行され, 一時的には腫瘍は著しい縮小を示したが, 再び徐々に増大, 死の転帰をとった。
    多形性腺腫は, 特に不完全なたび重なる摘出術後に悪性化をおこすことがまれにあるとされており, ここにそのまれな症例を報告した。
  • 山本 漢九, 大儀 和彦, 安本 順一, 今井 裕一郎, 川上 正良, 桐田 忠昭
    2003 年 15 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは診断後, 約3か月の臨床経過中に完全に自然消失した上顎歯肉原発悪性リンパ腫の1例を纖したので, その概要を報告する。
    症例は80歳女性で, 右側上顎臼歯部の腫脹を主訴に来院した。初診時の口腔内所見では右側上顎臼歯部に30×45mmの一部潰瘍を伴うび慢性の腫脹を認め, X線写真, CT所見においても右側上顎臼歯部を中心に骨の破壊像が認められた。頸部リンパ節には, 異常は認められなかった。生検を施行し, 悪性リンパ腫 (び慢性, 大細胞型, B細胞) (WHO分類) の病理診断が得られた。しかし, 無治療にもかかわらず約3か月の短期間に病変は自然消失した。以降, 経過観察を行っているが初診日より約1年6か月経過した現在, 再燃は認められない。
  • 吉濱 泰斗, 西山 明慶, 山田 庸介, 木村 卓爾, 目瀬 浩, 佐々木 朗, 松村 智弘
    2003 年 15 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    口腔外科領域の末期癌患者は原発巣や頸部転移巣からの出血により死亡することがあり, そのために患者のQOLの著しい低下を招くことがある。
    今回我々は口腔癌の末期で原発巣や頸部転移巣から出血した患者に対して動脈塞栓術を施行した3例を経験したのでその概要を報告する。さらに塞栓術4日後に死亡した1例を除く2例について塞栓術前後のKarnofsky Performance Statusscale (KPS) と血清アルブミン値について比較検討した。その結果KPS, 血清アルブミン値は改善しQOLも改善したと考えられた。
    今回の経験から腫瘍から出血を生じた口腔癌の末期患者に対する塞栓術が患者のQOLの維持, 改善と延命につながると考えられた。
  • 野地 秀彦, 岡部 貞夫, 八木原 一博, 出雲 俊之
    2003 年 15 巻 1 号 p. 21-24
    発行日: 2003/03/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    近年, 血液疾患に対し骨髄移植 (bone marrow transplantation, BMT) を受ける患者が徐々に増大しているが, そのような患者に肝癌や頭頚部癌のような固形癌が発症する危険性が高いという報告がある。今回われわれは, BMT治療7年後に舌癌を発症した症例を経験したのでその概要を報告する。症例は18歳, 男性。左舌縁の腫瘤を主訴に当科初診。既往歴として, 11歳時に急性リンパ性白血病に罹患し, 化学療法および放射線全身照射の後に骨髄移植が施行された。移植後, 肝の急性GVHD (graft versus host disease) を発症し, 慢性GVHDに移行した。
    BMTがなされる患者では, 全身放射線照射と共に移植前後に化学療法が施行されることが多い。これらの治療は同時に宿主細胞の遺伝子異常を誘発し, さらに続発したGVHDによる発症臓器での慢性刺激とが相俟って, 二次的な固形癌発症の危険度を高めると言われている。BMT施行患者に対しては, 定期的な口腔の経過観察が必要であると考えられた。
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