日本口腔腫瘍学会誌
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17 巻, 2 号
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  • 長谷 剛志, 川尻 秀一, 田中 彰, 能崎 晋一, 野口 夏代, 加藤 広禄, 中谷 弘光, 大原 照比佐, 中川 清昌, 山本 悦秀
    2005 年 17 巻 2 号 p. 105-113
    発行日: 2005/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    癌細胞が浸潤・増殖する際に宿主反応として間質線維化を伴い, 増殖した線維芽細胞との相互作用を介して癌細胞は活性化すると考えられているが, 詳細については不明である。本研究では, 浸潤先進部の癌細胞で過剰発現するFGF-2が線維芽細胞の増殖および癌細胞の浸潤・増殖に与える影響についてin vitroで検討した。癌浸潤様式の異なる3種類のヒトロ腔扁平上皮癌細胞株 (OSC-20: 3型, OSC-19: 4C型, HOC313: 4D型) の培養上清により, ヒト正常歯肉線維芽細胞 (HGF-1細胞) の増殖は促進された。特に, HOC313細胞の培養上清で顕著な増殖促進効果を示し, OSC-20細胞, OSG19細胞に比べて強いFGF-2の発現を認めた。また, Recombinant Human FGFL2 (50ng/ml) により線維芽細胞の増殖のみならず, 各癌細胞の浸潤・増殖も促進され, controlと比較するとOSC-19細胞, HOC313細胞で有意差を認めた (p<0.05) 。in vitro浸潤モデルにおいてFGF-2中和抗体 (2μg/ml) を添加すると, OSC-20細胞, OSC-19細胞は浸潤抑制を示した。以上の結果より, 高度浸潤性の扁平上皮癌細胞ほど多くのFGF-2を産生し, autocrineに作用して浸潤・増殖を促進する一方, paracrineにも作用することで線維芽細胞の増殖を促進することにより癌細胞の浸潤・増殖活性に関与している可能性が示唆された。
  • ―舌部分切除前・後および頸部郭清術後―
    大重 日出男, 下郷 和雄, 大岩 伊知郎, 梅村 昌宏, 藤原 成祥, 荒木 一将, 有地 榮一郎, 後藤 真一
    2005 年 17 巻 2 号 p. 115-123
    発行日: 2005/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    口腔癌術後における嚥下障害の危険因子を解明することは術式の選択, 患者および患者家族に対するインフォームド・コンセント, 嚥下リハビリテーションの点できわめて重要である。本報告は口腔癌術後に嚥下機能がどの様に変化するのかを観察することである。対象は, 手術治療を行なった舌癌stage I, II症例のうち, 造影X線透視検査にて嚥下機能評価を行った33例中, 術前, 舌部分切除後, 頸部郭清後に評価が可能であった9症例である。造影X線透視検査の結果を定性的, 定量的に評価した結果, 定性的評価では, 頸部郭清後には喉頭蓋谷, 梨状陥凹への試料の残留, 試料の咽頭通過時の左右差が認められた症例が増加していた。定量的評価では, 術前, 舌部分切除後, 頸部郭清後における各パラメーター間で明らかな有意差は認められなかった。頸部郭清は嚥下機能に影響を及ぼす可能性はあるものの, 誤嚥を引き起こす絶対的因子ではないことが示唆された。
  • 石川 均, 長谷川 和樹, 宮本 日出雄, 山城 正司, 鈴木 江美奈, 佐藤 豊, 天笠 光雄
    2005 年 17 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 2005/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    口腔顔面領域の血管腫の治療においては, 術前の機能性, 審美性を損なうことがないようその選択に苦慮することが多い。われわれは, 舌, 下唇, 頬粘膜の血管腫2症例に対し術前にDynamic MRI検査を行ったところ, low flow typeの血管腫と診断されたため, エタノールの局所注入療法を行った。2症例とも機能性, 審美性を損なうことなく腫瘍の消失または縮小の効果を得ることができた。2症例については, いずれも女性で年齢は54歳24歳で, 部位は舌, 下唇および頬粘膜であった。
  • ―管理上の問題点について―
    横地 恵, 栗田 浩, 中塚 厚史, 成川 純之助, 酒井 洋徳, 小林 啓一, 倉科 憲治
    2005 年 17 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 2005/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    高齢化社会を迎え, 痴呆症を有し口腔癌を発症する高齢者も増加してきている。この様な患者の治療は大変困難である。
    最近われわれは, 痴呆を有する高齢者の口腔癌患者を3症例経験し, 様々な治療上の問題点が明らかとなった。
    痴呆症を有する患者との意思の疎通は困難であり, 疾患・診療に対する理解が得られないため, 入院管理が非常に困難である。合併症や痴呆に起因する様々な要因により, 治療法の選択に制約がある。またさらに家族の治療への積極的な協力が得にくく, 治療はより難しくなる。
    痴呆を有する患者の治療方針を決定する際には, 腫瘍の進展度全身状態, 合併症だけでなく, 年齢, 痴呆の重症度患者のQOL, 家族の意向等を考慮することが重要であると考えられた。
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