上皮筋上皮癌 (epithelial-myoepithelial carcinoma, EMC) は, 導管上皮成分と淡明筋上皮成分の二層構造を特徴とする, まれな唾液腺腫瘍である。今回, 耳下腺深葉に生じたEMCを経験したので報告する。
患者は60歳代男性で, 1年前から認めた左側耳前部の腫瘤を主訴に, 当科受診した。初診時, 左側耳前部に2.6×2.0cm大の弾性やや硬の腫瘤を認めた。顔面神経麻痺は認めず, 頸部に転移を疑うリンパ節は触知しなかった。超音波およびMRI所見では, 左側耳下腺内に, 境界比較的明瞭で内部不均一な腫瘤を認めた。
左側耳下腺腫瘍の診断のもと, 腫瘍切除術を施行した。なお, 顔面神経は温存した。病理組織学的には, 好酸性の細胞質を持つ内層成分と淡明な細胞質を持つ外層成分からなる二層構造が認められた。また, 免疫組織学的には, 内層細胞はサイトケラチン (AE1/AE3) が, 外層細胞はα-SMAとS-100が陽性であり, EMCの診断となった。一部で腫瘍の被膜外浸潤を認めたため, 46Gyの術後放射線療法を施行した。術後3年経過した現在, 腫瘍の再発・転移は認めていない。
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