口腔癌患者における術後の嚥下障害因子を探るため,嚥下運動時の咽頭後壁の動きに着目した,手術前後のVideo Fluorography検査(VF)画像をコンピュータで動態解析する方法を構築した。その結果と嚥下障害度とを比較検討した。
手術を施行した口腔癌患者29症例を対象とし,VF画像(側面像)を二次元動画計測ソフトウェアを用いて解析した。嚥下中の第2・3・4頸椎部の咽頭後壁の厚みを算出し,各頸椎部毎の最大厚時のタイミングを検出した。また,嚥下障害の指標として,VF画像の読影により喉頭蓋谷および梨状窩の試料残留量と誤嚥量をスコア化し,嚥下障害度スコアを出した。
結果より,全ての症例で術前では咽頭後壁の最大厚時のタイミングが第2頸椎から第4頸椎へ順次移動している正常な蠕動様運動を示した。しかし,術後においては運動が変化している症例を数例認めた。それらの症例では嚥下障害度スコアが高く,運動が変化していない症例との群間に有意差を認めた。
VF動画画像をPCにて解析することにより,時間軸での咽頭後壁動態を評価することができた。手術により咽頭壁の動態が変化する所見が確認され,嚥下障害に大きく関わっている可能性が示唆された。
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