日本口腔腫瘍学会誌
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29 巻, 2 号
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原著
  • 森川 貴迪, 太尾 英子, 別所 央城, 藥師寺 孝, 野村 武史, 小野寺 晋志, 内野 福生, 髙野 伸夫, 柴原 孝彦
    2017 年 29 巻 2 号 p. 23-35
    発行日: 2017/06/15
    公開日: 2017/06/22
    ジャーナル フリー
    口腔癌に関する予後因子について検討が行われている。18F-Fluorodeoxyglucose Positron emission tomography (18F-FDG PET)は糖代謝による細胞活性に注目した検査であり,質的評価が可能である。18F-FDG PETはすでに病期診断に用いられている。本研究では,予後と18F-FDG PET/CTによる腫瘍代謝因子との関連性について評価しImaging biomarkerとしての有用性について明らかにすることを目的とした。
    2009年1月から2015年12月までの6年間に当科で加療を行った口腔扁平上皮癌患者でPET/Computed Tomography (CT) を施行した154例を対象とした。PET撮像前に治療歴のある症例は除外した。
    性差は男性89例,女性65例。平均年齢62.6歳であった。原発部位は舌が最も多く,StageはⅢ・Ⅳ期の進行期が過半数であった。中央観察期間は45.6か月であった。
    PET/CTによる腫瘍代謝因子では,原発腫瘍のSUVmaxは平均9.8,SUVmeanは平均5.9,代謝腫瘍体積(Metabolic tumor volume : MTV)は平均4126,総腫瘍代謝量(Total legion glycolysis : TLG)は平均28809,腫瘍代謝比(SUVmax volume ratio : SVR)は平均4.9であった。Receiver Operating Characteristic curve (ROC)解析の結果,SUVmax,SUVmean,MTV,TLG, SVRは12.0,6.7,3000,16000,4.8と設定した。Uptake patternにおいてはSphere shaped typeが128例,Ring shaped typeが26例であった。
    全体の3yDFS(Disease free survival rate)は80.2%,3yOS(Overall survival rate)は87.2%であった。予後についての単変量解析では,DFSでT因子,Stage,術後再発高危険症例,SUVmax,SUVmean,MTV,TLG,Uptake patternが有意な因子であった。またOSでは,病理組織学的分化度,T因子,Stage,術後再発高危険症例,SUVmax,SUVmean,MTV,TLG,Uptake patternが有意な因子であった。さらに多変量解析では,SUVmaxならびにUptake patternはDFS,OSともに独立した有意な因子であった。
    PETはImaging biomarkerとして有用であった。
症例報告
  • 長汐 沙千穂, 鎌田 孝広, 栗田 浩, 能崎 晋一
    2017 年 29 巻 2 号 p. 37-44
    発行日: 2017/06/15
    公開日: 2017/06/22
    ジャーナル フリー
    顎骨に生じる骨肉腫はいまだに治療法が定まっていない。骨肉腫の新補助化学療法治療プロトコール(NECO95J)は日本で開発され,評価された治療プロトコールでその有効性はすでに報告されている。今回われわれは,NECO95Jプロトコールに準じて治療を行った組織学的に高悪性の上顎骨肉腫の1例について報告する。
    52歳の男性が左側硬口蓋の腫れと痛みの治療を求めてわれわれの病院を訪れた。左側硬口蓋に比較的境界明瞭,弾性硬の腫脹(46×37mm)を認めた。CT画像所見では左側硬口蓋から左側上顎洞にかけて,境界不明瞭で不定形の病変を認めた。生検を行った結果,病理学的診断は軟骨形成型の高悪性度骨肉腫であった。
    治療は化学療法併用の集学的治療プロトコール(NECO95J)に準じて行った。術前に大量メトトレキセート, シスプラチン, ドキソルビシンからなる導入化学療法を行った。本症例では導入療法の効果がないと評価され,腫瘍の切除手術後には大量イフォマイド(IFO)による化学療法を加えた。
    いくつかの有害事象がみられたが,計画した化学療法を最後の2クールのIFOを除いてほぼ施行することができた。
    初診より6年経過した現在も再発および転移なく良好に経過している。
  • 武田 大介, 長谷川 巧実, 日向 信之, 重岡 学, 小林 正樹, 小松原 秀紀, 南川 勉, 古森 孝英
    2017 年 29 巻 2 号 p. 45-51
    発行日: 2017/06/15
    公開日: 2017/06/22
    ジャーナル フリー
    腎盂尿管癌の口腔内への転移は極めてまれである。われわれは,腎盂尿管癌が下顎関節突起に転移した1例を経験したので報告する。症例は70歳男性で,右顎関節部の自発痛を主訴としてわれわれの診療科を受診した。パノラマX線写真で右下顎関節突起に瀰漫性のX線透過像が,またCT画像とMR画像で同部に辺縁境界不明瞭な腫瘤影が確認された。一方で男性は,当院泌尿器科で左腎盂癌の診断を受けていた。重複癌の除外診断を得るために,われわれは,右下顎関節突起の組織検査を行い,泌尿器科医は,左腎尿管全摘出術を行った。両者の病理組織学的診断より,腎盂扁平上皮癌の口腔内転移と診断された。患者は姑息的な全身化学療法を受けたが,原発腫瘍と全身転移の制御は不可能であった。
  • 武富 孝治, 轟 圭太, 中村 守厳, 安陪 由思, 古場 朗洋, 楠川 仁悟
    2017 年 29 巻 2 号 p. 53-58
    発行日: 2017/06/15
    公開日: 2017/06/22
    ジャーナル フリー
    基底細胞腺癌(BCAC)は,唾液腺悪性腫瘍の約2%を占め,そのうち9割以上は耳下腺をはじめとする大唾液腺に発生するといわれており,小唾液腺に発生することは極めてまれである。今回,われわれは軟口蓋に発生したBCACの1例を経験したので,その概要に文献的考察を加えて報告する。
    患者は65歳,女性。初診時,左側軟口蓋に大きさ12×10mm,弾性やや硬の腫瘤を認めた。全身麻酔下にて腫瘍切除術を施行。腫瘍は球形,弾性やや硬で薄い被膜に包まれており,割を入れると内部は充実性であった。術中迅速病理組織学検査の結果,Monomorphic adenomaが疑われた。切除標本の病理組織学的所見は,線維性被膜に被包された腫瘍で,胞巣状・乳頭状に増殖する基底細胞様細胞からなり,胞巣の辺縁には部分的に柵状配列を認めた。また,腫瘍細胞の核は類円形で核異型は軽度であったが,腫瘍被膜への浸潤や脈管侵襲を認めた。さらに強拡大10視野中4個の核分裂像を認め,Ki-67 LI>10%であった。以上の結果から,最終的にBCACの病理組織学的診断を得た。現在,局所再発や頸部転移は認めず,経過良好である。
  • 大山 厳雄, 長谷川 和樹, 宮本 日出雄, 山口 聰
    2017 年 29 巻 2 号 p. 59-63
    発行日: 2017/06/15
    公開日: 2017/06/22
    ジャーナル フリー
    頸部郭清術後に生じる合併症のうち乳糜胸は非常にまれである。今回われわれは左側頸部郭清術後に両側乳糜胸が生じた1例を経験したので報告する。患者は54歳男性で,下顎歯肉の痛みを主訴に200X年1月28日に近医歯科より紹介にて当科を受診した。左側口底癌(扁平上皮癌,T4N0M0)の診断のもとに術前治療として,放射線療法と化学療法を行い,左側下顎辺縁切除術,左側舌・口底腫瘍切除術,左側根治的頸部郭清術,右側肩甲舌骨筋上頸部郭清術,遊離腹直筋皮弁再建術,気管切開術を施行した。術後3日目に動脈血酸素飽和度が低下したため,胸部X線を撮影したところ両側の胸水の貯留を認めた。当院呼吸器外科に対診し左側胸腔ドレナージを施行した。胸腔からの廃液は乳黄色を呈しており生化学検査の結果,両側乳糜胸の診断を得た。術後6日目に右側の胸水の貯留が増加し,右側胸腔ドレナージを施行した。絶食,中心静脈栄養および両側胸腔持続ドレナージによる保存的療法を行うことによって胸水は減少し,術後21日目に胸腔ドレーンを抜去し,術後22日目に低脂肪食による経口摂取が開始された。術後5年以上経過し乳糜の再発は認められない。
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