日本口腔腫瘍学会誌
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3 巻, 2 号
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  • 堀越 勝, 草間 幹夫, 岸 豊子, 藤林 孝司, 名倉 英明, 榎本 昭二
    1991 年 3 巻 2 号 p. 191-197
    発行日: 1991/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    舌癌N0症例の初回治療方法についてA0 (腫瘍無く生存) 率を指標として評価した。舌癌N0 82症例中, TIN0は26例, T2N0, 46例, T3N0は10例であった。初回治療方法として手術群 (S) と放射線群 (R) とに2分類した。S群の内容は, 舌切除, 舌切除と頸部郭清の同時施行あるいは舌口底下顎切除および頸部郭清のen bloc手術で即時再建されたものであった。放射線治療の内容は226Ra針, 192Irピンあるいは198Auグレインであった。結果は以下のようであった。
    1.TIN0ではS群, R群ともに原発巣の制御は良好であり, A0率はそれぞれ81.8%および73.3%であった。また後発転移率は, それぞれ37.5%および35.9%であった。Dcの主たる死因は頸部再発あるいは肺転移であった。
    2.T2N0では, S群, R群のA0率はそれぞれ76.9%および72.7%でほぼ同様であった。
    しかし, 原発巣の大きさが3cm以上では, S群のA0率が87.5%であるのに対しR群では57.1%であった。また原発巣再発はS群0%に対しR群では37.5%を示した。
    3.T3N0では, S群およびR群のA0率はそれぞれ66.7%および28.6%であった。R群では7例中5例 (71.4%) に頸部後発転移を認めた。
    4.原発巣の大きさが3cm以上のT2N0およびT3N0症例では頸部郭清を含めたen bloc手術が放射線治療よりも高いA0率を示した。
  • 尾崎 登喜雄, 広田 重水, 米田 和典, 山本 哲也, 植田 栄作
    1991 年 3 巻 2 号 p. 198-212
    発行日: 1991/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    保存的切除を目的に術前化学・放射線治療が64例の口腔癌, 一次症例に施行された。対象はT1: 2例, T2: 27例, T3: 22例, T4: 13例であった。Peplomycin, 5-fluorouracil, Cisdichlorodiamine-platinumらのうちの単剤, あるいは併用からなる化学療法と共に, 60Coによる外照射が同時に行われた。導入治療の臨床効果は, CR22例, PR (≧90%, 縮小率) 17例, pR' (≧50%) 22例, NR3例であった。切除物の組織学的検索より, GradeIV: 16例, Grade III: 4例, Grade II b: 33例, Grade II a: 4例, Grade I: 1例の結果が得られた。そして, 臨床効果と組織学的効果との間に相関がみられた。
    各々の切除量は, 導入治療の臨床効果を考慮して決定され, 4段階に分類された。grade I (外科的処置なく経過観察, あるいは生検切除) , あるいはgrade II (舌の辺縁切除, 口底および頬粘膜の表層, あるいは限局した切除, 歯肉を含めた歯槽骨切除) は, それぞれ15例であった。grade III (周囲組織を含めた舌1/3までの切除, 口底に限局したpull-through手術, 皮膚が保存された頬粘膜の切除, そして下顎管までの下顎骨辺縁切除) の手術が22例に施行され, 根治拡大手術であるgrade IVは12例に施行された。このように大多数の腫瘍は保存的に切除され, 即時再建は23例にDP皮弁が, 4例に筋皮弁が用いられた。
    対象のうち10例に局所再発がみられたが, これらのうち6例は二次的に制御し得, 最終局所制御率は93.8%であった。また全体の5年累積生存率は69.4%であった。
    口腔機能を測定したところ, 発音は36例の舌・口底癌のうち15例に障害がみられたが, 中程度ないしは強度の障害は5例にみられたにすぎなかった。味覚障害は治療と共に増悪したが, 治療後1年のうちに元のレベル近くまで回復していた。安静時唾液分泌量は徐々に低下し, 治療後1年には治療前の約半分にまで低下した。唾液分泌量の低下に伴って, 唾液粘稠度は増加し, S-IgA濃度は分泌量と同じく低下していた。これらの結果より, 化学・放射線の同時併用からなる積極的な導入治療は保存的切除を可能にし, 口腔機能障害を減じることが示された。しかし一方では, 導入治療は唾液腺機能及び味覚の低下を来し, 粘膜反応も強いことより, 用量を減じるべく工夫が必要と思われた。
  • 今井 裕, 鈴木 克昌, 佐々木 忠昭, 永島 知明, 岡部 清幸, 篠原 真, 似内 一郎, 藤田 高志, 細谷 玲子, 横倉 幸弘, 坂 ...
    1991 年 3 巻 2 号 p. 213-222
    発行日: 1991/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1977年1月より1988年12月までの12年間に獨協医科大学口腔外科を受診した下顎歯肉扁平上皮癌一次症例23例について, 臨床病態所見ならびに治療成績について検討を行い, 以下の結果が得られた。
    1.性別では, 男性16例, 女性7例 (男女比2.29: 1) で, 初診時年齢は39歳から86歳までに分布し, 平均65.0歳であった。
    2.T分類ではT456.5%, T230.4%, T18.7%, T34.3%, N分類では, N152.2%, N030.4%, N2, N3各8.7%, M分類ではM18.7%であった。
    3.13例 (56.5%) に下顎骨の吸収がみられ, その様式はerosive type 4例, invasive type 9例で, 後者に吸収範囲が大きい傾向であった。
    4.下顎骨の吸収像と臨床進行度, 浸潤様式, 核DNAパターンとは, 一定の関係がみられた。
    5.治療法は, 放射線単独7例, 手術単独, 手術+放射線, 放射線+化学療法各4例, 手術+化学療法, 手術+放射線+化学療法各2例であった。
    6.治療成績は, 5年累積生存率43.4%で, 腫瘍の進展度, 治療法の相違が予後に影響を与えたと思われた。
    7.原発巣の核DNA量は, 臨床所見ならびに腫瘍浸潤様式とよく相対し, 下顎歯肉癌においても, 悪性度の指標や予後の推測に有用となり得ることが示唆された。
  • 峯村 俊一, 武田 進, 高橋 基浩, 栗田 浩, 砂田 修, 田村 稔, 倉科 憲治, 小谷 朗, 山崎 正詞, 松尾 清
    1991 年 3 巻 2 号 p. 223-232
    発行日: 1991/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    口腔癌により, 下顎骨区域切除を伴う腫瘍切除後に, 大胸筋または広背筋の骨筋皮弁を用いて再建した6症例について検討を加えた。これらは, 4症例が新鮮進展例, 2症例が再発例であった。
    使用した骨筋皮弁は, 肋骨付大胸筋皮弁が1例, 肋骨付広背筋皮弁が2例, 胸骨付大胸筋皮弁が3例であり, 肋骨付大胸筋皮弁症例を除く5例が成功した。これらの中では, 胸骨付大胸筋皮弁が機能性, 審美性共に最も有用と思われた。
    最近, 下顎骨を含む欠損に対して, 肩甲皮弁などの微小血管外科を応用した再建法の有用性が報告されているが, 有茎骨筋皮弁も簡便で短時間に挙上が可能であり, 今後も利用価値が高いものと考える。
  • 高橋 喜浩, 水城 春美, 松島 りん太郎, 福山 義邦, 清水 正嗣, 横山 繁生
    1991 年 3 巻 2 号 p. 233-238
    発行日: 1991/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    紡錘形細胞癌は, 肉腫を思わせる像を呈する稀な型の腫瘍であり, 口腔内では, 下口唇, 舌, 口底などに多いとされている。また, 慢性腎不全患者における悪性新生物の発生率は正常人に比し高いといわれている。われわれは, 腎透析患者で40歳男性の舌に発症した紡錘形細胞癌の1例を経験した。
    1990年8月頃, 右舌縁部に腫瘤を自覚。透析時に内科医の診察を受け, 同医の紹介にて1990年8月7日右舌縁部の腫瘤形成を主訴に当科を受診した。なお, 患者は1986年4月より慢性腎不全にて透析治療中であった。
    初診時, 右舌縁に直径約17mmの有茎性ポリープ状の腫瘤を認めた。
    同年8月23日, 外来局麻下に腫瘍切除術を施行した。病理組織診断は紡錘形細胞癌であったため, 徐放性テガフール製剤 (サンフラールS) の経口投与を開始し, 同年9月14日, 全麻下に根治的右舌の部分切除を施行した。術後9カ月の現在, 再発や転移の兆候はない。
  • 松下 文彦, 水野 明夫, 若杉 正則, 式守 道夫, 小川 博
    1991 年 3 巻 2 号 p. 239-246
    発行日: 1991/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    約30年という非常に長い臨床経過を有した耳下腺腫瘍が悪性変化を示すとともに, 偶然発見された胃癌と同時発生的に重複した興味ある1症例を報告する。
    患者は76歳, 男性で, 1986年に右後頬部の自発痛を主訴に当科を受診した。右頬部から耳下腺部に巨大な腫瘤があり, 顔面神経麻痺症状がみられた。入院待ちの間に, 突然の吐血で発見された胃癌のため胃亜全摘出術を受けた後, 耳下腺腫瘍切除術を施行したが, 術後3か月で悪液質のため死亡した。耳下腺腫瘍の病理組織学的診断は, 分化の悪い (高悪性型の) 粘表皮腫であったが, 多形性腺腫内癌との鑑別診断に苦慮した。
  • 鶴巻 浩, 大橋 靖, 星名 秀行, 坂井 広也
    1991 年 3 巻 2 号 p. 247-255
    発行日: 1991/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    最近16年間に当科で経験した他臓器原発悪性腫瘍の口腔転移症例は3例で, 同期間の口腔悪性腫瘍の1.7%を占めた。
    症例1は74歳の男性で, 前立腺癌 (腺癌) の下顎骨転移であるが, 本例は口腔症状により原発巣が発見された。初診時, 下顎骨転移巣はX線写真でosteolytic changeを呈したが, 除睾術2週間後には同部に石灰化像が出現し, 以後も石灰化は進行している。また, 同1年後には右下顎部の生検で腫瘍細胞を認めなかった。
    症例2は71歳の女性で, 胃癌 (腺癌) の上顎歯肉への転移であった。
    症例3は78歳の男性で, 胸部食道癌 (扁平上皮癌) の口部咽頭への転移であった。
  • 坂下 英明, 宮田 勝, 宮本 日出, 車谷 宏, 内海 順夫
    1991 年 3 巻 2 号 p. 256-266
    発行日: 1991/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    腺房細胞癌は唾液腺に発生するまれな腫瘍であり, 全耳下腺腫瘍の2~4%を占める。
    上唇粘膜に発生した腺房細胞癌の1例を報告し, 文献的考察を行った。
    44歳の男性が右側上唇の無痛性腫脹を主訴として当科を受診した。局所のリンパ節腫脹は認められなかった。腫瘍は初診時に約20×20mmの大きさであり, 病理組織学的には腺房細胞癌であった。
    全身麻酔下に, 腫瘍を口腔内より根治的切除し, 分層植皮にて再建した。術後, 再発および転移は認めていない。
    1955年から1991年までの, 日本での文献では54例の小唾液腺由来の腺房細胞癌が認められた。好発部位は口蓋 (19例) であった。次いで, 臼後三角部 (9例) , 口唇 (7例) , 頬粘膜 (7例) , その他 (12例) に発生していた。文献例による再発率は21.6%であった。
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