最高裁判所の統計資料によれば,地方裁判所における医療訴訟の既済件数は,全体で見れば,平成18年には1,120件であったが,平成29年には753件にまで減少した。ところが,歯科事案に限って見てみると,平成18年には74件であった同件数が,平成28年には91件にまで増加し,平成29年は微減したものの88件となった。このことからも,歯科に関する医療訴訟を含む紛争のリスクは高まっていると言えるため,歯科医師にはこれまで以上にリスク管理の意識を高めることが求められる。
そこで,本稿では,①医療紛争の現状,②医療事故が発生した場合の医療機関の「過失」の考え方,③医療紛争防止のために日々の診療業務の中で求められる「記録化」と「説明」,④医療事故が発生した場合の紛争化リスクの回避・軽減に必要となる医療事故発生後の「適切な対応」について,裁判例や当職自身の弁護士としての経験に基づき,具体的に述べさせて頂く。
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