日本口腔腫瘍学会誌
Online ISSN : 1884-4995
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31 巻, 1 号
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原著
  • 森川 貴迪, 小坂井 絢子, 別所 央城, 音成 実佳, 井本 研一, 和光 衛, 野村 武史, 髙野 伸夫, 柴原 孝彦
    2019 年 31 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/22
    ジャーナル フリー
    初期舌扁平上皮癌に対する予後因子について検討が行われている。深達度は後発頸部リンパ節転移に対する予後因子として重要である。しかし,この深達度は術後の病理標本の結果に基づいており,術前より予測することは困難である。また,画像所見と病理標本との比較についての報告は少ない。本研究では初期舌扁平上皮癌の予後因子,特に深達度に着目し,画像所見と予後との関連性について明らかにすることを目的とした。  2000年4月から2016年3月までの16年間に当科で外科的切除を行った初期舌扁平上皮癌患者一次症例213例を対象とした。  性別は男性114例,女性99例。平均年齢60.4歳であった。病期はⅠ期が129例,Ⅱ期が84例であった。中央観察期間は66.2か月であった。病理組織学的深達度は平均3.3mm,蔟出は平均2.9個であった。Receiver Operating Characteristic curve解析の結果,病理組織学的深達度,蔟出の閾値は5mm,5個と設定した。  5年全生存率,無病生存率,局所制御率,頸部制御率は93.8%,79.7%,91.5%,86.4%であった。頸部制御率についての単変量解析では,病期,筋層浸潤,病理組織学的深達度,蔟出が有意な因子であった。さらに多変量解析では,病理組織学的深達度ならびに蔟出が有意な因子であった。  画像評価として,CT,MR,USの描出能は10.7%,51.3%,97.5%であった。各画像検査における深達度の検討では,US,MRと病理標本においては,有意な相関関係にあった。  深達度,蔟出は初期舌扁平上皮癌の予後因子として有用であり,画像検査としてはUSが最も有用であることが示唆された。
  • 長野 佑紀
    2019 年 31 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/22
    ジャーナル フリー
    最高裁判所の統計資料によれば,地方裁判所における医療訴訟の既済件数は,全体で見れば,平成18年には1,120件であったが,平成29年には753件にまで減少した。ところが,歯科事案に限って見てみると,平成18年には74件であった同件数が,平成28年には91件にまで増加し,平成29年は微減したものの88件となった。このことからも,歯科に関する医療訴訟を含む紛争のリスクは高まっていると言えるため,歯科医師にはこれまで以上にリスク管理の意識を高めることが求められる。  そこで,本稿では,①医療紛争の現状,②医療事故が発生した場合の医療機関の「過失」の考え方,③医療紛争防止のために日々の診療業務の中で求められる「記録化」と「説明」,④医療事故が発生した場合の紛争化リスクの回避・軽減に必要となる医療事故発生後の「適切な対応」について,裁判例や当職自身の弁護士としての経験に基づき,具体的に述べさせて頂く。
症例報告
  • 兼子 隆次, 河合 孝真, 岡部 一登
    2019 年 31 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/22
    ジャーナル フリー
    口腔癌においてG-CSFとPTHrPの同時産生腫瘍は稀である。われわれは舌癌の再発にて顕在化したG-CSFとPTHrPの同時産生腫瘍と思われる症例を経験したので報告する。症例は72歳男性で,右舌縁部の腫瘍にて当科を受診した。腫瘍は扁平上皮癌で,右頸部リンパ節に転移を認めるT3N1M0,StageⅢであった。治療は術前化学療法後に腫瘍切除術,右頸部郭清術を行った。しかし,術後2か月後に口底部から左顎下部に再発を認めた。これに対し,化学放射線療法を計画した。治療の進行に伴い感染を伴わない白血球増多を認めた。まもなく骨浸潤を伴わない高Ca血症も認めるようになった。血中G-CSF と PTHrPは高値を示した。最終的にこの治療効果は限定的であった。病勢を増してゆき,全身状態の悪化にて治療開始後8か月で死亡した。抗G-CSFモノクロナール抗体を用いた免疫組織化学染色によって摘出部と再発部の組織を調べた。これらはともに陽性を示した。以上から本腫瘍は再発後に顕在化したG-CSFとPTHrPの同時産生腫瘍と診断した。
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