日本口腔腫瘍学会誌
Online ISSN : 1884-4995
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32 巻, 1 号
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原著
  • 本田 健太郎, 酒井 克彦, 齋藤 寛一, 井口 達也, 石井 悠佳里, 中澤 和真, 大金 覚, 河地 誉, 野村 武史
    2020 年 32 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/22
    ジャーナル フリー
    摂食嚥下障害に対する評価として確立された方法は散見されるが,口腔癌術後の摂食嚥下機能障害に特化した評価法はわずかである。そのため,各施設によって評価方法が異なることで,治療によって生じた症状を正確に評価に反映できていない可能性がある。The Mann Assess-ment of Swallowing Ability-Cancer(MASA-C)は放射線単独療法もしくは放射線併用化学療法を施行されている頭頸部癌患者の摂食嚥下機能のスクリーニング検査である。24項目から構成され,摂食嚥下機能障害の重症度と誤嚥のリスクを評価することが可能である。本研究では口腔癌術後患者を対象とする摂食嚥下機能のスクリーニング検査としてのMASA-Cの有用性を検討することを目的とし,既存の摂食嚥下機能評価法として確立されている嚥下造影検査(VF)およびFunctional Oral Intake Scale (FOIS)とMASA-Cの評価の比較を行った。口腔癌患者の誤嚥を検出するための最適なMASA-Cカットオフ値は,150.0ポイントであり,感度0.89,特異度0.80,AUC 0.85を示した。また,FOISとMASA-Cでは相関係数0.491で有意差0.007であり,有意な相関関係を認めた。
    MASA-Cは,口腔癌手術後の摂食嚥下機能障害のスクリーニング検査として有用である可能性が示唆された。
  • 久保田 耕世, 伊藤 良平, 成田 紀彦, 中川 祥, 田中 祐介, 福田 はるか, 小林 恒
    2020 年 32 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/22
    ジャーナル フリー
    近年,好中球/リンパ球比(NLR),血小板/リンパ球比(PLR),リンパ球/単球比(LMR),予後推定栄養指数(PNI)などのinflammation based prognostic score(IBPS)の有用性が多くの癌腫の予後予測因子として報告されている。今回われわれは当科で2008 年から2016年に手術加療した口腔扁平上皮癌患者101例について,inflammation based prognostic scoreの再発・転移に与える影響について検討を行った。術前ならびに再発・転移時の末梢血を用いてIBPSを測定した。術前至適カットオフ値はNLR 2.65,LMR 5.38,PLR 154.32,PNI は50.70となった。無病生存率に対するlogrank検定を施行したところ,術前NLR高値群で統計学的に有意な低下を認めた。また,COX比例ハザードモデルを用いて検討したところ,単変量解析でNLRと再建の有無に有意差が認められ,また,多変量解析を施行したところ,NLRが独立した因子と認められた。また再発・転移症例について検討し,術前と再発・転移時を比較したところ,PNIの優位な低下が認められた。口腔癌手術症例において,術前の再発・転移の予測因子としてNLR,術後経過観察中の再発・転移の予測因子としてPNI が重要であることが示唆された。
症例報告
  • 藤田 善教, 明見 能成
    2020 年 32 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/22
    ジャーナル フリー
    オトガイ下皮弁は1993年にMartinらによって報告された顔面動静脈の分枝であるオトガイ下動静脈を栄養血管にもつ頸部有茎皮弁である。われわれは,口腔癌N0 症例で,長時間手術・侵襲を避けたい高齢者や基礎疾患を有する患者の比較的小範囲の欠損例に対しては,オトガイ下皮弁が有用な皮弁であると考えている。今回,2017年10月から2018年7月にかけてオトガイ下皮弁の再建を行った7例を報告する。完全生着5例,部分壊死を2例に認めたが,保存的に対処可能であった。術後14から23か月経過しているが,全例とも再発や転移を認めておらず良好に経過しており,適応を選べばオトガイ下皮弁は有用であると考えられた。
  • 田中 純平, 矢田 直美, 高橋 理, 吉賀 大午, 松尾 拡, 冨永 和宏, 吉岡 泉
    2020 年 32 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/22
    ジャーナル フリー
    多型腺癌(Polymorphous adenocarcinoma:PAC)は主に口蓋に発生するまれな小唾液腺癌である。本腫瘍は比較的均一な細胞からなるが,組織像は多彩な浸潤増殖像を呈する。われわれは上唇粘膜に発生したPACの1例を経験したので報告する。患者は69歳男性で左側歯肉唇移行部の腫瘤性病変を認めたため,当科へ紹介された。臨床所見として左側上顎歯肉唇移行部に表面性状は正常で,無痛性の境界明瞭な9×9mmの腫瘤を認めた。MRI所見にてT1強調像で中等度の高信号,T2強調像で高信号の腫瘤を認めた。全身麻酔下に左側頰粘膜腫瘍摘出術を施行した。摘出物の病理組織診断はPACであったため,前回手術の瘢痕周囲に健常組織を含めて約5mmの安全域を設計して追加切除した。術後4年経過するが,原発に再発を認めず,頸部や全身への転移もなく経過良好である。
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