日本口腔腫瘍学会誌
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32 巻, 3 号
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原著
  • 辺見 卓男, 町田 智正, 武田 宗矩, 北詰 栄里, 猪俣 徹, 石垣 佳希, 荘司 洋文, 添野 雄一, 出雲 俊之, 柳下 寿郎
    2020 年 32 巻 3 号 p. 63-70
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/22
    ジャーナル フリー
    口腔扁平上皮癌の予後判断に用いられる病理組織学的因子の一つに,浸潤様式分類がある。本邦では口腔癌取扱い規約に収載されているYK分類や,腺癌の予後指標として知られるINF,近年,口腔扁平上皮癌への適応が報告された簇出などがある。一方,AJCC 第8版では,予後に関連する因子としてWPOI-5が新規収載された。本報告ではpT1/T2舌扁平上皮癌を対象として,これら4つの浸潤様式分類に基づく判定結果を比較し,予後指標としての有用性について検討した。
    4つの浸潤様式分類に基づき3名の口腔病理専門医が独立して判定した。YK-4C,INF c,簇出5個以上,WPOI-5陽性と判定された各群では,その他の判定群と比較し高率に頸部リンパ節転移を生じ,生存率の低下を示した。従って,これら4つの判定は予後不良のリスク因子であると考えられた。一方,YK-4C群,INF c群,簇出5個以上群,WPOI-5陽性群の4群の予後を比較すると頸部リンパ節転移率,生存率に統計学的有意差はみられず,YK分類,INF,簇出,WPOI-5の予後指標としての有用性はほぼ同等であると考えられた。4つの浸潤様式分類における相互関係を検討すると,YK分類,INF,簇出には一定の相関関係が認められ,これら3つの浸潤様式分類とWPOI-5は独立していることが示唆された。同一症例に4つの浸潤様式分類を併用判定すると,YK-4C,INF c,簇出5個以上,WPOI-5陽性の判定が重複する症例が大部分であった。以上よりpT1/T2舌扁平上皮癌に対する予後判断では,浸潤様式分類は複数を併用することが望ましく,実際に併用する場合にはWPOI-5と他の3つの浸潤様式分類のいずれかを組み合わせる方法が有効と考えられた。
症例報告
  • 松尾 勝久, 喜久田 翔伍, 篠崎 勝美, 安陪 由思, 楠川 仁悟
    2020 年 32 巻 3 号 p. 71-76
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,上下顎の歯肉に大きな腫瘤形成を伴う色素性母斑の1例を経験したので報告する。
    〈症例〉43歳男性,幼少時より左側上下顎歯肉の黒色斑,また20代から同部の腫瘤形成を認めていた。2005年9月,当センター紹介受診となった。2度の受診自己中断の後に,徐々に腫瘤の増大を自覚し,2016年4月,再度受診となった。左側上下顎歯肉に表面平滑,凸凹不整,弾性硬の黒色斑を伴う分葉状腫瘤形成を認めた。パノラマX線写真,CTにて異常な骨吸収像は認めなかった。確定診断をつけるため生検を行い,病理組織診断は真皮内型色素性母斑であった。患者が治療を希望せず,無加療で現在も経過観察中である。
  • —本邦における小唾液腺腺房細胞癌に関する文献的検討—
    小畑 協一, 岸本 晃治, 小野 喜章, 河合 穂高, 柴田 茜, 奥井 達雄, 矢尾 真弓, 伊原木 聰一郎, 佐々木 朗
    2020 年 32 巻 3 号 p. 77-82
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/22
    ジャーナル フリー
    小唾液腺由来の腺房細胞癌は非常にまれな唾液腺悪性腫瘍である。今回われわれは69歳女性に発生した小唾液腺腺房細胞癌を経験したので,文献的考察を加えて報告する。患者は右側頰粘膜下に腫瘤を触知したため受診,MRIにて25×20mm大の腫瘤を認め,全身麻酔下で腫瘍切除術を施行した。病理組織学的に腫瘍は小唾液腺に連続し,漿液腺房細胞様の細胞が大部分を占めていた。術後1年8か月経過したが,再発や転移を認めていない。
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