日本口腔腫瘍学会誌
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34 巻, 1 号
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症例報告
  • 鳴瀬 智史, 森下 廣太, 大森 景介, 坂元 裕, 大鶴 光信, 梅田 正博
    2022 年 34 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/22
    ジャーナル フリー
    切除不能な下顎歯肉癌頸部リンパ節転移に対してのセツキシマブ併用FP療法中に発症した肺血栓塞栓症の1例を経験した。
    患者は57歳男性。左側下顎部の疼痛を主訴に当科を受診した。画像検査で内頸動脈を広範囲に取り巻くリンパ節転移があり,切除不能例と診断し,セツキシマブ併用FP療法中を施行した。
    途中,一過性の見当識障害および極軽度の呼吸苦があり,造影CTで肺動脈に複数個の微小血栓を認めた。ただちに化学療法を中止し,抗血栓療法を開始した。開始後,3週間で血栓の消失を確認したため,根治手術を施行した。術後4年9か月経過し,腫瘍の再発なく,また血栓の再形成もなく経過良好である。
  • 榎木 祐一郎, 浅野 悠, 勅使河原 大輔, 島田 祐樹, 塘田 健人, 去川 俊二, 蝦原 康宏, 中平 光彦, 菅澤 正
    2022 年 34 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/22
    ジャーナル フリー
    リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica:PMR)は悪性腫瘍との関連性のある原因不明の慢性炎症疾患である。われわれは,口底癌の手術後に肩関節の疼痛と慢性炎症反応を認め,PMRを発症した症例を経験したので報告する。症例は,81歳女性で口底の潰瘍を主訴に当科受診した。口底癌SCC cT4aN0M0の診断で,口底部悪性腫瘍切除術,肩甲骨皮弁再建術を施行した。手術後,頻回なる発熱と持続的なC反応性蛋白(CRP)が高値の炎症反応を認めたが,明らかな感染巣はなかった。手術後69日目に白血球数は7,990/μl,CRPは20.724mg/dlと強い肩関節痛を認めたため,自己免疫疾患の可能性を考えて精査した。自己免疫抗体は陰性で,赤沈は103mm/hと亢進し,PMRの診断基準を満たし,PMRと診断した。プレドニゾロン(PSL)15mg/dayを開始し,疼痛は著明に改善した。現在PSLは8mg/dayにて,再燃なく経過は良好である。PMRは,周術期の侵襲や誤嚥性肺炎と症状が類似するため診断に苦慮するが,早期診断と治療で著明に改善が得られる疾患であり,併発する可能性を留意しておく必要がある。
  • 原口 和也, 土生 学, 矢田 直美, 佐藤 由紀子, 古田 功彦, 冨永 和宏
    2022 年 34 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/22
    ジャーナル フリー
    高悪性度転化(high-grade transformation:HGT)は,腺様囊胞癌(adenoid cystic carcinoma:AdCC)ではまれな現象であり,HGTにより悪性度の高い状態となり,典型的なAdCCと比較して,頸部リンパ節転移や遠隔転移を生じる傾向が高い。患者は69歳女性で,口蓋正中部の腫脹の精査を主訴に受診した。初診時,口蓋正中やや左側寄りに30×15mm大の広基性腫瘤を認めた。生検の結果,口蓋腺より発生した唾液腺悪性腫瘍との診断であったが,確定診断には至らなかった。そのため,全身麻酔下に全切除術を施行した。初診から切除までの間にも腫瘍は著明な増大を示した。切除標本は,定型的なAdCCの部分と,それに接して存在するHGT部分の2つの要素で構成されており,急速に増大した部分は,病理組織学的にHGT-AdCCで占められていた。切除標本にて断端陽性の所見を認めたため,術後放射線照射を行い,局所においては占拠性病変の出現はなかったが,その後の画像評価にて転移性肺腫瘍を認め,同時化学放射線療法を施行するも,死亡の転帰をとった。
  • 中井 裕美, 宮崎 晃亘, 土橋 恵, 加藤 大貴, 金子 剛
    2022 年 34 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/22
    ジャーナル フリー
    囊胞腺腫はまれな唾液腺良性腫瘍であり,単房性または多房性の囊胞からなる。全小唾液腺腫瘍の2-4.7%を占め,通常口唇・口蓋・頰粘膜に生じ,臼後部での発生はまれである。今回83歳男性の左側臼後部に生じた囊胞腺腫について報告する。臨床所見は15×18mm大,弾性軟,表面平滑で一部青紫色を呈する境界明瞭な腫瘤を認めた。MRIで腫瘍は境界明瞭で周囲に造影効果を伴う腫瘤として描出された。臨床診断は良性腫瘍。全身麻酔下に腫瘍切除術を行い,病理組織学診断は囊胞腺腫であった。3年経過したが,再発は認めていない。
  • 佐々木 剛史, 松木 綱大, 星元 康嵩, 田村 優志, 内堀 雅博, 鈴木 崇嗣, 伊澤 和三, 青木 隆幸, 太田 嘉英
    2022 年 34 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,PET検査にて脊椎および骨盤骨髄にびまん性のFDG集積を認めたG-CSF産生上顎歯肉癌症例を経験したので報告する。患者は64歳男性。左側上顎歯肉腫瘤を主訴に当科を受診した。生検にて上顎歯肉扁平上皮癌と診断された。白血球および血清G-CSF値の著明な上昇と,FDG-PET検査にて,脊椎および骨盤骨髄にびまん性のFDG集積を認めた。G-CSF産生腫瘍の疑いで手術を施行したところ,術後に白血球,血清G-CSF値とも速やかに低下した。術後5か月で頸部再発を認め,術後11か月で死亡した。FDG-PET所見はG-CSF産生腫瘍の診断の一助になると考えられた。
  • 大森 景介, 大鶴 光信, 片瀬 直樹, 森下 廣太, 柳本 惣市, 林田 咲, 梅田 正博
    2022 年 34 巻 1 号 p. 39-48
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/22
    ジャーナル フリー
    EBV陽性粘膜皮膚潰瘍(EBVMCU)は,2010年に口腔咽頭粘膜・皮膚・消化管粘膜に生じた一連のEBV陽性の潰瘍性病変としてDojcinovらにより初めて提唱され,2017年の第4版WHO分類にて独立した予後良好な疾患群として新たに分類された。今回われわれは,難治性の口腔粘膜潰瘍を主訴に当科を受診し,EBVMCUと診断・加療を行った3例を経験したので,本邦報告例25例の文献的考察とともに報告する。
    症例1:75歳,女性。左上顎大臼歯部歯肉に生じた潰瘍を主訴に受診。関節リウマチに対しMTXにて加療中であった。症例2:67歳,男性。左側下顎歯肉に生じた潰瘍を主訴に受診。関節リウマチに対しMTXにて加療中であった。症例3:77歳,女性。右側上顎前歯部歯肉に生じた潰瘍を主訴に受診。関節リウマチに対して加療中であった。
    臨床診断は悪性腫瘍の疑いが2例,重症口内炎の疑いが1例であったが,慎重な病歴の聴取と生検により3例ともEBVMCUの確定診断が得られた。いずれの症例もMTXの休薬を行い病変の消失を認めた。
  • 陶山 弘暉, 徳久 美都子, 鳴瀬 智史, 柳本 惣市, 梅田 正博, 岡野 慎士, 六反田 賢
    2022 年 34 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/22
    ジャーナル フリー
    血管平滑筋腫は平滑筋細胞に富む四肢に多く,口腔領域の発生は比較的まれである。今回口蓋に発生した血管平滑筋腫を経験したので報告するとともに,文献的に考察した。
    症例は72歳男性で,口蓋の無痛性腫脹を主訴に当科を紹介された。肉眼的に硬口蓋に12×15mmの境界明瞭な弾性軟の結節病変を認めた。良性腫瘍の診断のもと切除が行われた。病理組織学的診断は血管平滑筋腫であった。
    本症例も含めた92例の本邦報告例について検討した。男性に多く,約2/3が口蓋または口唇に発生し,組織型は静脈型が多かった。術前診断は困難で,術後組織学的にさまざまな免疫染色を施した上で最終診断が下されていた。治療法としては全例に手術が行われ予後は良好であった。
  • 古川 浩平, 鳴瀬 智史, 津田 翔真, 片瀬 直樹, 柳本 惣市, 梅田 正博
    2022 年 34 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/22
    ジャーナル フリー
    ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)はランゲルハンス細胞がモノクローナル性に異常増殖する稀な疾患である。今回われわれは,開口障害を伴ったLCHの1例を経験したため報告する。
    患者は8歳女児で開口障害を主訴に来院した。造影CTおよびMRIで左側頭骨および頰骨に骨破壊を伴う腫瘍性病変を認め,FDG-PET/CTで左側側頭部および複数の頸部リンパ節にFDGの集積を認めた。全身麻酔下に側頭部腫瘍の生検を施行し,LCHの病理組織学的診断を得て,画像検査と併せLCH(多臓器型)と診断した。診断後より多剤併用化学療法を54週間施行し,完全寛解の効果判定を得た。化学療法終了後3年経過し,再発なく経過良好である。
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