日本口腔腫瘍学会誌
Online ISSN : 1884-4995
Print ISSN : 0915-5988
ISSN-L : 0915-5988
34 巻, 3 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
症例報告
  • 佐藤 昌, 伊澤 和倫, 平井 秀明, 原田 浩之
    2022 年 34 巻 3 号 p. 123-129
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/22
    ジャーナル フリー
    顎口腔領域への転移性腫瘍はまれであり,口腔悪性腫瘍の約1%とされている。今回,顎口腔領域への転移性腫瘍例の臨床病理学的特徴と予後について検討した。
    2014年6月から2020年3月までに顎口腔領域の転移性腫瘍6 例(男性5例,女性1例,51歳〜89歳,中央値72歳)について検討した。原発臓器は肺が5例,大腸が1例であった。組織型は腺癌3例,扁平上皮癌,大細胞癌,小細胞癌が各1例であった。顎口腔領域の転移部位は歯肉4例,舌と咬筋が各1例であった。1例は原発巣が判明する前に口腔の転移性腫瘍を認めた。口腔の転移性腫瘍に対し,1例は姑息的外照射を施行した。1年生存率は16.7%であった。
    口腔領域の転移性腫瘍は予後不良であり,原疾患の状態およびQOLを考慮する必要がある。
  • 柳生 貴裕, 下村 弘幸, 玉置 盛浩, 山川 延宏, 上田 順宏, 下村 都, 仲川 洋介, 桐田 忠昭
    2022 年 34 巻 3 号 p. 131-136
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/22
    ジャーナル フリー
    多形腺腫由来癌は耳下腺に好発し,その癌腫成分の大半は唾液腺導管癌や腺癌not otherwise specified (NOS)である。そのため,多形腺腫由来筋上皮癌が小唾液腺に発生するのは極めてまれである。
    今回われわれは,若年男性の口蓋に発生した筋上皮癌を癌腫成分とする多形腺腫由来癌の1例を経験したので報告する。患者は35歳男性,左側口蓋部の無痛性腫脹を主訴に当科を受診した。MR画像では左側口蓋部に境界明瞭で,T1強調像で内部均一な筋肉と同程度の信号強度,T2強調像で内部不均一な中等度〜高度の信号強度を呈した腫瘤を認めた。生検では多形腺腫が疑われた。全身麻酔下に口蓋粘膜に5mmの安全域を設け,深部の筋肉と骨膜を含めて腫瘍を切除した。切除標本にて,筋上皮癌を癌腫成分として含む多形腺腫由来癌との病理組織診断を得た。切除断端に腫瘍細胞の露出はみられなかった。術後に行った頸部エコー,FDG-PET CTでは頸部リンパ節転移や遠隔転移を示唆する所見はみられなかった。拡大切除や放射線療法などの追加治療は行わず,患者の同意のもと経過観察の方針となり,術後11年経過するが再発,転移は認めず経過良好である。
  • 後藤 雄一, 今村 晴幸, 坂元 亮一, 内野 祥徳, 比地岡 浩志, 杉浦 剛
    2022 年 34 巻 3 号 p. 137-143
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/22
    ジャーナル フリー
    症例:60歳代女性。初診時,左側下顎歯肉に周囲わずかに硬結を伴う25×30mm程の潰瘍形成を認めた。画像検査および病理組織学的検索により,左側下顎歯肉扁平上皮癌(cT2N2bM0)と診断した。全身麻酔下に保存的左側全頸部郭清術および左側下顎辺縁切除術を行った。術中,静脈角付近に直径5mm程度の脈管を認め,絹糸にて結紮した。術翌日より経鼻栄養を開始した。持続吸引装置の排液は淡血性であり,1日量は徐々に漸減した(術翌日:228ml,2日目:49ml,3日目:24ml)。術後2日目夜より徐々に呼吸苦を認め,術後3日目の胸部X線撮影にて,左側肺の不透過性亢進,横隔膜角の鈍化および縦隔の偏位を認めた。呼吸器内科受診し,左側胸腔ドレナージを施行。ドレーンより乳白色の胸水を多量に認めた。左側乳糜胸と診断。3日間の絶食と末梢静脈栄養を行った後,脂肪をほぼ含まない成分栄養剤を2週間経口投与した。ドレーンは12日間留置した。この間,胸腔ドレーンからの排液増加はほぼ認めなかった。胸腔ドレナージ後,呼吸苦および乳糜胸水は著明に改善した。
  • 中西 環, 辻 要, 松田 彩起子, 渡邊 信也, 吉田 博昭, 井関 富雄
    2022 年 34 巻 3 号 p. 145-150
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/22
    ジャーナル フリー
    囊胞腺癌は全唾液腺腫瘍の0.2%未満を占めるまれな悪性腫瘍である。今回われわれは硬口蓋に発生した囊胞腺癌の1例について報告する。患者は63歳,男性で,右側硬口蓋部の2.5mm大の腫瘤の精査目的で当科を受診した。乳頭腫の臨床診断のもと生検を施行した結果は囊胞腺癌であり,画像検査で頸部リンパ節転移および遠隔転移は認めなかった。囊胞腺癌の診断のもと,全身麻酔下に腫瘍切除を施行した。術後9年経過した現在,再発・転移は認めず経過良好である。
feedback
Top