日本口腔腫瘍学会誌
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6 巻, 1 号
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  • ―腫瘍浸潤様式ならびに細胞外基質出現様式について―
    篠原 正徳, 原田 猛, 中村 誠司, 嶋田 誠, 深川 淳至, 池辺 哲郎, 岡 増一郎
    1994 年 6 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    腫瘍の下顎骨への浸潤状態と組織学的腫瘍浸潤様式ならびに腫瘍における細胞外基質出現状態との関連性について下顎歯肉扁平上皮癌37症例で臨床的, 免疫組織学的に検索した。
    腫瘍の下顎骨への浸潤状態については, レントゲン検査による下顎骨の吸収様式と吸収程度について検索した。下顎骨の吸収様式と吸収程度は Swearingen と戸塚の分類を用いた。組織学的腫瘍浸潤様式は山本, 小浜の分類を用いた。さらに, MIIIを細胞外基質出現状態によってMIIIaとMIIIbに細分類した。
    細胞外基質についてはラミニン, タイプIVコラーゲン, ヘパラン硫酸プロテオグリカン, ファイブロネクチン, テネイシン, ビトロネクチン, デコリンについて免疫組織学的に検索した。
    結果は以下のごとくであった。1) Tの程度と腫瘍の下顎骨への浸潤状態の間に明らかな関連性が認められた。2) 組織学的腫瘍浸潤様式と腫瘍の下顎骨への浸潤状態の間に関連性が認められた。3) レントゲン検査による下顎骨の吸収様式と細胞外基質出現状態との間に関連性が認められた。
    これらの結果より, これら因子の詳細な解析によって下顎歯肉扁平上皮癌の治療計画を決めるための有用な情報が与えられることが示唆された。
  • ―80歳以上の14症例について―
    鶴巻 浩, 大橋 靖, 星名 秀行, 高木 律男, 中野 久
    1994 年 6 巻 1 号 p. 11-21
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1974年5月から1992年9月の18年5か月間に当科を受診した80歳以上の頭頸部癌14症例について臨床的に検討を行った。これらの内10例は最近5年間に受診したものであった。1例は異時性の口腔多発癌症例 (下顎歯肉と頬粘膜) であった。男性は9例, 女性は5例。発生部位は頬粘膜5例, 上顎歯肉3例, 下顎歯肉, 上顎洞, 舌が各2例, 顎下腺が1例であった。14癌 (13名) は組織学的に扁平上皮癌であり, 1名は腺癌であった。Stage Iは2例, Stage IIIは4例, Stage IIIは2例, Stage IVは7例であった。主たる治療として外科療法が行われたものは7名 (8癌) , 放射線療法が行われたものは6名であった。1名はアルコール中毒で化学療法のみが行われた。早期癌症例はすべて根治治療が可能であったが, 進展症例では根治治療を行うことは困難であった。但し, 準根治治療を受けた症例でも経過は良好であった。重篤な治療継発症はなかったが, 低蛋白血症, 貧血は高頻度にみられた。Kaplan-Meier法による1年, 3年, 5年累積生存率はそれぞれ68.6%, 54.9%, 36.6%であった。
  • 有吉 靖則, 島原 政司, 橋口 範弘, 上杉 康夫, 平石 久美子, 楢林 勇
    1994 年 6 巻 1 号 p. 22-30
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    頭頸部腫瘍の画像診断において, X線CTと共にMRIは, 必須の検査法となりつつある。特にMRIは軟組織のコントラスト分解能に優れ, 頭蓋底の骨, 含気腔周囲の骨および金属補綴物よりのアーチファクトが少ないことより, 口腔外科領域への応用は非常に有用であると思われる。しかし一方, MRIは疾患特異性は意外に低いとされており, その向上および, 病巣検出能の向上のため著者らは, 頭頸部腫瘍10症例に対してGd-DTPA (gadorinium-diethylenetriamine pentaacetic acid) による造影MRIを施行し, その有用性の検討を行い, 以下の結論を得た。
    1.扁平上皮癌症例においては, 軽度の造影効果を認め, 造影後, その信号強度は脂肪よりやや低信号強度となった。
    2.今回の症例においては, 造影前T1強調像, T2強調像にて局在を捉えることができなかった腫瘍は, 造影像にてもその局在を捉えることができなかった。
    3.上顎洞扁平上皮癌症例において, 造影像にて容易に腫瘍と洞内の粘液貯留との鑑別を行うことができた。
    4.動きのアーチファクトの影響を受けやすい舌扁平上皮癌症例においてT2強調像同様のコントラスト良好な, かつT1強調像同様の鮮明な画像を得ることができた。
    5.腺様嚢胞癌再発症例において, 腫瘍は脂肪変性組織により囲まれているため, 造影剤投与によりかえって, 周囲組織とのコントラストは低下した。
  • 今井 裕, 佐々木 忠昭, 永島 知明, 安田 真一, 朝倉 昭人
    1994 年 6 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    口腔扁平上皮癌22例に対し, EGFの発現と核DNA ploidy patternの関連を, 臨床進行度ならびに組織学的悪性度の観点より検討し, 以下の結果が得られた。
    1.腫瘍の進展 (T) とEGF発現ならびにDNA ploidy patternとの関連は明確でなかった。
    2.所属リンパ節転移 (N) とEGF発現ならびにDNA ploidy patternは良く相関し, これらの関係を知ることは, 後発リンパ節転移の推測にも有用であると思われた。
    3.組織学的悪性度においてもEGF発現とDNA ploidy patternは関連がみられた。
    4.浸潤様式, 浸潤程度の両因子とも, EGF発現とDNA ploidy patternとの相関がみられ, 特にEGFが強く出現する癌は, DNA量が増加し, 浸潤増殖する可能性が示唆された。
  • 永田 睦, 北野 元生, 仙波 伊知郎, 伊東 隆利
    1994 年 6 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    Squamous odontogenic tumor様増殖 (SOTP) は1979年, Wrightにより報告され, Squamous odontogenic tumor (SOT) との病理組織学的な区別がつき難い病変である。
    今回, われわれは42歳女性の下顎小臼歯部の歯根嚢胞にみられたSOTPを, 病理組織学的所見とともにその概要を報告した。
    SOTが腫瘍性の性格を有するのに対し, SOTPは過形成的または過誤的病変であると考えられているが, 本病変のより詳細な性格を確定するうえで, 歯原性上皮の多分化能を考慮に入れた検索が必要であると思われた。
    本症例は, 本邦におけるSOTPの最初の報告例である。
  • 吉田 真澄, 桐田 忠昭, 大儀 和彦, 藪内 久, 土田 雅久, 上林 豊彦, 杉村 正仁, 吉村 淳, 中島 祥介, 永吉 純一, 岩井 ...
    1994 年 6 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    近年, 癌の診断技術と治療の発達により, 重複癌の発見頻度は増加している。今回われわれは, 口底 (扁平上皮癌) と腎 (腎細胞癌) , 肝 (肝細胞癌) の同時性三重複癌の一症例を経験したので報告する。症例は75歳男性で腎および肝腫瘍手術目的のため当院泌尿器科に入院中の1991年4月18日, 左口底から歯肉にかけての有痛性の潰瘍を主訴に紹介受診した。左口底癌を疑い, 組織生検を施行, 扁平上皮癌 (T2NOMO) の診断を得た。全麻下にて, 口底腫瘍切除術, 下顎骨辺縁切除術, 右腎根治的全摘出術, S6肝区域切除術を施行し, また術後補助療法として放射線療法, 化学療法を併用施行した。以降, 当科, 泌尿器科, 腹部外科にて経過観察中であるが, 術後2年3か月現在, 再発, 転移なく経過良好である。
  • 荒谷 恭史, 市川 健司, 仁井内 徹夫, 宮内 忍, 吉賀 浩二, 高田 和彰
    1994 年 6 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 1994/04/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    下顎骨に発生したセメント質骨形成線維腫の2進展例を報告した。症例1は, 46歳の女性の6~8部に全体としてX線不透過性の病変として見出された。また, 症例2は, 15歳の女性の54部に見出された明瞭な境界を持つX線透過性病変であった。病理組織学的には, それぞれセメント質形成線維腫および化骨性線維腫と診断され, 摘出術と周囲骨の掻爬, 削除による外科的治療が行われた。その際, 術後の病的骨折など合併症を予防するため, 下顎皮質骨をできる限り保存した。現在まで再発はなく満足すべき結果を得ている。
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