日本口腔腫瘍学会誌
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6 巻, 2 号
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  • 林 孝文, 伊藤 寿介, 加藤 徳紀, 中山 均, 中村 太保, 新垣 晋, 星名 秀行
    1994 年 6 巻 2 号 p. 55-65
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1991年4月から1993年10月までの間に頸部郭清術を受けた口腔扁平上皮癌24症例に対し, 頸部リンパ節転移診断を目的として, 術前の臨床判定, X線CT, 10MHz探触子による高分解能の超音波断層撮影 (Ultrasonography, 以下US) を施行した。これらの所見を頸部郭清標本の病理組織学的検索結果と比較検討した。われわれは, USにおいてリンパ節の短径が8mm以上か, あるいは正常な高エコー構造, すなわちechogenic hilusを除くリンパ節実質部分が均一な低エコーでない場合に, 転移陽性と判定した。症例単位でのaccuracyは, US (96%) が臨床判定 (75%) およびX線CT (88%) を上回る成績を示した。またリンパ節単位では, USのsensitivity, specificity, accuracyは, それぞれ86%, 96%, 93%であった。病理組織学的転移陽性リンパ節56個をretrospectiveにUS像と照合した結果, 内部エコー所見を判定基準に採用することで, 短径8mm未満の16個の転移陽性リソパ節を検出しえた。本研究から, 高分解能の探触子を使用して頸部リンパ節転移を診断する場合, 判定基準に内部エコー所見を加えるべきと考える。
  • 野口 誠, 小浜 源郁, 関口 隆, 仲盛 健治, 平塚 博義, 永井 格
    1994 年 6 巻 2 号 p. 66-73
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1976年から1992年までの過去16年間に当科で加療した節外型頸部リンパ節転移を伴った口腔粘膜癌61例について臨床病理学的検討を行った。
    一次郭清例は40例で, 後発転移により頸部郭清を行ったものは21例であった。転移陽性リンパ節は多数個に及ぶものが多く認められたが, 節外型リンパ節に限ると61例中54, 約9割の症例で1個ないし2個であった。節外型リンパ節がみられた転移レベルをみると, レベル2以上に及んだものが31例にみられた。また, 頸部再発がみられた12例中10例でレベル2に節外型リンパ節がみられた。
    以上よりレベル2における転移リンパ節の早期発見が重要と思われた。また, 節外型症例に対しては後照射などの補助療法を考慮する必要があると考えられた。
  • 芝 良祐, 迫田 隅男, 有馬 良治, 鹿嶋 光司
    1994 年 6 巻 2 号 p. 74-77
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    UICCのTNM分類 (1987年) をそのまま下顎歯肉癌に適用する場合, 歯肉は比較的薄い組織のために腫瘍組織が骨に到達するのは速やかで, 多くの症例がT4に分類されてしまう恐れがある。
    これを是正するため, T4に対する種々の分類基準が提案されている。
    当科で治療を行った下顎歯肉扁平上皮癌新鮮症例26例を対象として, (1) UICCのオリジナルT分類基準, (2) 修正T分類基準A (腫瘍組織が歯槽骨を越えて浸潤している場合をT4とする日本頭頸部腫瘍学会提案の基準) , および (3) 修正T分類基準B (腫瘍組織が下顎管に到達している場合をT4とする基準) の3種類の基準で分類し, 各基準の妥当性を検討した。
    修正T分類基準Bは, 症例分布のバランスがよく, Kaplan-Meier法による累積生存率ではT2とT3およびT2とT4の間にそれぞれ有意差が見られた (10grank法, P<0.05) 。
    以上の結果, 修正T分類基準Bは他の2つの分類基準よりも実際的であると考えられた。
  • 長田 哲次, 大関 悟, 笹栗 正明, 田代 英雄
    1994 年 6 巻 2 号 p. 78-85
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    遊離前腕皮弁による口腔再建を16例に行った。症例は男性12例女性4例で年齢は43歳から78歳であった。原発巣は舌, 頬粘膜, 口底が各4例, 口峡咽頭3例, 下顎歯肉1例であった。組織型は扁平上皮癌が14例, 粘表皮癌と腺様嚢胞癌が各1例であった。術後の経過は14例が完全生着であったが, 2例は全壊死となった。全壊死はそれぞれ動脈血栓と静脈血栓に因るものであった。動脈血栓は術前治療に5-FUの動注を行った不適当な血管を吻合血管として用いたことや, 動脈吻合後の再クランプ, 血管への圧迫等が考えられた。静脈血栓は創閉鎖時の血管の捻れにて生じた。
    前腕皮弁は薄く柔軟性に富み, 大きさとデザインが比較的自由であるため, 粘膜の欠損が比較的広いものの, あまり大きな厚みは必要としない欠損部の再建に適しており, 特に, 可動性が要求される舌, 口底部や, 形態の複雑な頬粘膜から日後部, 口峡咽頭などの再建に有用と思われた。
  • ―当科における80歳以上の15症例を対象として―
    柳澤 繁孝, 清水 正嗣, 松島 凛太郎, 小野 敬一郎, 水城 春美
    1994 年 6 巻 2 号 p. 86-94
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    医療技術の向上に伴って, 従来では不可能であった高齢癌患者の根治手術を可能にした。一方, 特に目立った既往疾患や検査異常を示さない症例においても重篤な合併症を来すこともまれではない。高齢者においては器官と組織の耐容性は低下し, また生理的年齢と暦年齢が必ずしも一致していない。
    対象は80歳以上の超高齢者口腔癌患者15人である。多くは扁平上皮癌と診断された。病期ではstage IIIが5例, stage IVが2例であった。多重癌は同時多発癌2例, 異時性重複癌4例で多重癌の比率は40%であった。主な既往疾患は虚血性心疾患, 肺腺維腫, 脳循環障害が各2例他であった。心電図異常の認められなかったものは3例に過ぎなかった。
    治療法は我々の高齢者癌治療指針に基づいて根治的外科療法を3例に, 放射線を主体として化学療法と限定的な手術療法を行ったもの8例, 姑息的な治療を4例に実施した。治療成績では手術症例において全3例はとも制御し, 放射線治療ではCRは3例, PRは5例である。ただし, 放射線治療にて局所制御できなかったものの1年以上生存したものが3例で最長は30ヵ月経て坦癌生存した。姑息的な治療ではいずれも腫瘍の残存を認めた。
    治療中の合併症は手術例では心筋梗塞と頻発する心室性期外収縮各1例がみられた。意識障害は3例, 肺腺維症は2例であった。
    高齢者の治療にさいして, 根治手術可能の症例にはもちろん手術を実施して腫瘍の制御をはかるべきである。また, QOLの点から積極的な放射線治療は高齢者においてはその意義が高くなるものと思われた。
  • 佐藤 徹, 石橋 克禮, 成瀬 裕久, 永盛 孝, 山近 重生, 浅田 洸一
    1994 年 6 巻 2 号 p. 95-100
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    根尖病巣より発生したと思われる下顎骨中心性癌の1例を報告する。症例は48歳の日本人女性で, 左下唇の知覚異常を主訴に紹介来科した。左下顎小臼歯部から大臼歯部歯肉頬移行部に硬い腫瘤を触知するも, 口腔粘膜に異常は認めない。X線写真では5の根尖を中心に境界不明瞭な透過像を認める。紹介医にて撮影された6年4か月と3年4か月前のオルソパントモX線写真では, 同歯に根尖病巣と思われる境界明瞭な小透過像を認める。生検により扁平上皮癌の診断を得た。全身精査の結果, 他に原発巣が見あたらないため, 左下顎骨区域切除と全頸部郭清術を施行した。術後1年3か月で再発や転移の兆候はない。切除物の病理検索にて, 腫瘍は5の根尖周囲から頬側皮質骨を破壊して頬部軟組織に及んでいた。しかし粘膜上皮はまったく正常で, 深部の腫瘍と接している部分も認めなかった。組織学的には歯根嚢胞が存在した証拠は得られず, リンパ節転移はなかった。
  • 石川 好美, 大村 進, 青木 紀昭, 斎藤 友克, 碓井 貞彦, 小野 繁, 藤田 浄秀
    1994 年 6 巻 2 号 p. 101-108
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    われわれは, 顎関節部に発生した骨肉腫の切除により生じた顎顔面の変形を2次的に再建した症例について報告する。
    症例は38歳女性で, 1983年左側顎関節部に生じた骨肉腫を切除した結果, 下顎第一小臼歯から顎関節部までと上顎骨の一部ならびに頬骨弓に骨欠損が生じた。さらに術後照射により頬部皮膚が壊死に陥り欠損したため上顎洞が露出してしまった。その状態で5年間経過観察した後, 1988年にまず皮膚欠損を広背筋皮弁で閉鎖し, 翌1989年にはマンディブラートレイと腸骨の海綿骨を用いて下顎骨の再建を行った。そして1990年には, 顔面神経麻痺に対する形成手術を行った。すなわち眼瞼下垂に対しては眼瞼形成術を行い, 口角下垂に対してはマルレックスメッシュを用いて口角挙上手術を行った。
    これら一連の手術により顔貌の対称性が得られ, 患者のQOLが向上した。
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