日本口腔腫瘍学会誌
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8 巻, 3 号
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  • 李 翠英, 岡本 吉史, 大村 仁利, 森 昌彦
    1996 年 8 巻 3 号 p. 115-124
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    唾液腺の単形性腺腫 (5例) 及び多形性腺腫 (21例) についてケラチンモノクロナール抗体を用いて免疫組織化学的検索を行った。
    ケラチンはtype I, type IIに分けられ, type IにはK1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8が属し, type IIにはK9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 20が含まれる。今回は, モノクロナール抗体K4, 7, 8, 10, 13, 17, 18, 19, 20とKL1, K8.12を使用した。正常唾液腺介在部上皮と基底細胞腺腫の腺管様細胞内側上皮細胞と多形性腺腫の腺管様細胞内側細胞ではK8, 18のケラチンペア所見が見られた。このことから, 従来から言われていた唾液腺腫瘍の介在部細胞由来説が考えられた。
  • ―基底細胞および粘膜固有層における変化について―
    美島 健二, 堀内 敬介, 桐田 忠昭, 山本 一彦, 杉村 正仁, 市島 國雄
    1996 年 8 巻 3 号 p. 125-135
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    舌縁白板症の異型度の評価, 特に基底細胞と, 粘膜固有層における変化を免疫組織化学的に検討した。
    症例は, 臨床的に舌縁部白板症と診断された52例 (異型無し; 12例, 軽度異型; 18例, 中等度異型; 14例, 高度異型; 5例, 初期浸潤癌; 3例) および対照として, 刺激性線維腫と浸潤癌の各10例を対象とした。組織学的には異型度点数化の試み, および浸潤リンパ球程度と基底膜消失程度について検索し, また免疫組織学的には上皮因子に対して, Ki-67, p53, glutathione S-transferase π (GST-π) , 宿主因子に対しては, UCHL-1, L-26, HLA-DR, type IV collagenに対する抗体を用いた検索を行った。
    異型度の点数は, 初期浸潤癌症例を除き, 通常の異型度評価と一致して上昇していた。また異型度の上昇と相関した因子は, 上皮ではKi-67陽性細胞の不規則配列化であり, 宿主ではリンパ球浸潤, 特にT細胞の増加と, 基底膜type IV collagenの消失であった。HLA-DRは白板症と浸潤癌においては刺激性線維腫と比べて顕著に減少していたが, 異型度との相関は見られなかった。
    以上の結果より, 異形性変化とこれに引き続く悪性化は, 基底細胞の増殖異常と宿主の局所免疫機能の異常とが関連して進行するものと思われた。
  • 鄭 漢忠, 北田 秀昭, 榊原 典幸, 山下 知巳, 牧野 修治郎, 佐藤 明, 野谷 健一, 福田 博, 中村 博行, 喜田 正孝
    1996 年 8 巻 3 号 p. 136-142
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1990~1993年までの間に当科で根治的に治療した上顎歯肉扁平上癌一次例43例の原発部制御率, 頸部制御, 5年累積生存率について検討した。
    病期分類はI期: 4例, II期: 13例, III期: 9例, IV期: 17例であった。原発部亜分類では前方型3例, 側方型29例, 後方型11例であった。初回治療法は手術単独11例, 手術を主体にした複合療法27例, 放射線単独5例であった。原発部制御率は手術症例で65.8%, 放射線単独で20%であった。側方型のT4症例ならびに後方型の原発部制御率は不良であった。原発部制御率を向上させるためには, 口外法によるアプローチが必要であり, 放射線の併用が必須であると思われた。頸部の評価が可能であった6例8側中4例6側に頸部制御が得られた。これら4例中2例は反対側頸部非制御, 2例は遠隔転移死であった。また6例中5例は両側転移であった。これらのことから, 初診時頸部転移を認める症例や側方型のT4症例では, 原発部の手術と同時に予防的に健側あるいは両側の頸部郭清術を行うことも必要であると思われた。5年累積生存率は手術症例で50.2%, 全例で42.9%であった。
  • ―補助療法併用の有効性について―
    吉田 俊一, 小宮 善昭, 内田 育宏, 岩本 昌平
    1996 年 8 巻 3 号 p. 143-147
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1978年から1994年までに都立駒込病院口腔外科でRa針組織内照射を実施した舌癌N0症例53例を対象とした。Ra針に外部照射または化学療法を併用することの有効性を検討するため, 対象をRa針単独群, 外部照射を平均26.1Gy併用した外部照射併用群, CDDP, BLM, MTXなどを併用した化学療法併用群の3群に分けて, 後発転移, 局所再発, 放射線障害, などについて検討した。Ra針単独群は34例 (T1: 8, T2: 24, T3: 2) , 外部照射併用群8例 (T1: 1, T2: 6, T3: 1) , 化学療法併用群11例 (T1: 4, T2: 6, T3: 1) であった。後発転移はRa針単独群が34例中9例, 外部照射併用群が8例中1例, 化学療法併用群が11例中3例で外部照射併用群が良好であった。局所再発はRa針単独群が34例中2例, 外部照射併用群が8例中1例, 化学療法併用群が11例中1例と併用効果は認められなかった。放射線障害は, Ra針単独群が34例中2例, 外部照射併用群が8例中2例, 化学併用群で11例中0例で外部照射併用群が障害が多い傾向を認めた。
  • 第2報: 治療および予後
    有末 眞, 柴田 敏之, 足利 雄一, 小野 貢伸, 藤原 敏勝, 戸塚 靖則, 野谷 健一, 福田 博, 飯塚 正, 雨宮 璋
    1996 年 8 巻 3 号 p. 148-160
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1967年8月から1992年7月までの25年間に, 北海道大学歯学部口腔外科において経験した口腔の小唾液腺腫瘍157例の治療ならびに経過について検討し以下の結果を得た。
    1.良性腫瘍の94例の治療は, 切除70例, 摘出23例, 凍結手術1例であった。
    2.良性腫瘍の治療の結果では, 多形性腺腫50例中3例に再発が見られた。
    3.悪性腫瘍の63例の治療は, 手術単独41例, 手術+放射線11例, 手術+放射線+化学療法1例, 放射線単独7例, 放射線+化学療法3例であった。
    4.悪性腫瘍の累積生存率は5年, 10年, 15年, 20年がそれぞれ76.9%, 63.6%, 44.0%, 32.1%であった。
    5.悪性腫瘍の1次症例59例の10年累積生存率は, stage別ではstage I: 90.0%, stage II: 69.2%, stage III: 50.0%, stage IV: 42.6%, 全体では62.3%, 部位では口底83.9%, 頬粘膜71.4%, 口蓋60.1%, 日後部50.0%, 歯槽部25.0%, 組織型では腺様嚢胞癌70.3%, 粘表皮癌68.2%, 悪性多形性腺腫66.7%, 腺癌20.0%, 治療法では手術単独76.1%, 手術+放射線と手術+放射線+化学療法72.7%, 放射線単独と放射線+化学療法10.0%であった。
    6.悪性腫瘍の1次症例59例において経過中頸部リンパ節転移, 遠隔転移を認めたものはそれぞれ15例, 18例 (肺15例) であった。1次治療後再発, 腫瘍の残存がそれぞれ11例, 3例に見られた。遠隔転移, 再発, 腫瘍の残存の発生率は腺様嚢胞癌で高かった。
  • ―10年以上の経過観察例について―
    野谷 健一, 小野 貢伸, 守屋 信吾, 足利 雄一, 原田 祥二, 牧野 修治郎, 有末 眞, 戸塚 靖則, 福田 博
    1996 年 8 巻 3 号 p. 161-167
    発行日: 1996/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    対象は唾液腺癌症例で, 手術単独あるいは放射線との併用により治療を行い, その後に補助免疫化学療法を施行し, 最低10年間の経過観察を行いえた24症例である。症例では, 大唾液腺原発, 腺様嚢胞癌, stage II, IVが多かった。補助免疫化学療法は5-FU系薬剤とOK-432とを併用し, 局所治療終了後2年間行った。これらについて, 生存率と, 原発部再発, 頸部リンパ節転移ならびに遠隔転移の頻度と初回治療後からの平均発現時期を検索した。
    全例の原発部再発率, 頸部リンパ節転移率, 遠隔転移率はそれぞれ20.8%, 16.7%, 33.3%であり, これらの平均出現率は4年9か月, 1年7か, 月, 4年7か月であった。所属リンパ節と原発部が制御された症例に限定して遠隔転移をみると, その頻度は23.8%, 平均出現時期は5年8か月であった。
    カプランマイヤー法による全例の5年, 10年生存率は83.3%, 70.8%であり, 所属リンパ節と原発部が制御された症例では, それぞれ90.5%, 81.0%であった。
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