日本口腔腫瘍学会誌
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9 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • ―特に生検との関連について―
    楠川 仁悟, 亀山 忠光
    1997 年 9 巻 2 号 p. 47-52
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    stageI, II口腟扁平上皮癌は外科的あるいは放射線療法のいずれかで治療される。いずれにせよ通常, 診断確定のため生検が行われるが, 腫瘍内への切り込みにより腫瘍細胞播種, さらには悪性度を増すことさえあり得る。この観点から, 生検による引き起こされるであろう癌細胞播種を防ぐために生検前より化学療法を行った。
    早期癌の頸部後発転移に対する生検前化学療法の効果をみるために, stageI, II口腔扁平上皮癌68例についてretro-spectiveに検討した。これら68例を以下の3群に分類した: A群, 化学療法非施行33例; B群, 生検後に化学療法を行った11例; C群, 生検前より化学療法を行った24例である。その結果, 頸部後発転移は, A群30.3% (10/33例) , B群18.2% (2/11例) , およびC群8.3% (2/24例) に認められた。粗生存率は, A群78.8%, B群90.9%, およびC群91.7%であった。
  • 上原 雅隆, 佐野 和生, 二宮 秀則, 井口 次夫
    1997 年 9 巻 2 号 p. 53-57
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    歯原性腫瘍に関連した埋伏歯に対し, 萌出誘導を試みた5症例について報告する。3症例においては, 腫瘍摘出後, 矯正的萌出誘導を行い, 2症例においては腫瘍摘出・開窓術のみにて経過観察を行った。5症例とも咬合平面にまで萌出させることができたが, 腫瘍摘出・開窓術のみにて萌出を計った1症例においては長期間を要した。
    今回の研究によって, 歯原性腫瘍に伴う埋伏歯で自然萌出能を欠いていると思われる症例においては矯正治療が有効であることが示唆された。
  • 野谷 健一, 守屋 信吾, 山下 知巳, 辺見 亨, 鄭 漢忠, 福田 博, 進藤 正信, 雨宮 璋
    1997 年 9 巻 2 号 p. 58-64
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    71歳女性に見られた希な上顎洞原発の悪性血管周皮腫例を報告した。腫瘍は歯槽突起, 上顎骨, 頬骨, 眼窩底を破壊して翼口蓋窩に及んでいた。上顎半側切除術ならびにチタンメッシュトレーと前腕皮弁を用いた眼窩底再建術, 60Coによる術後照射 (65Gy/26f) を行った。局所療法終了後にADM, IFO, Mesnaによる補助化学療法を2コース施行した。局所制御が得られたものの, 肺や胸椎に遠隔転移が認められた。
  • 大森 一幸, 柴田 敏之, 重住 雅彦, 安彦 善裕, 大内 知之, 賀来 亨, 有末 眞
    1997 年 9 巻 2 号 p. 65-69
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    組織学的に興味ある所見を呈した上顎歯肉扁平上皮癌の1例を経験したので報告する。
    患者は, 58歳の女性で, 右側上顎歯肉の自発痛を主訴に来院した。口腔内診査で, 右側上顎側切歯, 犬歯相当部歯肉に潰瘍形成を認めた。X線診査では, 病変部の歯槽骨の吸収像がみられた。
    病理組織学的所見では, 扁平上皮癌細胞と明細胞が見られ, 腫瘍組織中には多くの炎症細胞の浸潤が認められた。扁平上皮癌細胞は高分化型で, 癌胞巣は, 口腔上皮から移行していた。明細胞は, それら扁平上皮癌胞巣内に移行的に見られ, グリコーゲンを示唆するジァスターゼ消化性のPAS染色陽性顆粒を細胞質内に含んでいた。組織学的所見から扁平上皮癌細胞が, 炎症細胞浸潤の影響を受け, 明細胞へ変化した可能性が強く示唆された。全麻下に腫瘍摘出術を施行し, 2年4カ月経過した現在, 再発もなく経過は良好である。
  • 松本 堅太郎, 桧垣 一夫, 谷口 邦久, 岡村 和彦, 田中 守, 柴田 博之, 若江 秀敏, 冨岡 徳也
    1997 年 9 巻 2 号 p. 70-75
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    セメント質―骨形成線維腫は緩徐な発育を示す非歯原性の良性腫瘍であり, 限局性で再発も少ないことから, 病巣の範囲によっては摘出されることがある。しかしながら, 症例によっては強い侵襲性を示すものがあり, これらのものの治療には注意を要する。
    今回我々は, 27歳の女性に生じた下顎骨正中部から右側関節突起に及ぶ比較的大きなセメント質―骨形成線維腫を経験した。生検の結果, セメント質―骨形成線維腫の病理組織診断が得られた。しかしながら, 単純X線やCT写真では透過像と不透過像とが不規則に混在する像が認められ, また境界が不明瞭であったことより, 同腫瘍は強い侵襲性を有することが示唆された。そのため, 我々は下顎骨半側切除術を施行し, 腸骨による即時下顎骨再建を行った。摘出物を組織学的に検討したところ, 被膜の形成は明らかでなく, 関節突起部で腫瘍の飛び石状の浸潤が認められた。すなわち, セメント質―骨形成線維腫のなかには臨床的あるいは組織学的に典型的な病態を呈さないものもあり, そのような場合には腫瘍の性状に基づいた治療を行うことが重要であると考えられた。
  • 瀧上 啓志, 山本 学, 吉武 一貞, 朴 勺
    1997 年 9 巻 2 号 p. 76-80
    発行日: 1997/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全で血液透析を受けている, 49歳の男性の硬口蓋粘膜癌に対し, 化学療法, 放射線療法, 手術療法を施行した。このうち化学療法においては, cisplatin, etoposideの併用投与を行い, 特に透析性を有するcisplatinの血中動態を測定し, 適正投与量, 適正透析開始時間について検討を行った。その結果, 投与量は腎機能正常者の1/2量が有用であり, また透析性を有するcisplatinのfree-CDDPを組織に十分移行させるためには, 透析開始時間をCDDP投与より遅らすことが有効であることが確認された。
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