日本小児アレルギー学会誌
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13 巻, 4 号
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  • Thomas Nicolai
    1999 年 13 巻 4 号 p. 1-7
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    The prevalence of asthma and allergic diseases has been increasing particularly in children over the last decades in Western countries. The German reunification allowed to study the effect of 40 years of different environmental and social development on asthma and allergy prevalence in two genetically homogenous populations. In children and young adults, the prevalence of asthma, hay fever and skin test reactivity to common aeroallergens was considerably higher in West Germany as compared to East Germany. The increased prevalence in asthma was explained by the higher allergic sensitization in West Germany.
    Exposure to SO2, particulate matter and cars was associated with bronchitis, nonspecific respiratory symptoms and decrements in pulmonary function, but not with asthma and allergy. Atopy was found to be the major factor associated with the inception of asthma. Children who had lived during their first three years of life in East German living conditions and had thereafter been exposed to a rapid Westernization of their environment and lifestyle, showed increased atopy and hay fever while bronchitis decreased, but asthma and bronchial hyperresponsiveness remained unchanged. This points toward a period during early life which determines the development of asthma and which seems to differ from the factors responsible for allergic sensitization.
    Since East European living conditions were similar to those in the West decades ago, the same factors could be responsible for the increased allergic sensitization in West Germany and the secular increase in atopic diseases and asthma in the West.
    Factors associated with the more modern life style may account for this difference, while the increased levels of SO2 and dust exposure in East Germany were obviously no risk for the development of childhood asthma or allergic sensitization.
  • 永山 洋子
    1999 年 13 巻 4 号 p. 8-21
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    Respiratory syncytial virus (以下RSV) 感染症は乳幼児期に多くみられる疾患であるが, しばしば初回喘鳴のエピソードを伴い, 細気管支炎と診断される. しかしその後一部の症例に喘鳴をくりかえしRSV感染後に喘息と診断される症例があることが指摘されている. 動物モデルにおいてRSVの抗原別に免疫反応を検討した成績ではCD4+あるいはCD8+T細胞のどちらか, 又はTh細胞の産生するサイトカインがTh1かTh2へ傾くかはRSVの表面蛋白の差による. 私たちは344名の小児のRSV感染症の病態を検討した. このうちすでに喘息と診断されている者は35.5%であった. これらの患児では臨床的に, いくつかの特徴を有していた. すなわち喘息児は比較的年長になるまでRSV感染症に罹患すること, 特に3歳時では肺炎発症率も高く, 有熱率も高かった. RSVは炎症惹起性のサイトカインや好酸球遊走因子の産生を促進させることが培養細胞上ですでに明らかになっているが, 最近これらの物質が乳児のRSV細気管支炎患児の下気道で増加しているという報告がでてきた. これらの最近の知見は小児期の喘息発症の機序と考える上で, 示唆に富むものである.
  • 女川 裕司
    1999 年 13 巻 4 号 p. 22-31
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    運動刺激により蕁麻疹から呼吸困難, 意識消失などの強い全身症状を呈する運動誘発性アナフィラキシー (Exercise-induced anaphylaxis: EIAn と略) の15例 (男8, 女7) を検討した. 12例は食物依存性運動誘発性アナフィラキシーで, 3例は食物に関連が認められなかった. 誘因抗原は小麦が4例, 甲殻類が3例, ぶどうが2例, 小麦と大豆の組み合わせが1例, 食物は特定できないが食物摂取に関連して発症した症例が2例であった. 10歳未満で発症した症例が6例であった. これらの若年発症例は, アレルギー疾患の家族歴と既往歴が濃厚で, 血清IgE値が高かった. ほぼ全例に施行した誘発試験では, 皮膚症状や喘鳴発作のみの誘発に止まり, 血漿ヒスタミンの著増は確認できなかった.
    これら就学中のEIAnの症例は, 学校給食, 体育, クラブ活動に配慮した生活指導を行う必要がある.
  • 安藤 仁志, 徳田 玲子, 森田 豊, 和田 映子, 近藤 康人, 山田 一恵, 堀場 史也, 増田 進, 松田 幹, 宇理須 厚雄
    1999 年 13 巻 4 号 p. 32-37
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    凍結乾燥卵白を用いた経口負荷試験で即時型過敏反応を認め, 鶏卵及び ovomucoid (OM) 特異IgE抗体価高値症例16名を対象とし, これらの症例を平均2.6年観察後, 再度経口負荷試験を行い非寛解群9例と寛解群7例とに分け, 一度目の負荷試験の時に採血した血清を用いて OM domain 3特異IgE抗体価を測定し, 鶏卵即時型過敏反応の予後予知における意義について検討した. third domain without carbohydrate chain (D3) と third domain with carbohydrate chain (D3CHO) に対する特異IgE抗体価の平均は, 非寛解群が寛解群に比し有意に高値であった (p<0.01). sensitivity, specificity, accuracy, positive predictive value, negative predictive value は良好な結果であった. 以上からOM特異抗体価で予後が予知が出来ない症例でも OM domain 3特異IgE抗体価で寛解予知の可能性が示唆された.
  • 寺田 明彦, 藤澤 隆夫, 井口 光正, 神谷 齊
    1999 年 13 巻 4 号 p. 38-42
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    低蛋白血症を呈した乳児アトピー性皮膚炎の6例を報告した. 全例, 多種抗原により感作されアトピー素因が強く認められた. 2例にはアルブミン製剤の輸液を行った. 他の4症例はステロイド外用剤を中心とした薬物療法により, 皮疹が軽快するとともに低蛋白血症も改善した. 低蛋白血症の原因は皮疹からの蛋白漏出, 食物アレルギーによる栄養障害, 哺乳力の低下が主な原因と考えられた. また, 皮膚の易感染性による黄色ブドウ球菌感染や不適切なスキンケアーが皮膚炎を増悪させる要因であった. 予防対策としては, 抗原の除去、皮膚を清潔に保つこと, ステロイド剤を中心とした適切な薬物療法とスキンケアーの指導, 食物アレルギーの把握と栄養指導, 細菌感染に対する抗生剤の適切な選択と投与が考えられた. アトピー性皮膚炎の合併症として特に乳児での低蛋白血症には注意が必要である.
  • 重田 政樹
    1999 年 13 巻 4 号 p. 43-51
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    小児の喘息急性発作の初期治療について, 外来治療が可能な中等度から軽度の発作例62例を対象にβ2刺激剤吸入とアミノフィリン点滴静注との効果を比較した. 対象を3群に分け 1) アミノフィリン点滴単独群, 2)β2吸入単独群, 3) 併用群とし, 肺機能と臨床スコアを検討した. 併用群はβ2吸入単独群よりも肺機能の改善率が高く, 特に末梢気道において顕著であった. 本研究ではβ2吸入にアミノフィリン静注を併用した場合に, 末梢気道ではアミノフィリン追加による気管支拡張効果に, 相加効果が認められる可能性が示唆された. 臨床スコアは3群間で差はなかったが, 末梢気道の早期改善は喘息長期管理の目的に沿うものであり, 今回の検討で併用群の利点がより明確になった. 本邦で従来から行われているβ2吸入とアミノフィリン点滴静注の併用療法は, 今後も小児科外来で用い得る有用で安全な喘息初期治療であると考えられた.
  • 三河 春樹, 松井 猛彦, 西間 三馨, 赤坂 徹, 鳥居 新平
    1999 年 13 巻 4 号 p. 52-59
    発行日: 1999/12/01
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    1990年から1998年末までに本委員会に登録を頂いた161例の中から喘息発作以外の死亡例8例を除いた153例について諸種の要因を解析した. 喘息死は厚生省死亡統計と同様の傾向にあり, 男性に多く, 12歳以降19歳未満にやや多かった. また重症例に特に集中するわけでなく, 軽症例, 中等症例にも予期せぬ突然の大発作で死亡する例が多かった. 普段の活動性を反映してキャンプ, 運動場など, 死亡場所の多様化が進んでおり, 救急対策に新たなる配慮が必要と推測された. 死亡の原因を推測する提言として, 適切な受診時期の遅れを指摘するものが多く, 正確な病状判断と患者教育の必要性が示唆された. 薬剤治療については, 過度依存, 怠薬による病状悪化が多く取り上げられており, 頻用されるβ刺激薬やステロイド薬の薬剤種, 剤型, 用法, 用量に今一段の配慮が要請されるようである.
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