日本小児アレルギー学会誌
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21 巻, 2 号
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総説
  • 藤澤 隆夫
    2007 年 21 巻 2 号 p. 169-179
    発行日: 2007/06/01
    公開日: 2007/12/26
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    気管支喘息が気道の慢性炎症であるとの病態理解のもとで吸入ステロイド治療が推奨されるようになって以来,喘息のコントロールは格段に向上した.しかし,この薬剤ではコントロールは可能でも喘息を治癒に導くことは困難であった.そこで,発症早期に介入すれば,自然歴を変えること,すなわち治癒をめざすこともできるのではないかと考えられ,乳幼児の喘鳴に対する吸入ステロイドによる早期介入臨床試験が2006年に3つ報告された.結果は仮説を否定したが,乳幼児期における吸入ステロイドの適応という現実的な課題から,さらなる長期予後,発症初期の病態など未解決の課題解決に向けて多くの面で示唆を与えるものであった.本稿では吸入ステロイドの可能性と限界について,喘息の治癒をめざすという観点で上記3報を軸にしながら,最近までの研究の動向をレビューする.
  • 荒川 浩一, 水野 隆久, 小山 晴美, 只木 弘美, 望月 博之, 徳山 研一, 森川 昭廣
    2007 年 21 巻 2 号 p. 180-186
    発行日: 2007/06/01
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル 認証あり
    気道の粘液分泌亢進を生じる代表的な疾患として気管支喘息があげられ,杯細胞過形成や分泌亢進による粘液栓の形成は,気道閉塞を進行させ,死亡の主たる原因にもなり重要と考えられる.気道ムチンは,気道上皮より産生される粘液中の主要な糖蛋白で,近年,多くのムチンコアタンパク質と MUC 遺伝子が見いだされ,その発現調節に上皮増殖因子,サイトカイン,ウイルスなどが関与していることが判明している.また,その制御に関しては,特異的な薬剤の開発がまだ見られていないが,我々は,グルココルチコイドや DSCG の分泌に対する制御について検討している.気道ムチン遺伝子発現制御の解明が,喘息の新しい治療戦略の開発につながるものとして期待される.
原著
  • 佐藤 さくら, 田知本 寛, 小俣 貴嗣, 緒方 美佳, 今井 孝成, 富川 盛光, 宿谷 明紀, 海老澤 元宏
    2007 年 21 巻 2 号 p. 187-195
    発行日: 2007/06/01
    公開日: 2007/12/26
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    アナフィラキシー補助治療薬のエピペン®が我が国で発売され,2004年5月から2005年10月まで当科で同薬を処方した食物アレルギー患者は50名(男33名,女17名,0.3mg:15名,0.15mg:35名)に上る.対象の平均年齢は6.8歳でアトピー性皮膚炎合併が78%,気管支喘息合併が52%であった.原因食品摂取時に呼吸器症状を96%,皮膚症状を92%に認めた.アナフィラキシー症例は48例で,食物アレルギー発症時の臨床型は36例が“食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎”,即時型症状8例,食物依存性運動誘発アナフィラキシー4例であった.アナフィラキシーを起こした理由は,初回,2回目以降も誤食によるものが最多であった.アナフィラキシー反復例は31例で,複数抗原に対してアナフィラキシーを起こした例や原因不明例も存在した.今回の処方50例中実際に使用された例は1例あり,17歳のナッツアレルギー患者において使用され著効していた.医師,コメディカルにおいてまだ認識が不十分なエピペンであるが,アナフィラキシーを起こす可能性のある食物アレルギー児に対して保護者と相談の上で処方していくべきである.
  • 下条 直樹, 冨板 美奈子, 松山 剛, 井上 清文, 佐藤 好範, 斎藤 公幸, 山口 賢一, 鈴木 修一, 河野 陽一
    2007 年 21 巻 2 号 p. 196-204
    発行日: 2007/06/01
    公開日: 2007/12/26
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    小児気管支喘息患者において,ロイコトリエン受容体拮抗薬プランルカストとクロモグリク酸ナトリウム(DSCG)の臨床効果について比較検討した.対象は2~13歳(中央値は4歳)の副腎皮質ステロイド薬を使用していない小児気管支喘息患者20名で,8週間投与による多施設交叉比較試験により行った.プランルカストは7mg/kgを2回に分けて経口投与し,DSCG は1回20mgを1日2回吸入した.プランルカストと DSCG との間には有意差は認められなかったが,プランルカストは小児気管支喘息の自覚症状の改善や併用薬剤の減量効果における有用性が示された.また患者や保護者の QOL の改善および使用感は DSCG より良かった.よって,プランルカストは小児気管支喘息治療において有用な薬剤と考える.
  • -学会員医と一般医の比較から-
    福田 典正, 吉原 重美, 土屋 喬義, 山田 裕美, 小野 三佳, 有阪 治
    2007 年 21 巻 2 号 p. 205-212
    発行日: 2007/06/01
    公開日: 2007/12/26
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    JPGL,HB の認知,所有,利用の現状と,ガイドラインのあり方を検討するために,アンケート調査を行った.栃木・埼玉両県の70名から回答を得,小児アレルギー学会員(以下学会員医)とその他の医師(一般医)の2群に分けて検討した.学会員医は JPGL をより高率に所有し,利用していた.JPGL の利用目的では,学会員医はより高率に自己知識の UPDATE やスタッフ教育に利用していた.HB の認知,利用,所有は低調で学会員医と一般医間には差を認めなかった.ガイドラインでより充実して欲しい項目として「環境整備の実際」,「アレルゲン検査」「アーリーインタベンション」で学会員医が有意に高い要望があった.JPGL への意見としては,「内容が専門的すぎる」という意見が多かった.また,学会員医からは一般医に対するコンテンツの配慮の必要性が,一般医からは親・患者への配慮を要望する声が多く寄せられていた.これらを考慮した受益者参加型ガイドラインの作成・運用が急務であると考えられた.
  • 目澤 憲一, 横山 達也, 杉本 日出雄, 中野 裕史, 安田 正, 西牟田 敏之
    2007 年 21 巻 2 号 p. 213-221
    発行日: 2007/06/01
    公開日: 2007/12/26
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    千葉,神奈川,埼玉県内の小児科医の協力のもと,小児気管支喘息の治療中のため受診した患児の保護者・担当医に対して発作程度,重症度(発作型)に対する患者側と医師側の認識の違いについてアンケート調査を行った.その結果,(1)発作程度は保護者・医師ともJPGL2002より軽く判断する傾向にあった.医師では,JPGL2002より34%が軽く判断し,62%が同判断であった.(2)症状・頻度から見た重症度では,保護者は,軽症では重く,重症では軽く見る傾向があった.(3)治療ステップでは,医師は実際に行っている治療より軽いステップだと判断する例が38.5%あった.(4)現在の治療ステップを考慮した重症度では,医師は,JPGL2002より軽く判断する傾向にあった.JPGL2002よりも医師が重症度を軽く判断しているために,治療が不十分となっている患児が少なからず存在する.患児・保護者の教育と共に医師側にもガイドラインの浸透度は十分とは言えないので,更にガイドラインを普及する必要であると思われた.
  • -臨床症状,肺機能,および薬価からみた治療薬の変化-
    松嵜 くみ子, 内山 浩志, 小田島 安平
    2007 年 21 巻 2 号 p. 222-227
    発行日: 2007/06/01
    公開日: 2007/12/26
    ジャーナル 認証あり
    研究目的:医師と臨床心理士による喘息児セルフケア支援の有効性について,臨床症状,肺機能,薬価の変化をとおして検討する.
    方法:2004年4月から2006年3月までに都内開業小児科を受診し,医師の診察に平行して臨床心理士によるセルフケア支援を行った喘息児全員,6名(男児3名,女子3名)について,セルフケア支援前後で臨床症状,肺機能(FEV1.0, V50, V25),処方された喘息治療薬の薬価,受診回数を比較した.
    成績:セルフケア前後で,症状の改善,肺機能の向上が見られた.また,1ヶ月に処方される吸入ステロイドの薬価の平均は,1759.0点から180.1点,介入前の89.8%の減少(P<0.01),喘息薬全体の薬価の平均は,10232.3点から6804.2点と介入前の33.5%の減少(P<0.05)がみられた.受診回数は1ヶ月平均2.8回から1回に減少した.
    考察:医師と臨床心理士による,セルフケア支援によって,症状の改善のみならず,治療費の負担軽減も期待できることが示された.
小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2005をどう読むか
食物アレルギー診療ガイドライン2005解説
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