日本小児アレルギー学会誌
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22 巻, 1 号
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第44回日本小児アレルギー学会会長講演
第44回日本小児アレルギー学会シンポジウム2 小児気管支喘息治療・管理ガイドライン -解決すべき課題と今後の展望-
  • 西牟田 敏之, 西間 三馨
    2008 年 22 巻 1 号 p. 7
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/06/30
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  • 栗原 和幸
    2008 年 22 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/06/30
    ジャーナル 認証あり
    我が国の JPGL は小児だけを独立させた喘息治療・管理のためのガイドライン(以下GL)であり,これは恐らく世界でも他に例がない.世界各国には異なった医療事情があり,全世界的に画一的な GL を制定することは不可能で,好ましいことでもないが,海外の GL と比較することは更なる改良のために役立つ.重症度,コントロールなど使用する用語には明確な定義が必要である.長期管理薬の中心は吸入ステロイドであるが,いずれの GLも最大使用量を抑制する傾向にある.JPGL では2歳未満では抗アレルギー薬(実質的にはロイコトリエン受容体拮抗薬)を優先している.発作時の薬物療法には大きな差異があり,海外では抗コリン薬,Mg を推奨し,テオフィリンとイソプロテレノールには消極的である.
    GL には簡潔さ,実践しやすさは必須の要件である.JPGL は EBM の基本姿勢を明確にすることが必要であるが,世界水準より高いレベルで作成し実践することが可能であろう.
  • 南部 光彦
    2008 年 22 巻 1 号 p. 15-32
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/06/30
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    小児気管支喘息治療・管理ガイドライン(JPGL)2005がもたらした小児気管支喘息治療の変化を見るために,JPGL2005発刊前に施行されたアンケート2005と,発刊の1年後に施行されたアンケート2006を比較した.またアンケートの設問上の問題を是正するために点数化を行ない,アンケート2003も含めて検討した.
    急性発作時の治療に関しては,キサンチンの静注・点滴静注が減り,ステロイドの全身投与が増加した.大発作でのイソプロテレノール持続吸入と呼吸不全での気管内挿管・人工呼吸も増加した.これらの変化は,アンケート2005から2006にかけてより強く表れており,JPGL2005の影響が示唆された.
    長期管理薬では,テオフィリン徐放製剤の衰退と吸入ステロイド薬の躍進がJPGL2005の改訂後に目立った.一方ロイコトリエン拮抗薬は,JPGL2005改訂前にすでに選択する医師が増加していた.
    今回の検討で,JPGL2005がもたらした小児喘息治療の変化が明らかとなったが,なお JPGL には多くの課題が残されており,JPGL の普及とともに,更なる改良が望まれる.
  • 赤澤 晃
    2008 年 22 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/06/30
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    気管支喘息の病態生理は,小児においても解明がすすみその治療も気道の慢性炎症に対する抗炎症治療へと変わってきた.今後のガイドラインで明確にしていかなければならないことは,乳幼児喘息ではどの時点で喘息と診断し,抗炎症治療を開始するのか,治療目標におけるコントロールの解釈の違い,そしてステップダウンの指標と方法である.GINA や EPR-3 でも少しずつこうした点について記述されるようになってきた.JPGL でも単なる海外のガイドラインのコピーをするのではなく,日本の子どもたちの社会的背景をふまえてエビデンスに基づいて指針を作る必要がある.
  • 徳山 研一
    2008 年 22 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/06/30
    ジャーナル 認証あり
    乳児喘息の呼吸生理学的,病理学的変化がその長期予後にどのような影響を与えるかは検証されていない.多くの喘息児が乳幼児期に発症することを考えるとこの時期における早期治療介入(early intervention)が喘息の進展を阻止する可能性がある.乳児喘息の病態は不明の点が多いが,キーとなる炎症性メディエーター,気道の細胞・組織の解析が進めば,ターゲットを絞った治療が可能になるかもしれない.現時点では乳児喘息の発症を阻止する予防法や長期予後を改善するエビデンスのある治療法は明らかにされておらず,今後の検討課題である.
第44回日本小児アレルギー学会シンポジウム7 アレルギー疾患の分子生物学的アプローチ
第44回日本小児アレルギー学会シンポジウム8 気道の非侵襲的評価法
  • 藤澤 隆夫, 小田嶋 博
    2008 年 22 巻 1 号 p. 71-72
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/06/30
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  • 村松 礼子, 望月 博之, 只木 弘美, 萩原 里実, 高見 暁, 水野 隆久, 荒川 浩一, 森川 昭廣
    2008 年 22 巻 1 号 p. 73-79
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/06/30
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  • 本村 知華子, 小田嶋 博
    2008 年 22 巻 1 号 p. 80-87
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/06/30
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    呼気中 NO は気道炎症の指標としてもはや確立されている.呼気中 NO が高値となる要因には,アトピー素因や,アレルギー疾患の気道特異性があげられる.よって喘息とアトピー素因の重複がある場合には呼気中 NO は最も高値となる.喘息重症度により呼気中 NO は変動せず,運動誘発喘息の重症化により呼気中 NO は上昇し,吸入ステロイド薬(ICS)非投与児では気道過敏性の亢進に伴って,呼気中 NO は上昇する.
    小児期では気道過敏性は呼気中 NO と関連しており,思春期では気道過敏性は末梢気道閉塞,NO と弱い相関を有する.小児期の喘息児において,気道過敏性を予測しうる呼気中 NO のカットオフ値を設定した.一方,ICS を減量している喘息児では,呼気中 NO のカットオフ値を35ppbとすると,呼気中 NO 測定が発作予測に有用であることが報告された.
    小児において,呼気中 NO 測定は時間をとらず,非侵襲的かつ反復測定が可能で,安全性の高い評価法である.
  • 高増 哲也
    2008 年 22 巻 1 号 p. 88-94
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/06/30
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    気管支喘息の病態において,気道の慢性炎症,特に好酸球性の炎症が中心的な役割を果たしており,治療を考える上でも,炎症をいかにコントロールするかに重点がおかれている.しかし実際の診療では,気道炎症を評価する指標がない.気道炎症を評価する方法論の確立が,大いに期待されている.
    臨床的にモニタリングに用いるためには,炎症を適切に反映すること,非侵襲的であること,手間や費用が少なくてすむこと,などの条件がある.喀痰細胞診は,喀痰採取に若干のテクニックを必要とするが,これらの条件を満たし,気道炎症がモニタリング可能となりうる指標である.
    喀痰細胞診で好酸球比率をモニタリングすることで,急性期の好酸球性炎症の変化だけでなく,コントローラーとしての吸入ステロイド薬,抗ロイコトリエン薬,長時間作用性 β2 アゴニストなどを導入する前後での,好酸球性炎症の変化を確認することもできる.乳児喘息の病型分類にも,鼻腔より吸引した痰による細胞診が使用できる可能性がある.
  • 勝沼 俊雄, 飯倉 克人
    2008 年 22 巻 1 号 p. 95-99
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/06/30
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    喘息の適正診療のためには,病態・病勢を客観的に示す評価手段が必要である.特に小児に対しては,侵襲性がなく気道特異的な気道炎症評価方法の開発と普及が望まれる.呼気凝縮液(EBC)は,安全で比較的簡便,非侵襲的な気道炎症評価法として期待される.これまで種々の酸化ストレスマーカー,エイコサノイド等の分析結果が報告されており,喘息との関連が示唆されている.われわれも小児の気管支喘息において,重症度・気道過敏性と EBC 中 LTE4 濃度との相関を認めている.今後,EBC 回収効率の改善と,操作の簡便性が得られれば,臨床での応用も拡大するであろう.
  • 土生川 千珠
    2008 年 22 巻 1 号 p. 100-101
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/06/30
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    客観的呼吸機能評価が困難な乳幼児に対する非浸襲的検査方法の開発を目的に,小児気管支喘息児に対して呼吸音解析装置(LSA-2000,Kenz Medico)を用いて呼吸音解析を行った.今回は喘息の非発作時に測定を行い,呼吸音の中で吸気音最高周波数(以下 HFI)について検討した.
    スパイロメトリーと HFI の関係,吸入ステロイド薬およびロイコトリエン受容体拮抗薬に対する治療効果判定,重症度との関係,発作予測の指標としての可能性について検討した.
    HFI は気道閉塞状態を反映し,治療薬剤の投与により低下し,重症度が上がるほど上昇していた.
    HFI が発作予測可能か否かを検討した結果,発作前には HFI が上昇していた.HFI は発作予測の指標となる可能性が示唆された.
総説
  • 萬木 晋, 大矢 幸弘
    2008 年 22 巻 1 号 p. 102-107
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/06/30
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    運動は気管支喘息を悪化させる一方で治療にも用いられてきた.今回われわれは,各種スポーツ選手における喘息有症率,喘息と運動に関するコホート研究,治療としての運動の役割などについて過去の多くの文献から現在明らかとなっていることを整理した.
    冬のスポーツ,長時間継続するスポーツ,水泳では有症率が高く,また大気汚染や屋内プールの塩素の与えるリスクについても詳述した報告があった.水泳を含めた運動(療法)は心肺機能を向上させ喘息症状を著明に改善するが,安静時肺機能や気道過敏性についての影響は明らかではなかった.
    また,以前より喘息児に対して盛んに行われてきた水泳について,近年増加し続けている肥満と喘息の関係についても検討した.
原著
  • 吉田 晃, 小倉 一将, 田中 里江子
    2008 年 22 巻 1 号 p. 108-115
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/06/30
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    2003年1月から2005年12月までの3年間で,当センターを救急受診した小児の患者のべ25,574例のうち,食物によるアナフィラキシーショックで受診したのは,のべ13例(0.05%)13人であった.年齢は6ヶ月から15歳で,2歳以下が6人と約半数であった.性別は男児が9人,女児が4人であった.原因食物は,卵が5人,魚類が2人,ピーナッツが1人,小麦が1人,モモが1人,であり,残りの3人は確定することはできなかった.
    複数回ショック発症例は4例で全員男児であり,1歳と4歳の症例は卵の誤食であり,11歳と15歳の症例は食物依存性運動誘発アナフィラキシーであり,本疾患を認識していなかったため繰り返しショックとなった.
    食物摂取から発症までの時間は,10分以内が8人と最も多かった.発症から来院までの時間は,医療機関までの距離,来院方法,症状の出現の仕方などにより左右される.30分以内に来院できた症例はなく,31~60分が9人と最多であった.ショックに対し治療開始までの時間が予後を決定するため,医療機関受診までの所要時間を考慮し,エピネフリン自己注射の常備や,患児,保護者だけでなく学校・園においても食物アレルギーやショックに対する認識などが大切である.
  • 西間 三馨, 向山 徳子, 赤澤 晃, 海老澤 元宏, 木村 和弘, 伊藤 浩明, 近藤 直実, 藤澤 隆夫, 田中 勲, 池田 政憲, 小 ...
    2008 年 22 巻 1 号 p. 116-128
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/06/30
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    乳幼児気管支喘息に対するブデソニド吸入用懸濁液の有効性と安全性を検討する24週間のオープン無作為化並行群間試験(以下,24週投与試験)に引き続き,長期投与時の安全性評価を目的としてオープン長期延長試験(以下,本試験)を実施した.24週投与試験を完了した57症例の内,54症例が本試験に登録され,全例で安全性の評価を行なった.
    投与期間は34~144週(平均102週)であった.本試験中に発現した有害事象プロファイルは24週投与試験での結果と同様で,臨床的に問題となる新たな有害事象の発現や投与期間延長に伴う発現頻度の増加は認められなかった.血漿コルチゾール値は,試験期間中を通じて投与前値を下回った値で推移したが,更なる低下が生じることは無く,副腎皮質機能抑制を疑う徴候や症状は認められなかった.成長に関する影響も見られなかった.医師判定による有効率は試験期間中を通じて80%以上であった.
    以上より,乳幼児気管支喘息患者に対するブデソニド吸入用懸濁液の長期投与(24週投与試験も含めた最長168週)は,安全かつ有効な喘息治療であることが示唆された.
  • 藤高 道子, 川口 浩史, 加藤 恭博, 佐倉 伸夫
    2008 年 22 巻 1 号 p. 129-134
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/06/30
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    気管支喘息小児16名を対象として,超音波式(NE-U07;n=14)と加圧式(ジェット式)(ボヤージ; n=7)ネブライザーについて,クロモグリク酸ナトリウム(disodium cromoglycate;DSCG)の吸入後の血漿中濃度を比較し,両機種における DSCG の肺内到達量の差を検討した.吸入5分後,30分後の DSCG 血漿中濃度と AUC0-30の平均値(NE-U07対ボヤージ)は各々,7.47対3.17ng/ml,6.00対2.50ng/mlと187.09対78.81min・ng/mlで,何れもNE-U07がボヤージよりも有意に高く(順にp=0.03,p=0.002,p=0.001),既報の健康成人における検討と同様の傾向が得られた.我々が以前報告したDSCGの有効濃度である吸入5分後の血漿中濃度4ng/ml以上が得られた例数の割合は,NE-U07(86%)がボヤージ(29%)よりも高く,健康成人(NE-U07;100%,ボヤージ;17%)と同様の傾向で,かつ,吸入器の機種と有効濃度の間に有意な関連性が認められた(p=0.05).DSCG に関しては喘息小児も健康成人と同様に,超音波式ネブライザーの方が薬剤の肺内到達量が多く得られる可能性が高いと推察された.
  • 西牟田 敏之, 渡邊 博子, 佐藤 一樹, 根津 櫻子, 松浦 朋子, 鈴木 修一
    2008 年 22 巻 1 号 p. 135-145
    発行日: 2008/03/10
    公開日: 2008/06/30
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    【目的】喘息ガイドラインの治療管理が適確に遂行されるために,重症度とコントロール状態の両方を簡単に判定できる JPAC 設問票を開発し,有用性を検討した.
    【方法】JPAC 設問票は,喘息症状,呼吸困難,日常生活障害に関する3設問から重症度を判定し,これに運動誘発喘息と β2 刺激薬使用頻度を加えた全5設問からコントロール状態を判定する.下志津病院受診中の5歳から19歳の喘息患者225名を対象に,JPAC 点数と重症度,呼吸機能検査との関係を検討した.
    【結果】重症度増加と JPAC 点数減少は,Jonckheere-Terpstra 検定によって p<0.0001と有意な関連性を示した.症状と頻度から判定した各重症度におけるJPAC点数のmean±S.D.は,寛解15±0,間欠型14.9±0.3,軽症持続型13±1.2,中等症持続型9.2±1.0,重症持続型7±2.4であり,完全15点,良好12~14,不良11点以下と設定したコントロール基準と整合性があった.JPAC 点数と呼吸機能検査の関係は,%FEV1.0,%MMF,%V'50において p<0.0001と有意な相関を認めた.
    【結語】JPAC は,患者の重症度とコントロール状態を判断するのに適しており,ガイドライン治療の普及に役立つ.
食物アレルギー委員会報告
社会保険委員会報告
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