日本小児アレルギー学会誌
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22 巻, 3 号
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総説
  • 小田嶋 博
    2008 年 22 巻 3 号 p. 333-340
    発行日: 2008/08/01
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    小児の喘息キャンプは長く行われてきたが,主に薬物療法の進歩により症状が改善している今日だからこそ,アドヒアランス/コンプライアンスの向上や自己管理が重要であり,これらを獲得するのに適切な場としてキャンプは有用である.キャンプは総合的医療の場として特に今日的問題を抱える喘息の子供達に多くの経験的効果をもたらすと考えられる.しかし,その実施にはスタッフの育成,実施場所,参加する子供達の変化などいくつかの問題が存在する.最近の子供達の多様性,それに応じたきめ細かい対応を行うためには,専門のスタッフの確保が必要であり,このような状況の中でキャンプを有効に活用する方法の検討も必要である.また,今後,専門のスタッフの育成や喘息キャンプの長期的効果を社会経済的側面も含めて検討することも必要である.
  • 岩田 力
    2008 年 22 巻 3 号 p. 341-348
    発行日: 2008/08/01
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    近年のアレルギー疾患の増加に対し,有効な予防法ならびに治療法の開発は興味の的である.プロバイオティクスは,適正量を摂取した際に宿主に有用な作用を示す生菌体,と定義されるが,アトピー性皮膚炎の治療に用いられ,効果を示したという報告がある.また,妊婦および生後の児または母親に対して用いられ,発症予防に効果があったことが示され,種々の追試が行われた.メタアナリシスによると治療については懐疑的であるが,予防については効果があるとされた.今後,用いる菌種の生物学的な作用をより明らかにすることが必要である
原著
  • 板澤 寿子, 足立 雄一, 足立 陽子, 岡部 美恵, 伊藤 靖典, 樋口 収, 宮脇 利男
    2008 年 22 巻 3 号 p. 349-356
    発行日: 2008/08/01
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    イソプロテレノール持続吸入療法は,気管支喘息大発作および呼吸不全において非常に有効な治療法であるが,回復後に心拍数が低下したとの症例報告が散見されるため,本治療法における心拍数への影響について検討した.イソプロテレノール(アスプール®またはプロタノールL®吸入)持続吸入群(47名)と非吸入群(49名)の心拍数を6ヵ月~12ヵ月未満,1歳~3歳未満,3歳~6歳未満,6歳~12歳未満,12歳以上の年齢別で比較検討したところ,最低心拍数は吸入群の方が非吸入群よりも全ての年齢群において低い傾向があり,1歳~3歳未満において有意差を認めた.一方,各年齢群の基準値以下の心拍数となった者は吸入群の7名(15%)と非吸入群の4名(8%)であり,また明らかな徐脈を呈した者は吸入群の2名(4%)のみであり,両群間に有意差は認めなかった.しかし,致死的不整脈を合併する小児も稀には存在するため,本療法の実施には注意を払う必要がある.
  • 正田 哲雄, 畠山 淳司, 磯崎 淳, 小川 倫史, 野間 剛, 中村 陽一, 川野 豊
    2008 年 22 巻 3 号 p. 357-362
    発行日: 2008/08/01
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    症例は7歳,男児.平成19年6月,マムシに右第3指を咬まれ受傷した.腫脹・疼痛があり近医にて外科処置を受け,受傷約10時間後に当院を紹介受診した.マムシ咬傷の重症度分類はGrade III であった.まむしウマ抗毒素に対する皮内試験は陰性であり,メチルプレドニゾロンを予防投与した後に静脈内投与した.投与直後から,全身に蕁麻疹が出現し,同時に喘鳴・呼吸困難のアナフィラキシー反応を生じた.0.1%アドレナリンを筋肉内投与,ヒドロコルチゾンを静脈内投与し症状は改善した.まむしウマ抗毒素はウマ血清であり,アナフィラキシーを高率に合併するが,小児の使用に関して検討されていない.本邦における小児マムシ咬傷報告例のうち抗毒素血清投与を行った12症例を検討したところ,アナフィラキシーを呈したのは本症例のみであった.海外ではアドレナリン予防投与も行われており,その適用基準の検討を含め,小児例の蓄積が必要である.
  • 田中 謙好, 中村 直美, 米谷 美恵子, 村上 照代, 堀江 淳, 亀田 誠, 土居 悟
    2008 年 22 巻 3 号 p. 363-368
    発行日: 2008/08/01
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
      気管支喘息発作時におけるスクイージングの効果をピークフロー値(以下 PF 値)と Spo2 値,痰を喀出できた児の割合(以下排痰率)から検証を行った.
    【対象】
      気管支喘息の発作で入院している3歳から9歳で簡易ピークフローメーターによるPF測定が可能な男児24名,女児10名の計34名
    【調査方法】
      吸入終了後,直ちに看護師が5分間のスクイージングを行い,吸入終了後15分の時点で同測定を行って得られたデータをスクイージング群.吸入後にはスクイージングを行わずに吸入終了後15分の時点で同測定を行って得られたデータをコントロール群とした.
    【結果】
      スクイージング群の吸入前とスクイージング後において有意に PF 値の上昇,改善を示し,Spo2 値は上昇させる傾向が見られた.
      全症例における排痰率はスクイージング群で高率な排痰が認められた.
    【結論】
      スクイージングは気管支喘息発作軽減の援助として効果があると言える.
  • 足立 雄一, 村上 巧啓, 中村 利美, 谷内江 昭宏, 大嶋 勇成, 眞弓 光文
    2008 年 22 巻 3 号 p. 369-378
    発行日: 2008/08/01
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
    喘息のより良いコントロール状態を得るためにはガイドラインに沿った治療の推進が望まれるが,忙しい日常診療での実践は容易ではない.外来で簡単に利用できる保護者向けの問診票と担当医向けのチェック表を作成し,その効果を検討した.対象は,北陸3県(福井,石川,富山)の39施設(4大学病院,16病院,19診療所)に定期通院中の喘息児(0~15歳)938名.来院時に問診票とチェック表で現在の治療内容を検討し,その1か月後の状態を喘息症状の頻度と程度で評価した.当初治療不十分と判断された児(全体の27.5%)のうち60.2%が1か月後に1段階以上改善した.また,治療不十分群のうち実際に治療変更が行われた児(46.1%)の方が,変更しなかった児に比して喘息症状が改善している児の割合が有意に高かった(77.4% vs 39.1%,p<0.001).以上より,簡単な方法を用いた介入を行うことによって,喘息のコントロール状態を改善させられる可能性が示唆された.今後,より簡便で効果的なツールの開発が望まれる.
速報
  • 西牟田 敏之, 西間 三馨, 森川 昭廣
    2008 年 22 巻 3 号 p. 379-390
    発行日: 2008/08/01
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
      小児気管支喘息におけるサルメテロール/フルチカゾンプロピオン酸エステル(FP)配合剤(SFC)の長期投与時の有効性及び安全性を検討した.対象はFP 100~200μg/日相当量の吸入ステロイド薬で加療中の5~14歳の気管支喘息患者とし,SFC pMDI 25/50μg,1回2吸入,1日2回を24週間投与した.投与された40例は平均年齢8.7歳,喘息の重症度は中等症持続型37例,重症持続型3例であった.スペーサー(エアロチャンバープラス®)の使用率は85.0%であった.本試験では全例が試験を完了した.
      朝の PEF は投与1日目より増加し,投与期間を通してその改善が継続した.投与後1~24週の平均変化量は32.9L/minであった.副作用は軽度の振戦が1例に発現したのみであった.また,血漿コルチゾール値に変動は認められなかった.
      以上より,中等症持続型から重症持続型の小児気管支喘息患者における SFC pMDI 25/50μg,1回2吸入,1日2回の長期投与による有効性及び忍容性が示された.
小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2005をどう読むか
喘息死委員会レポート2007
  • 坂本 龍雄, 赤坂 徹, 末廣 豊, 鳥居 新平, 西間 三馨, 三河 春樹, 松井 猛彦
    2008 年 22 巻 3 号 p. 403-416
    発行日: 2008/08/01
    公開日: 2008/11/05
    ジャーナル フリー
      2007年の喘息死調査では2006年の喘息死1例と,1991年と2003年の喘息死各1例の登録があった.厚生労働省人口動態統計によると,乳幼児の喘息死亡率の減少傾向が年長児に比べて鈍いことから,本稿では登録された5歳以下の全喘息死亡例(40例)の喘息死の背景や要因を解析した.その結果,1)男女比では男が24例,女が16例であり,そのうち1998年以降の喘息死は男で7例,女で2例であった.2)乳幼児の喘息死の平均死亡年齢は2.2歳と低く,喘息の発症から死亡までの平均期間が1.1年,初診から死亡までの平均期間が0.7年と短かった.3)心血管系・中枢神経系障害の合併率が15%と高かった.4)喘息死亡前1年間の喘息重症度では,重症者が約半数を占めていたが,重症発作に関連する既往歴(意識障害を伴なう,挿管を要するなど)と喘息死の関連は明らかではなかった.5)死亡前の薬物治療では,長期管理薬である吸入ステロイド薬・抗アレルギー薬の使用例が少なく,多くがテオフィリン製剤・β2刺激薬などを用いた対症療法に頼っていた.6)死亡場所は自病院が多かった.
      乳児喘息の診断は時に困難であり,このような場合には専門医への早期受診を促進し,喘息の早期診断と発作の十分なコントロールが求められる.また,乳幼児期の喘息死の把握はなかなか困難なところがあり,実態は不明な点が多い.喘息を疑って乳幼児を治療する場合,初発発作での喘息死がありうることを十分認識して対応する必要がある.この年齢層の死亡についてはさらに死因と病態の解明を進める必要がある.
日韓招待講演報告
会報 国・関連機関等における小児アレルギー疾患に関する疫学調査研究の現状─第3報
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