日本小児アレルギー学会誌
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24 巻, 1 号
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第46回日本小児アレルギー学会会長講演
第46回日本小児アレルギー学会シンポジウム1 食物アレルギー:診断と治療の標準化に向けての軌道設計
  • 宇理須 厚雄, 海老澤 元宏
    2010 年 24 巻 1 号 p. 8
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/09
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  • 伊藤 浩明
    2010 年 24 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/09
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    食物アレルゲン特異的IgE抗体検査は,患者血清中の特異的IgE抗体を高感度に検出して,食物アレルギーの診断に対する感度は比較的良好である.一方,抗体陽性であっても誘発症状を認めない偽陽性がしばしば存在し,臨床現場ではある抗体価以上であれば食物アレルギーと診断できる確率(陽性的中率)を参考にすることが限界である.しかし,食物間の交差抗原性を考慮して複数の食品の抗体価を比較することにより,経口負荷試験に頼らなくても診断精度を向上させる工夫ができる.さらに,アレルゲン成分別に抗体価を測定して,感度・特異性に優れた検査を開発する研究が進められている.
  • 柴田 瑠美子
    2010 年 24 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/09
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    食物経口負荷試験はアレルゲン食品を経口摂取し症状誘発の有無を確認する検査であり食物アレルギーの最も確実な診断法である.我国における経口負荷試験の標準化をめざした“食物経口負荷試験ガイドライン2009”が日本小児アレルギー学会により発行された.経口負荷試験は,1)即時型症状の既往例での原因アレルゲンの診断,2)乳幼児アトピー性皮膚炎,特異的IgE抗体陽性などの感作があるアレルゲン食品,3)耐性獲得の判断を目的として行われる.負荷試験では,病歴やアレルギー検査値などを参考に適応判断を行い,ガイドラインを参考に安全性と正確性を確保した経口負荷試験が実施されることが重要である.
  • 相原 雄幸
    2010 年 24 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/09
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    食物依存性運動誘発アナフィラキシーはまれな疾患であるが,正しく診断し原因食物を同定することができれば患者のQOLを飛躍的に向上させることができる.診断には最重症例を除き,誘発試験を実施することが望ましい.
    平成21年4月に日本小児アレルギー学会から食物アレルギー負荷試験のガイドラインが発刊され,その中に食物依存性運動誘発アナフィラキシーの誘発試験の標準的方法を記載した.そこで,この誘発試験法について紹介し,今後の診断率の向上を期待したい.
  • 伊藤 節子
    2010 年 24 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/09
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    食物アレルギーを発症しやすい乳幼児期は成長期でもあるため,食品除去に際しては栄養面と患児および家族のQOLの維持に関する配慮が極めて重要である.明確にアレルゲンと診断された食品の除去は行うが,その他の食品については,むしろ積極的な摂取を行い,摂取食品の選択の幅を狭めないようにする.これまでの栄養指導は,食品除去と除去食品の代替による栄養面の配慮に終始していたが,今後は,正しい抗原診断に基づく必要最小限の食品除去に引き続いて行う「食べること」を目指した積極的治療のためのtailor-made dietが必要となる
    食品を低アレルゲン化して積極的な摂取を促すことは食物アレルギー児および家族のQOLの向上に有用であるのみならず,早期のアウトグローにつながる可能性もあり,食物アレルギー児の食生活の豊かさと安全性に寄与するところが大きい.今後は,感作状態と経口負荷試験の結果を生かした食品中の抗原量に基づく食事指導を中心としたtailor-made dietが可能となり,より積極的に耐性の獲得を目指していくことが必要である.
  • 柳田 紀之, 今井 孝成, 海老澤 元宏
    2010 年 24 巻 1 号 p. 39-46
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/09
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    経口減感作療法の有効性の報告は増えてきているが,現在,経口減感作療法に標準化された方法はない.当院では学童期以降で少量の原因食物の摂取でアナフィラキシー症状が誘発される児を対象に初期量を閾値と同量,1日2回摂取,100%増量とする急速法を6~9日間かけて行なっている.当院の経験とこれまでの報告を交えて適応や方法について検討し,経口減感作療法の標準化の可能性を探ってみたい.
  • 柘植 郁哉, 近藤 康人, 安在 根, 湯川 牧子, 小松原 亮, 成瀬 徳彦, 平田 典子, 鈴木 聖子, 安藤 仁志, 宇理須 厚雄, ...
    2010 年 24 巻 1 号 p. 47-51
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/09
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    6歳以上の鶏卵アレルギー児37例を対象に,低アレルゲン化鶏卵を用いた経口免疫療法のプラセボコントロール試験を行い,併せて各種免疫学的パラメーターを検討した.
    結果は,実薬群の耐性化率が,1ヵ月で6/23(26.1%),2ヵ月が9/23 (39.1%)であり,偽薬群では1/11(9.1%)であった.免疫学的パラメーターでは,特異的IgG4の増加,INF-γ/IL-4の両者の抑制,TGF-βの増加が認められ,本治療法でのTh1/Th2の両者の抑制に,TGF-βが関与する可能性が示唆された.
    経口免疫療法を確立するためには,基礎的検討を織り交ぜた臨床研究を行い,成果を次の臨床研究に繋げていくといった積み重ねが必要と考えられた.
第46回日本小児アレルギー学会シンポジウム4 喘息と気道感染の接点
  • 土居 悟, 河野 陽一
    2010 年 24 巻 1 号 p. 52
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/09
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  • 玉利 真由美, 広田 朝光
    2010 年 24 巻 1 号 p. 53-60
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/09
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    近年,アレルゲンに対する免疫応答の始動には,病原体成分(PAMPs)と細胞障害成分(DAMPs)との協同作用が必要であることが明らかとなってきた.我々は自然免疫に関連する遺伝子群の多型について気管支喘息やその関連形質との相関を検討してきた.TSLPは樹状細胞によるTh2免疫応答を誘導するが,我々はプロモーター領域に存在するTSLPの遺伝子多型が気管支喘息の発症と相関することを見いだした.また,IL-18は感染や慢性炎症において,Th1およびTh2免疫応答を増強するサイトカインであるが,我々はIL-18の遺伝子多型が成人気管支喘息重症度と関連することを報告した.このIL-18の遺伝子多型はLPSで刺激した単球においてIL-18 mRNAのより強い誘導に影響し,機能亢進に働くことを見いだした.さらなる遺伝解析はアレルギー疾患のより新しい診断法や治療法,予防法の開発に貢献していくものと期待される.
  • ―RSV感染とSOCS発現について―
    橋本 浩一, 川崎 幸彦, 細矢 光亮
    2010 年 24 巻 1 号 p. 61-70
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/09
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    Respiratory Syncytial Virus (RSV)はパラミクソウイルス科,ニュ-モウイルス属のエンベロープをもつマイナス1本鎖のRNAウイルスである.疫学研究よりRSVによる下気道感染症と喘鳴性疾患との関連が示唆されてきた.ウイルス感染後の喘鳴性疾患の発症機序は宿主側因子-ウイルス側因子の相互作用(Gene-Virus Interaction)によると考えられている.JAK/STATシグナルの負のフィードバック機構の1つとしてSOCS (suppressor of cytokine signaling)ファミリーがある.我々のヒト喉頭癌細胞株HEp-2細胞を用いたRSV感染後のSOCS mRNA発現の検討では,感染の極初期にSOCS1,SOCS3,CISの発現誘導が観察された.今後,免疫細胞,気道を構成する各種細胞におけるSOCS発現を検討することにより,RSV下気道炎後の反復性喘鳴や小児喘息発症の病態が明らかになることを期待される.
  • 錦戸 知喜
    2010 年 24 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/09
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    吸入ステロイドの導入によって小児の気管支喘息(喘息)管理は飛躍的に改善したが,乳幼児の喘鳴/喘息発作による入院はさほど減少していない.小児の喘鳴/喘息発作にはウィルス感染症の関与が大きく,80~90%を占めるといわれており,中でもライノウィルス(RV)が増悪因子としても,発症の予測因子としても重要である.我々の施設では喘息発作入院例を対象にPCR法を用いて多種類のウィルスを同時検出,検討している.2009年7月から10月までの結果は,症例全体でウィルス検出率は52%.そのほとんどがRVであり,RVのみで45%検出された.またRVは喘息発症予測因子としても重要でRSウィルスよりも重要との報告もある.ウィルス感染に伴う喘鳴の治療については確立していないと思われ,ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)の短期投与やステロイド薬の効果もさほど有効な結果は得られていない.ウィルス感染を契機とした喘鳴の治療には課題を残しており今後の検討が期待される.
  • 尾内 一信
    2010 年 24 巻 1 号 p. 75-86
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/09
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    肺炎クラミジアは,人に急性感染,慢性感染を起こし喘息の急性発作ばかりでなく,喘息の本態である慢性炎症にも関与している可能性が高い.肺炎クラミジア感染と喘息との関連については,エビデンスが十分に集積している.喘息の慢性安定期に抗菌薬を投与すると喘息の症状や肺機能が一過性ではあるが改善したとする報告は多い.喘息の急性発作時に抗菌薬を投与すると肺機能が喘息の症状や肺機能が一過性ではあるが改善したとする報告も見られるがまだまだ不十分である.喘息に対して抗菌薬を投与すべきかどうかについては更なるエビデンスの集積が不可欠であるが,もし抗菌薬を投与すべき時は肺炎クラミジアに抗菌力を有するマクロライド系などの抗菌薬を選択すべきである.
  • 榎本 雅夫, 島津 伸一郎
    2010 年 24 巻 1 号 p. 87-94
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/09
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    近年,日本を含む先進諸国における各種のアレルギー疾患の増加は著しく,発展途上国においてもその増加傾向が認められている.筆者らの耳鼻咽喉科領域の疫学調査によると,スギ花粉症でその有病率は16.2%から細菌の10年間で26.5%と大幅に増加している.増加の要因として,花粉やダニなどのアレルゲンの増加,食生活・栄養の変化,大気汚染の影響などが言われているが,興味を持たれているのは先進諸国における清潔志向,予防接種の普及,抗生物質の乱用などによる微生物への曝露機会の減少(衛生仮説;Hygiene hypothesis)である.Th2優位の免疫系を持って生まれる新生児がTh1/Th2バランスのとれた免疫系へと発達するには程度な微生物の刺激が必要で,その破綻が近年のアレルギー疾患の増加に関係しているとする考え方である.結核菌感染や腸内細菌とアレルギー発症に関する疫学調査などの成績はそれを裏付けつつあり,そのメカニズムの詳細についても検討されつつある.また,この様な観点から,各種アレルギー疾患に結核菌や腸内細菌(プロバイオティクス)投与する臨床試験も行なわれつつあり,一定の効果が得られつつある.将来,発症予防にも役立ちそうであるものの,いつ,どのような人に,どの菌種を,どの程度の量を投与するのがベストであるかは今後の臨床成績の集積に検討に委ねたい.
第46回日本小児アレルギー学会シンポジウム5 小児アレルギー研究の方向性を探る
  • 浜崎 雄平, 近藤 直実
    2010 年 24 巻 1 号 p. 95-96
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/09
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  • 下条 直樹, 河野 陽一, 鈴木 洋一
    2010 年 24 巻 1 号 p. 97-104
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/09
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    アレルギー疾患の診療にはまだまだ多くの未解決の問題がある.アレルギー専門医による今後のさらなる研究が必要であり,コホート調査を含む疫学研究はその基本と考えられる.最近の数年間に我々が行ってきた疫学研究からいくつかの興味深い示唆が得られておりここに紹介する.1)乳幼児健康診査受診児を対象としたコホート調査からは,アトピー性皮膚炎の自然歴が非常にheterogeneousであり,早期発症に男児,食物アレルギーの合併,出生時からのネコの飼育が関連することが明らかとなった.2)小学生を対象とする遺伝疫学研究からは,ダニに対する感作の程度は幼児期の保育園通園の有無により影響されるが,CD14やIL-4レセプターαの遺伝子多型の違いによって反応が異なっていた.すなわち,ダニ特異IgE抗体価は遺伝子・環境因子の相互作用により規定されていることが明らかとなった.欧米,さらに最近では東南アジアの国々でも,アレルギー疾患の発症・経過の解析のためにコホート研究が行われているが,我が国ではほとんど行なわれていない.我が国独自の包括的コホート研究が必須と考える.
  • 荒川 浩一
    2010 年 24 巻 1 号 p. 105-112
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/09
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    アレルギー疾患は,国民病とも考えられるように非常に増加している.その原因を明らかにして予知・予防を行うことは国民の健康を増進し,延いては医療・社会保障費の削減を導くために重要な課題である.アレルギー疾患は,アレルギーマーチと呼ばれるように胎内でプライミングされ,乳幼児期に発症していくものが多く,まさにその時期を診療している小児科医こそがこの問題に対して真摯に取り組むべきものである.わが国特有のアレルギー疾患発症因子を解明するためには,多数の対象を用いた精度の高い出生コホート調査を行うことが必要である.それによりハイリスク者を選別することができ,一次予防につなげられる.我々が行った出生コホート調査を概説し,プライミングの時期である妊娠中に実施するような一次予防について,特にエピジェネティクスの観点から言及した.
  • 宇理須 厚雄, 成瀬 徳彦, 小松原 亮, 平田 典子, 鈴木 聖子, 安藤 仁志, 安 在根, 湯川 牧子, 近藤 康人, 柘植 郁哉, ...
    2010 年 24 巻 1 号 p. 113-116
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/09
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    食物アレルギーの経口免疫療法は積極的治療として期待されている.投与方法として少量漸増法,急速免疫療法があるが,特に後者は安全性の点でさらなる検討が必要である.安全性確保を目指した方法として舌下免疫療法,低アレルゲン化食物抗原による経口免疫療法などがある.有効性だけではなく安全性も高い免疫療法が求められる.安全な投与方法の検討やそれに用いられる抗原の開発が急務である.さらには,その機序の解明も同時に行われるべきである.
  • 眞弓 光文
    2010 年 24 巻 1 号 p. 117-119
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/09
    ジャーナル 認証あり
    食物アレルギーのほとんどは小児期に発症し,時には致死的な症状を引き起こすこともあり,また,近年,その有症率の増加が指摘されていることから,その病因・病態の正確な理解に基づく治療法の確立は重要な課題である.食物アレルギーの発症には経口免疫寛容の不成立が関係していると推測されるが,なぜ一部の人に特定の食物に対するアレルギーが成立するのかは未だほとんど明らかにされていない.また,小児期発症の食物アレルギーのかなりの部分は成長とともにその原因食物に対する耐性を獲得し,治癒するが,その機序も未だ不明である.食物アレルギーの発症予防やより早い耐性獲得・治癒を可能とするためにも,発症機序と耐性獲得機序の解明が待たれる.
  • 近藤 直実
    2010 年 24 巻 1 号 p. 120-124
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/09
    ジャーナル 認証あり
    小児アレルギー研究の方向性としてトランスレーショナルリサーチの真の展開について著者らの検討を含めて概説した.
原著
  • 伊藤 浩明, 縣 裕篤, 宇理須 厚雄, 神田 康司, 近藤 康人, 坂本 龍雄, 寺田 明彦, 宮田 隆夫, 山田 政功, 鳥居 新平
    2010 年 24 巻 1 号 p. 125-134
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/09
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    【目的】小児気管支喘息の治療状況をJapanese Pediatric Asthma Control Program (JPAC)を用いて横断的に調査した.【対象と方法】愛知県下の病院小児科38施設で,平成20年11月に喘息管理のために定期受診した患児を対象として,JPACを用いた調査と,ガイドラインに基づく主治医の重症度判定を行った.【結果】対象者は男児535人,女児283人,平均年齢7.0±3.7歳.JPAC合計点数で,15点(完全コントロール)が27.5%,14~12点(良好なコントロール)が47.1%,11点以下(コントロール不良)が25.4%であった.重症度判定とJPAC合計点数には有意な関連が認められたが,軽症持続型の44.7%,中等症持続型の71.9%でJPACではコントロール不良に該当した.吸入ステロイドは52%,ロイコトリエン受容体拮抗薬は77%に使用されていた.【結論】吸入ステロイドの導入率向上にもかかわらず,JPACによるコントロール状況の評価は主治医の重症度判定よりも低めに出る傾向が認められた.
  • 尾形 善康, 在津 正文, 山本 修一, 室 英理子, 西 奈津子, 下田 良, 徳永 藏, 濱崎 雄平
    2010 年 24 巻 1 号 p. 135-142
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/09
    ジャーナル 認証あり
    食物過敏性直腸炎は全身状態が比較的良好で体重減少などを認めない乳幼児期早期の血便では考慮すべき疾患である.診断のgold standardは原因食物抗原の除去負荷試験であるが,日常診療における診断は,腸管感染症や裂肛などの除外に加えて,原因と推定される食物抗原の除去により症状が改善する事で経験的になされる事も多い.しかし経験的診断では,過剰診断による不必要な食物制限や代替ミルク使用が懸念される.昨今,食物過敏性直腸炎の病理組織所見による診断が提唱されており,下部消化管内視鏡検査は客観的診断根拠として有用であると考えられる.今回,我々は比較的全身状態が良好な粘血便を呈する3ヶ月男児を経験した.授乳中の母親の乳製品の不十分な摂取制限で症状の改善を認めなかったが,母親は母乳中止には消極的であった為,下部消化管内視鏡による直腸粘膜病理所見より病理学的に好酸球性直腸炎と診断し,母乳中の食物抗原による食物過敏性直腸炎を疑って,母乳中止および精製アミノ酸乳による栄養への変更により症状は改善した.本症例において下部消化管内視鏡検査は安全に行えて有用であったと考えられた.
  • 西藤 成雄
    2010 年 24 巻 1 号 p. 143-150
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/09
    ジャーナル 認証あり
    目的:遮断法による気道抵抗測定装置(MicroRint®)が開発され,気管支喘息の早期診断や長期管理の指標として有望視されている.しかし本装置を用いた日本の健常小児の気道抵抗 (Rint)の標準値は確立されていない.本調査では,定期受診した非発作時の気管支喘息児のRintから年齢と身長による予測式を検討する.
    対象と方法:2週間以上無症状の気管支喘息児において気管支拡張薬吸入前後でRint測定を行い,変動率が10%未満の症例における吸入前値を採用して,身長と年齢からのRintの予測式を検討した.
    結果:対象の中で上記条件を満たした症例は63例.年齢の中央値は5.3歳,身長の中央値は109cmであった.年齢をx,Rintをyとした場合は y=-0.0529x+0.9552,身長をx,Rintをyとした場合は y=-0.0109x+1.8525 で表される線形回帰式を得た.この回帰式の決定係数 r2 はそれぞれ0.1656と0.2242であり,身長による予測式が高い相関を示した.
    結語:Rintは身長との相関が高いことが報告されており,本調査においても同様の傾向が認められた.今後は健常小児を元にした予測式の検討が進むことを期待する.
  • 正田 哲雄, 磯崎 淳, 小川 倫史, 野間 剛, 中村 陽一, 川野 豊
    2010 年 24 巻 1 号 p. 151-154
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/07/09
    ジャーナル 認証あり
    症例は5歳,男児.3歳時の冬から寒冷部位に蕁麻疹を発症した.症状が増悪傾向となり当科を受診した.寒冷刺激試験は陽性で,他の所見を認めず,本態性局所寒冷蕁麻疹と診断した.寒冷刺激試験で血漿ヒスタミンを経時的に測定したところ,著明な上昇を認めた.さらにヒスタミンH1受容体拮抗薬により症状の軽快を認めたことから,本症例ではヒスタミンの関与が示唆された.小児例に関する報告は稀少であるので報告した.今後症例の蓄積とともに,ヒスタミンを含む化学伝達物質の更なる検討が必要であると考えられた.
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