日本小児アレルギー学会誌
Online ISSN : 1882-2738
Print ISSN : 0914-2649
ISSN-L : 0914-2649
24 巻, 3 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
総説
  • 三浦 克志
    2010 年 24 巻 3 号 p. 291-298
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/17
    ジャーナル 認証あり
    小児科領域におけるアレルギー疾患(気管支喘息,アトピー性皮膚炎,食物アレルギー等)は増加傾向にある.しかし,アレルギー疾患の診療レベルには地域医療格差が存在する.本稿では地域医療の問題点,県別日本アレルギー学会認定専門医(小児科)偏在の現状を検討した.さらに,この地域医療格差をなくすための日本小児アレルギー学会や日本アレルギー学会として取り組むことが望まれる検討事項をあげてみた.アレルギー疾患の地域医療格差の是正に繋がることを祈る.
原著
  • 冠木 智之, 高田 佳宣, 藤塚 聡, 田村 喜久子
    2010 年 24 巻 3 号 p. 299-304
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/17
    ジャーナル 認証あり
    非即時型の発症を認めた食物によるアナフィラキシー患者2例を経験した.1例は6歳男児でアレルギー患者用ソーセージを摂取3時間35分後にアナフィラキシーを認めた.患児はカゼイン特異的IgE抗体が陽性で,スキムミルクによるアナフィラキシーの既往があることから,ソーセージ中に混入されていたカゼインによる非即時型アナフィラキシーと診断した.もう1例は6か月男児でコメ摂取3時間後にアナフィラキシーショックを認めた.コメ特異的IgE抗体は陰性であったが,経口負荷試験陽性およびコメに対するリンパ球幼若化試験陽性よりコメによる非即時型アナフィラキシー様反応と診断した.
    両症例とも症状は重篤であり救急処置を必要とした.一般にアナフィラキシーはIgE依存性で即時型の発症を認めるが,食物によるアナフィラキシーでは非即時型のアナフィラキシー(様)反応を認める場合がある.まれではあるが食物によるアナフィラキシーの診断あるいは負荷試験にあたっては非即時型の発症も考慮すべきと考えられた.
  • 竹中 学, 寺田 明彦, 須田 裕一郎, 平林 靖高, 水野 美穂子
    2010 年 24 巻 3 号 p. 305-312
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/17
    ジャーナル 認証あり
    新生児・乳児消化管アレルギーは,生後数ヶ月以内に牛乳由来ミルクなどを摂取後に主に消化器症状で発症し,通常はアレルギー用ミルクなどにより改善する予後良好な疾患である.我々は肥厚性幽門狭窄症を合併した症例を報告する.日齢28男児.嘔吐,血便で発症した.母の乳製品の除去による母乳栄養や絶食では改善せず,肥厚性幽門狭窄症が進行した.確定診断のための負荷試験を実施せずに外科的治療を優先して行い改善した.牛乳,αラクトアルブミン,βラクトグロブリンならびにカゼインに対する特異的IgE値はいずれも0.34 UA/ml以下であったが,αラクトアルブミン,βラクトグロブリンさらにκカゼインに対する特異的リンパ球刺激試験は陽性であった.得られた病理組織にて幽門筋層に好酸球浸潤と脱顆粒を認めた.本例は好酸球浸潤を伴う肥厚性幽門狭窄症を合併した新生児・乳児消化管アレルギーの症例と考えられた.
  • 藤高 道子, 喜多村 哲朗, 杉原 雄三, 岡畠 宏易, 池田 政憲, 有田 昌彦
    2010 年 24 巻 3 号 p. 313-320
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/17
    ジャーナル 認証あり
    アレルギー専門医が少なく,一般の小児科医が食物アレルギー患児を診療することが日常的な広島県の小児科医師134名(開業医98名,勤務医30名;専門医11名,非専門医113名)における食物経口負荷試験(OFC)の実施状況をアンケート調査した(2009年4~5月調査,回収率64.7%).OFCの実施率は22.4%(134名回答中30名;開業医は開業医中12.2%,勤務医は勤務医中56.7%,専門医は専門医中72.7%)で,全国調査よりも特に開業医の実施率が低く,入院より外来で実施する医師が多かった.OFCを実施しない理由には「入院設備がない」「誘発リスク」が多く,「必要性を認めない」は少なかった.OFCを行いにくいと思う医師は83.5%(133名回答中111名)で,OFC実施医師でも約半数が行いにくいと答え,その理由には「誘発リスク」「スタッフ・部屋が確保できない」が多く,保険点数・方法に関する理由は少なかった.OFCを普及するには,誘発リスクに対応できるよう,医療環境の不備を補い合う施設間の協力が必要と思われた.
  • 西間 三馨, 森川 昭廣, 井上 壽茂
    2010 年 24 巻 3 号 p. 321-336
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/17
    ジャーナル 認証あり
    【目的】5歳から15歳までの日本人小児気管支喘息患者に対する,ブデソニド・ドライパウダー吸入薬(BUD)の有効性と安全性を,フルチカゾンプロピオン酸エステル・ドライパウダー吸入薬(FP)を参照薬として検討した.
    【方法】本試験は無作為化,多施設共同,第III相非盲検臨床試験として実施した.吸入ステロイド薬による治療を必要とし,正常予測値に対する起床時のピークフロー値(%mPEF)の平均が90%未満で,軽症持続型,中等症持続型,又は重症持続型1に当てはまり,タービュヘイラー®及びディスカス®が適切に使用できる5歳から15歳までの患者を対象とした.患者はBUD100μg及び200μg1日2回,もしくはFP50μg及び100μg1日2回を6週間吸入した.有効性の主要評価項目は%mPEFの投与開始6週後におけるベースラインからの変化量とした.
    【結果】治験薬が投与された244例(BUD群120例)を解析対象とした.%mPEFの投与前後での変化量の平均値は,BUD群で8.0%,FP群で7.0%であり,両群とも有意に改善した.%mPEFの投与前後での変化量の群間差の推定値は0.95%(95%信頼区間:-2.77~4.67)であり有意差は認められなかった.有効性の副次的評価項目で,BUD群は殆どの項目において有意な改善が認められた.有害事象の発現は,BUD群で61例(51%),FP群で60例(48%)であり,発現頻度の高かった事象は,上気道感染,インフルエンザ,及び胃腸炎であった.副作用は,BUD群の軽度の発声障害1例のみであった.重篤な有害事象の発現例数及び有害事象による中止例数において両群に明らかな差は認められず,その他の安全性評価項目の結果から安全性の懸念は示唆されなかった.
    【結論】ブデソニド・ドライパウダー吸入薬100μg及び200μg1日2回の6週間投与は,吸入ステロイド薬による治療を必要とする5歳から15歳までの日本人小児気管支喘息患者に有効であり,安全性も良好であった.
小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2008解説「ガイドラインをどう読むか」
  • 小田嶋 博
    2010 年 24 巻 3 号 p. 337-340
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/17
    ジャーナル 認証あり
    小児気管支喘息患者では個人の体力に応じた運動負荷を行なえば発作が誘発(運動誘発喘息)される.重症例程,また年長児程頻度が高く臨床的にも問題となる.診断には運動負荷を行なうがいくつかの方法があり,日常臨床,日常生活の実際との関連も考慮して実施する.治療はβ2刺激薬の運動前の予防投与を基本とし,運動は予防しながら実施することが,運動誘発喘息の軽減に連がる.その他,トレーニング効果,ウォーミングアップ効果も考慮して運動に参加させていくことが肝要である.
  • 望月 博之
    2010 年 24 巻 3 号 p. 341-348
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/17
    ジャーナル 認証あり
    小児気管支喘息治療・管理ガイドライン(以下,JPGL)は対象を小児に絞り,乳児から思春期までの喘息の年齢層別の特徴を考慮した,簡潔明瞭な喘息の治療,管理のためのガイドラインで,近年,広く活用されている.最新の2008年版では重症度の評価法や治療ステップに関しての改訂が行われたが,第13章「小児の肺機能」においても,最近の知見を踏まえた改訂が随所で行われている.基本的な肺機能検査として,ピークフローモニタリングやスパイロメーターを用いてのフローボリューム曲線,パルスオキシメーターによる酸素飽和度の測定について解説されているが,気道過敏性の測定やインパルス・オッシレーション法による呼吸抵抗の測定,さらに呼気中一酸化窒素(exhaled nitric oxide; eNO)濃度の測定についても言及されている.肺機能検査は,喘息の診断だけでなく重症度の判定にも重要であるが,さらに長期管理における治療のステップアップやステップダウン,患者教育の向上のためにも,これらの検査を適切に用いて肺機能を客観的に評価することが薦められる.
食物アレルギー経口負荷試験ガイドライン2009解説
日韓招待講演報告
若手女性研究者,夢を語る
feedback
Top