日本小児アレルギー学会誌
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24 巻, 5 号
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総説
  • 吉原 重美
    2010 年 24 巻 5 号 p. 659-668
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/19
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    小児気管支喘息のフェノタイプについて,ウイルス感染により発症するvirus-induced asthmaについて述べる.乳幼児の気管支喘息は,ウイルス感染によって誘発される喘息が多く,気道リモデリングを起こす可能性も報告されている.そのため,JPGL 2008あるいはPRACTALL Consensus Reportでは,喘息における発症および増悪因子のひとつとして,アレルゲンとともに気道ウイルス感染を重要視している.本稿では,著者らの成績を中心にRSウイルス細気管支炎と気管支喘息発症の関連性について概説した.RSウイルス感染で起こる重症細気管支炎患児において,1)クレオラ体陽性の乳児は,5年以内に気管支喘息になりやすい2)遺伝的にTh1系のサイトカインであるIFN-γ産生障害がある場合喘息になりやすい3)抗RSウイルスヒト化モノクローナル抗体であるパリビズマブ投与により3歳までの反復性喘鳴が抑制される.以上の成績から,Virus-induced asthmaに対する早期介入が重要と考えられる.さらに,乳児期のRSウイルスによる重症細気管支炎の予防が,本邦特有のダニによるアトピー型喘息発症を抑制するか否かの結果が注目されている.
  • 松本 健治
    2010 年 24 巻 5 号 p. 669-674
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/19
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    腸内細菌叢は宿主の免疫系の発達や経口免疫寛容の誘導に極めて重要な役割を演じることが明らかになっている.アレルギー疾患児では便中乳酸菌群が少ない事が観察され,アトピー性皮膚炎の発症予防を目的としたプロバイオティクスの有効性も明らかにされてきた.しかし,その作用機序はほとんど不明であり,また,妊娠末期の妊婦へのプロバイオティクス投与は児のIgE抗体産生やアトピー性皮膚炎以外のアレルギー疾患の発症には影響を与えない事も明らかとなってきた.今後は腸内細菌叢が免疫系に影響を与える機序(特に経口免疫寛容)の解明とともに,食物アレルギーの経口免疫療法に有益な菌種が見いだされる事が望まれる.
  • 細木 興亜, 長尾 みづほ, 藤澤 隆夫, 宇理須 厚雄
    2010 年 24 巻 5 号 p. 675-684
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/19
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    重症心身障がい児(者)は喘鳴を呈することが多いが,喘息の診断,鑑別においては,基礎疾患の多様性や複合する合併症のため,通常の診断基準,治療指針などをそのまま適応させ難い.我々は重症心身障がい児(者)を対象にアレルギー評価,呼吸機能評価を行っており,本稿では当施設での取り組み,自験例を交えながら今後の展望について述べる.
    1.多くの喘鳴は気道確保,体位変換,緊張緩和等の処置をしっかり行うことで除去しうる.
    2.喘息と診断した例では,β2刺激剤の吸入前後にimpulse oscillometry(IOS)を行うことにより気道可逆性を確認できた.IOSは重症心身障がい児(者)の呼吸機能検査としての可能性を有している.
    重症心身障がい児(者)に合併する気管支喘息の診断と治療のエビデンス確立のために,適切な診断手順,重症心身障がい児(者)に適応可能な検査など更なる検討を要する.
原著
  • 飯尾 美沙, 大矢 幸弘, 竹中 晃二
    2010 年 24 巻 5 号 p. 685-692
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/19
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    目的:喘息管理のための具体的行動をどのように捉え,実践・継続しているのかという点に主眼を置いた研究は少ない.そこで,喘息患児を養育している保護者が行う環境整備行動に影響を与える要因,および行動継続のプロセスを明らかにするために面接調査を行い,関連要因を検討した.
    方法:10歳未満の患児を養育している保護者74名に半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにて質的に分析を行った.
    結果・考察:確定診断後は【入院経験】および【患者教育】が行動開始の動機づけに良い影響を与えていた.行動開始後には,【葛藤,負担感】が出現するものの,【調節要因】および【媒介要因】の影響・作用を受けることによって,内発的動機づけおよび負担感の軽減に繋がり,行動の継続というプロセスを辿ることが明らかになった.環境整備行動の継続を意図した教育支援として,<資源の活用>や<習慣>などの【調節要因】を強調し,【媒介要因】である<自己効力感>および<結果予期>を高めるアプローチの有効性が示唆された.
  • ―長期投与症例の追跡調査―
    岩田 力, 栗原 和幸, 小田島 安平, 宇理須 厚雄, 井上 壽茂, 河野 陽一, 森川 昭廣
    2010 年 24 巻 5 号 p. 693-704
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/19
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    オノンドライシロップ10%(プランルカスト水和物)の長期投与における安全性及び有効性を検討するため,プロスペクティヴ調査の対象症例のうち追跡可能であった症例に対して使用実態下における調査を実施し,全国の医療機関33施設より55例を収集した.1年以上の長期投与は34例であった.
    安全性解析対象症例55例中,副作用発現症例は1例(発現率1.82%)であった.発現内容は非重篤の肝機能異常であった.
    有効性解析対象症例50例中,改善症例は46例(改善率92.0%)であった.背景要因別での有効性の検討結果からは,特に問題を認めなかった.
    以上,本剤は1歳未満の気管支喘息に対する長期投与において,安全性及び有効性に優れた薬剤であることが確認された.
  • 岡部 美恵, 足立 雄一, 板澤 寿子, 中林 玄一, 淵澤 竜也, 五十嵐 隆夫, 村上 巧啓, 尾上 洋一, 高尾 幹, 足立 陽子, ...
    2010 年 24 巻 5 号 p. 705-712
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/19
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    6歳以上の喘息児に関する疫学調査は,世界共通の質問票(ISAAC)を用いて広く行われているが,乳幼児を対象とした質問票の妥当性に関するエビデンスは少ない.そこで,新たに本邦ガイドライン(JPGL)に準じて作成した質問票の妥当性を検討した.7つの医療施設を受診した5歳以下の児の保護者に『ISAAC基準の質問票』ならびに『JPGL基準の質問票』への回答を依頼し,その回答と医師の判断を0~2歳児と3~5歳児でそれぞれ比較検討した.リクルートされた369名中353例(95.7%)を解析した結果,期間有症率について,0~2歳児では『JPGL基準の質問票』の陽性的中率は0.70であったのに対し,『ISAAC基準の質問票』では0.50と低値であった.一方,3~5歳では,それぞれ0.68と0.74であった.以上より,乳幼児の疫学調査には,2歳以下では『JPGL基準の質問票』を,3歳以上では『ISAAC基準の質問票』あるいは『JPGL基準の質問票』を用いることが適当であると考えられた.
  • 田中 裕也, 安部 信吾, 笠井 和子, 中岸 保夫, 三好 麻里
    2010 年 24 巻 5 号 p. 713-718
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/19
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    【はじめに】画像上スキルスが疑われたアレルギー疾患の既往がない好酸球性胃腸炎の1例を経験したので報告する.【症例】14歳男児.主訴;腹痛と嘔吐.既往歴;特記すべきことなし.【現病歴】約2週間にわたる腹痛と嘔吐を認め近医受診.造影CTで胃体下部から上部空腸に全周性の壁肥厚を認め,スキルス腫瘍が疑われ転院となる.【検査所見】WBC 9200/μL(Eos 29.0%)ECP 70.9μg/L.内視鏡的胃十二指腸生検で粘膜への好酸球の浸潤を認めた.【治療経過】プレドニゾロン1mg/kg/dayで治療を開始したところ末梢血好酸球数,血清ECP値は速やかに正常化した.しかしエコー所見の改善が得られず消化管通過障害症状も改善しなかった.外科的治療も検討したが侵襲の大きな手術になることを考慮し,ステロイドパルス療法を2クール行ったところ通過障害症状が改善し経口摂取が可能となった.現在外来でPSLを慎重に漸減中である.【まとめ】好酸球性胃腸炎はアレルギー素因のない場合でも発症しうるので鑑別診断として注意を要する.本症例は早期の診断と治療により外科的治療を避けられたと考えられた.
  • 西田 光宏, 吉原 重美, 有阪 治
    2010 年 24 巻 5 号 p. 719-724
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/19
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    良好な喘息症状と肺機能の安定とFENO高値(>60ppb)が解離する症例の病態生理を解明する目的で,11才から14才の3例を対象に,プレドニゾロン0.5mg/kg,7日間内服による気道可逆性とFENOの変化を検討した.3例ともアレルギー性鼻炎とアトピー性皮膚炎を合併し,血清IgE値と血中好酸球数の増加を認めた.
    症例1はプレドニゾロン内服後にFENOは有意に低下したが,プレドニゾロン内服の前後で肺機能の変化を認めなかった.症例2と3はプレドニゾロン内服後にFENOが有意に低下し,プレドニゾロン内服の前後でV50の有意な増加とフローボリュームカーブの変化を認めた.良好な喘息症状と肺機能の安定とFENO高値が解離する症例の一部は,末梢気道における気道炎症残存が解離の背景と推定された.良好な症状とFENO高値が解離する症例の気道炎症と狭窄の検出にプレドニゾロンによるFENO測定と可逆性検討は有用な方法のひとつと考えた.
  • 西間 三馨, 森川 昭廣, 井上 壽茂
    2010 年 24 巻 5 号 p. 725-740
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/19
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    目的:日本人小児気管支喘息患者に対するブデソニド・ドライパウダー吸入薬(BUD)54週間投与時の安全性と有効性を,既存治療を対照に検討した.
    方法:吸入ステロイド薬による治療を必要とし,タービュヘイラー®が適切に使用できる5歳から15歳までの軽症持続型~重症持続型1の気管支喘息患者を対象に,BUD100~800μg/日吸入投与,もしくは既存治療(小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2005に従った適切な薬物療法)を54週間(先行する第III相比較試験での6週間を含む)行った.主要評価項目は有害事象(AE)とした.
    結果:治験薬の投与を受けた241例(BUD群121例)を評価対象とした.AE発現例数はBUD群で118例(97.5%),既存治療群で116例(96.7%)であり,発現頻度が高かったAEは,上気道感染,気管支炎,および胃腸炎であった.重篤なAEはBUD群で10例(8.3%),既存治療群で11例(9.2%)に認められ,死亡例は無かった.副作用は,BUD群で4例に認められた.BUD群における肺機能項目と喘息コントロール関連項目の改善は54週間維持され,54週後における改善の程度は両群でほぼ同様であった.
    結論:5歳から15歳までの吸入ステロイド薬の治療が必要な日本人小児気管支喘息患者に対し,ブデソニド・ドライパウダー吸入薬100~800μg/日,54週間投与の良好な安全性と有効性が確認された.
  • 西牟田 敏之, 佐藤 一樹, 渡邊 博子, 関根 邦夫, 黒崎 知道, 青柳 正彦, 佐藤 好範, 星岡 明
    2010 年 24 巻 5 号 p. 741-752
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/19
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    [目的]JPACを基盤にして,喘息重症度とコントロール状態の両方が判定できる乳幼児用JPACを作成し,有用性を検討した.
    [方法]6医療機関を受診中の5ヵ月~4歳未満の喘息患者167例を対象に,乳幼児用JPACを実施した.乳幼児用JPACの点数と重症度の関係よりコントロール評価を検討した.5~19歳の225例を対象に有用性が検証されている既報のJPACと乳幼児JPACについて,重症度とコントロール点数が同様な傾向を示すかについて,乳幼児用JPACおよびJPACの点数を目的変数とし,年齢層と重症度,および年齢層と重症度の交互作用を要因とした重回帰分析を用いて検討した.
    [結果]見かけの重症度が上昇するに従って,乳幼児用JPAC点数が減少する傾向は有意であった(Jonckheere-Terpstra検定; p<0.0001).4歳以上を対象とした既報のJPACと今回の乳幼児用JPACでは回帰係数(直線の傾き)に差を認めず,同様な傾向を示すことが証明された.
    [結語]乳幼児用JPACは,乳幼児期の喘息の重症度とコントロール状態を判断するツールとして適しており,JPAC同様,ガイドラインに沿った治療管理の普及のために有用であると考えられた.
  • 吉原 重美, 菅野 訓子, 山田 裕美, 福田 典正, 土屋 喬義, 福田 啓伸, 阿部 利夫, 安藤 保, 浅井 秀実, 飯村 昭子, 西 ...
    2010 年 24 巻 5 号 p. 753-762
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/19
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    吸入ステロイド薬およびクロモグリク酸ナトリウム吸入液(DSCG)以外の間欠型または軽症持続型相当の治療を受けているにもかかわらず,夜間に喘息症状が認められる6ヵ月から5歳未満の気管支喘息患児に対し,ブデソニド吸入用懸濁液(BIS)もしくはDSCGによる治療を行い,夜間睡眠障害と保護者のQOLに対する影響を多施設共同オープン無作為化並行群間比較試験により検討した.34名が登録され,観察期間の最後の1週間に夜間睡眠障害が認められないなどの理由による7名を除いた27名を無作為割付し,26名のデータを解析した.主要評価項目である4週間の治療による夜間睡眠障害点数の変化は,BIS群がDSCG群に対し有意な改善を示した.症状点数についても,BIS群がDSCG群に対して有意に改善し,また保護者のQOLはBIS群で顕著な改善が認められた.さらに,夜間睡眠障害点数と保護者のQOLの間に良い相関が認められた.以上より,BISは,患児の夜間睡眠障害を改善することにより,保護者のQOLも改善することが示唆された.
喘息死委員会報告
  • 赤坂 徹, 松井 猛彦, 坂本 龍雄, 末廣 豊, 鳥居 新平, 西間 三馨, 三河 春樹
    2010 年 24 巻 5 号 p. 763-774
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/02/19
    ジャーナル 認証あり
    我が国の喘息死は小児,成人共に減少傾向にあり,喘息死亡率も減少してきている.日本小児アレルギー学会・喘息死委員会宛に2009年10月までに,気管支喘息があって死亡し登録された症例は222例で,対象外を除いて,新規症例3例を加えて202例について解析した.
    死亡前の喘息重症度は不明・無記載を除くと,軽症28%,中等症29%,重症43%であり,発作重症化に関わる要因として,入院歴が52%に認められたが,意識障害を来たすほどの重症発作,挿管,isoproterenolによる治療の既往は少なかった.喘息死に関与した要因では,予期できない急激な悪化,適切な受診時期の遅れが最も多く,次いで患者・家族の判断の誤り,怠薬,薬物過剰が挙げられた.適切な受診時期の遅れを来たした要因として,患者・家族による判断の誤りが多く,短時間作動性β2刺激薬を加圧噴霧式定量吸入器(pMDI)やモーターネブライザー(MoNe)による過度依存の順であった.薬物療法について,1997年以前の死亡例を1998年以降と比較すると,キサンチン製剤とβ刺激薬の内服,自宅でのMoNe吸入,pMDIはやや減少し,吸入ステロイド(ICS)はやや増加傾向にあるものの31%に留まっていた.学校環境での喘息死12例をまとめると,トイレ内が3例,運動に関連したものが3例,学校内で発作があって医療機関を受診途中が3例,学校活動中が2例,帰宅途中が1例であった.
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