日本小児アレルギー学会誌
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29 巻, 5 号
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原著
  • 竹井 真理, 柳田 紀之, 浅海 智之, 佐藤 さくら, 海老澤 元宏
    2015 年 29 巻 5 号 p. 649-654
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/02/16
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    【背景】一部の牛乳アレルギー児を除き乳糖の摂取は可能であるとされているが,乳糖の除去を指導されることも多い.【対象】2007-2013年に即時型牛乳アレルギー児を対象として行った食品用乳糖の食物経口負荷試験(以下OFC)42例の結果を後方視的に検討した.【方法】乳糖3gを摂取後に明らかな客観症状が出現した場合を陽性,軽微な客観症状や主観症状は判定保留として自宅での再現性を確認した.【結果】年齢中央値は53か月,19例(45%)に牛乳に対するアナフィラキシーの既往を認めた.OFC陽性は2例(5%)で,それぞれ嘔吐や局所の蕁麻疹を認めるのみであった.OFC判定保留10例,陰性30例の計40例は自宅で再度乳糖含有食品を摂取し症状の出現は認めなかった.【結語】今回の検討から即時型牛乳アレルギー児の多くは乳糖の摂取が可能であることが明らかになった.また乳糖のOFCでは重篤な症状の出現は認めず,このOFCを安全に施行することができた.乳糖を除去している牛乳アレルギー児に対しては乳糖の摂取が可能であることを確認することが望ましいと考えられた.
  • 柳田 紀之, 佐藤 さくら, 浅海 智之, 砂押 渉, 海老澤 元宏
    2015 年 29 巻 5 号 p. 655-664
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/02/16
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    【目的】休日・夜間診療所における即時型食物アレルギーの現状を前向きに調査する.【対象・方法】2014年度に食物アレルギーの即時型症状を呈し,休日・夜間における急患診療所である相模原市中央メディカルセンター(以下救急診療所)を受診した49例と二次病院である相模原病院(以下病院)でほぼ同時期に調査した29例を比較した.【結果】受診年齢の中央値はそれぞれ2.0歳,4.9歳で,救急診療所の方が有意に低年齢であった(p=0.047).即時型症状の原因となった食物は,救急診療所は鶏卵31%,牛乳16%,ピーナッツ14%,病院は牛乳24%,鶏卵21%,小麦21%の順であった.初発症状の割合は74%,21%で救急診療所が有意に多かった(p<0.001).アナフィラキシーを呈した割合は18%,52%で救急診療所の方が有意に少なかった(p=0.005).治療は抗ヒスタミン薬静脈注射・筋肉注射が2%,59%,ステロイド薬静脈注射0%,52%とともに有意(p<0.001)に救急診療所の方が少なかった.アドレナリン筋肉注射は6%,7%で差はなかった.【結論】救急診療所は病院と比較して軽症例が多く受診するが,重症例も一定数存在するため注意が必要である.
  • 大谷 清孝, 藤本 まゆ
    2015 年 29 巻 5 号 p. 665-675
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/02/16
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    背景・目的:本邦では2011/12シーズンから不活化インフルエンザワクチン(Inactivated influenza vaccine,以下IIV)の接種量が増量となったが,鶏卵アレルギー(Hen's egg allergy,以下HEA)に対する安全性に関する検討は十分でない.方法・対象:2013/14および2014/15シーズンにIIVを単回接種(0.25ml)した3歳未満児を対象とし,鶏卵未摂取群,HEAを完全または部分除去群,非HEAを正常群に群分けした.調査表を用いて,接種後30分間と1週間での有害事象に関する検討を行った.主要検討項目は全身症状の有害事象とした.結果:対象はアナフィラキシー既往の7人を含む191人であった.調査表の有効回答率は接種後30分間が98%(187/191),接種後1週間が60%(116/191)であった.本検討において,全例で重篤な全身症状を認めなかった.各群で局所症状を約10から20%,さらに発熱,呼吸器,消化器症状を約10%認めたが,群間有意差を認めなかった.完全除去群と部分除去群における卵白,オボムコイド特異的IgE値(kUA/l)の中央値(範囲)は各々5(1-63)と7(0.4-60),1(0.2-22)と1(0.1-20)であり,有害事象との関連性はなかった.結論:HEAに対するIIVは安全であることが示唆された.
  • 加藤 泰輔, 山本 佳菜, 渡部 珠生, 河辺 義和
    2015 年 29 巻 5 号 p. 676-684
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/02/16
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    【背景】小児の食物アレルギー有病率や原因食物の変化について過去と比較した文献は少ない.【目的】21年前と比較して小児の食物アレルギー有病率や原因食物がどのように変化したか検討すること.【方法】愛知県蒲郡市内公立小中学校を対象に,平成5年度(n=9,143)と平成26年度(n=6,479)に行った調査を比較検討した.【結果】各年度とも全生徒の4.9%が食物アレルギーと申告したが(p=0.48),学校給食で対応が必要な生徒の割合は増加した(p<0.001).平成26年度の調査では果物が原因食品の第一位となった.その多くは軽症だが,果物アレルギー患者の1.3%で果物の摂取でアナフィラキシーを発症した.原因果物はメロン,スイカ,キウイが多く,学年が上がるにつれて申告率が上昇した.果物アレルギー患者の約9割で花粉症を合併し,約6割で複数の果物に症状を認めた.【結論】食物アレルギー申告率は21年前と比較して変化は認めなかったが,学校給食で対応が必要な生徒は増加しており,特に口腔アレルギー症候群を含む果物アレルギーの申告率が上昇していた.
  • 山田 伸治, 水川 花織
    2015 年 29 巻 5 号 p. 685-690
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/02/16
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    症例は14歳女子.アトピー性皮膚炎,ソバなどの食物アレルギー,花粉症の既往がある.小学6年生頃,種類は不明だがナッツ入りチョコレートを摂取して一過性咽頭違和感を生じた.今回,マカダミアナッツパウダー入りクッキーを摂取,咽頭違和感の後,全身皮膚発赤掻痒,呼吸困難,頭痛,腹痛,血圧低下などを生じ救急搬入,アナフィラキシーショックとしてアドレナリン投与を含む治療を受け軽快した.マカダミアナッツの皮膚テストは陽性,研究用項目として後日提出した特異的IgE(ImmunoCAP® f345)は15.1UA/mL(class 3)であり.マカダミアナッツによる即時型アレルギーと診断した.本例は幼児期から花粉症が先行,ナッツ入りチョコレートで咽頭違和感を生じた既往を有し,今回も咽頭違和感から始まり全身症状に進展した経過のため,マカダミアナッツによる口腔アレルギー症候群(OAS)が関与したと考えた.マカダミアナッツによるOASは,本例のようにアナフィラキシーショックに至る例もあり,一般病院でも可能な,迅速かつ確実な診断方法の早急な確立が望まれる.
  • 楳村 春江, 和泉 秀彦, 小田 奈穂, 漢人 直之, 伊藤 浩明
    2015 年 29 巻 5 号 p. 691-700
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/02/16
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    【目的】鶏卵・牛乳アレルギーであった児の除去解除が進み,完全解除が許可された時点における食生活の実態を評価した.【方法】2013年5月~12月の外来受診時に主治医より完全解除を許可された鶏卵アレルギー16名,牛乳アレルギー1名,鶏卵+牛乳アレルギー21名を対象にアンケート調査を実施した.さらに,その中で協力の得られた21名の保護者からは,写真判定を含む3日間の食事調査を行った.【結果】家庭内,外食,買い物においては改善がみられ,保護者の負担は軽減していた.しかし,大量摂取や卵低加熱料理については,未だに症状誘発に対する恐怖感,不安感を持っていた.食事調査の結果からは,一日当たりの鶏卵,牛乳そのものの摂取は過半数の患児が鶏卵1/2個,牛乳100ml以下であり,牛乳アレルギー児は,カルシウムの摂取量が目標量を下回っていた.【結語】除去食生活の長期化による食べないことの習慣化や保護者の不安などが要因となり,多くの患児にとって「真の解除」を得ることが困難である実態が明らかとなった.
  • 渋谷 紀子, 斉藤 恵美子
    2015 年 29 巻 5 号 p. 701-708
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/02/16
    ジャーナル 認証あり
    【背景】抗原未摂取の乳児の多くが鶏卵に感作されているが,その感作経路については明らかでない.【目的】乳児への卵白抗原感作の機序を明らかにすること.【方法】出生コホート研究により131名の乳児に,1歳まで3か月ごとに診察・プリックテストとアンケート調査を行った.また,母親の過去1か月間の鶏卵摂取量について,0, 1, 6か月時に調査した.【結果】131名のうち,生後6か月時に33名(25%)が卵白抗原に感作されていた.感作頻度は,母親の鶏卵摂取量増加に伴い上昇する傾向があったが,妊娠中および生後1か月時に摂取量が多いと逆に頻度は低下した.母親の鶏卵摂取量が同じ場合には,多く母乳を与えられている児の方が感作や食物アレルギー(food allergy:FA)発症頻度が高かった.【結論】母親の鶏卵摂取の時期や量により,感作状況が修飾される可能性があり,耐性が誘導されるとすれば生後早期までに限られることが示唆された.卵白抗原の感作やFAの成立には環境中より母乳中の抗原の影響が大きいと考えられた.
総説
  • 西小森 隆太
    2015 年 29 巻 5 号 p. 709-717
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/02/16
    ジャーナル 認証あり
    小児アレルギー外来で,難治性蕁麻疹,血管浮腫を診療する機会は少なからずある.多様な原因が報告されているが,遺伝性疾患も可能性の1つとして認識しておくことは重要である.今回の総説では,蕁麻疹,血管浮腫を呈する遺伝性疾患として,前者としてクリオピリン関連周期熱症候群,フォスフォリパーゼCγ2関連抗体欠損免疫異常症,NLRC4異常症,後者として遺伝性血管浮腫について解説した.いずれも有病率は高くはないが,疾患特異的な治療が存在し早期診断が患者QOLの向上につながる.診断のためには,まずその疾患の存在を知り,臨床像を把握しておく事が重要である.また,これらの疾患は常染色体優性遺伝形式だが,de novoの変異で孤発例として発症する場合,必ずしも家族歴があるとはかぎらないことも留意すべきである.
臨床研究の進め方
  • 佐藤 泰憲, 長島 健悟, 高橋 翔
    2015 年 29 巻 5 号 p. 718-723
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/02/16
    ジャーナル 認証あり
    生物統計のコンサルテーションを行っていると,「このデータのp値を計算してください」,ひどいときには「学会発表をするのでこのデータで有意差をつけてください」という相談がある.統計解析を,統計ソフトでp値を計算すること,グラフにエラーバーを書き込んで有意差マーク★印をつけること,と思いこんでいる研究者が少なくないようである.このように,臨床医学の世界では,「有意症(significantosis)」というものが蔓延している.有意症の予防・治療法は,統計的仮説検定及び区間推定を正しく理解することである.本稿では,推定や統計的仮説検定の解釈に重点を置き,これらの手法を用いた医学・薬学データの統計解析について概説する.
喘息死委員会報告
  • 小田嶋 博, 荒川 浩一, 楠 隆, 住本 真一, 山口 公一, 松井 猛彦, 西間 三馨
    2015 年 29 巻 5 号 p. 724-730
    発行日: 2015/12/20
    公開日: 2016/02/16
    ジャーナル 認証あり
    日本小児アレルギー学会・喘息死委員会宛てに1989年から2013年10月までに気管支喘息に罹患していて死亡し登録された症例は新規登録10名を加えて246例で,対象外を除いた215例について解析した.男女比は134/81(1.7:1)であった.年齢ではここ数年では0~4歳児が最も多かった.死亡前1年間の重症度は,不明・未記入の割合が増加傾向にあり46%であった.軽症18%,中等症18%,重症27%であった.死亡前1年間の重症度が不明・未記入の割合は1997年以前は36.9%であったものが1998年以降は46.2%と増加していた.喘息死に関与した要因では,予期できない急激な悪化,適切な受診時期の遅れが多かった.適切な受診時期の遅れを来した要因として,患者・家族による判断の誤りが多かった.薬物療法について,1997年以前と1998年以降の死亡例を比較すると,キサンチン製剤とβ2刺激薬の内服,自宅でのネブライザー吸入,pMDIは減少し,吸入ステロイドは増加傾向にあるものの38%に留まっていた.また,β2刺激薬貼付剤や長時間作用性β刺激薬の使用が新たに認められるようになった.
知っておきたい最新のアレルギー・免疫学用語
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