日本小児アレルギー学会誌
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31 巻, 5 号
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原著
  • 坪谷 尚季, 長尾 みづほ, 亀田 桂子, 鈴木 尚史, 桑原 優, 貝沼 圭吾, 藤澤 隆夫
    2017 年 31 巻 5 号 p. 683-691
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/31
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     【背景】小麦アレルギー患者において, 大麦は交差抗原性をもつことが知られているが, 麦ご飯などの形で提供されることが多く, 日常生活上, 除去の判断が必要となることが多い. しかし, 大麦アレルギー合併の予測因子はよく知られていない.

     【方法】大麦の摂取歴がなく, 小麦摂取後のアナフィラキシー既往または経口負荷試験 (OFC) にて小麦アレルギーと診断された児に対して行った大麦OFCの結果とOFC誘発症状, 特異的IgE抗体価の関連について後方視的に解析した.

     【結果】27例 (3~15歳, 男児19例, 女児8例) で大麦OFCを行い, 13例 (48%) が陽性であった. そのうち小麦の摂取閾値と検査値の判明している23例で解析をした. ω-5グリアジン, 小麦特異的IgE抗体価および小麦OFCのTS/Pro (アナフィラキシースコアリングあいちスコア/累積負荷蛋白量) が, 陽性群で有意に高値であった.

     【結語】小麦アレルギーが重症 (=TS/Pro高値) であると大麦摂取で症状が誘発される可能性が高い. ω-5グリアジン, 小麦特異的IgE抗体価も予測因子となりうる.

  • 立元 千帆, 長尾 みづほ, 藤澤 隆夫
    2017 年 31 巻 5 号 p. 692-698
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/31
    ジャーナル 認証あり

     【背景】食物特異的IgE抗体価を経時的変動という視点で解析した報告は少なく, 乳児期から1歳にかけての変動と経口負荷試験 (OFC) 結果との関連は知られていない.

     【方法】対象はアトピー性皮膚炎 (AD) があり, 鶏卵感作のため鶏卵除去が行われた乳児で, 生後6か月と12か月に卵白 (EW) とオボムコイド (OM) 特異的IgE抗体 (sIgE) が測定され, 12か月時に鶏卵OFC (加熱卵パウダー1/2個分) を受けた患者. 診療録から後方視的にsIgE変化とOFC結果の関連を解析した.

     【結果】29名が選択基準に一致した. EW-sIgEはOFC陰性群で有意に低下, 対数変換値で評価した低下程度は陰性群が陽性群より有意に大きかった. OM-sIgEは6か月で陽性群が有意に高値であったが, OM-sIgE変動とOFC結果には関連がみられなかった.

     【結語】鶏卵アレルギーが疑われるAD乳児で, 生後6~12か月にEW-sIgE低下が大きい児は加熱全卵半分を摂取できる可能性がある. sIgE変動評価は診断の参考にできる.

  • 平瀨 敏志, 岡藤 郁夫, 田中 裕也, 鶴田 悟
    2017 年 31 巻 5 号 p. 699-704
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/31
    ジャーナル 認証あり

     【目的】加熱卵黄経口負荷試験 (oral food challenge test : OFC) を安全に行うために負荷方法とリスク因子を検討すること.

     【方法】卵黄1個を総投与量とし, 5分割15分間隔漸増法11例 (5分割群) と, 2分割60分間隔漸増法62例 (2分割群) を後方視的に検討した. 食材は炒り卵を用いた.

     【結果】患者の年齢中央値は5分割群4.1歳・2分割群2.1歳, 卵白特異的IgEの中央値は5分割群19UA/ml・2分割群27UA/mlだった. OFCの結果においてAn発症率が5分割群36%・2分割群0%と有意差があった (p=0.0003). 多変量解析でも2分割60分間隔漸増法が他のAn発症リスク因子と独立しAn発症を低下させた.

     【結論】加熱卵黄OFCで2分割60分間隔漸増法は5分割15分間隔漸増法より安全である可能性が示唆された.

  • 國友 愛里, 青田 明子, 山田 早彌, 鈴木 亮平, 相良 長俊, 赤司 賢一, 勝沼 俊雄
    2017 年 31 巻 5 号 p. 705-713
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/31
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     【目的】加熱卵黄に関して, 自宅等で安全に試験摂取を行う上での鶏卵関連抗原特異的IgE値の指標を提供する.

     【対象と方法】2010年12月~2016年10月の間, 当科で加熱卵黄食物経口負荷試験 (OFC) を実施した106症例を対象とした. 卵黄・卵白・オボムコイド (OVM) 特異的IgE値とOFCの結果を後方視的に検討した.

     【結果】OFC陰性群は86例, 陽性群は14例であった. 陰性的中率 (NPV) が95%以上で, 自宅等での試験摂取が可能と判断しうるIgEカットオフ値をsafety prognostic value (SPV) と定義し検討を行った. 対象者全体を解析対象としたSPVとNPV (カッコ内表示) は, 卵黄, 卵白, OVMでそれぞれ1.61UA/ml (94.6%), 5.62UA/ml (96.7%), 5.06UA/ml (95.6%) であった.

     【結論】鶏卵アレルギー児が自宅等で安全に試験摂取を行う指標となるSPVを得ることができた.

総説
  • 秀 道広, 高萩 俊輔, 岩本 和真
    2017 年 31 巻 5 号 p. 714-720
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/31
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     蕁麻疹はありふれた疾患で, 一部の患者は血管性浮腫を伴う. 血管性浮腫は, 皮膚, 粘膜の深部に現れる限局性の浮腫で, マスト細胞の関与する蕁麻疹の一部として現れるほか, マスト細胞またはブラジキニンの関与する単独で現れるものがある. 後者には遺伝性血管性浮腫 (HAE) が含まれ, 視認可能な体表, 粘膜の浮腫のほか, 気道, 腸管の浮腫を生じることもある. HAEは, 診断までに時間がかかることが多く, 2014年のわが国での調査では初発症状から診断までの平均時間は13.8年であった. 近年, 蕁麻疹については新しい抗ヒスタミン薬のほかに抗IgE抗体が, HAEについてはブラジキニンを標的とした複数の新しい薬剤が発売, または開発が進められている. また, 近年発足した患者会の活動もあいまって, 蕁麻疹, 血管性浮腫の治療環境は大きく変化しつつある.

  • 山口 正雄
    2017 年 31 巻 5 号 p. 721-725
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/31
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     成人の重症喘息治療において, 2種類の生物学的製剤, 抗IgE抗体と抗IL-5抗体が使われており, 先発の抗IgE抗体 (2009年に上市) についてはおおむね臨床現場で定着しているのに対し, 2016年に認可された抗IL-5抗体については広まる途中の段階である. 抗IgE抗体は, アレルギー疾患治療薬における最初の生物学的製剤として登場し, すべての薬剤を総動員してもコントロールできなかった成人喘息患者に対して臨床効果を発揮した. 2013年には6歳以上の小児および, より高いIgE血中濃度 (1,500IU/ml以下) に関しても適応となった. 抗IgE抗体の隠れた意義といえるのは, 喘息診療において一部の表現型 (アトピー型) の喘息だけを対象とする新薬を受け入れる土壌をつくったことであろう. 一方, 約1年前に登場した抗IL-5抗体については, 好酸球性気道炎症を有する重症・難治性喘息に使用される. 本稿では, これらの生物学的製剤の現状と使用経験および今後への期待について内科医の立場から概説したい.

ガイドライン解説:食物アレルギー診療ガイドライン2016
  • 二村 昌樹, 相原 雄幸
    2017 年 31 巻 5 号 p. 726-731
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/31
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     「食物アレルギー診療ガイドライン2016」 第8章に記載されている 「栄養食事指導」 は食物アレルギーの長期管理で重要なポイントの1つである. 食事指導において臨床医が心得るべきことは, 必要最小限の除去, 安全性の確保, 栄養面への配慮, 患者と家族のQOL維持・向上である. 新しい法律によるアレルギー物質の表示の変更点も含めて, 誤食を防止するための方法を患者家族には指導する必要がある. また, 医原性の栄養不足を防ぐためにも栄養面の評価も怠ってはならない. 食物経口負荷試験の結果を踏まえつつ, 除去する必要のあるものと摂取可能であるものについて具体的な食品名をあげるなどして, 個々の患者に除去だけではなく可能な限り食べることを目指した食事指導を行うことが望まれる.

  • 佐藤 さくら, 伊藤 浩明
    2017 年 31 巻 5 号 p. 732-739
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/31
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     「食物アレルギー診療ガイドライン2016」 では, 経口免疫療法の食物アレルギー診療における位置づけを明確に示し, 定義, 機序, 治療効果などを概説している. 経口免疫療法を 「自然経過では早期に耐性獲得が期待できない症例に対し, 事前の食物経口負荷試験で症状誘発閾値を確認したあとに原因食物を医師の指導のもと経口摂取させ脱感作状態とした上で, 究極的には耐性獲得を目指す治療法」 と定義し, これまでの臨床研究結果やわが国の現状に鑑みて, 食物アレルギーの一般診療として推奨していない. さらに経口免疫療法の対象者の選択基準を明記し, その実施に関しては, 食物アレルギー診療を熟知した専門医 (日常的に食物経口負荷試験を実施し, 症状誘発時の対応が十分に行える医師) が, 症状出現時の救急対応に万全を期した上で臨床研究として慎重に施行すべきであるとした. 医師は経口免疫療法のリスク, 治療上の注意事項や治療成績について十分に説明した上でインフォームドコンセントを得る必要があり, 安易な経口免疫療法は実施すべきでない.

  • 伊藤 靖典, 海老澤 元宏
    2017 年 31 巻 5 号 p. 740-746
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/31
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     食物アレルギーによる誘発症状は, 臓器ごとに重症度を判定し, 重症度に基づいた治療を行う. 「食物アレルギー診療ガイドライン2016」 では, アナフィラキシーガイドラインに準じた重症度評価を採用している. 各臓器 (皮膚・粘膜, 呼吸器, 消化器, 神経, 循環器) 症状をグレード1~3に分類し, グレード3およびグレード2の一部に該当する症状が認められた場合はアドレナリン筋肉注射の適応となる. アドレナリン筋肉注射はアナフィラキシーに対する第一選択薬であるが, ヒスタミンH1受容体拮抗薬や副腎皮質ステロイド薬のアナフィラキシーに対する効果については立証されていない. わが国ではα遮断作用を有する抗精神病薬とアドレナリンは添付文書上併用禁忌であるが, 同精神病薬を使用している患者がアナフィラキシーに陥ったときには医師の裁量のもと救命のためにアドレナリンを使用することは許容される.

知っておきたい最新のアレルギー・免疫学用語
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