日本小児アレルギー学会誌
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31 巻, 3 号
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原著
  • ~マストイムノシステムズの新しい利用法~
    長尾 みづほ, 桑原 優, 平山 淳也, 貝沼 圭吾, 藤澤 隆夫
    2017 年 31 巻 3 号 p. 253-261
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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     【目的】特異的IgE抗体の多項目同時測定検査の新しい評価法を探索した.

     【方法】小児ボランティア186名 (平均11.6歳) と治療中の喘息児164名 (平均10歳), 計350名を対象とした. マストイムノシステムズⅢ (MAST-33) による特異的IgE抗体と総IgE値, 末梢血白血球数, 好酸球数, 呼気NO, スパイロメトリーを測定した. MAST-33データでk-means法によるクラスター分析を行った.

     【結果】4つのクラスター, 1 : 食物を含む多抗原感作, 2 : ペット陽性の吸入抗原感作, 3 : ペット陰性の吸入抗原感作, 4 : 低感作 (スギのみ) に分類された. 総IgE値と感作抗原数はクラスター1が最も高かったが, 白血球数, 好酸球数 (%), 呼気NOはクラスター2が最も高かった. 喘息はクラスター2に, 季節性アレルギー性鼻炎はクラスター1, 3, アトピー性皮膚炎と食物アレルギーはクラスター1に多くみられた.

     【結語】クラスター2は喘息に特徴的と考えられた. 多抗原同時測定の特異的IgE検査は感作パターン同定に有用である.

  • 益海 大樹, 竹村 豊, 有馬 智之, 長井 恵, 山崎 晃嗣, 井上 徳浩, 竹村 司
    2017 年 31 巻 3 号 p. 262-267
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    ジャーナル 認証あり

     エリスリトールは低分子の糖アルコールで, カロリーが極めて低く, 甘味料としての需要が拡大している. 症例は10歳女児. 8歳, 9歳時にアイスクリームなどを摂取後のアナフィラキシー歴を3回有していたが, 原因は不明であった. 10歳時, 公園で遊び, 複数の菓子を摂取後に咽頭痛と乾性咳嗽, 蕁麻疹を認め, 当院外来を受診. 菓子内にはエリスリトールとソルビトールが含まれ, アレルゲンの可能性が考えられた. エリスリトールとソルビトールのプリックテストはともに陰性で, 皮内試験ではエリスリトールのみ陽性であった. 両者の食物経口負荷試験を施行し, ソルビトールは陰性, エリスリトールは合計1.7g摂取し30分後に皮膚・呼吸器症状を認め, アナフィラキシーを呈した. のちに実施した好塩基球活性化試験 (BAT) では反応を認めなかった. 近年, エリスリトールによる即時型食物アレルギーの報告例が増加している. 小児で摂取頻度の高い菓子に含有されていることがあり注意を要する. 本症例の糖類摂取における食事指導に有用であった.

  • 端山 淳子, 松木 秀明
    2017 年 31 巻 3 号 p. 268-279
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    ジャーナル 認証あり

     【目的】小学校教員の 「食物アレルギー児対応に関する不安」 の構造, その影響要因を検討した.

     【方法】神奈川県内の公立小学校に質問紙を配布し498名から回答を得た. 構造把握は探索的因子分析, 影響要因の検討はロジスティック回帰分析を行った.

     【結果】教員の 「食物アレルギー児対応に関する不安」 は, 『食物アレルギー児の症状出現に関する不安』『食物アレルギー児対応のシステムや教育体制に関する不安』『食物アレルギー児の管理に関する不安』『エピペン®の使用に関する不安』『食物アレルギー児の心理面に関する不安』の5因子で構成されていた. また, その影響要因を検討した結果, 学級担任・担任外教員の不安の強さが示され, 食物アレルギーや食物アレルギー児対応に関する知識が不安を減少させる可能性が示唆された.

     【結語】教員の多様な側面からなる不安を考慮した研修内容・支援方法の検討や, 特に不安の強い食物アレルギー児と直接的にかかわる教員に対する支援の充実を図っていく必要がある.

総説
  • 大矢 幸弘
    2017 年 31 巻 3 号 p. 280-287
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    ジャーナル 認証あり

     アレルゲンの曝露回避はアレルギー疾患治療の基本と思われるが, 発症前の予防効果に関しては実証されていない. 特にアトピー性皮膚炎のように皮膚に炎症のある乳児では, 経口摂取を控えることで免疫寛容が誘導されず意に反して食物アレルギー発症のリスクが高まる. それは経皮感作という現象があるためである. 健常な皮膚は表皮のバリアを形成して外部からアレルゲンなどの異物の侵入を防いでいる. 表皮は下から基底層・有棘層・顆粒層・角層からなり, 角層の天然保湿因子や細胞間脂質そして角化細胞をつなぐコルネオデスモゾームや顆粒層のタイトジャンクションなどが複数のバリア機能を構成しているが, アトピー性皮膚炎の患者ではこうしたバリア機能の低下が認められる. 特に湿疹の重症度が高いほどバリア機能は低下しアレルゲンの感作を受けやすくなる. 健常な皮膚の抗原提示細胞は免疫寛容を誘導するが炎症のある皮膚では逆に感作を促進するため, アトピー性皮膚炎の予防や早期治療がアレルギーマーチの予防には重要と思われる.

ガイドライン解説:食物アレルギー診療ガイドライン2016
  • 岡藤 郁夫, 近藤 康人
    2017 年 31 巻 3 号 p. 288-296
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    ジャーナル 認証あり

     食物アレルゲンの本体は, 大部分が食物に含まれるタンパク質である. 食物アレルギーを理解する上で食物アレルゲンに関する知識は不可欠であり, そのタンパク質としての性質や機能を知ることで食物アレルギー診療の深みが増す.

     植物性食物アレルゲンの多くは4つのタンパク質スーパーファミリー (プロラミン, クーピン, Bet v 1ホモログ, プロフィリン) に, 動物性食物アレルゲンの多くは3つのタンパク質スーパーファミリー (トロポミオシン, パルブアルブミン, カゼイン) に属している. 前者に関しては, 大豆を例にすれば, WHO/IUISで登録されている8つのアレルゲンコンポーネントのうち, 6つが4つのタンパク質スーパーファミリーに含まれている. 後者については, いずれも熱処理に強く, 広汎な種類の動物に交差抗原性を示す. その他, 鶏卵と小麦に関しては, 7つのタンパク質スーパーファミリー以外の食物アレルゲンタンパク質ファミリーが含まれるのではあるが, それぞれは個別にタンパク質としての性質と機能を確認して理解を深める必要がある.

  • 長尾 みづほ, 今井 孝成
    2017 年 31 巻 3 号 p. 297-301
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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      「食物アレルギー診療ガイドライン2016」 第6章では診断と検査について述べている. おもなアップデートとしては, 詳細な問診のポイント, 特異的IgE抗体価の測定方法による特徴, プロバビリティカーブ, コンポーネントなどがある. 詳細な問診は年齢別による問診のポイントや, 母乳栄養の場合は疑わしい食物があった際の診断とその後の対応について述べている. 特異的IgE抗体検査は, 検査結果の解釈が進歩したため, 検査法による違いや注意点などを記載している. プロバビリティカーブも対象や摂取するアレルゲン量, 年齢などにより異なるため, 結果の解釈についての注意点も述べた. 保険適用となったコンポーネントも増えており, その有用性について解説している.

     これらの検査を使いこなすことにより, より正確な診断や管理法の選択が可能となるであろう.

  • 柳田 紀之, 長尾 みづほ, 海老澤 元宏
    2017 年 31 巻 3 号 p. 302-312
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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     食物アレルギー診療ガイドライン (以下JPGFA) 2016の第7章では食物経口負荷試験 (以下負荷試験) を取り上げている. 今回の発刊にあたって, 第7章では極力エビデンスに基づく記載を行い, 定義や目的, リスク評価, 再現性の確認, 体制の整備などの情報を整理した. 大きく分けて5つの変更点がある. 1点目は負荷試験自体の定義を 「アレルギーが疑われる食品を単回または複数回に分けて摂取させて症状の有無を確認する検査」 とし, 単回摂取も負荷試験に含めた. 2点目は負荷試験の目的を大きく確定診断および耐性獲得として整理した. 3点目は負荷試験前のリスク評価について記載を行った. 4点目は負荷試験の再現性の確認, 総負荷量の設定について記載し, 段階的な負荷試験の概念を取り入れた. 5点目は負荷試験を行う体制整備について述べた. 本稿ではこの5つの変更点について, 概要, 変更点を示し, 根拠となるデータをもとに変更の理由について解説する.

喘息治療・管理ガイドライン委員会報告
  • 三浦 太郎, 平口 雪子, 杉山 剛, 荒川 浩一
    2017 年 31 巻 3 号 p. 313-325
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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     小児気管支喘息の長期管理薬としてロイコトリエン受容体拮抗薬 (LTRA) ならびに, 吸入ステロイド薬 (ICS) の単剤療法の有用性についてシステマティックレビューを行い, そのエビデンスを評価した. 2016年3月までの無作為化比較試験 (RCT) を文献データベース (MEDLINE, Embase, CENTRALと医学中央雑誌) より抽出した. 対象となったのは20のRCTで, 対象年齢は2歳以上18歳以下, 重症度は小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012での中等症持続型以上. 全身性ステロイド薬投与を必要とする急性増悪をきたした人数, 呼吸機能の改善率, 有害事象等の5つを評価項目とした. その結果, 全身性ステロイド薬投与を必要とする急性増悪をきたした人数においてLTRAがICSに比して多かった. よって, 中等症持続型以上かつ, 2歳以上ではICSの方が有用であることが示唆された. 2歳未満や, 軽症持続型に対しての十分な検討がなされていないため, 今後の検討が必要であると考えられた.

  • 杉本 真弓, 鈴木 修一, 夏目 統, 荒川 浩一
    2017 年 31 巻 3 号 p. 326-335
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    ジャーナル 認証あり

     【背景】気管支喘息急性増悪時におけるネブライザーと比較したスペーサーでの加圧噴霧式定量吸入器 (pMDI) による短時間作用性β2刺激薬 (SABA) 吸入の有用性についてシステマティックレビュー (SR) を施行し, そのエビデンスを評価した.

     【方法】20歳未満の喘息患者の急性増悪に対し, 医療機関でSABA吸入をスペーサーを用いてpMDIで実施した群とネブライザーで実施した群を比較した無作為化比較試験 (RCT) を抽出した. 複数回吸入後の入院率を主要評価項目とした.

     【結果】先行文献より30文献26RCTを抽出した. 追加検索で抽出されたRCTはなかった. 主要評価項目について9RCT (363名) で解析した結果, ネブライザー群に対するスペーサー群の入院リスク比は0.71, 95%信頼区間0.47~1.08, p=0.11だった. また, 外来滞在時間はスペーサー群で有意に短く, 脈拍数増加率や振戦の頻度はスペーサー群で有意に低かった.

     【結論】スペーサーを用いたpMDIによるSABA反復吸入の効果はネブライザーと差がないことが示唆された. しかし, 採用したRCTにおけるSABAの吸入量はわが国の常用量よりも多く, わが国での検討を要する.

  • 川本 典生, 清水 麻由, 赤司 賢一, 荒川 浩一
    2017 年 31 巻 3 号 p. 336-342
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    ジャーナル 認証あり

     小児気管支喘息患者の急性増悪時における吸入ステロイド薬 (ICS) 増量の有用性を, システマティックレビュー (SR) により検討した. ICS定期吸入中の喘息児の急性増悪時に, ICSを増量した群と増量しない群を比較した無作為化比較試験 (RCT) を抽出した. 全年齢を対象とした先行のSRより小児を対象とする研究を抽出し, さらに, それ以降で2016年3月までの小児を対象としたRCTを文献データベース (MEDLINE, Embase, CENTRAL) より抽出した. 日本語文献についても医学中央雑誌を用いて抽出した. 先行文献より, 小児を対象とする1報と, 追加検索により1報のRCTを抽出した. 両者ともICSとしてベクロメタゾン (BDP) を用いた検討で, 1報はニュージーランドでの単施設クロスオーバー試験, 他報は米国での5施設による並行群間比較試験であった. 日本語文献はなかった. ICSの増量は全身性ステロイド薬の投与が必要な急性増悪のリスクを下げなかった. 小児の喘息増悪時のICS増量はBDPでのみ検討されており, 現時点では, 推奨できるだけの十分なエビデンスがない.

  • 北沢 博, 山出 晶子, 和田 拓也, 荒川 浩一
    2017 年 31 巻 3 号 p. 343-351
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    ジャーナル 認証あり

     【背景】小児気管支喘息の急性増悪 (発作) 時には全身性ステロイド薬が一般的に投与されている.

     【目的】急性増悪時に投与した全身性ステロイド薬がその後の症状増悪を予防する効果について, システマティックレビューにて評価すること.

     【方法】18歳以下の小児を対象とした無作為化比較試験で, 気管支喘息の急性増悪に対し全身性ステロイド薬を投与した群とプラセボ群を比較している研究を評価対象とした. 全身性ステロイド薬使用後の入院や追加治療の有無などを評価項目とし, メタ解析を行った.

     【結果】10編の論文に基づくメタ解析の結果, 急性増悪後の入院率に有意差はみられなかった. 追加治療は全身性ステロイド薬投与群の方が有意に少なかった. 呼吸機能, 症状スコアなど他の評価項目に関しては, 各研究間の評価基準の相違があったためにメタ解析が行えなかった.

     【結論】急性増悪時の全身性ステロイド薬投与がその後の症状増悪を予防する効果は明らかではなかった.

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