日本小児アレルギー学会誌
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32 巻, 1 号
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教育講演
  • 長谷 耕二
    2018 年 32 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
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     近年, アレルギー感受性に影響を与える環境因子として, 腸内細菌が注目を集めている. 腸内細菌は上皮バリア機能を高めてアレルゲンの侵入を抑制し, 炎症やアレルギー反応の抑制にかかわる制御性T (Treg) 細胞を誘導する. 小児アレルギー患者では腸内細菌叢の異常が認められる. また乳幼児への抗菌薬の投与は, 腸内細菌叢の攪乱を招き, アトピーや喘息のリスクを高める可能性が示されている. 本稿では, アレルギーの発症と腸内細菌に関する最新の研究を紹介する.

  • 大嶋 勇成
    2018 年 32 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル 認証あり

     査読の役割は, 投稿原稿を評価してその雑誌に掲載するのが適切かを編集者に提言することと, コメントを作成することにより執筆者と編集者が原稿の質を改善させることを助けることである. 雑誌に掲載される論文は, 執筆者と査読者, 編集者との共同作品ともいえる. 査読者には, 査読期限を守り, 原稿の機密を守ることが求められる. COPE Ethical Guidelines for Peer ReviewersやRecommendations for the Conduct, Reporting, Editing, and Publication of Scholarly Work in Medical Journalsは, 査読の原則と方法を理解する上で有用である.

  • 松本 健治
    2018 年 32 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
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     小児気管支喘息の発症には, 自然免疫系と獲得免疫系が関与している. 獲得免疫系への介入として, 発症予防を目的としたダニ抗原の回避や, ダニ抗原を用いた経口免疫療法による発症予防が試みられたが, いずれも効果は認められなかった. 一方, 自然免疫系においては, 気管支喘息患者ではウイルス感染時の抗ウイルスIFNの産生不全があり, このことがライノウイルス感染による下気道炎惹起につながっていると考えられる. 抗ウイルスIFNの産生不全には, Th2サイトカインやIL-33が重要な役割を演じていると考えられることから, 現時点での発症予防介入の焦点は他のアレルギー疾患 (特にアトピー性皮膚炎) の発症予防および適切な治療が重要と考えられる.

総説(シンポジウム2:アトピー性皮膚炎・食物アレルギーの発症予防より)
  • 竹井 真理, 柳田 紀之, 佐藤 さくら, 海老澤 元宏
    2018 年 32 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
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     2008年に二重抗原曝露仮説が提唱され, 抗原に対する感作経路および食物アレルギー発症経路として炎症のある皮膚面, つまり湿疹の存在が重要視されるようになった.

     乳児期の湿疹・アトピー性皮膚炎の存在は食物アレルギー発症のリスク因子であることはすでに報告されている. われわれが行った乳児湿疹を認める生後1か月児のコホート研究の中間解析結果からは, 乳児期早期発症の湿疹は食物アレルギー発症のリスク因子であり, 特に持続する湿疹病変, 皮膚バリア機能異常の存在が食物アレルギー発症にかかわる重要な因子であることが示唆された.

     皮膚バリア機能を念頭においた乳児の湿疹に対する早期介入が食物アレルギーの発症予防につながる可能性が示唆されるが, 今後の前向き研究での検証が期待される. また湿疹病変がなくても食物アレルギーを発症している児がいることは事実であり, 感作経路や発症経路の解明も含め, まだ検討されるべき課題は多い.

  • 夏目 統
    2018 年 32 巻 1 号 p. 27-35
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
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     食物アレルギーの発症予防法は, 食物除去から乳児期早期摂取開始へとパラダイムシフトが起こった. これは, 食物アレルギーの原因が経腸管感作ではなく, おもに経皮感作であることが明らかにされ, 経口摂取はむしろ免疫寛容をもたらすことがわかってきたためである. 実際に, 乳児期早期の経口摂取が食物アレルギーの発症を予防できることが明らかにされたのは, 2015年のランダム化比較試験が初めてである. 卵に関するランダム化比較試験は現在までに6研究が報告され, メタアナリシスで早期摂取開始により卵アレルギーの発症が予防されることが明らかにされた. ただし, 実際に予防法を実践する上では即時型アレルギー反応の誘発に配慮する必要がある. 日豪, アジアからの提言で卵アレルギー発症予防の関連部分では, 有害事象を減らすために 「加熱卵」 を 「少量から」 摂取するように推奨し, 摂取開始時期等はアトピー性皮膚炎で層別化されている. しかし, その後の増量方法は明確な記載が少ない. 今後, 増量法, 摂取回数, 継続期間等の検討が行われることを期待したい.

  • 林 大輔
    2018 年 32 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
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     母乳栄養とアレルギーの関係について多くの研究が行われ, 完全母乳栄養がアレルギーに防護的であると考えられていた. EAACIは食物アレルギー予防のために生後4~6か月の完全母乳栄養が望ましいとしている. しかし, 人工乳開始時期と牛乳アレルギー発症時期を検討した研究では生後14日以前に人工乳を開始した群で牛乳アレルギーの発症頻度が低下していた. また, 牛乳アレルギー児の哺乳状況の後方視的調査では牛乳アレルギー児で新生児期からの1日1回以上の継続的な人工乳摂取の頻度が低く, 卵アレルギー児の牛乳アレルギー併発と人工栄養の関係の調査でも牛乳アレルギー併発群では生後3か月以内の継続的人工乳摂取の頻度が低かった. これらの知見より新生児期からの継続的な人工乳の摂取が, アレルギー発症を予防する可能性が考えられる. 一方で母乳栄養には感染症やSIDSの予防効果などもあり, 継続的な人工乳の摂取がこれらにどのような影響を与えるかはわかっていない. 乳早期導入の効果・安全性の検証のためさらなる知見の集積が必要である.

シンポジウム5:小児への皮下および舌下免疫療法の現状と今後の展望
  • 津曲 俊太郎
    2018 年 32 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
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     アレルゲン免疫療法はアレルギー疾患に対する唯一の根本的治療であり, 近年その有効性および臨床的意義が再認識されはじめている. 特に近年は舌下免疫療法 (SLIT) が普及してきており, その安全性や利便性を考えると今後はSLITが免疫療法の中心となっていくことが予想されるが, 現時点では適応が12歳以上であることや治療抗原がダニ・スギの2種類しかないことなどを考えると皮下免疫療法 (SCIT) はまだ重要な治療手段であると考える. しかし, そのSCITにおいてもいまだ課題は多い. 特に安全性に関しては全身症状の発現頻度が高く, より安全性の高い製剤の開発やより安全な増量スケジュールの確立が望まれる. また, わが国で使用可能な治療エキスは海外と比較すると圧倒的に少ないことも重要な課題としてあげられる. さらに今後期待される治療の1つとして当科では花粉-食物アレルギー症候群 (PFAS) に対するシラカバ花粉エキスを用いたSCITを実施しており, 良好な成績を示している.

  • 田中 裕也, 岡藤 郁夫, 鶴田 悟
    2018 年 32 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
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     アレルゲン免疫療法はアレルギー疾患に対する唯一の原因特異的治療である. その中でも急速皮下免疫療法は導入に要する期間が短く, 効果発現も早いという特徴がある.

     ダニは気管支喘息やアレルギー性鼻炎に対して最も重要な抗原の1つである. 従来ダニアレルギー患者へはハウスダスト抽出液のみが保険適用であったが, 2015年よりわが国でも標準化ダニ抗原が使用可能となり効果が期待される一方その副反応も少なくないことがわかってきた.

     一時期免疫療法は衰退していたが, 近年舌下免疫療法製剤の登場などもあり注目されてきている. 小児でも急速皮下免疫療法を中心に施行施設が増えてきているものの, まだまだ普及していないのが現状である.

     本治療の展望を考える際のポイントは, ①アドヒアランスが期待できる皮下免疫療法と安全で手軽な舌下免疫療法の使い分け, ②安全なプロトコールの確立, ③効果が期待できる患者選択のマーカーの確立, ④医療連携や現在の低い皮下免疫療法の診療報酬, 本治療をいかに多くのダニアレルギー患者へ普及させるか, の4点であると考える.

  • 浅海 智之, 海老澤 元宏
    2018 年 32 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
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     舌下免疫療法 (sublingual immunotherapy : SLIT) は日本の小児への報告は少ない. そこで, SLITと皮下免疫療法 (subcutaneous immunotherapy : SCIT) と比較し, 今後の展望を示す.

     当科ではスギ花粉とダニのSCITをそれぞれ約30例, スギ花粉とダニのSLITをそれぞれ約15例に導入している.

     スギ花粉とダニのSCIT, スギのSLITでは高い治療効果を認めたが, ダニのSLITの治療効果の判断には今後の症例数の蓄積が必要である. 副反応による治療中止の頻度は, SCITでは0%であったが, SLITではスギ花粉9%, アシテア® 33%, ミティキュア® 0%であった.

     ダニのアレルギー性鼻炎の重症例, 気管支喘息合併例ではSLITによる副反応が出現しやすかった. これらの症例では, アシテア®ではなく, 副反応が比較的軽微であるミティキュア®の使用や, アナフィラキシーの対応に慣れている施設でのSCIT導入が勧められる.

  • 桑原 優, 長尾 みづほ, 藤澤 隆夫
    2018 年 32 巻 1 号 p. 61-67
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
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     アレルゲン免疫療法は無害な環境アレルゲンに対するTh2に偏倚した免疫反応を 「正常化」 させるために, アレルゲンを投与してprotectiveな免疫反応を誘導しようとする治療であり, 根本的な治療としての可能性を有する. 最近は一般臨床でもよく行われるようになってきたが, 日本で利用可能な標準化アレルゲン製剤はダニとスギのみで, 海外と比較すると治療の選択肢がきわめて少ないのが問題である.

     海外では, 多くの治療用アレルゲンを使用でき, その有効性を示すエビデンスも多いが, 日本では医師の個人責任による輸入抗原を用いた皮下免疫療法ができるのみである. 私たちが実施した輸入抗原 (イネ科雑草花粉, ネコ, イヌ, 蜂毒) を用いた免疫療法では, 有効性が示唆された一方, 安全性や維持期間についてはさらなる検討が必要と考えられた.

     一方, protectiveな免疫反応を効率的に誘導するために, アジュバント添加や皮下, 舌下以外の投与経路についても研究が進んでおり, 小児への有効性と安全性が担保された免疫療法の開発が期待される.

シンポジウム6:アレルギー疾患の移行期医療
  • 横谷 進
    2018 年 32 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
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     およそ1970年代以降, 小児期発症の慢性疾患の生命予後は著しく改善してきた. その結果, 継続医療を必要としながら成人になる患者が増えている. そのような 「移行期の患者」 に対して, 小児期の医療から成人期にふさわしい医療に移り変わること (トランジション) は非常に重要な課題になっている. 日本小児科学会はトランジションに関する提言を2014年に公表して, その後も引き続いて最適なトランジションの具体化に努めている. アレルギー疾患についていえば, 小児アレルギー科医と成人アレルギー科医が中心になってアレルギー学の共通の基盤の上にトランジションが円滑に行われることが期待される.

     適切なトランジションのために具体的に必要なのは, ヘルスリテラシーの獲得のための支援, 個別の疾患に対する移行ツールの作成と利用, 緊密な医療連携の促進, 成人診療側の経験の蓄積, 生涯管理のための診療ガイドラインの作成などである. トランジションの最終的な目標は, 単なるバトンパスではなく, 生涯管理である.

  • 滝沢 琢己
    2018 年 32 巻 1 号 p. 74-81
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
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     移行期医療の対象である思春期喘息の医療機関受診数は少なく幼児期の10分の1程度である. 一方, 種々のコホート調査では小児気管支喘息の寛解率はそれほど高くなく, 医療を必要とする患者のすべてが受診しているわけではない可能性が示唆される. これには, 思春期喘息の病態, 社会的な特徴が関連していると考えられる. 群馬県での小児科医師へのアンケート調査では, 喘息の移行期医療に関してあまり難渋していないという意見が多かった. 気管支喘息の移行期医療においては, 移行期に至る前に, 抗炎症治療の重要性や呼吸機能の評価の必要性などを指導することが重要なのかもしれない.

  • 岩永 賢司, 東田 有智
    2018 年 32 巻 1 号 p. 82-87
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル 認証あり

     喘息患児が成人期に向かうころ (移行期) にも継続診療が必要な場合, 内科への転科が行われる. 移行期には喘息管理の主導権が保護者から本人に移行するため, 本人の疾患に対する理解と自己管理が求められる. 移行期の診療に慣れていない内科医が医師-患者関係を構築するためには, 患者が惑わないようにあらかじめ小児科医による患者教育と患者の精神・心理的成熟の程度を見極めた対応を内科医は心がけなければならい. 内科医は患者を小児科医から引き継ぐと, 15歳までは小児喘息ガイドライン, 16歳以上になると成人喘息ガイドラインに準じて治療を継続することになるが, 各々のガイドラインで重症度の定義や吸入ステロイド薬の用量が異なるので, その見極めは各主治医の裁量にまかせられるところである. 今後, 喘息の移行期医療をスムースに進めるためには, 小児科と内科および多職種との連携が重要である.

  • 中村 陽一
    2018 年 32 巻 1 号 p. 88-95
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
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     食物アレルギーの臨床病型のうち, 成人でみられる代表的なものは即時型症状 (蕁麻疹, アナフィラキシーなど) であり, 特殊型として, 食物依存性運動誘発アナフィラキシー (FDEIA) と口腔アレルギー症候群 (OAS) がある. これらはいずれもIgE依存性の機序で発症し, アナフィラキシーとFDEIAは重症である. 成人の食物アレルギーには小児期発症の持続例と成人発症の両者が存在するが, 医療機関を受診する成人食物アレルギー患者の多くは後者である. それらの症例の多くは, 小児期発症のそれとは異なり自然寛解がなく, 加水分解小麦によるアナフィラキシーのような例外を除いて, 通常は過敏状態が生涯持続する. 成人食物アレルギーの原因アレルゲンは小麦, 甲殻類, 魚類, 果物などが多く, 鑑別すべき病態としてアニサキスアレルギー, 経口ダニアナフィラキシー (OMA) などがある. 一般に成人は小児に比べて重症化する場合が多く, 心血管疾患や気管支喘息などの慢性呼吸器疾患の合併, それらの治療薬としてのβアドレナリン遮断薬, ACE阻害薬などの使用歴に注意が必要である.

原著
  • 大仲 雅之, 西川 宏樹, 石原 万理子, 西山 敦子, 吉田 さやか
    2018 年 32 巻 1 号 p. 96-101
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル 認証あり

     気管支喘息診療において, ロイコトリエン受容体拮抗薬 (leukotriene receptor antagonist : LTRA) は, 重症度を問わず, 単独もしくは吸入ステロイド薬との併用薬として幅広く推奨されている. 一般に副作用は少ない薬剤であるが, 代表的なLTRAの1つであるモンテルカストの添付文書には, 頻度不明の副反応として異夢や夢遊症の記載がある. 今回われわれは, モンテルカスト服用後に睡眠時遊行症 (夢遊症) 症状を呈した症例を経験した. 症例は7歳男児. 食物アレルギーのため外来で経過観察中であったが, 某年9月ごろ, 起床前の激しい咳嗽が持続するようになった. アレルギー歴, 環境抗原への感作, 咳嗽の様式などから気管支喘息症状と考え, モンテルカストの内服を開始した. 内服開始後2日目から2日続けて睡眠時の異常行動を認めた. 内服を中止したところ, 症状は速やかに消失したことから, モンテルカスト関連の睡眠時遊行症様症状と思われた. モンテルカストによる同様の報告はまれであるが, 他の精神神経症状を生じることもあるとされており, 処方開始時には注意を喚起する必要があると思われた.

  • 南部 光彦, 前田 親男, 桂 禎邦, 吉川 阿弥
    2018 年 32 巻 1 号 p. 102-109
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
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     【目的】コナヒョウヒダニ特異的IgE (Df-IgE) 陽性の喘息患児に対する家庭訪問による環境整備の有用性を評価すること.

     【対象】介入群 (A群) 10人と対照群 (C群) 12人.

     【方法】A群には, 開始時と開始から1, 2, 3, 4, 6, 9, 12か月後に家庭訪問した. 簡易キットでダニアレルゲン量 (以下, Der 1量) を測定し, それに基づいて環境整備の方法を指導した. また家庭内から塵を採取し, ELISA法によるDer 1量も測定した.

     喘息治療はJPGL2012に準じて行った. 喘息発作での予定外受診と入院について調査し, またDf-IgE値と呼吸機能検査を比較した.

     【結果】A群10家族中3家族で家庭訪問を中止した. 開始時に患児の寝具と寝室床のDer 1量が多かった家庭では, 1年後にはDer 1量は低下した.

     治療をステップダウンできたのはA群4人, C群2人, 変化なしはA群6人, C群6人, ステップアップはC群4人であった (尤度比検定でp=0.049). 入院や予定外受診, Df-IgE値, 呼吸機能検査の変化には有意差はなかった.

     【結論】家庭訪問による環境整備の有用性が示された.

  • 大倉 有加, 小林 一郎, 高橋 豊
    2018 年 32 巻 1 号 p. 110-116
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
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     【目的】乳児期より卵黄を継続摂取する食事指導がその後の卵白の早期摂取につながるか検討する.

     【方法】3歳未満で卵白経口負荷試験 (OFC) を施行した児を, 鶏卵を完全除去している群 (完全除去群) と, 乳児期に卵黄のOFCを行ったあとに卵黄摂取を継続していた群 (卵黄摂取群) に分け, 卵白OFCの結果, 卵白・オボムコイド (OM) 特異的IgE値, OFC後の食事指導に違いがあるか比較した.

     【結果】卵白OFC陽性率は卵黄摂取群で低く (75% vs 52%, p<0.01), OFC後に卵白除去継続となった割合も低かった (19% vs 4%, p<0.05). 完全除去群および卵黄摂取群の卵白およびOM特異的IgE値に有意差は認められなかった. また, 除去理由を鶏卵の即時型反応の既往がある群と, その他の理由による除去 (未摂取群) に分けた検討でも卵白OFC陽性率およびOFC後に除去継続となった割合は卵黄摂取群で低かった.

     【結論】乳児期早期からの卵黄摂取継続により, 早い段階で卵白摂取を開始できる可能性が示唆された.

  • 西田 光宏, 矢島 周平, 髙栁 文貴, 吉原 重美
    2018 年 32 巻 1 号 p. 117-126
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
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     吸入ステロイド薬投与中の12~16歳の喘息児70名をダニとスギの特異的IgEクラスをもとに低感作群, ダニ優位感作群, スギ優位感作群, 高感作群に分類し, 各群の年齢と性別, 呼吸機能, バイオマーカー (呼気NO, 総IgE, 末梢血好酸球数), 吸入ステロイド薬用量, ペット特異的IgE, そしてバイオマーカー間の相関関係や呼吸機能とバイオマーカーの相関関係を比較検討した. 各群で, 年齢と性別と呼吸機能は有意差を認めなかった. バイオマーカー値は低感作群<スギ優位感作群<ダニ優位感作群<高感作群の傾向を認め, 末梢気道でのType 2活性化に差があると推定された. ダニ優位感作群の呼気NOと総IgE, スギ優位感作群の呼気NOと好酸球数は正の相関傾向を認め, 好酸球数/総IgE比はスギ優位群で有意に高値であった. ダニ優位感作群の呼気NOと%V50は有意な負の相関を認めたが, 他の群では有意な相関関係を認めなかった. ダニとスギの感作パターンをもとに分類したフェノタイプには, 気道炎症と呼吸機能低下の病態に差異があると推定された.

  • 村井 宏生, 伊藤 尚弘, 川﨑 亜希子, 安冨 素子, 大嶋 勇成
    2018 年 32 巻 1 号 p. 127-135
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
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     近年, 食物アレルギーに関する講習会を複数回受講する機会が増加している. しかし, 複数回受講することで食物アレルギーの理解がどのように改善するかを検証した報告は少ない. 福井県内の教員225名を対象に食物アレルギーに関する講習会の受講前後にアンケート調査を行い, 受講回数が理解度に及ぼす影響を解析した. 受講回数が多いほど食物アレルギーやアドレナリン自己注射薬の使用に関する理解度が増加した. 複数回の受講者であっても講習前に比べ講習直後に呼吸器症状や腹部症状の重症度の認識に改善を認めた. また, 講習直後であっても重症の呼吸器・腹部症状を認める場合に救急車要請を行うと回答した者が7割に満たなかった. アナフィラキシー対応に関する理解度は過去の受講回数にかかわらず低かった. 呼吸器症状や腹部症状の重症度を正しく認識させ, その認識を受講後も長期間維持させることが課題と考えられた. 認識しにくい呼吸器・腹部症状に重点をおいた反復講習や緊急時アクションプランの策定が必要である.

  • 池田 奈央, 松﨑 寛司, 赤峰 裕子, 小野 倫太郎, 岩田 実穂子, 田場 直彦, 本荘 哲, 本村 知華子, 小田嶋 博
    2018 年 32 巻 1 号 p. 136-143
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
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     【目的】アドレナリン自己注射器 (エピペン®) の適切な取扱いに関係する要因を検討する.

     【対象】2015年6月から2016年1月にエピペン®を更新した97名を対象とした. 更新までの間エピペン®の取扱いが不適切だった 「取扱い不適切群 (26名) 」 (不適切使用7名, 使用期限超過19名) と不適切な取扱いがなかった 「取扱い適切群 (71名) 」 の2群に分け, その結果と患者背景, 小児アレルギーエデュケーター (PAE) の介入について比較検討した.

     【結果】取扱い適切群でPAEの介入が有意に多かった. 使用期限超過の中央値は2か月であった. 不適切使用は, 7名中6名の児においてエピペン®への興味に起因した行動であった. 多重ロジスティック回帰分析の結果, PAEの介入, エピペン®の複数所持はエピペン®の適切な取扱いの独立した因子で, アナフィラキシー複数回既往は不適切な取扱いの独立した因子であった.

     【結論】エピペン®の適切な取扱いにPAE介入の有用性が示唆された. 指導時に不適切な使用例の詳細を医療者・患者間で共有することで不適切な取扱いを減少できる可能性がある.

総説
  • 古林 万木夫, 谷内 昇一郎
    2018 年 32 巻 1 号 p. 144-151
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/31
    ジャーナル 認証あり

     醤油は大豆と小麦を主原料とする日本を代表する発酵調味料の1つであるが, これまで醤油中の両アレルゲンの残存性について詳細な研究が行われていなかった. そこでわれわれは, さまざまな免疫学的検査手法により醤油醸造工程中の小麦アレルゲンならびに大豆アレルゲンの消長を調べた. その結果, 小麦のたんぱく質に比べて大豆のたんぱく質は諸味中では完全に分解されず, 生揚には小麦アレルゲンが残存しないが, 大豆アレルゲンは残存することが確認された. 次の火入工程により, 生揚に残存する大豆アレルゲンが熱変性を受けて火入オリとして不溶化することや, 不溶化した火入オリが, その後のオリ下げ・ろ過工程で除去されることで最終の火入醤油には大豆アレルゲンが残存しないことが確認された. 醤油中のアレルゲンの分解・除去には, 麹・諸味工程に加えて, 火入・オリ下げ・ろ過工程が重要であることが示された.

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