小児の気管支喘息では, 副鼻腔にレントゲン上の異常陰影が高率に認められ, これら副鼻腔炎合併気管支喘息では副鼻腔炎の治療に反応し, 気管支喘息症状の改善ばかりか呼吸機能の改善が得られると報告されている. また, アレルギー性鼻炎では肥厚性陰影の上顎洞炎が合併しやすいとの報告がある. そのため今回, 咳嗽, 喘鳴などの喘息症状のコントロールが充分でない気管支喘息児59例を対象とし, Waters' position にてレントゲンを撮影. 上顎洞陰影を肥厚性のものびまん性のものに分け, 臨床症状検査結果との対比を行なった.
1. レントゲンの結果は正常7名, 軽度の上顎洞辺縁の粘膜肥厚11名, 中等度の粘膜肥厚10名, 強度の粘膜肥厚2例上顎洞全体の軽度のびまん性陰影9名中等度20名である. またこのうち前頭洞陰影合併例13例, 篩骨洞陰影合併例9例であった. びまん性陰影の高度のもの及びポリープ様陰影はなかった.
2. 副鼻腔炎の合併例では, 夜間の咳嗽, 微熱, 鼻閉, 頭痛等の症状が半数以上の症例で認められた.
3. 副鼻腔炎合併例を肥厚性陰影とびまん性陰影でわけIgE値500IU/mlを境界にして調べると, 500IU/mlを越えるものが肥厚性陰影では23例中14例であるのに対し, びまん性陰影では29例中9例であり, IgEが肥厚性陰影合併例で高く, アレルギーと肥厚性陰影との関連が示唆された.
以上, 症状のコントロールがむずかしい気管支喘息では高率に副鼻腔病変を合併するため, 治療を行なう上で副鼻腔合併症の有無を検討していく必要があると考える.
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