日本小児アレルギー学会誌
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8 巻, 3 号
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  • 阿部 利夫, 安藤 保, 福田 典正, 菅野 訓子, 吉原 重美, 市村 登寿
    1994 年 8 巻 3 号 p. 97-101
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    CAP RASTは, 従来のペーパーディスクを用いたRASTの改良法として知られている. アレルギー患児57例を対象として両測定法の相関, 感度特異性を検討した. CAPとRASTの相関係数は0.520~0.957で有意な相関が認められた. 全体的にCAPの測定値はRASTと比較して高値を示す傾向であった.
    CAPとRASTの結果に陽性陰性の乖離を認めた検体について抑制試験を行ったところ, CAP陽性RAST陰性例では全例抑制が認められたが, CAP陰性RAST陽性検体ではアレルゲンを添加しても抑制が認められなかった.
    以上の成績からCAPはRASTと比較して, 感度, 特異性共により優れた方法であることが判明した.
  • 井上 寿茂, 高松 勇, 村山 史秀, 亀田 誠, 土居 悟, 豊島 協一郎
    1994 年 8 巻 3 号 p. 102-108
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    気管支喘息の急性増悪に対するイプラトロピウム吸入液の効果を検討するため2~5歳の年少児23例と8~14歳の年長児18例を対象とし無作為にサルブタモール+イプラトロピウム群とサルブタモール単独群に分けてネブライザー吸入を行い, 光井のスコア (スコア), パルスオキシメーターによる酸素飽和度 (SpO2), 1秒量の予測値に対する百分率 (%FEV1) の変動を吸入前, 吸入後15分, 60分に経時的に検討した.
    年少児, 年長児ともスコアは15分後から著明に改善し, イプラトロピウム併用による効果の差は認めなかった. SpO2は年少児ではサルブタモール単独群に比ベイプラトロピウム併用群で有意な改善を示したのに対し, 年長児ではイプラトロピウム併用による差は認められなかった. %FEV1は年長児のみ検討しスコアと同様15分後から著明に改善したが, イプラトロピウム併用による差はみられなかった. 以上より, 気管支喘息の急性増悪時, イプラトロピウム吸入液をサルブタモール吸入液と併用することにより年少児では効果の増強を期待できるが, 年長児では効果の増強を期待できないことが示された.
  • 中岡 嘉子, 千葉 康則
    1994 年 8 巻 3 号 p. 109-118
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    沖縄県那覇市の児童のアレルギー疾患の発症率は全国平均に比べて低率だが, 復帰後から増加しはじめ, 現在も増加しつつあることがわかった. その原因を調べるために, 復帰後の児童の生育条件の変化について, 保護者へのアンケート調査を中心に調査した.
    その結果, 復帰後に食生活, 住居, 環境, 家族形態, 兄弟数, 進学競争の熾烈化, 遊び方や友達数などのすべてにおいて, 戦後のわが国の他の地域の近代化傾向の後追いをしつつあることがわかった. さらに, その変化が強い家庭の児童に, アレルギー体質, アトピー性皮膚炎, 喘息のいずれも発症率が高く, 反対の傾向はみられなかった. とくに, アトピー性皮膚炎はほとんどの項目に相関がみられた. 以上の結果を総合してみると, アレルギー体質が形成される原因の一つに, 生活状態の近代化が考えられる. この近代的生活状態の大きな特徴の一つは人間の行動の強い管理化であり, それが皮膚も含めた身体の異常を惹起する原因の一つになっているのではないかと考えられる.
  • 渋谷 信治
    1994 年 8 巻 3 号 p. 119-124
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    施設入院中の重症喘息児14名 (男子8名, 女子6名, 年齢: 8~14歳) を対象に, 練習用テープによる自律訓練法を行ない, 呼吸機能に与える即時的な効果を検討した結果, 気道閉塞のない場合 (%1秒量≧80%) には, %1秒量の有意な変化は認められなかったが, 気道閉塞が中等度にある場合 (40%≦%1秒量<80%) には, %1秒量が平均8%と有意な上昇が認められた. 喘息の一般的な治療指針として気道閉塞やその日内変動の程度を少しでも改善しようと試みられている今日, 自律訓練法は, 症例によっては喘息の補助的な治療法として有用であると考えられた. 自律訓練法が臨床に広く用いられるには, その長期的効果などさらに様々な検討が必要である.
  • 熱田 純, 藤澤 隆夫, 増田 英成, 駒田 美弘, 内田 幸憲
    1994 年 8 巻 3 号 p. 125-130
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    We report on patient with asthma who developed severe anaphylactic reaction to intravenous hydrocortisone.
    A 18-years old man complained nasal itching, chest tightness, choking sensation immediately after intravenous Solu-cortef injection for an acute asthma attack. Cyanosis and exacervation of asthma symptom were also observed and he was transfered to our hospital.
    Suspecting that the symptoms were induced by a preservative, paraben, contained in Solu-Cortef, we administered another hydrocortisone prepatation without paraben, Saxizon, which again resulted in exacervation.
    After the patient was recoverd, we investigated etiology of the reaction.
    Intradermal skin test was positive to hydrocortisone, methylprednisolone, and dexamethasone. Prausnitz-Kustner (P-K) test was also positive to hydrocortisone and methylprednisolone. Absorbtion of IgE from patient serum by affinity chromatography abolished the reaction in P-K test.
    There results suggest that the patient had IgE antibody to hydrocortison, which possibly caused severe anaphylactic reaction.
  • 熱田 純, 柴田 丈夫
    1994 年 8 巻 3 号 p. 131-140
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    特徴的な臨床経過からアレルギー性肉芽腫性血管炎 (allergic granulomatous angiitis: AGA) と思われた1例を経験したので報告する. 症例は13歳男児. 3歳時, 気管支喘息発症. 10歳時, 喘息発作の増悪傾向を認めた. 13歳時, 動悸, 前胸部痛が出現し症状発現後10日目に入院. 入院時, 二度の房室ブロックを伴う急性左心不全を認め体外ペースメーカーを装着した. その後, 発熱, 皮疹, 肝機能障害, 皮下結節, 手指しびれ感等多彩な症状を認め, 好酸球増多症, 皮膚生検の結果より本症と診断した. プレドニン等による治療にもかかわらず約4ヶ月後に全身状態の悪化を来たし心不全にて死亡した. 心不全の原因としては, 間質への細胞浸潤による心筋壊死と考えられたが, AGAにおいては特に心病変管理が重要と思われた.
  • 田中 志保子, 小川 泰弘, 高橋 聡, 石川 丹, 福島 直樹, 高瀬 愛子, 我妻 義則, 小林 良二, 角谷 憲史
    1994 年 8 巻 3 号 p. 141-147
    発行日: 1994/08/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    アトピー性皮膚炎に対し過度の食物制限を行い, ビタミンB1欠乏症状を来した症例を経験した.
    症例は6才, 男児. 乳児期よりアトピー性皮膚炎の治療のため食事制限を続けており, 発症直前は牛乳, 大豆, 卵, 牛肉, 豚肉, 鶏肉, 小麦の一次・二次製品の制限と“低アレルギー米 (削り米)”を使用していた. 1990年3月, 歩行困難, 胸部苦悶, 呼吸困難が出現, 下肢深部腱反射は消失し, 心電図にてST低下と陰転化T波を認めた. ビタミンB1血中濃度6.3μg/dl, 乳酸47mg/dl, ピルビン酸3.1mg/dl, TPP (thiamin pyrophosphokinase) 効果37%であった. ビタミンB110mg静注24時間後, 心電図は, ほぼ正常化したが, 歩行可能となるまで, 約2カ月を要した. アレルギー学的検査ではIgE-RASTでシラカバ9.2PRU/ml, 皮膚テストではタンポポ, シラカバ, コナラが陽性で, その他はすべて陰性であった. 食物制限を解除し, ビタミン剤と抗アレルギー剤で経過観察中にアトピー性皮膚炎の明らかな増悪は認められなかった.
    アトピー性皮膚炎の病因が確立されていない現状においては, 食物関与の診断を慎重に行うと共に, 食物制限の実施に当たっては医師の厳重な栄養管理の基に行うことが極めて大切であることを強調した.
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