日本小児アレルギー学会誌
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9 巻, 2 号
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  • n-3系列多価不飽和脂肪酸強化食品イパオールを用いた多施設 placebo controlled cross over trial による検討
    鳥居 新平, 山田 政功, 菊池 哲, 伊藤 浩明, 上田 雅乃, 井口 淑子, 宇理須 厚雄, 和田 映子, 山田 一恵, 藤沢 隆夫
    1995 年 9 巻 2 号 p. 67-75
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    n-3系列多価不飽和脂肪酸強化食品“イパオール”4週間, 連続投与 (1日摂取量; ALA: 60mg/kg, EPA: 30mg/kg, DHA: 18mg/kg) のアトピー性皮膚炎に対する効果をオリーブ油を含む placebo controlled cross over trial により検討した.
    対象は6医療施設で加療中の計37例の12.8±4.9歳のアトピー性皮膚炎患者 (男 17例,女 20例, 重症 22例, 中等症 15例) である.
    患者は無作為に2群に分けられた. A群は placebo に先行してイパオールを投与した20例であり, B群はイパオールに先行して placebo を投与した17例である. 37例中A群から2例, B群から2例が効果判定に際して除外された.
    イパオール投与期間中には重症度, 炎症の程度に関する総合的な評価, 皮膚炎のひろがりなどに有意な改善が見られた (P<0.01). しかし placebo 投与では症状点数の有意な低下はみられなかった.
    イパオール投与により治療点数には有意な変化がみられなかった. イパオール投与期間中には血清リン脂質中のEAP, EPA/AAさらにDHAの有意な上昇がみられた (P<0.001, P<0.01) が, placebo 投与期間中にはみられなかった.
    イパオール投与に際して出血時間の軽度の延長をみとめる2例があったが, 臨床的には出血傾向はみられなかった.
    以上の成績から一部のアトピー性皮膚炎患者に対してn-3 PUFA強化食療法は有用な治療である.
    今回の試みによりn-6/n-3必須脂肪酸比が炎症の制御因子の一つとして重要であることが明かとなった.
    しかしイパオールの長期投与の安全性や適切な投与量に関しては今後ともに検討を重ねる必要がある.
  • 第1編: 外来患児におけるアンケートでの実態調査
    笹本 和広, 三島 健, 飯倉 洋治
    1995 年 9 巻 2 号 p. 76-82
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    医療機関を受診した小児5412名を対象に薬剤による副反応や過敏症の有無, その症状, 発現時の年齢, 原因薬剤, アレルギー疾患の有無等を検討し以下の結果を得た. (1)副反応の既往があるものは9.46%, 薬剤過敏症の既往があるものは3.75%であり, アレルギー疾患を有する者でその頻度は高かった. (2)薬剤過敏症の既往を有する者は, 年齢が長ずるに従い高率となるが, 薬剤過敏症の発現年齢は低年齢から認められる. (3)過敏症の原因薬剤は抗生物質が最多であった. (4)過敏症症状を認めた者の中で, 原因薬剤名を把握している者, 医師から薬疹もしくは薬剤アレルギーの診断を得ている者, またその後の適切な対処を指示されている者, は少なく, 保護者の過敏症に対する意識が高くないこと, 実際の診療の場での診断の困難さを物語っていると考えられた.
  • 浅井 義之, 勝呂 宏, 山本 淳
    1995 年 9 巻 2 号 p. 83-91
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    施設入院療法において種々の治療にもかかわらず難渋していた難治性喘息児に対し, 当センターにおいて, DSCG液+β2刺激剤+プレドニゾロンを混入した定時吸入療法を深夜・早朝にまで拡大し, 1日5~6回実施することで病状の安定化をみた2症例を経験した. 深夜・早朝の定時吸入は, 吸入装置を工夫し, 患児が就寝中でも実施できた. 症例1: 15歳男児. 喘息発症は1歳, その後入退院を繰り返し, 5歳以降は施設入院療法下にて経ロステロイド剤を含む治療を受けていたが, 呼吸不全を含む重積発作を頻繁に繰り返していた. 10歳時に前病院の併設養護学校の学年制限規定を越えたため当センターへ紹介転院. 前記の定時吸入療法を深夜・早朝にまで拡大したところ, 開始1~2ヶ月頃より病状の安定化が得られた. 症例2: 15歳男児. 喘息発症は1歳9ヶ月. ステロイド依存性ではないが, 症例1と同様の治療経過をたどって安定化した. 2症例とも著明な呼吸機能の日内変動を呈する難治性喘息児であり, 積極的な定時吸入療法の拡大で, 病状の安定化をもたらしたと考えられた.
  • 神田 康司, 岩佐 充二, 安藤 恒三郎, 今枝 弘美, 渡辺 勇, 後藤 玄夫, 川北 章
    1995 年 9 巻 2 号 p. 92-95
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    Acute Phase Reactants であるCRP, α1-acid glycoprotein (α1-AG), Haptoglobin (Hp) は新生児領域でAPRスコアとして, 感染症の早期診断, 臨床経過の把握に利用されている. 今回は, 喘息の重症度, 喘鳴咳等について検討した. 対象はアレルギー外来を受診した喘息児 (平成1年7月-2年8月) で血液検査を施行した91症例である. 喘息日記より喘鳴咳点数を出した. 重症児のHp値が軽症児より有意に低値 (P<0.05) を示した. 採血前3日間の喘鳴咳点数とα1-AGの間に有意の正の相関 (P<0.05) がみられた. 年齢の関与をできるだけ除外するために対象を7才以上とした場合, Hp値は軽症120.0±118.5 (m±SD), 中等症105.5±102.6, 重症69.9±58.1mg/dlと有意差はないが, 重症例ほど低下していた. 採血前2, 3日間の喘鳴咳点数とα1-AGの間に有意の正の相関 (P<0.05) がみられた. 重症例ほどHp値が低下していたのは, 喘息におけるHpの役割を間接的に示していると考えられた.
  • 田知本 寛, 海老澤 元宏, 七條 通孝, 三浦 克志, 坂口 直哉, 斉藤 博久, 飯倉 洋治
    1995 年 9 巻 2 号 p. 96-100
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    ヒト臍帯血由来培養好塩基球 (培養好塩基球) はFcεRIを介した刺激によりヒスタミンを遊離する事が報告されている. しかし, IL-4, ロイコトリエンについては未だ検討されていない. そこで, ヒトIgEで感作した培養好塩基球を抗ヒトIgE抗体で刺激し産生されるIL-4, ヒスタミン, 及び, ロイコトリエンについて検討した. 培養好塩基球からのロイコトリエンの経時的産生は, 刺激後1時間以内に最大反応に達した. 一方, IL-4の経時的産生は, 刺激後2時間より認められ6時間で最大反応に達し, 刺激後12時間まで産生の増加は認められなかった. 培養好塩基球からのIL-4の産生は, 12800倍希釈の抗ヒトIgE抗体による刺激で107.2±63.2pg/106好塩基球と最大反応を示したのに対し, ヒスタミン遊離反応は1600倍希釈の抗ヒトIgE抗体による刺激で41.4±4.5%, ロイコトリエン産生反応は1600倍希釈の抗ヒトIgE抗体による刺激で8.3±3.4ng/106好塩基球であった. 培養好塩基球からIL-4の産生を惹起する抗ヒトIgE抗体の至適濃度は, ヒスタミン遊離反応, ロイコトリエン産生反応を惹起する抗ヒトIgE抗体の至適濃度より約10倍低濃度で認められた. 培養好塩基球は, 末梢血好塩基球と同様にIL-4, ヒスタミン, 及び, ロイコトリエンを産生し, 機能的に成熟した好塩基球であると考えられた. 高純度, かつ大量培養が可能な培養好塩基球は, アレルギー性炎症の解明, 及び, 好塩基球からのIL-4の産生のメカニズムの解析に有用であると考えられる.
  • 柏木 保代, 河島 尚志, 島崎 哲弥, 千葉 友幸, 武隈 孝治, 衰 萠萍, 星加 明徳
    1995 年 9 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    アレルギー患児182名のIgG subclass をELISA法で測定し検討をおこなった. 正常コントロールの-2SD以下を低値とした場合, 25名 (13.7%) にいずれかの subclass 低値を認めた. 低値例の88%の総IgG値は正常であった. IgE値と subclass 低値例とに相関はなかったが, IgA低値例に subclass 低値例を多数認めた. 重症度との関連では気管支喘息の重症例にIgG subclass 低値例が多かったが, アトピー性皮膚炎の重症度とは相関を認めなかった.
  • 師井 敏裕
    1995 年 9 巻 2 号 p. 107-109
    発行日: 1995/06/25
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    日本脳炎ワクチン接種後に一側上肢にわたる著明な発赤腫脹を呈した8才男子例を報告する. 右上腕へのワクチン接種2日後に接種部より末梢の右肘から右手指にかけて, 著明な腫脹及び潮紅, 疼痛を呈したが, 6日後には後遺症なく軽快した. 軽快時に採取した患者血液と日本脳炎ワクチンとの薬剤によるリンパ球刺激試験は疑陽性を示した. 安全と思われている日本脳炎ワクチンの副反応としてIV型アレレルギーを疑われた症例である.
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