n-3系列多価不飽和脂肪酸強化食品“イパオール”4週間, 連続投与 (1日摂取量; ALA: 60mg/kg, EPA: 30mg/kg, DHA: 18mg/kg) のアトピー性皮膚炎に対する効果をオリーブ油を含む placebo controlled cross over trial により検討した.
対象は6医療施設で加療中の計37例の12.8±4.9歳のアトピー性皮膚炎患者 (男 17例,女 20例, 重症 22例, 中等症 15例) である.
患者は無作為に2群に分けられた. A群は placebo に先行してイパオールを投与した20例であり, B群はイパオールに先行して placebo を投与した17例である. 37例中A群から2例, B群から2例が効果判定に際して除外された.
イパオール投与期間中には重症度, 炎症の程度に関する総合的な評価, 皮膚炎のひろがりなどに有意な改善が見られた (P<0.01). しかし placebo 投与では症状点数の有意な低下はみられなかった.
イパオール投与により治療点数には有意な変化がみられなかった. イパオール投与期間中には血清リン脂質中のEAP, EPA/AAさらにDHAの有意な上昇がみられた (P<0.001, P<0.01) が, placebo 投与期間中にはみられなかった.
イパオール投与に際して出血時間の軽度の延長をみとめる2例があったが, 臨床的には出血傾向はみられなかった.
以上の成績から一部のアトピー性皮膚炎患者に対してn-3 PUFA強化食療法は有用な治療である.
今回の試みによりn-6/n-3必須脂肪酸比が炎症の制御因子の一つとして重要であることが明かとなった.
しかしイパオールの長期投与の安全性や適切な投与量に関しては今後ともに検討を重ねる必要がある.
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