冠動脈の血流パターンは他の組織・臓器と違い主に拡張期に心筋に灌流される. 特に左冠動脈で顕著である. さらに, 冠循環には自己調節能が存在するが, それを規定しているのは冠動脈末梢血管抵抗, 拡張期心筋内組織圧, 心筋収縮性などである. 冠循環動態を評価する場合, いわゆる画像診断だけでは不十分で, 冠血流パターン, 時間平均血流速度(APV), 冠血流予備能(CFR), 心筋部分血流予備量比(FFRmyo), ずり応力, 末梢血管抵抗などの指標が有用となる. 川崎病の冠動脈病変合併例で問題となるのは巨大冠動脈瘤と有意狭窄性病変である. 有意狭窄性病変を合併していない巨大冠動脈瘤およびその遠位部における循環動態の特徴は, 血流パターンは乱流で, APV, CFRおよび, ずり応力は低下し, 末梢血管抵抗は増加する. 一方, 有意な狭窄性病変の遠位部では血流パターンは乱流で, APV, CFR, FFRmyoおよび, ずり応力は低下し, 末梢血管抵抗は増加する. これらのことはいずれも血管内皮細胞障害が惹起されていることを意味し, その後の血管再構築に悪影響を及ぼす可能性が示唆される.
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