日本小児循環器学会雑誌
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28 巻, 5 号
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巻頭言
Review
  • 小林 徹
    2012 年 28 巻 5 号 p. 241-249
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/26
    ジャーナル フリー
    川崎病は1967年に川崎富作先生が初めて報告した小児期に好発する原因不明の血管炎症候群である. 免疫グロブリン超大量療法とアスピリンの併用が現在標準的治療として広く用いられている. しかし約2割の患者が標準的治療で解熱せず, 冠動脈病変を合併する患者の多くが免疫グロブリン不応例である. 近年免疫グロブリン不応例を予測する新規スコアが開発され, 川崎病初期治療層別化の有用性が明らかとなってきた. 本総説では川崎病急性期治療の歴史, 最新の治療戦略, 今後の目指すべき方向性について解説する.
原著
  • 上田 秀明, 柳 貞光, 宮田 大揮, 鉾碕 竜範, 康井 制洋, 武田 裕子, 麻生 俊英
    2012 年 28 巻 5 号 p. 250-257
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/26
    ジャーナル フリー
    背景:ASOによる経皮的心房中隔欠損閉鎖術は, 2005年3月以降わが国で承認されて以来2009年7月までに, 1,000例以上の症例に対し試みられている一方で, 2例のerosionや6例の脱落の有害事象が発生している.
    方法:2006年8月から2009年7月までASOによる経皮的心房中隔欠損閉鎖術を試みた117例と外科手術実施55例を対象とし経皮的心房中隔欠損閉鎖術の有効性や安全性の後方視的検討を行った.
    結果:年齢は, ASOによる経皮的心房中隔欠損閉鎖術群, 外科手術群でそれぞれ9±4歳, 6±3歳, 体重は29±15 kg, 19±9 kg, 心房中隔欠損ASDの欠損孔径はsizing balloonによる計測値15±4 mm, 直視下実測値18±4 mm. 平均入院日数は5日, 6日. 入院費は1.4±0.4×106円, 1.6±0.3×106円であった. ASOを用いた経皮的心房中隔欠損閉鎖術群に2 mm以上の遺残短絡症例やerosionの発生や閉鎖栓の脱落など重篤な合併症は認めなかった.
    結論:二次孔欠損型心房中隔欠損例の2/3の症例に, ASOを用いた経皮的心房中隔欠損閉鎖術が可能で, 本治療は低侵襲, かつ安全である. 外科手術と比較として遜色ない成績が得られた.
  • 落合 亮太, 池田 幸恭, 賀藤 均, 白石 公,
    2012 年 28 巻 5 号 p. 258-265
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/26
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は, 身体障害者手帳を有する成人先天性心疾患患者を対象に,(1)社会的自立度と心理的側面との関連,(2)社会生活上の不安・困難・要望を明らかにすることである.
    方法:全国心臓病の子どもを守る会が実施したアンケート調査結果のうち, 身体障害者手帳を有する15歳以上の患者143名分のデータを分析した. 社会的自立を表す指標として就労状況, 年収, 障害年金受給状況を尋ね, 心理的側面を表す指標として経済的苦痛, 精神的苦痛を尋ねた. さらに, 生活上の困難・不安・要望について自由記述にて回答を得た.
    結果:対象者になった143名(年齢15~73歳, 中央値=24歳;男66名, 女71名, 不明6名)のうち, 身体障害者手帳1級を有する者は95名(66%), 就労者は59名(41%;このうち年収200万円以下が58%)であった. 患者の経済的苦痛には, 手術歴があること, 通院頻度の高さ, 世帯総収入の低さ, 本人の年収の低さ, 障害年金受給が, 精神的苦痛には, 通院頻度の高さ, 仕事への不満足がそれぞれ有意に関連していた. 自由記述では, 「周囲の理解が得られない(57名が言及)」「年金制度を充実させてほしい(38名)」「医療費に対する助成を充実させてほしい(37名)」「就労支援・雇用拡大が必要(25名)」といった意見が聞かれた.
    結論:身体障害者手帳を有する成人先天性心疾患患者の収入は総じて低く, 経済的問題と就労環境が, 患者に心理的苦痛を及ぼすと推察された. 就労支援体制の整備と所得保障を含めた福祉制度の充実が急務である.
  • 菅沼 栄介, 松田 晋一, 中村 英明, 関根 佳織, 高倉 一郎
    2012 年 28 巻 5 号 p. 268-273
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/26
    ジャーナル フリー
    背景:川崎病における冠動脈病変は, 細胞浸潤などの他に細胞外基質の破壊亢進が深く関与している. 一方, アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)は, 降圧作用以外に細胞外基質の破壊抑制効果を合わせ持つが, これまでARBが川崎病に有効であるというデータはない.
    方法:4週令の雄のC57/BL6マウスにLCWE(Lactobacillus casei wall cell extract)を0.5 mg腹腔内投与した群(n=10)とPhosphate-Buffered Saline(PBS)を投与した群(n=10), さらにLCWE+ARB(100 mg/l)を投与した群(n=10)の3群を作製し8週令の時点で, 冠動脈のHE染色を行い血管炎の程度を検討した. さらにReal-time PCR法を用いて大動脈起始部でのMMP-2, MMP-9, IL-6 mRNAの発現量をみた(各n=5).
    結果:組織学的検討ではLCWEにより冠動脈炎が惹起され, ARB投与により炎症とともにマクロファージの浸潤も抑制された. Real-time PCR法ではLCWE投与群でのmRNAは, PBS群と比較して, MMP-2, MMP-9, IL-6はすべて高値を示し, ARB投与によりMMP-9とIL-6はともにわずかな抑制をみた.
    結論:ARBは川崎病モデルマウスにおいて冠動脈周囲へのマクロファージの浸潤を抑えることで冠動脈炎を抑制した. 今後ARBが治療的介入目的で利用し得る合理的な薬剤の1つとなることが期待される.
  • 宮崎 あゆみ, 小栗 絢子, 市田 蕗子
    2012 年 28 巻 5 号 p. 274-281
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/26
    ジャーナル フリー
    背景:近年成人では, 高コレステロール血症に加え高トリグリセリド血症(特に食後)が重要な動脈硬化危険因子として注目されている. よって本研究では, 小児における食後のトリグリセリド(TG), およびLDLコレステロール(LDLC)を測定し, その有用性を検討した.
    対象と方法:対象は, 平成22年度に小児生活習慣病予防健診を受診した高岡市内の小学4年生, 中学1年生2,961名である. 身体計測に加え, 給食後1~2時間の採血で, 総コレステロール(TC), HDLコレステロール(HDLC), TG, およびLDLCを測定し, 種々の検討を施行した. さらに二次検診で空腹値が得られた対象に関して, 食後値との比較を行った.
    結果:児童生徒の食後TG平均値は学年差, 性差を認めず, 50パーセンタイル値は86~90 mg/dlで, 全国集計の空腹値より20~30 mg/dl高値であった. また食後TGはBMI, 肥満度, 動脈硬化指数, non-HDLC(TC-HDLC), LDLCと正相関, HDLCと逆相関を認めたが, 食後高値例は必ずしも空腹時高値ではなかった. LDLCはnon-HDLCときわめて良好な相関を認めた(r=0.98, p<0.001).
    結論:食後TGは小児生活習慣病健診でのメタボリックシンドロームのスクリーニング指標として有用である. LDLCはnon-HDLCより推定可能であり, 直接測定の必要性は低い.
症例報告
  • 中山 祐子, 藤田 修平, 中村 太地, 畑崎 喜芳
    2012 年 28 巻 5 号 p. 282-286
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/26
    ジャーナル フリー
    母体への非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)投与により動脈管早期収縮を来した症例を経験した.
    症例は在胎32週6日の胎児. 母体は妊娠31週時に切迫早産に対しインドメサシンを投与され, 鎮痛目的にアセトアミノフェンを使用されていた. 精査目的に施行した胎児心臓超音波検査にて右室肥大を伴う右心系拡大, 三尖弁逆流, 動脈管狭窄所見を認めた. 胎児の未熟性を考慮し, 薬剤投与を中止したうえで胎児心臓超音波検査を繰り返し行い慎重に経過観察した. 経過中, 右心不全の増悪所見は認めず, 妊娠継続した. 在胎37週5日, 帝王切開で出生した. 出生後の心臓超音波検査では右室圧負荷所見を認めたが, 児の全身状態は良好で特に治療を要さず, 生後1カ月で肺高血圧所見はほぼ消失した.
    従来, 動脈管早期収縮は早期娩出の適応とも考えられてきたが, 原因薬剤の中止により可逆性に血行動態が改善する症例も多く経験される. 経時的な胎児心臓超音波検査による観察は, 適切な娩出時期を決定する際に有用であると思われた.
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