日本小児循環器学会雑誌
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34 巻 , 1 号
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巻頭言
原著
  • 福永 啓文, 中村 真, 石川 司朗, 兒玉 祥彦, 佐川 浩一, 中野 俊秀, 角 秀秋, 坂本 一郎
    2018 年 34 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2018/01/01
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    背景:左心低形成症候群(HLHS)は周術期管理や外科治療の進歩に伴い生存率は向上したが,現在でもFontan到達率が低く予後は悪い.HLHSが心室中隔欠損のない典型的左心低形成症候群(typical HLHS)だけでなく非典型的左心低形成症候群なども包含し複雑な血行動態を有するため,予後因子の解析が困難である.typical HLHSを僧帽弁/大動脈弁の狭窄または閉鎖の組み合わせによる4群に分類し,生存率や死亡の危険因子を検討することで,今後のFontan到達および予後向上に役立てることを目的とした.

    方法:typical HLHS=119例(MA/AA=61, MA/AS=4, MS/AA=24, MS/AS=30例)を対象にした.症例の少ないMA/ASを除くMA/AA, MS/AAおよびMS/ASの3群間別生存率,死亡数,死因を検討し,胎内診断,MS/AA, 低出生体重,房室弁閉鎖不全,心外合併症,狭小心房間交通,初回術後ICU滞在日数および初回術式を変量として解析した.

    結果:typical HLHS全体の5年生存率は58%,サブタイプ別にMS/AS 72%, MA/AA 59%, MS/AA 33%で有意差を認めた(p=0.002).多変量解析でMS/AA(p=0.002)と胎内診断陽性(p=0.03)が予後に関する有意な危険因子とされた.

    結論:typical HLHSにおいてMS/AAは予後不良因子であった.TCPC後予後は他群と変わらないことから,術前診断の向上,右心バイパス前の治療戦略の改善が必要である.

  • 小林 弘信, 東 浩二, 村上 智明, 中島 弘道
    2018 年 34 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2018/01/01
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    背景:心臓血管外科手術後の声帯麻痺はよく知られている合併症であるが,新生児期・乳児期早期での手術例における詳細な検討はなされていない.

    方法:対象は2008年10月から2014年9月までの6年間に,千葉県こども病院において生後2か月未満に手術した先天性心疾患症例221例を対象に,症候化した術後声帯麻痺の合併率や危険因子,臨床像に関する単施設後ろ向き観察研究を行った.

    結果:221症例中14例(6.3%)に術後声帯麻痺を合併し,単変量解析では術後挿管期間(p=0.008),大動脈修復術(p<0.0001),Rastelli手術(p=0.006),心室中隔欠損閉鎖術(p<0.0001)の4因子で有意に合併が多く,多変量解析では大動脈修復術が唯一の独立した危険因子あった(p=0.0005, OR 76.57, 95%CI 6.62–885.25).麻痺側は左側12例(86%),両側2例(14%)と左側に多く,声帯麻痺を合併した14例において,生存した13例中12例(92%)で臨床症状が改善した.

    結論:新生児期・乳児期早期に大動脈修復術を要する症例では,術後声帯麻痺の合併は特に注意すべきである.

  • 佐地 勉, 中西 敏雄, 山田 修, 土井 庄三郎, 上田 秀明, 犬塚 亮, 宗村 純平, Jasper Dingemanse, 八田 基 ...
    2018 年 34 巻 1 号 p. 22-29
    発行日: 2018/01/01
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    背景:日本人小児PAH患者に対するボセンタン(BOS)新規小児用製剤の有効性,薬物動態,安全性,及び忍容性を検討する目的で治験を実施した.

    方法:本研究は非盲検,単群,多施設共同,第3相試験として実施した.投与対象は15歳未満のPAH患者とし,BOS新規小児用製剤を2 mg/kg,1日2回(4 mg/kg/日)投与した.治験期間は12週までの有効性評価期間,その後の継続期間及び製造販売後臨床試験期間の2プロトコルで実施した.主要評価項目はベースライン値から12週後の右心カテーテル検査で肺血管抵抗係数(PVRI)の変化とし,副次評価項目は,投薬終了まで12週毎のWHO機能分類(WHO-FC)の変化等とした.さらに,薬物動態として血中濃度,曝露量,最高濃度到達時間を評価し,安全性及び忍容性では有害事象,投与中止に至った有害事象等を評価した.

    結果:患者数は6例,中央値5.5歳(1~13歳),男:女は4 : 2であった.投与後のPVRIは平均4.0±258.6 dyn·sec·m2/cm5低下したが統計学的な有意差は認めなかった.WHO-FCは,全例IIで不変であり,BOSの血漿中薬物濃度の幾何平均値は,最高血漿中濃度が494 ng/mL,1投与間隔の薬物血漿中濃度–時間曲線下面積が2300 ng·h/mLであった.安全性及び忍容性は良好であった.

    結論:日本人小児PAH患者に対するBOS新規小児用製剤の安全性と忍容性が確認された.有効性評価項目である平均PVRI及びWHO-FCの悪化はなかった.

  • 佐地 勉, 山田 修, 土井 庄三郎, 山岸 敬幸, 八田 基稔, 横山 由斉
    2018 年 34 巻 1 号 p. 30-38
    発行日: 2018/01/01
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    背景:小児肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者に対するepoprostenolの新規持続静注製剤の有効性,安全性及び忍容性を検討する目的で治験を実施した.

    方法:本治験は,epoprostenol投与歴のない15歳未満の日本人小児PAH患者を対象とした前向き,多施設共同,非盲検,単群試験である.主要評価項目はベースライン値から12週後の肺血管抵抗係数(PVRI)の変化,副次評価項目は12週後の他の心肺血行動態指標及び48週間のWHO機能分類(WHO-FC),NT-pro BNP値等の変化とした.52週間の安全性も評価した.

    結果:8歳,10歳,14歳の特発性PAHの男児3名が52週間,epoprostenol投与を受けた.開始時の投与速度は0.5~1.0 ng/kg/分であり,その後漸増し,投与52週時点の投与速度は24~41 ng/kg/分であった.PVRI変化量はそれぞれ−3.24, −2.59,及び−2.43 Wood U·m2であった.WHO-FCは,1名がFC IIIからFC IIへ改善し,2名はベースライン及び48週時のいずれもFC IIであった.投与中止,中断,減量に至る有害事象症例はなかった.

    結論:日本人小児PAH患者3例に対するepoprostenol新規製剤持続静注療法により,全例にPVRIの低下とWHO-FCの改善または維持が認められた.投与中止例・中断例はなく,安全性と忍容性が示された.

症例報告
  • 平海 良美, 佐藤 有美, 亀井 直哉, 城戸 佐知子, 廣野 恵一, 市田 蕗子, 畑 由紀子, 西田 尚樹, 田中 敏克
    2018 年 34 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2018/01/01
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    胎児心エコーの進歩により,多くの先天性心疾患が出生前に診断されるようになったが胎児心筋症の報告は少ない.今回我々は,家族歴と胎児心エコーで拡張型心筋症(DCM)と診断し,周産期に死亡した兄弟例を経験した.父と父の弟がDCMで,両児とも顕微鏡受精で妊娠成立した.第1子は在胎21週に診断し,27週で母体Mirror症候群のため緊急帝王切開で出生したが,生後46分で死亡した.第2子は在胎27週に診断し,33週0日子宮内胎児死亡した.病理解剖所見はEndocardial elastofibrosis(EFE)で,家族性DCMと診断された.両児と両親の遺伝子解析では,父由来のTropomyosin α-1 chain(TPM1)遺伝子変異,母由来のdesmoplakin(DSP)遺伝子変異が同定された.家族性の胎児DCMで周産期死亡した場合,両親の遺伝子診断を行うことで次子の発症を予測できる可能性がある.

  • 松田 健作, 帯刀 英樹, 長友 雄作, 平田 悠一郎, 永田 弾, 檜山 和弘, 大賀 正一, 塩瀬 明
    2018 年 34 巻 1 号 p. 46-51
    発行日: 2018/01/01
    公開日: 2018/03/16
    ジャーナル フリー

    右肺動脈上行大動脈起始症(anomalous origin of the right pulmonary artery from ascending aorta: AORPA)は生後すぐより心不全,呼吸不全を呈し,診断後早期に根治術を行うことが一般的である.今回我々は二期的に根治術を施行した2例を経験した.症例1は日齢25の女児で,RSウイルス肺炎,呼吸不全と診断され前医より紹介された.入院時の心臓超音波検査,造影CT検査でAORPAと診断した.RSウイルス感染症であり人工心肺の使用は危険性が高いため,日齢36に右肺動脈絞扼術を行った.RSウイルス肺炎の改善を待ち生後3か月時に根治術を施行した.術後経過は良好であり,術後58日目に退院となった.症例2は1か月の女児で,1か月検診で心雑音を指摘され,精査でAORPAと診断された.術前の心臓カテーテル検査にて肺血管抵抗>10 units·m2と高度肺高血圧(pulmonary hypertension: PH)を認めており,まず右肺動脈絞扼術を行い,その13日後に根治術を施行した.術後経過は良好であり,術後25日目に退院となった.一期的根治がハイリスクな症例には,二期的手術も治療選択として有用なオプションであった.

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