日本小児循環器学会雑誌
Online ISSN : 2187-2988
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34 巻 , 4 号
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巻頭言
Review
  • 門間 和夫
    2018 年 34 巻 4 号 p. 165-171
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー

    本稿では胎児特有の循環路の出生時変化をラット凍結断面カラー写真の図譜で提示する.動脈管と先天性心疾患は紙面の都合で別の図譜にまとめた.ラット胎仔と新生仔を全身急速凍結法で固定し凍結ミクロトームで胸部を前額面,矢状面,横断面で切り,0.5 mm毎に断面カラー写真を連続撮影した.これにより胎児エコー図のモデルになる鮮明な天然色画像が得られた.心臓短軸断面で下大静脈右房開口部から卵円孔を経て左房への胎生期酸素化血の主要血流路が1断面に明示された.胸部矢状面でも臍静脈–静脈管–下大静脈–右房–卵円孔–左房の断面が描出された.新生仔の前額面では動脈管と卵円孔の閉鎖が明示された.胎仔で短い薄い卵円孔部心房中隔は生後2日で急速に進展肥厚して卵円孔を閉鎖した.胎生期心臓連続断面では太い動脈管,大きい胸腺,大きい右房と左房が明示された.いずれの断面図でも出生後に左右肺動脈末梢と肺静脈の急速な拡大,左右心室の拡大,右室壁菲薄化,肺の拡張,右心系のチアノーゼと左心系の動脈血化が明示された.

  • 宮﨑 文
    2018 年 34 巻 4 号 p. 172-181
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー

    小児・先天性心疾患(CHD)を対象とする小児循環器領域の植え込み型心臓電気デバイス治療は,ペースメーカ(PM)が主流で,植え込み型除細動器(ICD)や心臓再同期療法(CRT)の適応は少ない.CHD非合併小児のPMは,体格が小さい場合心外膜リードを用いる.適応疾患は先天性完全房室ブロック(CCAVB)が多い.ICDの対象はQT延長症候群や肥大型心筋症が多いが,体重20~30 kg以下ではショックリードの植え込み方法に工夫を要する.CRTは,心筋症・CCAVBが多く,左室伝導遅延を伴う左室同期不全例には効果的であると考える.CHDでは,静脈アクセスが制限されている場合,心内シャントがある場合には心外膜リードを用いる.PMの適応には解剖,手術,血行動態の理解が必要で,PM設定は血行動態への影響が大きく,血行動態を評価しながら決定する.ICDの適応は,成人が多いが,心臓突然死一次予防については確立されたものはない.CRTは,心室形態・同期不全のパターンを加味してリード位置を決定する.

原著
  • 郷 清貴, 倉岡 彩子, 兒玉 祥彦, 石川 友一, 中村 真, 佐川 浩一, 石川 司朗
    2018 年 34 巻 4 号 p. 182-188
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー

    背景:単心室疾患群では,体肺動脈側副血管(APCA)の増加がFontan術後の合併症につながるため,術前にコイル塞栓を行うことがある.その目標については術後のAPCAの推移も考慮することが必要である.

    方法: 2009年から2015年に当院でFontan手術を行った連続163人を対象とした.APCAの発達の程度を,心カテでの大動脈造影から3段階に点数化し,左右内胸動脈,左右鎖骨下動脈,下行大動脈の5か所のscoreの総和(0~10点)を算出,Fontan術前後にコイル塞栓群,非塞栓群比較した.

    結果:術後6か月時点でAPCA scoreの平均はコイル施行群:6.1±1.5→4.5±1.8点,非塞栓群:4.4±1.7点→3.6±1.7点と有意に減少していた.術後5年以上で評価した35例では,scoreは全例で術後6か月時に比し減少していた.Fontan術前後でMRIを施行した30例において,APCA flowの平均は術前1.4±0.6 L/min→術後0.8±0.6 L/minと減少しており,同様の傾向であった.Fontan術前のscoreが5点以下の症例では塞栓群,非塞栓群の間で胸水貯留が遷延した症例の割合に差を認めなかった.

    結論:Fontan術後は,コイル塞栓の有無にかかわらずAPCAが減少する傾向にあった.術前のコイル塞栓はルーチンで行う必要はなく,score 6点以上が適応と考えられる.

  • 伊藤 貴弘, 椛沢 政司, 浅野 宗一, 阿部 真一郎, 長谷川 秀臣, 松尾 浩三
    2018 年 34 巻 4 号 p. 189-196
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー

    背景:ファロー四徴(TOF)術後遠隔期における肺動脈弁逆流(PR)は右心機能低下,不整脈発生の危険因子となる.TOF術後遠隔期におけるPRに対して肺動脈弁置換術(PVR)を施行した症例の中期成績を検討した.

    方法:2003年4月から2017年3月までの期間,PVRを施行した32例を対象とした.PVR後の平均follow up期間は5.4±4.2年であった.臨床症状,心電図,胸部レントゲン,心エコー,MRI,心臓カテーテル検査などの精査を行って手術適応を決定した.

    結果:周術期死亡例はなく,観察期間中に再手術例(re-PVR)はなかった.1例に大動脈弁逆流,大動脈弁輪拡張を認めたため,PVR後3年でBentall手術を施行した.RVEDVIは術前176.3±57.2 mL/m2に対して,術後108.1±19.4 mL/m2と有意な低下を認めた(p<0.05).RVEFは術前42.7±8.49%に対して術後42.4±7.94%と有意差はなかった.RVEDVI<160 mL/m2の早期手術群のLVEFは,術前53.9±6.14%に対して術後58.8±5.05%と有意差はなかった(p=0.11).術後のLVEDPは早期群より進行群のほうが有意に高い結果となり拡張障害を認めた(p<0.05).

    結語:TOF術後遠隔期におけるPRに対するPVRは安全かつ有効であった.両心機能維持の観点から,RVEDVI 160 mL/m2を指標に手術適応を検討することが妥当と考えられた.

症例報告
  • 藤田 周平, 山岸 正明, 宮崎 隆子, 前田 吉宣, 板谷 慶一, 谷口 智史, 本宮 久之, 星野 真介, 宗村 純平, 夜久 均
    2018 年 34 巻 4 号 p. 197-204
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー

    Four-dimensional flow magnetic resonance imaging (4D flow MRI)による血流可視化によって3次元的な血流の拍動がとらえられ,さらに3次元血流速度分布の流体力学的な解析はwall share stressやflow energy loss等の心血管系への力学的なストレスを定量可能とし,先天性心疾患の治療方針決定への応用が期待される.今回心外導管型Fontan術後の導管の屈曲と蛋白漏出性胃腸症(protein-losing enteropathy: PLE)のため循環動態の把握が治療方針に関わる症例に対して4D flow MRIでの血流解析を行ったため報告する.症例は,右室型単心室,肺動脈閉鎖の14歳男児であった.2歳時に心外導管total cavopulmonary connection (18 mm expanded polytetrafluoroethyleneグラフト)を施行し,術後3年目にPLEを発症,ステロイド依存状態となった.CTで心外導管中央に石灰化を伴う屈曲を認め,再手術適応評価のため精査を行った.カテーテル検査では屈曲部での圧較差は認めず,平均肺動脈圧とRVEDPの上昇を認め,等容拡張期の圧低下の遅れを認めた.4D flow MRIでは導管屈曲部および心室内での血流加速はなく,flow energy lossは有意でなかった.この結果より導管交換のみではPLE改善が見込めないことが示唆され,心室の拡張障害に対する内科的治療を先行する方針となった.

  • 若松 大樹, 佐戸川 弘之, 黒澤 博之, 横山 斉, 桃井 伸緒, 青柳 良倫, 遠藤 起生, 林 真理子
    2018 年 34 巻 4 号 p. 207-211
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/23
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    左上大静脈(left superior vena cava: LSVC)が左側心房に直接還流する場合の二心室修復ではLSVCの対処が必要となるが,血行再建の明確な基準はなく確立した再建方法もない.左側心房直接還流型の左上大静脈を有する不完全型房室中隔欠損症に対し,心内修復に加えて右側心房壁フラップを用いたLSVC再建を行った.症例は10か月,体重8.8 kgの女児で,チアノーゼと心不全を来し入院した.診断は両側上大静脈,単心房,不完全型房室中隔欠損症,左側房室弁逆流,動脈管開存症であった.血管造影上はLSVC優位であり,バルーンカテーテルを用いたLSVC閉塞試験では,圧が6 mmHgから38 mmHgへと上昇したため,単純結紮は危険と判断し,再建する方針とした.心内修復後に右側心房前壁をLSVC方向にフラップ状に切開のうえ展開し,LSVC後壁を作成した.前側は新鮮自己心膜を用いて再建した.術後LSVC圧の上昇はなく経過順調だった.右側心房壁フラップを用いたLSVC再建は一つの方法であると考えられた.

  • 小野 朱美, 早渕 康信, 香美 祥二, 森 一博
    2018 年 34 巻 4 号 p. 215-221
    発行日: 2018/12/20
    公開日: 2019/01/23
    ジャーナル フリー

    先天性僧帽弁異形成症による僧帽弁狭窄兼閉鎖不全(MSR)は,通常外科的弁形成術が必要であり,術後の予後不良な疾患である.我々は内科的加療のみで軽快した乳児例を経験した.症例は日齢22の女児で,心雑音を契機に重度のMSRおよびoversystemicな肺高血圧(PH)と診断された.僧帽弁形成術も念頭に置き,High flow nasal cannula,利尿剤,ジギタリス製剤による治療を開始したところ,徐々にMSR,PH,呼吸循環動態は安定し,内服薬のみで退院が可能となった.成人では左室拡大に伴うtetheringのためにMR,MSRを呈する病態が報告されているが,本症例では元来存在した先天的僧帽弁異形成に加え,生理的・病的PHによる右室圧上昇に伴う左室の変形,乳頭筋の外側偏位,僧帽弁前後径の短縮によって僧帽弁のtetheringが増悪した結果,重度のMSRを呈していたと考えた.乳児期早期の僧帽弁手術適応を適切に診断するために,先天性僧帽弁異形成における器質的問題と機能的問題を鑑別する必要があると考えた.

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