日本小児循環器学会雑誌
Online ISSN : 2187-2988
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35 巻 , 3 号
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Preface
Review
  • 永井 礼子
    2019 年 35 巻 3 号 p. 136-152
    発行日: 2019/09/01
    公開日: 2019/11/27
    ジャーナル フリー

    2018年2月にニースで開催された6th World Symposium on Pulmonary Hypertension (6th WSPH)の内容が,同年12月に成文化された.肺高血圧(pulmonary hypertension; PH)および肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension; PAH)の定義が「安静時の平均肺動脈圧が20 mmHgを超えるもの」と変更されたこと,PAHの分類に「カルシウム拮抗薬に長期反応を示すPAH」が新たに追加されたこと,肺静脈閉塞性疾患pulmonary veno-occlusive disease: PVOD/肺毛細血管腫症pulmonary capillary haemangiomatosis: PCH「PVOD/PCH」が「PAH with overt features of venous/capillaries (PVOD/PCH) involvement」と修正されたことなど,前回の5th WSPH以上にさまざまな面で大幅な変更がなされた.

    本稿では,はじめにこのNice Pulmonary Hypertension Classification 2018の概要について私見を交えながら解説する.さらにPAHの遺伝学的背景とその臨床現場における意義,遺伝学的情報を活用する上で留意すべき点,小児PAH診療における問題点などについて述べ,最後に筆者自身の基礎研究について記すこととする.

  • 大﨑 真樹
    2019 年 35 巻 3 号 p. 153-163
    発行日: 2019/09/01
    公開日: 2019/11/27
    ジャーナル フリー

    急性期循環管理の基本は酸素消費に見合った酸素供給を行うことである.なかでも先天性心疾患は呼吸と循環が密接に結びついており,呼吸循環の相互作用と生理学の理解が必要不可欠である.また同じ病名であっても患者ごとに血行動態に差異があり,各個人に合わせた循環管理を行う必要がある.しかし酸素消費と供給のバランスを整えるという原則は同じであり,体温管理・鎮静鎮痛・人工呼吸などで酸素消費を,血管作動薬,肺体血流比制御,ペーシングなどで酸素供給をコントロールする.これらの評価・介入は手術前後であっても基本は同一である.また重症児の治療においては神経・感染・栄養などの全身管理も非常に重要であり,患者管理を担当する者はこれらにも精通していなければならない.「循環器集中治療」は小児循環器のなかの「急性期管理の専門分野」として認識すべきsubspecialtyである.

  • 門間 和夫, 豊島 勝昭
    2019 年 35 巻 3 号 p. 164-171
    発行日: 2019/09/01
    公開日: 2019/11/27
    ジャーナル フリー

    肺動脈弁欠損を伴うFallot四徴症(TF/APV)は肺動脈弁欠損症候群(APVS)とも呼ばれ,しばしば予後不良である.本症は周産期医療における胎児心エコー検査上重要な疾患である.Bis-diamineは強力なteratogenでラットに先天性心疾患と胸腺低形成を生じる.Bis-diamine 200 mgを妊娠9日と10日にラット40匹に胃内注入し,満期21日目に胎仔を全身急速凍結法,凍結ミクロトーム,実体顕微鏡(Wild M400)を用いて0.5 mm毎の胸部横断面を連続写眞で記録した.330胎仔に各種先天性心疾患(90%),胸腺低形成(100%)を生じた.肺動脈弁欠損を伴うFallot四徴症が46例にあり,その記録で次の所見が得られた.全例大きい心室中隔欠損があり,太い大動脈が心室中隔欠損に騎乗して起始していた.右室漏斗部はやや狭く,肺動脈弁は痕跡的または全く欠損し,動脈管は欠損していた.主肺動脈と左右肺動脈は拡大し,左右肺門部で最も大きく,気管と気管支を圧排して閉塞していた.これら肺動脈弁欠損を伴うFallot四徴症の生体内断面図を胎児エコーモデル図譜として提示する.

原著
  • 廣野 恵一, 宮尾 成明, 小林 徹, 盛一 享德, 寶田 真也, 岡部 真子, 仲岡 英幸, 小栗 真人, 伊吹 圭二郞, 小澤 綾佳, ...
    2019 年 35 巻 3 号 p. 172-178
    発行日: 2019/09/01
    公開日: 2019/11/27
    ジャーナル フリー

    【背景】心筋緻密化障害は未だ臨床像,管理方法,予後など不明な点が多い.

    【目的と方法】我が国における心筋緻密化障害の実態を調査するため,2004~2013年の小児慢性特定疾病レポジトリーから心筋症患者をリクルートし,その登録施設へアンケート調査を実施した.

    【結果】心筋症は1,360例であった.309施設にアンケートを送付し,116施設(37.5%)から470例の回答を得た.心筋緻密化障害は46例(男女比29対17)で診断年齢は日齢0~16歳(中央値0.3歳)であった.診断の契機は症状(47.8%),学校心臓検診(8.7%),乳幼児健診(4.4%)の順で多く,経過中の症状は心不全(58.7%),不整脈(20.0%),塞栓症(2.2%)であった.治療は強心薬,利尿薬,抗血小板薬,抗凝固薬,末梢血管拡張薬,β遮断薬などが使用されていた.学校生活管理指導はE可(19.5%),E禁(13.0%),D(23.9%),C(4.3%),B(2.1%)となっていた.

    【結語】小児慢性特定疾病の登録症例では治療を必要としたより重症例が登録される傾向を有することを念頭に置き,継続した調査と検討が必要であると思われた.

症例報告
  • 早津 幸弘, 安達 理, 長沼 政亮, 増田 信也, 秋山 正年, 木村 正人, 齋木 佳克
    2019 年 35 巻 3 号 p. 179-185
    発行日: 2019/09/01
    公開日: 2019/11/27
    ジャーナル フリー

    症例は19歳男性で,出生時より筋力の軽度低下,難聴,口唇口蓋裂,軽度発達遅延等を認めていたが,染色体検査は行っていなかった.16歳時に心雑音を指摘され,大動脈弁閉鎖不全症の診断となり,その際に行われた染色体検査(G-band解析)にて,18番染色体部分トリソミーおよび部分モノソミーの診断[46, XY, add(18)(q21.2)]となった.包括的な医療を希望し当院へ紹介となり,大動脈弁閉鎖不全症に対し大動脈弁置換術(機械弁)を行った.病理所見では,大動脈弁は3尖とも線維性に肥厚しており,弁尖が結節状に変化していた.また,Alcian-blue陽性の粘液状基質の沈着が目立ち,中等度の変性を伴う大動脈弁の組織像であった.大動脈壁も同様に中等度以上の変性を伴う大動脈壁の組織像であった.外来経過中に行ったアレイCGH+SNP解析では,18番染色体長腕にコピー数の変化を認め,最終的には18番染色体長腕部分モノソミー(18q-症候群)の診断となった.青年期に達し心臓手術が施行された18部分モノソミーの報告はなく,若干の考察を加え報告する.

  • 白水 優光, 宗内 淳, 杉谷 雄一郎, 岡田 清吾, 川口 直樹, 飯田 千晶, 渡邉 まみ江, 川上 剛史
    2019 年 35 巻 3 号 p. 188-194
    発行日: 2019/09/01
    公開日: 2019/11/27
    ジャーナル フリー

    胎児期発症心室頻拍の新生児例において,生後,電気的除細動による心室頻拍停止後に一過性高度房室ブロックとなった1例を経験したので報告する.在胎39週3日の胎児心エコー図検査で心拍数180回/分の房室解離のない胎児頻拍症を指摘され当院産科へ紹介となり,そのまま娩出となった.出生体重は3,130 gであった.12誘導心電図では左軸偏位・幅広いQRS波を伴うshort RP′頻拍であり,アデノシン三リン酸急速静注により房室解離が見られたので心室頻拍症と診断した.電気的除細動により心室頻拍は停止したが,脚枝ブロックを伴う高度房室ブロック(P波138回/分,QRS波75回/分)となった.血圧32/15 mmHgであったがドパミン投与により血圧は回復した.心エコー図検査では左室拡張末期径16.8 mm,左室駆出率30%であった.生後15時間後より2度房室ブロックを経て,生後2日には正常洞調律へ復し,生後48日に退院した.経過中および退院後のホルター心電図検査でも心室頻拍・房室ブロックの再発は認めなかった.胎児期には心室頻拍による逆行性室房伝導を認めていたにもかかわらず,心室頻拍停止後にHis–Purkinje伝導系の高頻度駆動抑制(overdrive suppression)現象のため高度房室ブロックとなった希な経過であった.

  • 小栗 沙織, 安原 潤, 肥沼 悟郎, 山岸 敬幸, 高橋 孝雄
    2019 年 35 巻 3 号 p. 197-201
    発行日: 2019/09/01
    公開日: 2019/11/27
    ジャーナル フリー

    純型肺動脈閉鎖に対し両方向性Glenn手術を行った7か月男児.術後3時間(挿管後8時間)に抜管したところ,吸気性喘鳴と陥没呼吸を認めた.喉頭内視鏡検査で両側声帯の正中位固定を確認し,両側声帯麻痺と診断した.声門を動かす内喉頭筋のうち,声門を開大する唯一の筋である後輪状披裂筋は喉頭背側・食道腹側に位置する.本症例では,気管チューブ留置の刺激に加えて,術中の経食道エコープローブ挿入により,繰り返し後輪状披裂筋に外力が加わった結果,局所炎症から一過性麻痺を生じたと推測された.そこで,再挿管による声帯へのさらなる侵襲は逆効果と考え,呼吸抑制を生じない程度の軽度鎮静下で全身管理を続けた.抜管後4週間で両側声帯麻痺は改善し,喘鳴は消失した.症状,経過,内視鏡検査所見などから病態をより具体的に推定し,治療戦略の選択を行ったことが重要である.

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