日本小児循環器学会雑誌
Online ISSN : 2187-2988
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41 巻, 2 号
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巻頭言
Review
  • 早渕 康信
    2025 年41 巻2 号 p. 67-76
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/12/10
    ジャーナル フリー

    左右短絡性先天性心疾患を中心とした乳児心不全における治療は利尿薬の投与から始まる.利尿薬の使用に際しては,腎臓の構造,ネフロン・腎小体・尿細管の機能,傍糸球体装置からのレニン分泌とレニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系の制御,対向流メカニズム・腎神経・緻密斑・尿細管糸球体フォードバックなどの機序を理解することが循環動態への影響を把握するという観点から望ましい.ほとんどの心不全薬には大規模臨床試験によるエビデンスが存在しているが,利尿薬に関しては十分な臨床試験からの確立されたエビデンスは存在しない.また,慢性心不全では利尿薬の使用量が多いほど予後が悪いことも報告されている.非代償性心不全・利尿薬抵抗性の症例にどのように利尿薬を使用するのが予後改善に有効かという臨床的問題には不明な点が未だ多く残されている.本総説では腎臓の構造と機能を説明したのちに利尿薬の種類・作用機序・副作用について解説していく.さらにループ利尿薬に焦点を当てて慢性心不全における利尿薬抵抗性に関する注意点について述べることとする.

症例報告
  • 太田 光紀, 寺町 陽三, 津田 恵太郎, 髙瀬 隆太, 木下 正啓, 須田 憲治
    2025 年41 巻2 号 p. 77-81
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/12/10
    ジャーナル フリー

    新生児期早期の場合,総肺静脈還流異常症(Total Anomalous Pulmonary Venous Return: TAPVR)に対する開心術は予後が悪いため,近年,垂直静脈をもつTAPVR低出生体重児の新生児早期開心術を避けて静脈管ステントを留置することで予後が改善することが報告されている.しかしステント留置後は内膜の増成に伴って,静脈管ステント内狭窄が高頻度で起きるため,その客観的な評価方法が重要である.今回我々は,在胎34週0日,体重1,556 gで出生した肺静脈が門脈に流入するタイプの下心臓型TAPVR新生児に対して日齢7に静脈管ステント留置を行い経時的に肝静脈血流速度を測定しながら,静脈管ステント内狭窄の評価し適切な時期に再拡張し,心内修復術を行った症例を経験したので報告する.

  • 西岡 真樹子, 北野 正尚, 吉野 佳佑, 島袋 篤哉, 佐藤 誠一
    2025 年41 巻2 号 p. 84-88
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/12/10
    ジャーナル フリー

    動脈管動脈瘤(ductus arteriosus aneurysm: DAA)は遺残動脈管が嚢状または管状に拡張したもので,瘤破裂,血栓塞栓,感染などの致命的合併症を生じることがある.56歳男性において,閉鎖栓により経皮的に治療したDAA例を報告する.健康診断の胸部X線で左第1弓拡大を契機に,造影CT撮影からDAAと診断された.大動脈弓小弯側に入口部(径5.6 mm)をもつ最大径39 mmの嚢状動脈管瘤がみられ,肺動脈側に径2.2 mmの出口部がみられた.嚥下障害や嗄声など自覚症状はなかった.外科治療やstent graft挿入術の選択もあったが低侵襲治療として経皮的動脈管瘤閉鎖術を行った.大動脈側から挿入したguide wireを肺動脈側から挿入したsnare catheterで把持しwire loopを作成後,肺動脈側からdelivery sheathを挿入し,Amplatzer™ Duct Occluder 12 mm/10 mmにより閉鎖した.3カ月後の造影CTでは瘤内は血栓化されていた.経皮的閉鎖術は成人の巨大なDAAに対する有用な治療オプションの一つである.

  • 今村 俊也, 永峯 宏樹, 山田 浩之, 大木 寛生, 前田 潤, 三浦 大, 遠藤 英仁, 窪田 博
    2025 年41 巻2 号 p. 91-96
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/12/10
    ジャーナル フリー

    Marfan症候群では,大動脈拡張,大動脈弁閉鎖不全,僧帽弁逸脱といった心大血管病変に対し経胸壁心臓超音波検査(transthoracic echocardiography: TTE)が必須であるが,側弯などの胸郭異常を来し描出が困難になる場合がある.今回,生体弁置換術後に重症大動脈弁狭窄を生じ緊急入院したが,入院前のTTEで大動脈弁狭窄の進行を診断できなかった症例を経験したため報告する.症例は15歳女児で,11歳時に生体弁による大動脈基部置換術(Bentall術)を施行した.その後,外来でTTEなどでフォローしていたが,側弯の影響で描出が困難であった.今回,呼吸苦で救急外来を受診し,TTEでは診断できず経食道心臓超音波検査(transesophageal echocardiography: TEE)で診断した生体弁の石灰化による重症大動脈弁狭窄の診断で緊急で生体弁による再手術を実施した.Marfan症候群では側弯によりTTEでの描出が不良になることがあり,その場合はMRIやCT,TEEでの評価を追加する必要があると考えられた.また,Marfan症候群ではエラスチン由来の蛋白による生体弁の石灰化亢進が起き早期に弁機能不全に至る可能性があるため,細かいフォローが必要である.

  • 井口 貴文, 星野 真介, 沢田 有里, 高島 光平, 藤田 聖実, 古川 央樹
    2025 年41 巻2 号 p. 97-101
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/12/10
    ジャーナル フリー

    急性心膜炎の原因は,感染性ではウイルス性が最も多いが,ウイルス性心膜炎で心タンポナーデを呈することは稀である.症例は生後11カ月時に心室中隔欠損症に対して心内修復術歴のある12歳男子.5日前に胃腸炎症状での受診歴があり,その後けいれんのため救急搬送された.低血圧性ショック状態で,心エコーで多量の心嚢液貯留と右室圧排像を認め,中心静脈圧は24 mmHgに上昇していた.心タンポナーデに伴う低心拍出症候群と診断し,心嚢ドレナージを行ったところ,血圧は上昇し,中心静脈圧は13 mmHgへ改善した.ロキソプロフェンと利尿薬の投与を開始し,心嚢液の再貯留を認めなかったため,入院14日目に退院した.入院時の血清コクサッキーウイルスA2 (CoxA2)抗体(NT法)が32倍で,3週間後の血清では128倍と4倍の上昇を認めたため,CoxA2性急性心膜炎と診断した.CoxA2性急性心膜炎の症例報告は前例がないため提示する.

  • 小野 頼母, 小泉 沢, 荒川 貴弘, 竹澤 芳樹, 田邊 雄大, 其田 健司, 帯刀 英樹, 小澤 晃, 崔 禎浩
    2025 年41 巻2 号 p. 102-107
    発行日: 2025/05/31
    公開日: 2025/12/10
    ジャーナル フリー

    心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖(pulmonary atresia with intact ventricular septum, PAIVS)は,出生時,動脈管に肺血流を依存している.生後早期に肺血管抵抗が低下して肺血流が増加した際は,壊死性腸炎などの致死的な合併症を避けるため,内科治療により肺血流制御を試みることが多い.一方,内科治療で肺血流制御が不十分な場合の対応方法については知見が少ない.症例は在胎35週,2.2 kgのPAIVSで,生後24時間から肺血流が急激に増加した.プロスタグランジン製剤の中止や低酸素ガス吸入療法などの内科治療では肺血流の制御が不十分で,循環不全が進行した.日齢3に両側肺動脈絞扼術(bilateral pulmonary artery banding, bPAB)を行ったところ循環動態が安定した.日齢21に経皮的肺動脈弁形成術,日齢55に右室流出路形成術を行った.本症例は,PAIVSのように肺血流を動脈管に依存する先天性心疾患でも,状況によっては,bPABが肺血流を一時的に制御する橋渡し治療として有効なことを示唆している.

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