小児歯科学雑誌
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32 巻 , 5 号
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  • 大森 郁朗, 伊平 弥生, 中島 由美子, 鈴木 さち代, 小野 博志, 田中 光郎, 矢尾 和彦, 神原 修
    1994 年 32 巻 5 号 p. 955-971
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究はフッ素徐放性コート材(KFC-510システム)を歯冠隣接面の健全歯面あるいは初期齲蝕(C0ないしC1)罹患歯面に塗布することによって,これらの歯面への齲蝕の侵襲ないし,齲蝕進行を阻止する臨床手技を確立し,この方法の有効性と安全性そして臨床的有用性を検討することを目的とした.
    視診,触診に加えて咬翼エックス線写真を主体としたエックス線写真所見から,適応症例と診断された歯面95症例にフッ素徐放性コート材を塗布して,1か月後および3か月後の所見を観察し,対象歯面の齲蝕罹患状態,齲蝕進行程度,コート材の保持状態ならびに材質の変化を診査するとともに,塗布歯面周辺の歯肉縁,口腔粘膜への影響を診査した.
    臨床試験成績の総合評価は良68症例(71.58%),可24症例(26.26%),そして修復処置に移行した不可のものが3症例(3.16%)であった.これらの結果は,本臨床手技が,乳歯,永久歯の隣接面,単独面(直達し得る隣接面)に対して,齲蝕の予防ならびに進行抑制手段として臨床的に有用かつ安全であることを示すものであり,本法の臨床的有用性を示すものと判断された.
  • 野坂 久美子, 大黒 聡子, 駿河 由利子, 甘利 英一, 曹 越輝, 楊 富生
    1994 年 32 巻 5 号 p. 972-986
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    咬合圧と咬合接触面積について,中国と日本の小児を対象に研究し,両国間の比較を行った.なお,対照群として日本人成人を用いた.研究には,プレスケールを用い,それを最大咬合圧で5秒間,咬合させたものを資料とした.結果は次の通りであった.
    (乳歯列)-咬合圧は,中国では,ほとんどの歯種で,男子が女子よりも大きかった.日本では,女子において,第二乳臼歯が最も小さかった.咬合接触面積は,中日の男女ともに,第二乳臼歯が最も大きく,次いで,中国では乳中切歯,日本では第一乳臼歯あるいは乳中切歯であった.個歯咬合圧は,中国では男子の方が第一乳臼歯で,日本では女子の方が乳中切歯,第二乳臼歯で大きかった.中日間では,男子のほとんどの歯種で,咬合圧,咬合接触面積,個歯咬合圧のいずれも,中国の方が大きかった.
    (永久歯列)-咬合圧は,日本では,大臼歯を除いて男子の方が女子よりも大きく,歯種間では,中国において第二大臼歯が最も小さかった.また,中日間で,咬合圧はほとんどの歯種で中国の方が大きいが,咬合接触面積と個歯咬合圧に差はなかった.しかし,中国の方が約1歳ほど若年であることから,中国の小児が日本の小児と同一年齢に達した時は,中国の小児の方がより大きい値を示すようになることが想定された.また,咬合接触面積や個歯咬合圧は対象群では第一大臼歯が最も大きいが,日本人成人男子では第二大臼歯の方が最も大きかった.
  • 宮新 美智世, 松村 木綿子, 石川 雅章
    1994 年 32 巻 5 号 p. 987-994
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯髄切断法の術式と長期的臨床経過を検討することを目的として,外傷により歯冠破折をきたした幼若永久歯64歯に対して,歯髄切断後長期にわたり臨床的X線学的な経過観察を行った.患児は60名で初診時年齢は平均9歳3か月,経過観察期間は3年から19年まで平均10年1か月であった.その結果,46歯(72%)が経過良好であった一方,術後5年以内に歯髄炎もしくは歯髄壊死が18歯(28%)に認められたが,歯髄生存中は歯根形成の継続が見られた.X線写真上のdentin bridgeは58歯(91%)に,多くは術後1年以内に認められ始めた.うち12歯は歯髄炎または歯髄壊死に陥った症例であった.経過良好例のうち33歯に対しては,糊剤を除去してdentin bridge上における電気歯髄診断,抵抗値測定,糊剤の再貼布を試み,除去した糊剤を光学顕微鏡により観察した.この結果,修復物下には空隙,壊死組織などが観察された.dentin bridgeには穿孔もなく,その電気抵抗値には幅があった.dentin bridge直上での電気歯髄診断への反応値は歯冠上における値よりも小さい傾向があった.糊剤の再貼布後の異常はなかった.以上から,歯髄切断後におけるdentin bridgeの形成は必ずしも良好な予後を確約せず,糊剤を再貼布することや,術後経過を5年以上観察することが望ましいことが示唆された.
  • 立川 義博, 中田 稔
    1994 年 32 巻 5 号 p. 995-1002
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    シーラントが摩耗消失した場合の齲蝕抑制効果について検討するため今回の研究を行った.
    研究に先立ち,ガラス・ビーズ摩耗試験によるシーラントの摩耗変化と口腔内における摩耗変化との類似性について,表面形状変化を比較することにより検討した.
    次に,ガラス・ビーズ摩耗試験後の被験歯を観察し,シーラントが摩耗消失したのち,肉眼的に歯面の露出を認めた裂溝終末端部を頬舌的に切断し,その断面を観察した.
    本研究により,以下の結果が得られた.
    1)ガラス・ビーズ摩耗試験による摩耗は,シーラントと歯面の両者に生じており,特にその境界部付近が最も顕著に摩耗していた.この所見は,口腔内でのシーラントの変化に極めてよく類似していた.
    2)摩耗変化の類似性から,ガラス・ビーズ摩耗試験は,口腔内におけるシーラントの経時的変化と同様の変化を実験的に作り出すのに適した方法であることがわかった.
    3)シーラントが摩耗消失して露出した裂溝終末端部の歯面において,薄い一層のシーラントとレジン・タッグが存在していることが確認された.この所見から,シーラントが裂溝底まで完全に侵入している場合には,シーラントが肉眼的に摩耗消失したのちも齲蝕抑制効果は持続されると思われた.
  • 細矢 由美子, 後藤 讓治
    1994 年 32 巻 5 号 p. 1003-1014
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    光重合型コンポジットレジンの経時的変色に及ぼす光照射時間の影響について,3年間に亘る観察を行った.
    直径10mm,厚さ1mmのレジンディスクをSilux Plus(3M社)を用い,厚さ1mmのガラス板を介して20秒(20秒群),40秒(40秒群)及び120秒間(120秒群)光照射して作製した.レジン色は,U,Y,DY,L,G,UO,YOの7色を用いた.試料を37℃ の人工唾液中に浸漬し,硬化直後と以後6か月ごとに3年後までの色調を高速分光光度計を用いて測色した.測色は,背景色なしの場合と背景色が裏装材を想定して作製した白色板の場合について行った.
    1)ΔE*ab値は,背景色なしの場合も背景色が白色板の場合もすべての光照射時間群について,すべてのレジン色が,おおむね経時的増加もしくは経時的増加傾向を示した.
    2)背景色なしの場合の3年後のΔE*ab値は,20秒群では,2.82(DY)-4.75(L),40秒群では,3.95(YO)-5.08(L),120秒群では,3.82(YO)-6.06(L)の範囲で変化した.
    3)背景色が白色板の場合の3年後のΔE*ab値は,20秒群では,3.88(DY)-5.51(L),40秒群では,5.01(YO)-6.76(L),120秒群では,4.91(YO)-7.04(L)の範囲で変化した.
  • 高橋 真朗
    1994 年 32 巻 5 号 p. 1015-1041
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯列期及び混合歯列期における小児の辺縁歯肉から付着歯肉にかけての形状変化を解明するために模型計測を行った.対象は歯年齢IIA期の小児50名とし,同一小児のIIIA期歯列石膏模型と比較検討した.計測にあたっては三次元計測機,X-Yプロッターを用いた.また計測部位は,上下顎左側各歯の近・遠心隅角部,歯頸最下点部ならびに歯間乳頭部とし,それぞれの辺縁歯肉の位置,辺縁歯肉最大豊隆部,辺縁歯肉陥凹点,歯間溝の状態,さらに第2乳臼歯歯頸最下点部から2mm,4mm,6mm,8mm,10mm下方における水平断面を計測項目とした.
    1)辺縁歯肉の位置は歯頸最下点部で低位を,また歯間乳頭部で高位を示し,各歯種の近・遠心隅角部においても位置の違いが観察された.
    2)辺縁歯肉最大豊隆部は各歯種の遠心隅角部で大きく,歯頸最下点部で小さい傾向にあった.また,歯年齢の変化により豊隆部の垂直的変化も観察された.
    3)歯肉陥凹点は明瞭に観察される症例と不明瞭な症例とがみられ,歯種では切歯部に比較して,臼歯部において明瞭であった.また,陥凹点の垂直的な位置変化も観察された.
    4)辺縁歯肉の縦の陥凹は霊長空隙のみられる部位において著明に観察された.
    5)水平断面の観察では歯年齢の変化により歯槽の切歯部での吸収が,臼歯部での膨隆が観察された.
  • 草野 幸子, 内岡 三枝子, 西田 郁子, 牧 憲司, 森本 彰子, 石井 克旺, 大里 泰照, 周 適宏, 秀島 治, 木村 光孝
    1994 年 32 巻 5 号 p. 1042-1052
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児は成長発育期で健康を維持するために食生活は重要な要因である.そして近年,パンや麺類も主食として摂取されるようになったことに加え,日常食生活における外食産業の占る割合が多くなっている.
    今回,エネルギー,タンパク質,カルシウム,鉄,VA,VB1,VB2,VCなどの栄養所要最を充足するように献立をたてた集団給食について,主食の違いによる無機質含量,さらに外食産業との比較を行った.
    所要量を充足するように献立をたてた集団給食では所要量とは関係のないリンについてもバラツキが少なく,カルシウムとのバランスもよくP/Caは1.9前後であった.微量元素マンガン,亜鉛,鋼についても外食産業によるものよりもパラツキが少なかった.
    主食をパン,米飯,麺にすることによる無機質の含量に大きな違いはなかった.1食中のマグネシウムは麺を主食とするものにパン,米飯を主食とするものより多く含まれていた.Mg/Caも大きかった.100g中についても同様に大きかった.無機質のなかでリン,亜鉛,銅などは集団給食のほうが外食産業より含まれている量が少なく外食産業では動物性食品が多く利用されていると考えられた.
    以上のことより,集団給食における無機質含量は主食の違いによる差はほとんどみられなかった.また外食産業と比較すると,集団給食ではバラツキが少なく,無機質のバランスもよく動物性食品に偏ることも少ないと考えられる.
  • 永原 邦茂, 浜島 誠一朗, 渡辺 修, 伊藤 和明, 飯塚 哲夫
    1994 年 32 巻 5 号 p. 1053-1066
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯反対咬合者の中でどのような形態的特徴を持つものが乳歯列期中に自然治癒するかを知る目的で,乳歯反対咬合者の定期的な経過観察を行った.その結果,乳歯列期中に反対被蓋が自然治癒したものと,反対被蓋のまま経過したものがあった.資料は自然治癒したもの(n群)13例,反対被蓋のまま経過したものの中でn群と同様な反対被蓋範囲のもの(r群)16例の女児の経年的な側面頭部X線規格写真である.両群の角度・距離計測を行い,以下の結論を得た.
    n群の平均成長では,SNB,SNPの減少およびSN-Gn,Ramus(SN)の増加に見られるように下顎骨の後下方への回転および上顎乳中切歯の唇側傾斜および下顎乳中切歯の舌側傾斜により自然治癒した.一方,個成長でも,自然治癒の変化として,(a)上下顎関係の良好になったもの,(b)下顎骨の後下方回転したもの,(c)上下顎乳中切歯の歯軸傾斜が変化したものの3パターンがあり,これらが複合して自然治癒にかかわっていた.一方,r群においてもn群と同様に平均成長では,下顎骨が時計回りに回転している.しかし,個成長では,個々の計測個所において自然治癒の方向に変化するものもあったが,上下顎関係の悪くなったものも多く認められた.また,変化のパターンはn群と異なり単独のものが多かった.
    r群においてもn群と同様な骨格性の変化を起こした例もあったが,r群はn群よりもオーバーバイトが大きいために反対被蓋の改善には至らなかった.
  • 横井 勝美, 山内 哲哉, 福田 理, 後藤 滋巳, 黒須 一夫
    1994 年 32 巻 5 号 p. 1067-1073
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    3歳から5歳の吸指癖を有する小児(吸指癖群)259名と,吸指癖を含めた他の口腔習癖の全くない小児(無習癖群)671名,総計930名を対象に吸指癖が乳歯咬合に及ぼす影響を調査,検討し,以下の結果を得た.
    1.上顎前突の占める割合は無習癖群では3歳9.5%,4歳9.8%,5歳10.0%であるのに対し,吸指癖群では3歳23.7%,4歳16.3%,5歳24.2%となっており全ての年齢で吸指癖群が高い発現率を示し,とくに,3歳では両群間の発現率に統計的な有意差が認められた.
    2.開咬の占める割合は無習癖群が全ての年齢で約2-3%であるのに対し,吸指癖群では3歳12.6%,4歳7.7%,5歳15.1%となっており,3歳および5歳では両群間の発現率に統計的な差が認められた.
    3.前歯咬合への影響では年齢的に顕著な差異は認められなかった.
    4.Terminal planeのtype別発現率において3歳,4歳では吸指癖群と無習癖群の間に顕著な差は認められなかった.
    5.5歳において吸指癖群は無習癖群に比してmesial step typeの発現率が有意に低く,distal step typeの発現率は有意に高くなっていた.
    以上の結果より吸指癖による乳歯前歯部への影響は3歳までの早期に発現し,terminalplaneへの影響は5歳ころから発現することが示唆された.
  • 大西 峰子, 渡部 茂, 今井 香, 西 貴宏, 菅原 美佳, 平沢 雅利, 五十嵐 清治
    1994 年 32 巻 5 号 p. 1074-1080
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    食物の水分最と食塊水分量が咀嚼時間に及ぼす影響を明らかにすることを目的に本研究を行った.
    健全な乳歯列をもつ5歳児20名(男女児各10名)を対象とし,試料にはライス,ソーセージ,マッシュポテト,クッキー,リンゴ,タクアンを用いた.被験者には通常の咀嚼を行わせ,嚥下の時期がきたら食塊を容器に吐きだすよう指示した.全ての試料について各々10口咀嚼し,吐きだすまでに要した時間から,一口量,一口量咀嚼時間を測定した.咀嚼中に分泌された唾液量は,吐きだした食塊と初めの試料の重量差より求め,試料と食塊の水分量は凍結乾燥により求めた.試料の回収率はWatanabeらの考案した式を用いた.
    その結果,同一被験者における同一試料の嚥下時食塊水分量は,標準偏差が小さくほぼ一定の値になることが示された.この嚥下時の食塊水分量は,試料の水分量と正の相関を示した(r=0.83,p<0.01).そして各試料の1g咀嚼時間の平均値は,試料の水分量と負の相関関係を示した(r=-0.86,p<0.05).これらの結果より,嚥下時の食塊水分量は嚥下の時期を決める要因の一つとなること,そして試料のもつ水分量は,咀嚼中の唾液分泌や食塊を嚥下するまでの咀嚼時間に重要な影響を与えることが示唆された.
  • 小林 雅之, 鈴木 広幸, 下岡 正八
    1994 年 32 巻 5 号 p. 1081-1091
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    視覚は非言語的コミュニケーションの一つで,日常の臨床で術者は,視覚を通して小児をリラックスさせる方法を多く用いている.
    本実験では,増齢的に小児の見方にどのような特徴があるか探るため,ビジコンアイカメラを用い,歯科医師の正立顔写真に対する小児の眼球運動を分析検討した.被験者を6歳未満の低年齢児群と6歳以上の高年齢児群とに二分し,眼球運動を分析した.
    1.眼球運動で年齢差を認めたのは視線の走査した範囲,飛越運動の距離視線の方向性であった.
    2.6歳未満の小児は視線の走査が狭い範囲に限られ,6歳以上の小児は広い範囲で視線を走査させることがわかった.
    3.6歳未満の小児は飛越運動の距離が短く,6歳以上の小児は飛越運動の距離が長いことがわかった.
    4.視線の方向性では,6歳未満の小児は水平方向に次いで垂直方向の視線の動きが多く認められ,6歳以上の小児は斜め方向に次いで水平方向の視線の動きが多く認められた.
  • 小林 雅之, 鈴木 広幸, 下岡 正八
    1994 年 32 巻 5 号 p. 1092-1109
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    当教室では,小児の視覚からの認知について研究を行っている.第1報では増齢的に小児の見方にどのような特徴があるか探るため,ビジコンアイカメラを用い,歯科医師の正立顔写真に対する小児の眼球運動を分析検討した.
    第2報では,第1報で得られた小児の眼球運動の結果に対し,心理的・環境的要因がどのように影響するか探るため,多変量解析を行い,次の結論を得たので,報告する.
    1.小児自身の心理的・性格的要因は,年齢差を認める眼球運動に影響を与えることがわかった.
    2.母親に関する要因が年齢差を認める眼球運動に影響を与えることがわかった.
    3.養育環境の要因は少ないが年齢差を認める眼球運動に影響を与えることがわかった.
  • 葛 立宏, 石 广香, 牧 憲司, 大里 泰照, 児玉 昭資, 竹下 尚利, 有住 隆吏, 木村 光孝
    1994 年 32 巻 5 号 p. 1110-1116
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本論文は,小児における下顎骨の成長発育過程を民族・食生活・風土の異なる日本・中国の両国間で比較検討する目的で,九州歯科大学附属病院小児歯科外来と北京医科大学口腔医学院小児牙科外来を受診した正常咬合を有する4歳児から8歳児までの小児100名を対象に,パノラマエックス線写真上で下顎底部皮質骨の計測を行い,拡大率に従い,補正を行い,次のような結果を得た.
    1.下顎底部皮質骨の厚さの平均値
    日本人小児では,4歳2.28±0.34mm,5歳2.31±0.37mm,6歳2.32±0.41mm,7歳2.61±0.28mm,8歳2.70±0.47mm,中国人小児は,4歳2.57±0.41mm,5歳2.59±0.37mm,6歳2.64±0.27mm,7歳2.87±0.42mm,8歳2.95±0.38mmであった.
    男女別にみた下顎底部皮質骨の厚さの平均値
    日本人小児では,男児4歳2.24±0.31mm,5歳2.20±0.41mm,6歳2.30±0.39mm,7歳2.58±0.24mm,8歳2.68±0.50mm,女児4歳2.32±0.37mm,5歳2.42±0.29mm,6歳2.34±0.42mm,7歳2.64±0.30mm,8歳2.72±0.44mm,中国人小児では男児4歳2.54±0.37mm,5歳2.49±0.31mm,6歳2.59±0.28mm,7歳2.90±0.40mm,8歳2.90±0.46mm,中国女児4歳2.60±0.42mm,5歳2.69±0.40mm,6歳2.68±0.30mm,7歳2.84±0.44mm,8歳3.00±0.25mmであった.
    左右別の下顎底部皮質骨の厚さの平均値
    日本人小児では,左側は4歳2.23±0.16mm,5歳2.30±0.21mm,6歳2.42±0.26mm,7歳2.57±0.29mm,8歳2.73±0.46mm,右側は4歳2.33±0.39mm,5歳2.32±0.22mm,6歳22.22±0.30mm,7歳2.65±0.30mm,8歳2.67±0.46mm,中国人小児では,左側は4歳2.56±0.36mm,5歳2.50±0.24mm,6歳2.48±0.25mm,7歳2.83±0.40,8歳2.98±0.28mm,右側は4歳2.59±0.38mm,5歳2.68±0.26mm,6歳2.76±0.26mm,7歳2.91±0.38mm,8歳2.92±0.35mm,であった.
    2.男女間の下顎底部皮質骨の厚さのt検定
    中国人小児では4歳から8歳まで有意差は認められなかったが,日本人小児の5歳で女児が男児に比較し有意に高値を示した.左右間の有意差は,両国小児のいずれの年齢でも認められなかった.
    3.両国間の下顎底部皮質骨の厚さのt検定の結果,中国人小児が日本人小児に比べて,4歳,5歳7歳,8歳(p<0.01)6歳(p<0.05)と有意に高値であった.
  • 尾形 小霧, 大町 耕市, 尾形 和彦, 松村 誠士, 下野 勉
    1994 年 32 巻 5 号 p. 1117-1121
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    コンピュータの急速な発展にともない,音声や音,挿絵,アニメーション,ビデオムービーが特殊な機器あるいは特殊な技能を必要とせず,素人でも簡単に取り扱うことができるようになった.著者らはこれらの機能を利用して学生あるいはスタッフ教育用のソフト(小児歯科患者の対応法)をHyper Cardを使って作成した.これらを紹介するとともに,これからの小児歯科領域におけるマルチメディアの利用法ならびにそのありかたについて考察した.
  • 富永 敏彦, 安富 豊, 森由 香里, 有田 憲司, 西野 瑞穂
    1994 年 32 巻 5 号 p. 1122-1131
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    口腔習癖と咬合状態との関係を解明する目的で1985年5月から1988年11月までの間に出生し,1歳6か月,2歳,2歳6か月および3歳時の健康診査を全て受診した238人を対象に経年的調査を行った.吸指癖については,その継続期間,中止時期,および家庭環境との関係について調査分析し,以下の結果を得た.
    1)口腔習癖の発現頻度は経年的にそれぞれ33.6%,36.2%,38.1%,44.3%であり,増齢的増加傾向にあった.吸指癖は全年齢を通して最も発現頻度が多く,経年的にそれぞれ24.1%,27.2%,25.0%,23.4%であった.吸指癖の発現頻度に増齢的変化は認めなかった.
    2)不正咬合の発現頻度は経年的にそれぞれ50.0%,54.8%,52.1%,45.8%で,増齢的変化は認めなかった.増齢的に増加傾向が認められたのは上顎前突のみであり,過蓋咬合,反対咬合,交叉咬合,叢生は減少傾向を示し,開咬,切端咬合は増齢的変化を認めなかった.
    3)吸指癖保有者は非保有者と比較して,開咬あるいは上顎前突の発現頻度が有意に高かった.2歳6か月以降までの吸指癖の継続期間が1年以上であった者は1年未満の者に比較して,また2歳6か月以降まで吸指癖を保有していた者は,2歳6か月までに吸指癖の消失した者に比較して,3歳時の開咬あるいは上顎前突の発現頻度が有意に高かった.
    4)一人っ子,親がサラリーマン,核家族,昼間保育所・幼稚園に預けられているという保育環境の2歳6か月以降に吸指癖を保有している頻度が有意に高かった.
  • 佐藤 直芳, 吉村 譲, 巣瀬 賢一, 鈴木 昭, 吉田 美香子, 千葉 悦子, 五嶋 秀男
    1994 年 32 巻 5 号 p. 1132-1136
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    ブタ歯髄組織からmalate dehydrogenase (EC.1.1.1.37:MDH)の部分精製を試みた.歯髄から得られた粗酵素抽出液のMDH比活性は0.039 units/mg proteinであった.硫酸アンモニウム分画およびセファデックスG-150カラムクロマトグラフィーによって,本酵素は比活性0.46 units/mg proteinとなり,回収率34.2%で,粗酵素抽出液と比較して11.9倍に部分精製されていた.
    至適pHはL-リンゴ酸の酸化反応において,本酵素はアルカリ側で高い活性を示した.すなわち,pH9.0を境界として酸性側では酵素活性は低下し,アルカリ側では活性は安定していた.オキザロ酢酸の還元反応においてはpH7.0で最大活性を示した.また,本酵素の基質および補酵素に対するKm値はL-リンゴ酸:7.4×10-5M,NAD+:9.1×10-5M,オキザロ酢酸:7.7×10-5M,NADH:7.9×10-5Mであった.
  • 佐藤 直芳, 吉村 譲, 巣瀬 賢一, 鈴木 昭, 吉田 美香子, 千葉 悦子, 五嶋 秀男
    1994 年 32 巻 5 号 p. 1137-1144
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Lactate dehydrogenase(EC.1.1.1.27:LDH)は解糖系の最終段階に位置しており,ピルビン酸とL-乳酸の相互変換を触媒する.ブタ下顎第一後臼歯(M1)から採取した歯髄組織の抽出液を出発材料として,LDH isozymeの分画および精製方法について検討した.
    DEAEセファデックスA-50カラムクロマトグラフィーにより,歯髄組織内に5種類のLDH isozymeの存在が確認された.さらにLDH-1,LDH-2およびLDH-3 isozymeについてブルーデキストランアフィニティークロマトグラフィーを用いて高倍率,高回収率で精製することができた.この精製法は歯髄組織LDH isozymeの酵素学的性質を検討するうえで,有効な手段であると考える.
  • 田中 克明, 野中 和明, 山崎 要一, 立川 義博, 緒方 哲朗, 柳田 憲一, 石井 光治, 池本 清海, 中田 稔
    1994 年 32 巻 5 号 p. 1145-1153
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Goldenhar Syndromeは,眼球角部の類皮腫,耳介の形成異常および脊椎の奇形を三大主徴としている.第1・第2鰓弓症候群の一つであり,別名Oculoauriculo-vertebral dysplasiaとも呼ばれている.その他にも顎顔面の非対称性低形成を合併することが多いため,歯科学的にも興味深い先天性異常である.今回我々が遭遇した初診時4歳の女児には,以下のような所見が認められた.
    1)左右の横顔裂の形成術後
    2)左右の眼球角部の類皮腫および耳介の低形成
    3)軽度の脊椎彎曲傾向
    4)下顎骨の矮小化および鳥貌様顔貌
    5)顎顔面形態の左右の非対称性.
  • 笠原 浩, 渭東 淳行, 小笠原 正, 渡辺 達夫
    1994 年 32 巻 5 号 p. 1154-1159
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    部分生体肝移植を受けた小児患者2例の歯科治療を経験した.第1例は胆道閉鎖症のため7歳時にわが国3例目として手術を受け,最長期生存記録を更新中の女児である.10歳0か月で当科に紹介来院した.シクロスポリン100mg,プレドニゾロン1.5mgを長期連用中であり,体格はやや小柄ではあったが,毎日元気に通学しており,臨床検査結果でも著しい異常は認められなかった.主訴は上顎前歯部歯肉の著しい肥厚と中切歯の萌出障害で,主治医との連携の下に歯肉切除を行った.病理組織学的には著しい線維増殖は認められず,萌出性嚢胞と診断された.以後現在まで2年以上にわたってリコールによる歯科的健康管理を行っているが,全身的にも局所的にも良好な経過を得ている.
    第2例は胆道閉鎖症のため6歳時に肝移植を受けた男児で,上顎側切歯の萌出異常を主訴として,8歳3か月で当科に紹介来院した.シクロスポリン150mgなどを連用中であったが,肝機能障害が持続し,肝脾腫,黄疸,ムーンフェイスなどがみられた.C型肝炎も合併していた.体調不良と出血傾向とに加えて,恐怖心もきわめて強く,対応には苦慮したが,主治医との密接な連携の下にとりあえずの応急的な処置から徐々に治療を進め,乳歯抜歯4歯,修復10歯などをとくに異常なく終了した.歯科的健康管理に移行したが,入退院を反復していてきちんと受診ができないためか,口腔清掃状態がやや不良で歯肉増殖傾向がみられる.
  • 船越 禧征, 満木 志おり, 高松 恒美, 嘉藤 幹夫, 大東 道治
    1994 年 32 巻 5 号 p. 1160-1164
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    先天性の重症心疾患の1つである三尖弁閉鎖症は三尖弁閉鎖,右室低形成,心房間右-左短絡,左室肥大を伴った疾患である.
    今回,三尖弁閉鎖症を有する3歳11か月患児の歯科治療を全身麻酔下で行った.麻酔の導入は笑気,酸素,セボフルレンで行い,気管内挿管により維持を行った.術中,循環系その他に異常なく1時間25分で歯科治療は終了した.麻酔時間は2時間であった.術後の経過は良好で術翌日に退院した.
    患児はBlalock-Taussing術後,抗凝固剤(パナルジン)が投与されていた.患児の術前のトロンボテスト値は30%前後にコントロールされていたため抗凝固剤の減量,中止をせずに通常量を服用させ抜歯し,抜歯窩にオキシセルを挿入,圧迫止血した.術後は後出血もなく抜歯窩の治癒状態も良好であった.
    患児の循環動態を把握するためパルスオキシメータを用いた.これは重症チアノーゼ性心疾患患者において,その酸素飽和度値と動脈血血液分析での値が高い相関性を示すことから心疾患を有する患児の歯科治療の際に循環動態を把握するモンターとして非侵襲的で連続的に使用でき,きわめて有用である.
    抜歯などの観血的処置に際しては,感染性心内膜炎を予防する目的でペニシリン系抗生物質を術前より経口投与し,術当日は経静脈的に投与し,術後さらに3日間経口投与することにより重篤な感染症が予防できた.
  • 後藤 滋巳, 不破 祐司
    1994 年 32 巻 5 号 p. 1165-1172
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    悪習癖の一つである拇指吸引癖の存在は上顎前突あるいは開咬に代表される不正咬合の大きな原因となるばかりか,すでにそれを伴う不正咬合症例にあっては,その不正咬合の悪化,矯正治療の進行阻害の可能性が高いことから,悪習癖への対処は不正咬合の改善操作に優先されるべきものである.しかし,悪習癖は無意識下で行われるものであるだけに短期間での除去は難しく,また低年齢者においては,患者自身の潜在的成長発育能力を早期から順調に育ませる必要があることから,臨床上,習癖への対処と不正咬合の改善処置は並行して行うことが多い.
    そこで今回,拇指吸引癖を伴う乳歯列期の上顎前突に,上記内容を考慮し機能的矯正装置の一つであるバイオネーターを応用した治療例を提示し,習癖ならびに上顎前突の改善に至った経過,そしてこのような症例でのバイオネーターの効果について述べた.
  • 1994 年 32 巻 5 号 p. 1180-
    発行日: 1994年
    公開日: 2013/01/18
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