小児歯科学雑誌
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35 巻, 3 号
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  • 第2報 乳歯齲蝕罹患率の経年変化
    武田 康男, 竹辺 千恵美, 野中 歩, 藤村 良子, 平野 洋子
    1997 年 35 巻 3 号 p. 393-400
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は経年的な齲蝕罹患率の変化に対する疾患重複数の影響,齲蝕罹患に関与する諸要因と重複数との関係を検索することである.その結果以下の結論が得られた.
    1.初健診時の対象児は495名で,男児283名,女児212名,男女児合計の平均年齢は2歳1か月であった.2.重複数を基準に対象を4群に分類した.3.重症群(重複数4以上)は他群に比べて経年的に高いdf歯率を示した.4.重症群の56.8%にエナメル質形成不全が認められ,他の3群とは統計学的に有意な分布差を示した.5.重症群の前歯,臼歯ともに形成不全群はdf歯率の経年的増加が顕著であった.6.歯列空隙の有無に関して,重症群,第2群ともに空隙なし群のdf歯率が顕著で,df歯率の経年的な増加傾向は重症群に強く認められた.7.初健診時の歯垢付着度に関して,重症群は第2群との間に有意な分布差を認め,重症群の方が歯垢付着度が良好な結果を得た.8.初健診時の歯垢付着度の高い重症群は第2群に比較してdf歯率の増加が顕著であった.9.初健診時の齲蝕活動性別のdf歯率の経年変化に関して,重症群のdf歯率の増加が顕著であった.10.小窩裂溝填塞処置歯率は第1群が高く,以下重複数が増えるに従って処置歯率は減少した.重症群は全年齢,処置歯率が最も低かった.
  • 細矢 由美子, 一瀬 暢宏, 井上 孝, 福本 敏, 後藤 讓治
    1997 年 35 巻 3 号 p. 401-409
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    成犬の前歯と前臼歯53歯を露髄させ,直接歯髄覆罩材(剤)としてオルソマイトスーパーボンド®を用いた場合(SB群)と対照としてカルビタール®を用いた場合(CV群)について,14日例と30日例の歯髄の病理組織学的変化を観察した.
    1)創面下の歯髄に好中球やリンパ球などの炎症性細胞浸潤が観察された症例は,SB群では14日例が4例(23.5%),30日例が8例(57.1%)であり,CV群では14日例が5例(38.5%),30日例が2例(22.2%)であった.
    2)歯髄の一部壊死がSB群30日例の2例(14.3%)に,歯髄の全部壊死がCV群14日例の2例(15.4%)とCV群30日例の2例(22.2%)にみられた.
    3)残存歯髄の出血および血管拡張などの循環障害は,SB群では14日例の10例(58.8%)と30日例の6例(42.9%),CV群では14日例の6例(46.2%)と30日例の4例(44.4%)にみられた.
    4)マクロファージの出現は,SB群では14日例の8例(47.1%)と30日例の10例(71.4%)に,CV群では14日例の7例(53.8%)と30日例の4例(44.4%)にみられた.
    5)象牙質橋の形成は,SB群14日例の12例(70.6%),CV群14日例の1例(7.7%)とCV群30日例の3例(33.3%)に観察されたが,SB群30日例では皆無であった.
  • 岡本 和久, 道本 篤, 武井 謙司, 太田 宅哉, 小宮 城治, 松原 清, 朝田 芳信, 前田 隆秀
    1997 年 35 巻 3 号 p. 410-414
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    大きい顎骨を有する近交系マウスとしてRF/J(20匹),小さい顎骨を有する近交系マウスとしてSM/J(22匹),同様に大きい顎骨のC57L/J(10匹)と小さい顎骨のA/HeJ(13匹)を親系とし,大きい顎骨を有する雌と小さい顎骨を有する雄を交配して得たものをF1[RFIJ♀ ×SM/J♂](7匹)とF1[C57L/J♀ ×A/HeJ♂](22匹),また小さい顎骨を有する雌と大きい顎骨を有する雄を交配して得たものをF1'[SM/J♀×RF/J♂](11匹)とした.
    以上の2系列の顎骨を下顎下縁平面をX軸(水平方向),それに直交する線分をY軸(垂直方向)とし,基準点間の線分計測を行った.さらに,過去に報告した1系列の結果も合わせて検討したところ,3系列すべてにおいて各F1のオトガイ部より関節頭のX成分およびオトガイ部より下顎角部のX成分は大きい顎骨を有する親系の同部位と同様あるいはそれ以上であった.このことからマウスの下顎骨においてオトガイ部から関節頭への水平成分とオトガイ部から下顎角部への水平成分は遺伝形式が優性をとることがほぼ確証でき,特に水平成分が主であるオトガイ部から下顎角部への水平成分の大きさの違いが下顎骨水平方向の形態形成に関与する遺伝子の解明にあたっての表現型となり得ることが示された.
  • 仲井 雪絵, 中村 由貴子, 大野 美香, 薬師寺 紀子, 河村 晃代, 堀 雅彦, 下野 勉
    1997 年 35 巻 3 号 p. 415-421
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    岡山県邑久郡邑久町において,乳児健診(9,10,11か月),1歳6か月児健診,2歳児健診,3歳児健診を全て受診した小児468名を対象に,同一個人の乳児期から3歳時までの経年的な齲蝕活性の変化とその後の齲蝕罹患状況との関連性を検討した結果,以下の結論を得た.
    1)邑久町の小児の齲蝕罹患状況は,全国平均と比較して低い値であった.
    2)CAT値は,増齢にともない高値の割合が増加した.
    3)各健診時のCAT値が高い群は,低い群に比べてその後の健診時で有意に高い1人平均def歯数を示した.
    4)乳児健診時から3歳時までのCAT値の経年的推移パターンによって,3歳時の齲蝕罹患状況に相違がみられた.
  • 二木 昌人, 野沢 美夕起, 陣内 みさき, 中田 稔
    1997 年 35 巻 3 号 p. 422-428
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    セルフエッチングプライマーを含むコンポットレジンシステムは,臨床術式が簡便になり,特に象牙質と良好な接着が得られるといわれている.しかしながらエナメル質との接着については,処理剤の酸処理効果が弱いと考えられ,従来のレジンタグによる機械的接着効果は充分に得られないと予測される.したがって,本研究ではこれらの接着システムのエナメル質との接着について再検討を行った.すなわち,3種類のコンポジットレジンシステム(クラレ社製Clearfil®Liner Bond II/Clearfil®AP-X:LB,トクヤマ社製MacBond System/Palfique®Light Posterior:MB,松風社製Fluorobond/Lite-fil IIP:FB)を用いて,抜去ヒト大臼歯にセルフエッチングプライマーまたはコントロールとしてリン酸エッチングジェル(3M社製ScotchbondTM Etchant)を使用してレジン充〓を行った.そして,サーマルサイクリングテスト後の色素浸透試験によって辺縁封鎖性を調べることにより,エナメル質接着性を判定した.
    その結果,いずれの接着システムにおいても,セルフエッチングプライマー処理に比べてリン酸エッチングのほうが有意に良好なエナメル質接着性が得られた.また,セルフエッチングプライマー処理・リン酸エッチングにかかわらずMB,LB,FBの順で接着が良好であり,MBおよびLBとFBとの間には有意差が認められた.
  • 二木 昌人, 中田 稔
    1997 年 35 巻 3 号 p. 429-436
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    臼歯咬合面の予防拡大を最小限にした歯質保存的II級レジン充填の歯面接着性を,従来のアマルガム窩洞に準じたII級レジン充〓と,辺縁封鎖性によって比較評価した.また,リン酸またはマレイン酸によるエナメル質・象牙質一括処理による差異についても同時に調査した.ヒト抜去小臼歯に2種類の窩洞を形成し,これらをさらにリン酸処理とマレイン酸処理するものに分け,3M社製のOne All System(接着システム: ScotchbondTM Multi-Purpose System,コンポジットレジン: Z-100)を用いてレジン充填を行った.そして,被験歯に対して繰り返し荷重試験またはサーマルサイクリングテストを行った後,色素浸透試験によって,咬合面・隣接面軸側・隣接面歯肉側窩縁部の辺縁封鎖性を評価した.
    その結果,歯質保存的II級レジン充填と従来のII級レジン充填との間で有意差は認められなかった.また,マレイン酸処理に比較してリン酸処理を行ったほうが概して良好な辺縁封鎖性を示した.エナメル質の厚みが小さい隣接面歯肉側窩縁部については,処理材間の差はなかったが,いずれにおいても象牙質内まで至る辺縁漏洩は阻止されている場合が多かった.
    これらの結果より,リン酸一括処理による歯質保存的II級レジン充填の臨床応用の可能性が示唆された.
  • 田中 光郎, 松永 幸裕, 小野 博志, 門磨 義則
    1997 年 35 巻 3 号 p. 437-440
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    牛乳の齲蝕への関わりを検討する目的で,プラークの液体成分であるプラークフルイドの組成に対する牛乳うがいの効果を調べるために,次のような実験を行った.
    48時間歯磨きを停止したボランティアの男子歯科学生(延べ13名)の片側上下顎のプラークを採取し,次いで牛乳でうがいをした後,反対側のプラークを採取した.このプラークからプラークフルイドを遠心濾過によって分離し,そのカルシウム,リン酸,マグネシウム,ナトリウム,アンモニウム,カリウム,塩素の各イオン濃度とpHを測定した.得られたデータから,プラークフルイドのエナメル質に対する飽和度を計算によって求め,牛乳によるうがいの前後で飽和度がどのように変化するのかを検討した.その結果以下のような結論が得られた.
    牛乳でうがいを行うと,プラークフルイドのpHはうがい前に比べて有意に低下した.牛乳うがいによって起こるプラークフルイドにおける変化がpHだけであったならば,プラークフルイドのエナメル質に対する飽和度は低下し,エナメル質は脱灰しやすくなるものと考えられる.
    しかしながら,一方で,牛乳のうがいによってプラークフルイド中のカルシウムイオン濃度は有意に増加し,その結果,プラークフルイドのエナメル質に対する飽和度が低下する事を防いで,pH低下による歯質溶解作用を打ち消すように働くものと考えられた.
  • 苅部 洋行, 小方 清和, 菊池 進
    1997 年 35 巻 3 号 p. 441-446
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    デンタルプレスケール®を用いた小児の咬合力の測定方法を確立する目的で,デンタルプレスケールシートのタイプおよびクレンチング持続時間(100%クレンチングに達してからそれを持続する時間)が測定値に与える影響について検討を行った.本学附属病院小児歯科を受診した正常咬合を有する12名の小児(男児8名,女児4名,平均年齢8歳5か月)を対象とし,圧力測定範囲が3-13MPaのデンタルプレスケールシート30H-Rタイプ(以下30Hと略す)と5-120MPaの50H-Rタイプ(以下50Hと略す)の有効圧(加わった圧力が感圧測定範囲内にある割合)の違いについて検討した.また,16名の小児(男児8名,女児8名,平均年齢9歳4か月)を対象として,クレンチング持続時間の違いが咬合力に与える影響について検討した結果,以下の結論を得た.
    1)有効圧の平均は30Hで82.4%,50Hで98.1%であった.すなわち,30Hではその圧力測定範囲内で最大咬合力を測定しきれないことが50Hに比較して多いため,50Hの使用が望ましい.
    2)クレンチング持続時間が長くなるにしたがい,咬合力,咬合接触面積は大きくなる傾向がみられ,咬合圧は小さくなる傾向がみられたが,2秒から3秒にかけて計測値は一定の値に近づく傾向が認められた.
    3)咬合力が十分に評価されるためにクレンチング持続時間は2秒から3秒が適当と考えられる.
  • 金 末子, 壼内 智郎, 東 知宏, 松村 誠士, 下野 勉
    1997 年 35 巻 3 号 p. 447-452
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳幼児の齲蝕罹患者率を減少させるためには,齲蝕発生および進行の可能性の高い集団を早期にスクリーニングし,かつ適切な保健指導を行うことが重要である.今回我々は,1歳6か月児歯科健診,2歳児歯科健診をともに受診した児1641人を対象とし,1歳6か月児歯科健診時点での初期齲蝕(C0)の有無に着目して,齲蝕を有しない児,C0のみ有する児,C1以上の齲蝕を有する児の3群に分類し,それぞれの群の齲蝕罹患傾向,生活習慣について調査を行った.その結果,
    1.C0のみ有する児の群は,齲蝕を有しない児の群と比較し,2歳時で高い齲蝕罹患傾向にあった.
    2.カリオスタット試験では,C0のみ有する児の群は,C1以上の齲蝕を有する児の群と比較し,ハイリスクの割合が有意に少なかった.
    3.生活習慣に関するアンケートの回答分布において,1歳6か月時点で,C0のみ有する児の群は,C1以上の齲蝕を有する児の群と比較し,授乳を継続している児が有意に少なく,また,C0のみ有する児の群は,齲蝕を有しない児の群と比較し,おやつの時間が不規則である児が有意に多かった.
    以上より,不可逆性の齲蝕に進行する前に,初期齲蝕(C0)をスクリーニング基準の一つとし,早期に適切な指導を行っていく必要性が示唆された.
  • -第1報 術者の眼球運動-
    島田 路征, 城山 博, 下岡 正八
    1997 年 35 巻 3 号 p. 453-463
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯科ユニット(ユニット)をテスト画像化し,ユニットに対する既知性のある術者に提示し,ビジコンアイカメラを用いて,どのようにそれを見るのかを術者の眼球運動を測定し,科学的に分析し以下の結論を得た.
    1.初回停留部位,初回停留点までの視線の走査,停留回数,停留時間よりユニットの構造的符号化,そして再認が行われ,歯科ユニットを一体として見ていた.
    2.全停留点の分布より,術者は自己の身体を基準としてユニットの大きさを正しく認知している可能性が示唆された.
    3.距離の短いサッケードで背景よりもユニットの内部を多く走査し,長いサッケードでユニットと背景を走査していた.
    4.ユニットを決まった走査路で走査する者が多かった.
    5.術者の下方に向けた視線からは,テーブルの上やチェアー上の小児の顔と身体についての情報も集めやすいことがわかった.
  • -第2報 術者の眼球運動-
    島田 路征, 城山 博, 下岡 正八
    1997 年 35 巻 3 号 p. 464-471
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯科ユニット(ユニット)をテスト画像化し,ユニットをよく知らない小児患者に提示し,ビジコンアイカメラを用いてどのようにそれを見るのかを小児患者の眼球運動を測定し,科学的に分析し以下の結論を得た.
    1.初回停留部位,初回停留点までの視線の走査,停留回数,停留時間より,ユニットを一体として認知するのではなく,ユニットのテーブル,ライト,チェアーが独立したものであるとして認識していた.
    2.全停留点の分布より,自己の小さな身体を基準としてユニットの大きさを予測するため,それを実際より大きく認知している可能性が示唆された.
    3.距離の短いサッケードで背景と歯科ユニットのテーブル,ライト,チェアーそれぞれを繰り返し走査し,長いサッケードでユニットと背景を走査していた.
    4.ユニットを決まった走査路で走査する者は少なく,ランダムに走査する者が多かった.
    5.日常生活の習慣から上を見る傾向にあり,小児の視野からは奥行き方向への視線が遮蔽されることが多く,情報収集に限界があることがわかった.
  • 粟根 佐穂里, 川口 由佳, 鈴木 淳司, 岡田 貢, 香西 克之, 長坂 信夫
    1997 年 35 巻 3 号 p. 472-477
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児歯科臨床において,小窩裂溝填塞法は小窩裂溝齲蝕の予防に欠かせない方法であり,その材料学的性質においても抗齲蝕性を持つことが望まれる.そこで,フッ化物配合および非配合の光重合型レジン系小窩裂溝填塞材3種と,光重合型グラスアイオノマーセメント1種について齲蝕原因菌であるS.mutans,S.sanguis,L.caseiに対する抗菌作用及びフッ素イオン溶出濃度,pHとの関連性を検討し,以下の結果を得た.
    1)フッ化物配合の有無を問わず光重合型レジン系小窩裂溝填塞材は,好気条件下でS.mutansに対して静菌的に作用していた.光重合型グラスアイオノマーセメントで,全供試菌に対して抗菌作用が認められた.
    2)光重合型グラスアイオノマーセメントで,全供試菌に対して抗菌作用が認められた.
    3)光重合型グラスアイオノマーセメントが最も高いフッ素イオン溶出濃度を示した.
    4)光重合型グラスアイオノマーセメントが最も高いpHを示した.
    以上のことから,今回使用したすべての試料は好気条件下のS.mutansに対して抗菌作用を示した.この材料的性質は臨床的に小窩裂溝填塞処置に,有利に作用すると考えられる.
  • 張 野, Lina M. Cardenas, 今武 由美子, 山邊 陽出代, 岩沼 健児, 後藤 讓治
    1997 年 35 巻 3 号 p. 478-488
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    咬合面小窩裂溝と並んで頬面小窩は齲蝕好発部の一つである.頬面小窩の形態を解明する目的で,ヒト未萌出下顎第一大臼歯20歯を用い,頬面小窩の形態についてSEMによる観察,樹脂包埋の連続研削面について実態顕微鏡による観察および計測を行い,以下の結果が得られた.
    1)未萌出下顎第一大臼歯20歯中の13歯(65.0%)に18の頬面小窩が観察された.同一個体の左右同名歯に左右対称的に発現する傾向が認められた.
    2)未萌出下顎第一大臼歯における頬面溝の長さは平均2.5mmであり,頬面小窩はすべて頬面溝の下1/3部に認められた.
    3)未萌出下顎第一大臼歯における頬面小窩開口部の形態は楕円形のものが最も多く,18中の12(66.7%)であった.
    4)頬面小窩の各計測平均値は,開口部の長径553μm,開口部の幅径189μm,小窩の深さ867μm,小窩底部エナメル質の厚径658μmであった.
    5)未萌出下顎第一大臼歯における頬面小窩の長径と幅径との間,頬面小窩の長径と深さとの間にそれぞれ正の相関関係が認められた(p<0.01).
    6)未萌出下顎第一大臼歯における頬面小窩の形態は,DV型が最も多く,18中の7(38.9%),SV型とSK型がそれぞれ4(22.2%),DK型が3(16.7%)であった.SU型とDU型はなかった.
  • -乳歯列期から混合歯列期における歯の異常について-
    土岐 裕子, 荻野 由美, 根日屋 祥子, 高橋 真朗, 佐藤 昌史, 井上 美津子, 佐々 竜二
    1997 年 35 巻 3 号 p. 489-498
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    昭和大学口蓋裂診療班で管理され,小児歯科においても口腔管理を受けている唇顎口蓋裂児116名(男児57名.女児59名)を対象に,乳歯およびその後継永久歯における上顎前歯部の歯の異常の発現状況について調査を行い,以下の結果を得た.
    1.対象とした唇顎口蓋裂児を裂型別にみると,唇顎口蓋裂が48.3%と最も多く,次いで唇顎裂28.4%,口蓋裂19.0%,口唇裂4.3%の順であった.
    2.顎裂の部位はA∇BC間が56.4%,AB∇C間が24.5%,A∇C間が19.1%の順であった.
    3.歯の異常は,全体的に乳歯に比べて永久歯の発現頻度が高かった.歯数の異常では,乳歯は過剰歯の発現が多く(20.7%),永久歯は欠如が多く(57.8%)みられた.また,永久歯においては顎裂を伴うもので,歯数や位置の異常の頻度が高かった.
    4.裂側と非裂側別の歯の異常の発現頻度は乳歯,永久歯ともに裂側に多くみられたが,歯数や位置の異常は非裂側にも発現するものが認められた.また,歯種別では裂側の乳側切歯,永久側切歯に何らかの歯の異常が多くみられた.
    5.乳歯に異常が認められなくても,後継永久歯に異常の発現する頻度が高く,とくに,唇顎裂児では形態および位置の異常が,唇顎口蓋裂児では歯数の異常が多くみられた.
  • 齋藤 亮, 大間 範子, 飯島 英世, 三輪 全三, 小野 芳明, 高木 裕三
    1997 年 35 巻 3 号 p. 499-504
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    デンタルプレスケールを用いて小児の咬合圧を測定する際に,小児が咬頭嵌合位にて確実に最大咬合力を発揮できたのかどうか疑問である.そこで,携帯型1チャンネル筋電計をモニターとして使用し,小児が測定時に確実に最大咬合力を出したかどうか確認する簡便な手段を考案して,小児10名(男児5名,女児5名)に対しその方法の適応を試みた.そして,筋電計をモニターとして使用する方法と通常のプレスケール単独使用法とを比較し,以下の結論を得た.
    1.筋電計をモニターとして使用した場合,プレスケール単独の方法より咬合接触面積および咬合力は有意に増加した.
    2.再現性について,筋電計をモニターとして使用する方法がプレスケール単独の方法より優れていた.
    3.小児において,筋電計のレベルランプは視覚的フィードバックとして咬合力の増加に役立つことが示唆された.
    4.以上から,小児ではデンタルプレスケール使用時に筋電計をモニターとして使用する方法が,有効であると考えられた.
  • -成人による予備的実験-
    村田 典子, 市石 慶子, 江崎 順子, 坂田 貴彦, 中島 一郎, 赤坂 守人
    1997 年 35 巻 3 号 p. 505-509
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,夜間睡眠時における筋活動の評価に機能的に異なった複数の筋の筋電図記録を行う意義を明らかにすることである.そこで我々は,夜間睡眠時における側頭筋と咬筋の筋活動発現時間および筋活動比において検討を行った.
    被験者は健康成人5名とした.夜間睡眠時の筋電図記録は,簡易型筋電計を用い側頭筋および咬筋から記録を行った.そして,夜間睡眠時における筋活動発現時間および咬筋・側頭筋比を検討した.
    その結果,夜間睡眠時における筋活動発現時間において,側頭筋活動が長い時間を示す者は3名,咬筋活動が長い時間を示す者は2名であった.咬筋・側頭筋比は側頭筋優位な者が3名,咬筋優位な者が2名であった.
    このことから,夜間睡眠中の筋活動は,側頭筋を主体とした筋活動を示す場合と咬筋を主体とした筋活動を示す場合があることがわかった.
    以上のことから,夜間睡眠時の咀嚼筋活動を記録し検討するには,複数の筋から筋電図記録を行う必要があり,その結果,筋活動の相違が認められることが示唆された.
  • 町田 幸雄, 杉浦 三香, 田中丸 治宣
    1997 年 35 巻 3 号 p. 510-517
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    不正咬合の大きな原因の一つと考えられる乳歯あるいは永久歯の早期喪失を来すことなく永久歯列期に達した症例でも,不正歯列や不正咬合の発現することはよく知られている.しかし,どのような割合でそれらが発現するかについては,未だ明らかにされていない.そこで,乳歯列から永久歯列に至るまで乳歯あるいは永久歯の早期喪失を来すことなく経過した男児39名,女児47名,計86名の累年石膏模型を用いて,歯列および咬合状態の変化と不正歯列と不正咬合の発現について詳細に観察した.
    その結果,永久歯列期で正常咬合に移行した症例は30例(34.9%),不正歯列あるいは不正咬合に移行した症例は56例(65.1%)であった.
    これら不正歯列あるいは不正咬合に移行した56例(65.1%)のうち叢生歯列に移行した症例は23例(26.7%),空隙歯列に移行した症例は12例(14.0%),空隙・叢生歯列に移行した症例は2例(2.3%),過蓋咬合に移行した症例は6例(7.0%),上顎前突に移行した症例は3例(3.5%),反対咬合に移行した症例は2例(2.3%),臼歯部の鋏状咬合に移行した症例は8例(9.3%)であった.
    また,乳歯列期にターミナルプレーンが遠心段階型を呈した症例は,Angle II級の不正咬合に移行する割合が多くみられた.
    各症例は可及的に2か月間隔に定期検診を行ったが,症例の約2/3が不正歯列あるいは不正咬合に移行したことから,歯牙と歯槽部の大きさの不調和,上下顎の成長量の相違などの遺伝的要因が不正歯列や不正咬合の発現に大きく関与していると思われた.
  • 小出 武, 岩田 典子, 大東 道治
    1997 年 35 巻 3 号 p. 518-525
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    出生時より低カルシウム血症を呈し,生後3か月で特発性副甲状腺機能低下症と診断された2歳3か月の女児に遭遇し,以下のような所見を得た.
    ビタミンD製剤及び低リン濃度ミルクにより血中のカルシウム及びリン濃度の正常化が計られていたが,全身の発育は悪く,低体重,低身長を呈していた.軽度の精神発達遅滞および感音性の難聴を認めた.手,足は小さく,顔面部では鼻根部の平坦化を認めた.乳歯の萌出時期は遅延していた.また,全ての乳歯にエナメル質形成不全を認めた.形成不全は,エナメル質の欠損部位から判断して,出生時前後の障害により生じたと考えられた.エックス線診査から乳歯根の形態的異常,永久歯胚の石灰化時期の異常,歯槽硬線の肥厚などは認められなかった.模型分析の結果,計測可能な乳歯の歯冠近遠心幅径は小さく,乳歯列の幅径も小さかった.
  • 甲原 玄秋, 佐藤 研一
    1997 年 35 巻 3 号 p. 526-531
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    右頬部腫脹を主訴に12歳女児が千葉県こども病院を受診した.他院のMRI検査では頬部腫瘍の疑いであった.初診時左頬部に直径3cmの硬い可動性の腫瘤を認めた.全身の発熱はなく,局所にも炎症所見はみられなかった.血液検査では,白血球数,血沈,CRPなど正常であった.3か月後に摘出術を計画し,その間経過観察を行っていたが,初診の1か月後,左頬部皮膚に皮下膿瘍を形成し,自壊してきたため切開排膿術を施行した.レントゲン写真を精査すると下顎左側第一大臼歯遠心根尖に直径3mmの透過性病変を認め,同部を開放したところ膿を認めた.これらより同歯による外歯瘻と診断とした.初診時腫瘍を思わせた腫瘤は外歯瘻に至る一過程であった.原因歯の根管治療,根管充填後,根尖病巣は消失し,頬部切開部は瘢痕や陥凹を残さず治癒し,初診時より5年を経過した現在問題を生じていない.本症例より頬部に腫瘤が見られる場合,感染を示す理学的,血液学的所見を欠いていても側方歯群の根尖病巣,嚢胞などに注意して診断をすすめる必要性が確認された.また外歯瘻の原因歯は抜去されることが多いが,病変の大きさによっては原因歯の歯内療法による保存も試みられるべきと思われた.また瘻孔閉鎖術は直ちに行わないで経過観察消炎後,皮膚より骨面までの瘻管が依然明らかな場合や,皮膚の陥凹が生じた場合に行えば良いと思われた.
  • 吉田 美香子, Rosalia Contreras Bulnes, 鈴木 昭, 千葉 悦子, 石野 愛子, 逢坂 亘彦, 佐藤 直芳
    1997 年 35 巻 3 号 p. 532-536
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児鼻腔内異物は好奇心や悪戯で,無意識に鼻腔内へ物を挿入して起こり,2~4歳児に最も多い.歯科領域においてエックス線診査によって発見されることは,極めて稀である.今回著者らは5歳6か月男児の鼻腔内異物の症例を経験し,以下の所見を得た.
    1)定期検診時のオルソパントモグラム上で右側下鼻甲介部に異物を認めた.
    2)本学耳鼻咽喉科に対診した結果,鼻腔内異物と診断され,吸引管と鉗子で摘出した.
    3)摘出物は直径約6mmの球体で,プラスチック製のオモチャの弾丸であった.摘出後の経過は良好であった.
    4)1枚のエックス線写真には,我われ歯科医の予期せぬ異常を発見しうる情報も提供する可能性のあることに注意を払う必要があると考えられた.
  • 『楽しく正しく食べる-小児の咀嚼と咬合の発達について-』を終えて
    米津 卓郎
    1997 年 35 巻 3 号 p. 537
    発行日: 1997/06/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
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