小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
38 巻 , 5 号
選択された号の論文の26件中1~26を表示しています
  • 鈴木 泰子, 牛尾 有里, 新井 直子, 植松 道夫, 野間 歌子, 栗山 純雄
    2000 年 38 巻 5 号 p. 935-940
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    著者らは,第一大臼歯の保護に,当診療所で行っている小児の定期診査がどの程度の効果をもたらしているかを知る目的で,定期診査受診者と初診来院者の第一大臼歯の実態調査を行った。対象は8歳から29歳までの定期診査受診者711名と初診来院者276名である。
    1)定期診査群では,上下顎ともにほとんどが生活歯であったが,初診群では年齢の高い者ほど非生活歯,喪失が増加する傾向にあった。
    2)定期診査群は,上下顎ともに健全歯率が高く,そのほとんどがシーラント処置を施されていた。齲歯率は定期診査群が2-6%であったが,初診群はどの年齢においても20%を上回り,下顎の15-9歳では40%近くの高率であった。
    3)齲蝕経験歯面数は,初診群では上下顎とも年齢が高くなると1面が減少し,3,4,5面が増加する傾向にあった。
    4)近心隣接面の齲蝕は,初診群が上下顎ともかなり多く,視診・触診による発見も多かった。定期診査群ではほとんどエックス線診による発見であり,軽症であった。遠心隣接面齲蝕は,定期診査群は初診群より著しく齲蝕発見が少なく,特に視診・触診では全く認められなかった。
    5)歯面別齲蝕経験率は,ほとんどの年齢で初診群が高く,上顎頬面と下顎舌面では年齢の高い者ほど初診群と定期診査群の格差が大きかった。
  • 塚本 計昌, 西田 郁子, 牧 憲司, 森本 彰子, 西岡 孝浩, 内上堀 征人
    2000 年 38 巻 5 号 p. 941-952
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    思春期におけるカルシウム摂取は骨粗鬆症の予防につながる重要な因子である。しかし,カルシウム摂取が骨にいかに影響を与えたかを,形態計測や骨塩量定量法によって検索した報告は極めて少ない。そこで,本研究は思春期に相当する生後8週齢のラットの下顎骨をカルシウム摂取不足により骨を虚弱化させた後,長期のカルシウムの補給により骨にいかに影響を与えたかを形態的計測およびエックス線学的骨塩量測定について検索し,次のような結果を得た。
    1.体重
    対照群および各実験群の間に有意差は認められなかった。
    2.頭部側方エックス線規格写真
    A.座標分析
    筋突起部(Cr),関節突起部(Cd)および下顎角部(Go,Ag)で対照群と実験群の間に有意差が認められ,実験群が低値を示した。
    B.実測長分析
    関節突起高(Go-Cd)と筋突起高(Go-Cr)において,実験群と対照群との間に有意差が認められ,実験群が低値を示した。
    C.面積
    筋突起部において,実験群と対照群との間に有意差が認められ,実験群が低値を示した。
    3.骨塩量測定
    下顎角部,関節突起部および筋突起部の骨塩量を測定した結果,対照群と各実験群との間に有意差は認められなかった。
    以上のことから,思春期に骨を虚弱化させ,その後長期にわたって食餌療法を行った場合,骨の質的変化といえる骨塩量に関しては十分に回復が見られたものの,骨の量的変化といえる骨形態の回復は困難であることが示唆された。
  • 野坂 久美子, 佐藤 輝子, 駿河 由利子, 阿部 英一, 濤岡 暁子
    2000 年 38 巻 5 号 p. 953-964
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    接者性レジンに適した乳臼歯窩洞形態を検討するために,健全なヒト抜去乳臼歯を試料として,椀型とボックス型の1級窩洞を咬合面に形成し,接者性レジンを充填後,1万回のサーマルサイクルの施行の下に,窩縁からの微少漏洩とボンディング剤の厚さについて本研究を行った。なお,窩縁には,カーブの強いラウンドベベル(a)とゆるやかなもの(b)を付与した。これらを組み合わせて,I群-シングルボンド®+椀型+(a),II群-シングルボンド®+椀型+(b),III群-ライナーボンドII®+椀型+(b) ,IV群-ライナーボンドII®+ボックス型+(a)に分類して比較した。その結果,I,II群で,微少漏洩のみられないものが多く,とくにII群は,73.3%であった。また,漏洩は,窩縁部と窩底部のみに認められた。しかし,III,IV群では,全てに漏洩が認められた。また,III群では,2つの試料で,窩洞からのレジンの脱落がみられた。ボンディング剤の厚さは,I,II群では,象牙質から窩洞隅角部,窩底部に限局し,20μm前後であった。III,IV群では,窩縁部にもボンディング剤の層を認め,IV群は,III群の2倍弱の厚さであった。以上の結果から,接着性コンポジットレジンの乳臼歯応用には,ゆるやかな窩縁形態をもった椀型窩洞で,酸処理と流動性の良いボンディング剤の使用が,微少漏洩を減少させることが出来ると考えた。
  • 広瀬 弥奈, 松本 大輔, 八幡 祥子, 五十嵐 清治
    2000 年 38 巻 5 号 p. 965-971
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯垢の齲蝕誘発能について口腔内部位特異性を調べるために,上顎前歯部唇側(UAB)と口蓋側(UAL),上顎臼歯部頬側(UPB)と口蓋側(UPL),下顎前歯部唇側(LAB)と舌側(LAL),下顎臼歯部頬側(LPB)と舌側(LPL)の左右両側を合わせた8部位から採取した歯垢中のCa,P,F量を測定し,ミネラル量の部位の差の有無について比較検討した。また,部位別歯垢蓄積量,水分量についても調査し,以下に示す結論を得た。
    1)歯垢蓄積量は,湿・乾燥重量ともに,UPBが最も多く,UALが最も少なかった。
    2)歯垢の水分量は,UAL以外は,80%前後とほぼ一定の値を示した。
    3)歯垢中ミネラル量は,二元配置分散分析の結果,統計学的有意差が認められ,Ca,P量は危険率0.01%で,F量は危険率5%で部位による差が認められた。部位別にはLALが最も高い値を示し,Ca,P量ともにScheffeの多重比較検定において有意性を示した。次いでLPL,UPBとなり,最も低い部位はLPBであった。
    以上の結果は,齲蝕は下顎前歯部に少なく,UABやLPBに多発するという齲蝕罹患の部位特異性と一致していた。また,大唾液腺開口部付近(UPB,LAL)ではエナメル質表層のF濃度が高いという歯表面のF濃度分布とも類似していたことから,歯垢中のミネラル分布は,唾液および歯質表層との相互の関連性のあることが確認された。
  • 岩崎 浩, 中山 聡, 内山 盛嗣, 斎藤 珠実, 岩堀 秀基, 菊田 賀子, 紀田 晃生, 園田 尚弘, 川端 明美, 高梨 登, 金沢 ...
    2000 年 38 巻 5 号 p. 972-984
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    中国上海市の幼稚園歯科検診を実施し,同時に得た小児の上下顎歯列模型を基に乳臼歯歯冠形態の解剖学的観察を行い,先人の報告との比較検討を加え,以下の結論を得た。
    1.乳臼歯咬合面型は人種間に顕著な差は認められなかった。
    2.上海市小児における上顎乳臼歯Protoconule, Metaconuleおよび斜走隆線の出現頻度は石家荘市小児に比べ低率であった。
    3.上海市小児における上顎頬側面浮彫像および上顎第1乳臼歯のCingulumの出現頻度は石家荘市小児に比べ高率であった。
    4.近心結節,下顎第2乳臼歯の第6咬頭および第7咬頭,下顎第1乳臼歯のCingulumの出現頻度は中国人小児間で差は認められなかった。
    5.咬合面幅の比率は中国人小児間で相違性を示すか否かは明確にはならなかった。
  • 細矢 由美子, 大町 耕市, 東 繭, 後藤 讓治
    2000 年 38 巻 5 号 p. 985-994
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    齲蝕活動性試験により齲蝕の発生が予測できるかどうかを確認することを目的に,3種類の齲蝕活動性試験法を用いて検討を行った。
    齲蝕活動性試験(試験)には,カリオスタットTM(三金),RDテスト®(昭和薬品)とミューカウント®(昭和薬品)を用いた。初回齲蝕活動性試験時(初回時)におけるHellmanのDental AgeがIIAからIVAの小児71名に対し,5年から9年間にわたる1年ごとの齲蝕活動性試験結果と口腔診査結果をDental Age別にまとめた。試験結果別に各試験時より1年後までの間に発生したC0歯数(ΔC0),C0を除く新たに発生した齲歯数(Δd+ΔD)と齲蝕重症度指数(CSI)について,Spearman順位相関係数を求めた(P<0.05)。さらに,試験結果別に1年後のΔC0の有無,Δd+ΔDの有無,CSIが8以上と8未満間のχ2検定を行った(p<0.05)。
    試験結果と1年後のΔC0,Δd+ΔDおよびCSIの相関関係を比較した結果,有意な正の相関関係が複数の項目にみられたHellmanのDental Ageは,IIC,IIIBとIIICであった。3種類の試験法中で最も多くの項目に有意な正の相関関係がみられたのは,カリオスタット48時間値であった。齲蝕に関わる項目中で最も多く有意な正の相関関係がみられたのはCSIであり,次いでΔd+ΔDであった。
    本研究の結果,永久歯萌出開始期においては,カリオスタット48時間値により齲蝕の発生が予測できる可能性が示唆された。
  • 塩入 悦夫, 牧 憲司, 神谷 祐行, 矢原 規考, 内上掘 征人
    2000 年 38 巻 5 号 p. 995-1012
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    離乳期ラットの食餌中のカルシウム量,タンパク質量の変化が下顎骨の成長発育に及ぼす影響を知る目的で,次ぎの実験を行った。
    生後3週齢のWistar系雄ラットを用いた。それらのラットを無作為に4群に分けた。対照群は,標準飼料で14週間飼育した。実験群は,それぞれにカルシウム欠乏食,低カルシウム食,高タンパク食で4週間飼育し,虚弱骨を惹起させた後,実験群のすべての群に標準飼料を与え10週間飼育した。飼育終了時に,体重測定後,下顎骨を抽出し,下顎骨の形態的変化,またデジタルエックス線撮影装置とコンピュータシステムを導入した骨塩量について比較検討した。結果は下記に示すとおりである。
    1,体重は,各実験群間で有意差は認められなかった。
    2.下顎骨の大きさについては,カルシウム欠乏食・標準食群が対照群に比べ有意の差を認めた(p<0.05)。他群では,有意差は認められなかった。
    3.骨塩量に関しては,カルシウム欠乏食・標準食群のみが,対照群に比べ有意差が認められ(p<0.05),完全な回復所見は認められなかった。
    以上の結果より,離乳期にカルシウム欠乏により虚弱状態に陥った下顎骨は,形態的な変化のみならず骨の質的面においても,長期間の食餌療法による完全な回復は期待できない事が示唆された。
  • 大道 士郎, 嘉藤 幹夫
    2000 年 38 巻 5 号 p. 1013-1024
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児の外傷における下顎乳前歯と下顎骨の損傷様式を探求するために,小児乾燥頭蓋の下顎骨の三次元有限要素法モデルを作成し,構造解析を行った結果,以下の結論を得た。
    1.下顎乳中切歯や乳側切歯の唇面荷重では,外力により乳中切歯や乳側切歯は脱臼,動揺や脱落を起こす傾向が強くなるが,破折傾向は弱くなる。
    2.下顎乳犬歯の唇面荷重では,外力により乳犬歯は脱臼,動揺や脱落を起こす傾向が弱くなり,破折傾向も弱くなる。荷重反対側の下顎頸部や下顎関節頭部では骨折傾向は強くなる。
    3.下顎骨オトガイ部の骨面荷重では,下顎頸部や下顎関節頭部の骨折傾向が強くなるが,オトガイ部では骨折傾向は弱くなる。
    4.下顎第一乳臼歯・第二乳臼歯部の骨面荷重では,荷重側の第二乳臼歯遠心部,反対側の下顎頸部や下顎関節頭部で骨折傾向が強くなる。
    5.下顎第一大臼歯部の骨面荷重では,下顎頸部や下顎関節頭部の骨折傾向が弱くなるが,第一大臼歯部では骨折傾向が強くなる。
    6.下顎角部の骨面荷重では,下顎角部,同側の下顎頸部や下顎関節頭部で骨折傾向が強くなる。
    以上より,有限要素法の解析は小児の下顎乳前歯や下顎骨外傷の臨床的調査や研究に役立つものと示唆された。
  • 岩瀬 陽子, 早崎 治明, 中田 志保, 中田 稔
    2000 年 38 巻 5 号 p. 1025-1033
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    咀嚼は最も重要な下顎機能のひとつであることから,これを下顎運動の側面から解析した報告は枚挙に暇がなく,その多くは一連の運動からサイクルを抽出し,そのサイクルを解析の対象としている。しかしこの抽出方法は解析結果を大きく左右するにもかかわらず,その客観的方法についての報告は少なく,乳歯列期小児に関するものは見当たらない。そこで本研究では,乳歯列を有する小児9名の下顎切歯点におけるガム咀嚼運動を対象としサイクルへの分割方法について検討した。まず,1)各サイクルの分割点の条件を,下顎運動に対する補正方法,最小サイクル時間の設定の2つを組み合わせることにより検索した。次に,2)求められた終末位および終末位間の最大開口位が妥当であるかを検討した。この2つのステップで咀嚼運動から抽出されたサイクル数を,あらかじめ視覚的に認識されたサイクル数と比較した。また,成人女性27名にも同様の解析を行い,小児との相異について検討した。
    その結果,
    1)小児では下顎運動の補正方法と最小サイクル時間の条件を適切に設定することにより,99%以上のガム咀嚼運動終末位を自動認識することができた。
    2)成人についても同様の自動認識が可能であったが,その条件は小児と成人では異なっていた。
    3)咀嚼運動終末位の条件と終末位間の最大開口位の条件を組み合わせることにより,咀嚼運動からサイクルとみなされない運動を除外することができた。
  • 韓 娟, 村上 由見子, 内山 盛嗣, 園田 尚弘, 岩堀 秀基, 大須賀 直人, 岩崎 浩, 宮沢 裕夫, 谷山 貴一, 澁谷 徹, 廣瀬 ...
    2000 年 38 巻 5 号 p. 1034-1041
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    1990年1月から2000年5月までの10年5か月間に松本歯科大学小児歯科において全身麻酔下集中歯科治療を施術した1歳9か月より7歳2か月までの176症例(男児101例,女児75例)について臨床統計調査を行い,以下の結果を得た。
    1.治療時の平均年齢は3歳9か月であった。
    2.適応理由は多数歯齲蝕が84.7%と最多頻度を示し,次いで非協力,遠隔地がそれぞれ約50%,全身疾患は11.9%であった。また,他の医療機関からの紹介が54.0%であった。
    3.一人平均処置歯数は15.6±3.6歯であった。その内容はレジン修復8.1±3.8歯,乳歯既製冠3.8±2.0歯,レジン冠2.8±15歯,抜歯0.6±1.5歯,予防填塞0.3±1.4歯の順であった。また,一人平均歯髄処置は6.1±1.8歯であった。
    4.麻酔前投薬を使用した症例は47.2%を占め,71.0%の症例が緩徐導入とし,全ての症例が経鼻挿管によって行われた。また,麻酔維持はGOSが95.4%と最多頻度を示し,1症例当りの平均麻酔時間は212.6±47.3分であった。
    5.全ての症例は術前,術後3日間の管理のもとで行われ,術後の合併症は発熱,嘔吐が数例にみられたが,重篤な結果に至った例は認められなかった。
  • 野坂 久美子, 佐藤 輝子, 駿河 由利子, 阿部 英一, 濤岡 暁子
    2000 年 38 巻 5 号 p. 1042-1052
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳臼歯の修復材に,接着性コンポジットレジンを応用する際の適正な窩洞形態を考案することを目的に,本研究を行った。試料は,ヒト抜去乳臼歯で,咬合面1級窩洞を基本とした。理想とした窩洞形態は,咬合面に対して頬舌側壁の内角が75度の有底椀型であり,対照にボックス型を用いた。これらの窩洞に,ボンディングシステムではシングルボンド®を,充填材にはAP-X®とZ100®を用いた。験証方法は,サーマルサイクリング後の窩縁からの微少漏洩,ボンディング剤の厚さ,窩洞の各部位におけるレジン硬化後の残留モノマーについて,2種類の窩洞間で比較した。その結果,次の結論を得た。
    1.有底椀型では,微少漏洩のないものがボックス型より多く,86.4%であった。また,漏洩は,両窩洞とも窩底部までであった。
    2.ボンディング剤の層は,有底椀型で,AP-X®では窩底隅角部と窩底部に,Z100®では象牙質窩壁にも存在した。ボックス型のAP-X®ではさらに,エナメル質壁にもその層を認めた。厚さは,有底椀型で充填材の種類間に有意差はなかったが,ボックス型のZ100®では窩底隅角部での液溜まりの傾向があった。
    3.レジン硬化後の残留モノマーは,窩洞形態にかかわらず,中央より側壁で多く,側壁ではボックス型の方が有底椀型よりも多く検出された。
    以上から,有底椀型窩洞は,乳臼歯での接着性コンポジットレジンの応用において,適正な窩洞形態と考えた。
  • 石川 雅章, 斎藤 美紀, 桔梗 知明, 舩山 研司, 小野 博志, 鄧 輝
    2000 年 38 巻 5 号 p. 1053-1060
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    混合歯列期の中国人女児双生児59組の歯列模型を横断的資料とする口蓋の形態学的研究を行い,Hellmanの歯年齢IIIAで乳側切歯が咬合しているIIIA-1群,永久側切歯が咬合位に達しているIIIA-2群,Hellmanの歯年齢IIIBのうち犬歯,第一小臼歯が萌出前後で第二乳臼歯が残存しているIIIB群,計3群に分類した発育変化を検討するとともに,双生児法によりそれらへの遺伝的要因の多寡を推定して以下の結論を得た。
    1.口蓋幅径,長径については各計測部位とも3群間に有意差が認めらなかった。
    2.口蓋深さについては,乳犬歯部でIIIA-2群とIIIB群間に,第一乳臼歯および第二乳臼歯部でIIIA-1群とIIIB群間に有意な発育変化を認めた。
    3.口蓋容積では,第一大臼歯後方部のみにIIIA-1群と他の2群間に有意差が認められた。
    4.双生児法を用いた遺伝力推定では,口蓋幅径および容積に遺伝的に安定した部位が多く,長径および深さには少なかった。
    5.口蓋幅径では,遺伝的に安定している部位が歯年齢の増加とともに後方へ移行した。
    6.口蓋容積は各観察期間とも全体として遺伝的に安定していたが,IIIB群を除いて乳犬歯以降の後方部位ほど遺伝力が高くなる傾向が観察された。
    7.混合歯列期における口蓋形態は,総体として遺伝的安定性を保ちながら発育していくものの,後方部位の安定度がより高く,一定の幅径のもとに長径と深さは比較的自由度が高い形態形成を行うと推定された。
  • 吉田 至純, 細矢 由美子, 北村 晃, 後藤 讓治
    2000 年 38 巻 5 号 p. 1061-1074
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    雑種幼若犬10頭の159歯を用い,噴射切削による露髄面に対し,接着性レジンシステムのライナーボンドII(R)(LBII群)を用いて直接歯髄覆罩を行った場合の歯髄反応を,光学顕微鏡と透過型電子顕微鏡を用いて病理組織学的に観察した。対照群には水酸化カルシウム製剤のカルビタール®(CV群)を用いた。観察期間は7,14,30,60および90日とした。
    1.光学顕微鏡観察の結果,LBII群では,歯髄の著明な炎症性変化は認められなかったが,術後7日と14日例においては,CV群に比較して治癒経過は遅延する傾向にあった。しかし,30日例ではDentin bridgeの形成が進み,60日と90日例ではDentin bridgeにより露髄部は閉鎖されていた。
    2.透過型電子顕微鏡観察および定性分析の結果,LBII群の30日例では,酸化アルミナ周囲の細胞に出血等の顕著な歯髄変化は認められなかった。また,60日例においては,歯髄内の線維芽細胞は細胞内小胞体の発達が認められ,歯髄の細胞活性が観察された。
    噴射切削による露髄に際して,ライナーボンドII®を用いて直接歯髄覆罩を行った結果,歯髄の治癒は遅延するものの,Dentin bridgeを伴った歯髄治癒が認められ,さらに歯髄内の線維芽細胞には細胞内小胞体の発達,歯髄の細胞活性が観察された。以上より,本法により歯髄の保護が可能であることが示唆された。
  • 加我 正行, 工藤 真幸, 貴田 みゆき, 橋本 正則, 菊入 崇, 小口 春久
    2000 年 38 巻 5 号 p. 1075-1079
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯の交換期に第二乳臼歯を抜去すると,第一大臼歯の近心面に齲蝕を見つけることがある。このたび,第二乳臼歯脱落期の幼若第一大臼歯近心面の齲蝕罹患状態について調査したので報告する。平成10年12月から平成12年2月の14か月の間に,本学歯学部附属病院咬合系歯科小児専門外来に来院した患児から,無作為に抽出した107本の第一大臼歯の近心面齲蝕を観察した。対象となった患児(健康児)の平均年齢は11歳1か月であり,最少年齢は8歳1か月,最高年齢は15歳3か月であった。エックス線写真撮影による診査にて後続永久歯の発育状態と位置を確認し,抜歯の適応症と診断された第二乳臼歯を抜去した。止血後,第一大臼歯にラバーダムを装着し,近心面をエナックにSCポイントを装着して洗浄し,齲蝕の判定を行った。107歯のうち,齲蝕に罹患してない健全歯面は僅かに8.4%であった。COは10.3%,C1は66.4%,C2は15.0%であり,C3とC4はみられなかった。幼若第一大臼歯近心面に,C1とC2を合わせて81.4%の齲蝕がみられた。放置するとさらに進行するのは明らかである。このため徹底した定期診査を実施して齲蝕予防に努めることが重要である。さらに,幼若第一大臼歯近心面齲蝕を早期に発見し,歯質の削除量を最少に抑える治療法の検討も併せて行った。
  • 三富 智恵, 富沢 美惠子, 野田 忠
    2000 年 38 巻 5 号 p. 1080-1090
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    新潟大学歯学部附属病院小児歯科外来において取り扱った,上下顎第一大臼歯萌出遅延症例76例(96歯)について,その原因と特徴,適切な処置について検討する目的で,外来診療録,エックス線写真,口腔内写真,石膏模型を用いて調査検討を行った。
    1.遅延部位は上顎56例(73.7%),下顎19例(25.0%),上下顎1例(1.3%)で,上顎に多く認められた。また,上顎では両側性の萌出遅延が18例で,下顎の1例に比較して多かった。
    2.診断時エックス線写真の得られた93歯について,エックス線所見より原因を分類したところ,上顎72歯においては,明らかな異常所見が認められなかった症例が48歯(66.7%)と多く,下顎21歯においては,歯冠周囲の透過像,石灰化物の存在,形成不全,第二小臼歯歯胚の位置異常などの異常所見が11歯(52.4%)と多く認められた。また,異所萌出による萌出遅延が,上顎16歯,下顎5歯に認められた。
    3.処置は,歯牙腫の存在などの異常所見が認められた症例では,原因除去・開窓を行い経過観察し,その後萌出傾向の認められない症例では,再開窓や牽引処置を行い,適切な位置に萌出させることができた。
    4.エックス線写真で明らかな原因が認められない症例のうち,パノラマエックス線写真の得られた51歯では,35歯(68.6%)に第一大臼歯と隣接第二大臼歯の歯胚形成の遅れが認められた。このうち処置を行わずに経過観察した20歯中18歯は,8~11歳時(平均9歳8か月)に萌出しており,このような症例では,年齢が進むにつれて萌出するものが多いこと,また経過観察が必要とされることが明らかになった。
  • 玉井 久光, 田中 敏子
    2000 年 38 巻 5 号 p. 1091-1099
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    北九州市内の歯科医院において抜去収集された乳歯350本を対象として,乳歯のエナメル質及び象牙質に含まれるSr,Al及びMn濃度と齲蝕との関連性を検討した。乳歯は齲蝕経験のない健全歯群,齲蝕未処置の齲蝕歯群及び充填歯群の3群に分類し,エナメル質と象牙質とに分離した。両歯質中のSr,AI及びMn濃度はフレームレス原子吸光分光光度計を用いて測定した。
    健全歯エナメル質中のSr,Al及びMn濃度はそれぞれ,71.1±24.0μg/g,37.0±27.3μg/g,3.03±1.53μg/gであった。また,象牙質中のSr,AI及びMn濃度はそれぞれ,67.4±23.0μ;g/g,33.9±28.2μg/g,0.92±0.74μg/gであった。健全歯群で性差を検討したところ,エナメル質,象牙質ともSr,Al及びMn濃度に性差は認められなかった。次に,健全歯群で歯種別差を検討したところ,Sr濃度に差は認められなかったが,AlとMn濃度については歯種別差が認められ,エナメル質,象牙質とも,乳犬歯に比べ乳切歯は約1.7-2.1倍も高かった。健全歯群,齲蝕歯及び充填歯群の歯質中Sr濃度は近似しており,齲蝕との関連性は認められなかった。Al濃度については,健全歯群は齲蝕歯群及び充填歯群と比較して有意に高く,エナメル質でそれぞれ1.6倍,1.4倍,象牙質でそれぞれ1.6倍,2.3倍であった。また,乳切歯のみを用いて検討しても,健全歯群は,齲蝕歯群及び充填歯群と比較してそれぞれエナメル質で15倍,1.4倍,象牙質で1.6倍,25倍と有意に高かった。健全歯群,齲蝕歯及び充填歯群の歯質中M11濃度は近似しており,齲蝕との関連性は認められなかった。乳切歯のみを用いて検討しても同様であった。
    以上のことから,SrおよびMnには齲蝕との関連性は認められず,Alは抗齲蝕作用を持つ元素であることが強く示唆された。
  • 岡崎 好秀, 酒井 美智代, 東 知宏, 宮城 淳, 福島 康祐, 松村 誠士, 下野 勉
    2000 年 38 巻 5 号 p. 1100-1105
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    1歳から5歳までの小児239名,計1750歯の修復物を対象とし,小児の乳臼歯における修復物の機能状況について以下の項目について調査した。
    1.初回乳臼歯修復物の時系列的機能歯率
    2.乳臼歯1歯あたりの平均修復回数
    3.初回乳臼歯修復物の機能年数
    さらに初診時の年齢を1-2歳代,3歳代,4-5歳代に群分けし,齲蝕の初発年齢についても考慮し,以下の結果を得た。
    1.初回処置後の乳臼歯修復物の機能歯率は,半年後で92.8%,1年後で77.8%,2年後で55.1%,2年半後で45.9%となり,2年から2年半の問に50%を切った。また低年齢群ほど,短期間に修復物の機能歯率が低下した。
    2.乳臼歯部の1歯あたり平均修復回数は2.19回であった。また1-2歳初診群の平均修復回数は2.67回,3歳初診群で2.28回,4-5歳初診群で1.76で,初診年齢が早いほど,修復回数が多かった(ANOVA p<0.01)。
    3.乳臼歯部の修復物の平均機能年数は,2.78年であった。1-2歳初診群では2.51年,3歳初診群で2.64年,4-5歳初診群で3.09年と初診年齢が早いほど,機能年数も短かった(ANOVA p<0.05)。
    乳臼歯修復物の平均機能期間は,非常に短い。歯科医師は,齲蝕治療のみならず,定期健診等で齲蝕活動性を低下させ,修復物の予後を向上させる取り組みが必要である。
  • 岡崎 好秀, 東 知宏, 岡本 安広, 村上 知, 宮城 淳, 松村 誠士, 下野 勉
    2000 年 38 巻 5 号 p. 1106-1112
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    中学生344名を対象として,カリオスタットテスト®と唾液緩衝能テストを行い,齲蝕罹患状態との関係について調査した。さらに両試験法を組み合わせた場合の関係についても検討し,以下の結論を得た。
    1.対象者の齲蝕罹患者率は91.0%,一人平均DF歯数は5.02歯であった。
    2.カリオスタットテストと唾液緩衝能テストは,DF歯数と高度の相関関係が認められた(P<0.001)。
    3.カリオスタットテストの結果を低リスク群(1.0以下),中リスク群(1.5),高リスク群(2.0以上)に群分けし,一人平均DF歯数との関係をみたところ,3群間には有意な差が認められた(ANOVA p<0.001)。
    4.唾液緩衝能テストの結果を低リスク群(高緩衝能群),中リスク群(中緩衝能群),高リスク群(低緩衝能群)に群分けし,一人平均DF歯数との関係をみたところ,3群間には有意な差が認められた(ANOVAp<0.001)。
    5.カリオスタットテストと唾液緩衝能テストは,相関関係がみられなかった。
    6.カリオスタット値と唾液緩衝能テストの結果を組み合わせたところ,それぞれの試験法の判定結果が高くなるほどDF歯数も増加した(ANOVA p<0.001)。
    齲蝕活動性試験を単独で行うより,それぞれの試験法を組み合わせた方が,効果的に齲蝕罹患状態を把握することができた。
  • 巣瀬 賢一, 赤間 智之, 福島 理恵, 阿部 真之介, 高森 一乗, 孫 泰一, 鈴木 欣孝, 時安 喜彦, 渡部 茂
    2000 年 38 巻 5 号 p. 1113-1118
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    目的:唾液には食物咀嚼を円滑に行うという重要な役割があるが,食物咀嚼に及ぼす唾液の影響についての研究は少ない。そこで食物咀嚼中に分泌される唾液量と食塊水分量の変化について明らかにすることを目的に本研究を行った。
    方法:8人の成人被験者を対象に食物咀嚼開始から嚥下までの時間の1/3,2/3,1(嚥下時),4/3の時点での食塊水分量を測定した。実験に用いた試料はビスケット(水分量:3%)カステラ(26.9%)ホットケーキ(40%),ライス(60%),トウモロコシ(75%),リンゴ(85.8%)である。結果:同一被験者の場合,食塊水分量の割合はほぼ一定であり低い標準偏差値を示した。試料一口量によって分泌された平均唾液量はビスケットが最も多く,始めの試料水分量と負の相関を示した。咀嚼中の食塊水分量増加率は咀嚼開始から嚥下までの時間の1/3の時点が最も高く,それ以後は一定の割合で増加した。これらの結果より咀嚼中に分泌される唾液量や食塊形成には,食物のもつ水分量が影響していることが示唆された。
  • 藤條 一江, 根岸 秀幸, 河野 英司, 中出 修, 五十嵐 清治
    2000 年 38 巻 5 号 p. 1119-1129
    発行日: 2000年
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は小児上顎骨の歯槽突起から得られた骨芽細胞様細胞(infant human alveolar process ofthe maxilla-derived osteoblastic cells:以下HAB)における線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor:以下bFGF)の長期的な作用を明らかにすることである。実験の結果,1.bFGF(2.5ng/ml)はHABのDNA量を有意に増加した。2.bFGFはHABのアルカリホスファターゼ(ALP)活性を有意に抑制した。3 .bFGFはHABにおけるALPのmRNA発現に対し抑制的に作用しオステオカルシンのmRNA発現に対し促進的に作用した。しかしI型コラーゲンのmRNA発現には顕著な作用は認められなかった。4.bFGFはHABの石灰化結節形成およびカルシウムの取り込みを高度に抑制した。
    本研究の結果より,HABにおけるrecombinant human bFGF(以下rhbFGF)の長期投与は増殖を促進し,細胞分化に対しては各指標により異なって作用することが示された。
  • 木村 実和子, 大塚 義顕, 井上 美津子, 向井 美恵, 佐々 龍二
    2000 年 38 巻 5 号 p. 1130-1140
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    超音波診断装置の探触子を固定するための新しい装置を考案することによって,乳歯列期の小児における嚥下時舌運動動態の安定した描出画像を得ることができた。この新たに考案した装置を用いて,乳歯列期(IIA期)の小児15名を対象にジュースとヨーグルトを試験食品として嚥下時の舌前額断面の動態について検討し,さらに口蓋の形態との関連性についても検討したところ以下の結果を得た。
    1.舌の陥凹深度は,ジュース嚥下時に比べヨーグルト嚥下時が有意に大きかった。
    2.舌の陥凹時間において,陥凹形成時間は消失時間に比べ有意に長かった。
    3.舌の陥凹形成速度は,ジュース嚥下時に比べヨーグルト嚥下時が有意に速かった。また,両食品ともに陥凹形成速度に比べて陥凹消失速度が有意に速かった。
    4.口蓋高径とヨーグルト嚥下時の舌の陥凹深度との間に有意な相関が認められた。
    5.口蓋容積とジュース嚥下時の舌の陥凹時間との間に有意な相関が認められた。
  • 弘中 祥司
    2000 年 38 巻 5 号 p. 1141-1148
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    吸啜あるいは咀嚼運動が正常に行われるには口腔領域からの感覚情報が脳幹を経由して大脳皮質まで正しく伝達されること,また脳幹に存在する運動ニューロンが協調して筋活動を制御することが必須とされている。吸啜期から成熟期にかけて摂食に伴い活動する神経細胞の局在や機能の解明は,哺乳行動とその中枢メカニズムを理解する上で重要である。
    本研究ではラットの新生仔について,哺乳により脳幹に発現するc-fos蛋白(Fos)の局在と成長発達過程との関連を免疫組織化学的方法によって検討し,成熟ラットについても摂食後の脳幹でのFosの発現を同様の方法で調べ,新生仔と比較した。
    ラットの脳幹冠状断凍結切片を作製し,抗Fos抗体を用いてFosの局在と陽性細胞数を組織学的に検索した。仔ラットを,常に母ラットとともに飼育する対照群,絶食後母ラットに授乳させてから灌流固定に供する摂食群,絶食後哺乳することなく灌流固定に供する絶食群に分け,生後3,7,14日目の各群間でのFosの発現を比較検討し,次のような結果を得た。
    摂食群ではFosが孤束核(NST)および延髄網様体背側部(dRF)において著明に発現し,絶食群に比べ有意な増加が認められた。対照群においても同部位でFosの発現がみられたが,摂食群と比べ陽性細胞数は少なかった。成熟ラットでも,NSTおよびdRFのFos発現について新生仔ラットと同様の傾向を示した。以上の結果から,哺乳を含むラットの摂食行動にはNSTならびにdRFニューロンの活動が深く関与していることが示唆された。
  • 加納 能理子, 猪狩 和子, 門馬 祐子, 真柳 秀昭
    2000 年 38 巻 5 号 p. 1149-1156
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    初診時年齢11歳11か月の骨形成不全症(Sillence IV B型)の女児において,次のような歯科的所見および治療経過が観察された。
    1)骨格性の反対咬合を呈し,〓のみで咬合していた。2)象牙質形成不全のため,全ての永久歯の歯冠は半透明な褐色で,咬合している歯のエナメル質は剥離し,象牙質の露出・磨耗が見られた。3)小臼歯・大臼歯の歯頸部は狭窄し,全ての歯根は細かった。4)思春期性成長観察中の咬合の改善と,歯の破折や咬耗の予防を目的として即時重合レジンで全歯列接触型スプリントを製作し,下顎に装着した。5)スプリントを装着し,5年6か月経過したが,この間象牙質の磨耗・エナメル質の剥離の進行は抑制され,咀嚼の状態は改善された。6)骨形成不全症の患児に対するスプリントを用いた咬合管理は有効であると思われた。
  • 望月 清志, 辻野 啓一郎, 黒須 美佳, 藥師寺 仁
    2000 年 38 巻 5 号 p. 1157-1161
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    下顎右側第一大臼歯の萌出遅延を主訴に来院した10歳2か月の女児に対し,口腔内診査,エックス線診査および病理学的検査を行った結果,下顎右側第一大臼歯の歯冠を含む濾胞性歯牙嚢胞と診断した。
    処置として当該歯の開窓療法を施したが,開窓1か月後に下顎右側第一大臼歯は下顎第二乳臼歯直下の第二小臼歯歯胚に接触し,自然萌出が期待できないと判断したため,顎骨内からの牽引と遠心移動を開始した。
    牽引開始2年で誘導を終了し,牽引開始2年6か月後に装置の除去を行った。術後のエックス線診査では,近心根の遠心方向への屈曲が確認された。
    以上の経験から,濾胞性歯牙嚢胞における開窓療法と牽引法は若年者の処置法として有効であるが,歯根がほぼ完成し,かつ屈曲している場合の誘導は,従来の報告に比べより長期間を要するものと思われた。
  • 辻野 啓一郎, 望月 清志, 田中丸 治宣, 藥師寺 仁
    2000 年 38 巻 5 号 p. 1162-1169
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯癒合歯は,小児歯科領域で比較的多くみられる形態異常である。一般に癒合歯の発現部位としては,ほとんどの場合下顎前歯部にみられ,上顎前歯部では少ないとされている。また乳歯癒合歯は,単独に発現する場合が多く,左右対称性に発現することは比較的まれである。上顎乳中切歯-乳側切歯癒合歯では,後継永久歯が先天性欠如するものと歯冠形態の異常などにより正常位置への萌出が望めないものがほとんどであり,上顎前歯部の排列や審美的な問題を生じる可能性が高いことが明らかになっている。今回,上顎乳中・側切歯に左右対称性に癒合歯をもつ極めてまれと思われる2例について長期観察を行った。
    症例1(女児)では上顎永久側切歯は両側とも欠如していた。症例2(男児)では上顎永久側切歯は著しく成長が遅延しており,正常な発育が期待できなかった。処置方針は患児および保護者の希望などの条件を考慮し,症例1では側切歯のスペースを獲得し,将来的にブリッジによる補綴処置を行う予定とした。症例2では中切歯,犬歯と排列する予定で発育不全の側切歯歯胚を摘出,犬歯の誘導を行っている。
    両症例とも上顎中切歯の近遠心径は日本人の平均値よりも大きかった。
    乳歯癒合歯の存在は後継永久歯の異常を疑い,長期的な管理と個々の症例の成長発育段階に応じた適切な処置を行っていかなければならない。
  • 伊藤 香織, 渋井 尚武, 梅津 糸由子, 清水 栄哉
    2000 年 38 巻 5 号 p. 1170-1175
    発行日: 2000/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    外胚葉異形成症は,外胚葉系の組織に形成異常があらわれる遺伝性疾患であり,歯の萌出異常(歯の先天性欠如,萌出遅延など),汗腺の形成不全,毛髪の発育不全などを主症状とする。伴性劣性遺伝と考えられ,90%は男性にあらわれる。
    今回著者らは,完全無歯症を伴った外胚葉異形成児を4歳5か月時から約6年間経年観察し,咬合力の変化,歯槽基底の成長変化などに関して,以下のような所見を得た。
    1.年齢相応の歯を排列した総義歯を装着することにより,顔貌の審美的回復と咀嚼機能障害を改善できた。
    2.義歯装着によって顎位が安定すると,重心動揺は減少することが示唆された。
    3.義歯装着時の咬合力は加齢とともに増大していることが認められた。
    4.完全無歯でも歯槽基底は加齢により増大するため,成長発育期には義歯の新製が必要であった。
feedback
Top