小児歯科学雑誌
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39 巻 , 1 号
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  • 山野 渉, 井上 秀人, 梅津 哲夫, 加来 弘志, 黄本 恒裕
    2001 年 39 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    ヒトの学童期に相当する6週齢のWistar系雄ラットを用い,脛骨骨幹端部を低カルシウムにより虚弱化させた後,イプリフラボンを添加した食餌療法がどのように軟骨内骨化により骨形成に影響をおよぼすかを,デジタルエックス線撮影装置とコンピューターシステムを導入した骨塩量測定法および病理組織学的所見から検索し,次のような結果を得た.
    1.骨塩量
    脛骨骨幹端部の海綿骨の骨塩量を測定した結果,虚弱骨形成後,標準食にイプリフラボンを加えた方が高値を示し,対照群と差がない程に回復した.
    2.病理組織学的所見
    対照群と比べ,低カルシウム食群は軟骨細胞層の幅が広く,肥大帯軟骨細胞の配列も疎となり,柱状間隙における石灰化基質及び石灰化基質を侵食する所見は減少していた.また低カルシウム・標準食群に比べ低カルシウム・イプリフラボン添加標準食群は軟骨細胞層の幅が減少し,柱状間隙における石灰化基質及び石灰化基質を侵食する所見が増加し,軟骨内骨化の促進が見られた.
    以上の結果,学童期までに正常な食餌により一定の骨量を確保すると,その後骨が一旦虚弱状態に陥ってもイプリフラボンによる直接的な骨吸収抑制作用と破骨細胞の活性化と分化を抑制することが考えられ,骨形成促進作用により骨の機能のバランスおよび骨基質形成が促進することが示唆された.
  • 高橋 美如, 尾崎 正雄, 今村 まり子, 久保山 博子, 京極 絵美, 本川 渉
    2001 年 39 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    齲蝕活動性試験カリオスタット®(三金工業株式会社製),ミューカウント®(昭和薬品化工株式会社製),RDテスト「昭和」®(昭和薬品化工株式会社製),Dentocult®SM Strip mutans (Orion Diagnostica社製),Dentocult®LB(Orion Diagnostica社製),Dentobuff®Strip(Orion Diagnostica社製),CRTバクテリア®(Vivadent社製),CRTバッファ®(Vivadent社製)を同一被験者に実施し,各試験間における判定結果の関連性,齲蝕活動性試験と齲蝕罹患状態および生活習慣との関連性を観察し,臨床への応用方法を検討した.本研究における対象者は,乳歯列期の男児21名,女児10名の計31名の小児である.その結果,以下の結論を得た.
    1.Streptococcus mutans数を測定する3種類の齲蝕活動性試験間において高い相関が認められた.
    2.Streptococcus mutans数と歯口清掃習慣と間食習慣との間に高い相関が認められ,Streptococcus mutans数が多い場合の保健指導の重要性が示唆された.3.カリオスタット(R)は,齲蝕罹患状態や生活習慣および,その他の齲蝕活動性試験と高い相関を示し,齲蝕活動性を知る最初の手段として有効と思われた.
  • 山本 誠二, 新谷 智佐子, 竹本 弘枝, 滝川 雅之, 中村 隆子, 仲井 雪絵, 壺内 智郎, 下野 勉
    2001 年 39 巻 1 号 p. 20-26
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    当院で実施している出産直後の母親の口腔内検診で得られた資料および2歳児歯科健診における資料から,産婦の口腔内状態および母親の口腔内状態が子供に及ぼす影響について検討を行い,以下の結果を得た.
    1.産婦の口腔内状態について
    1)一人平均DMF歯数は12.9本であり,齲蝕経験者率は99.0%であった.2)一人平均未処置齲歯数は1.5本であり,未処置歯保有率は49.3%であった.3)カリオスタット値によるHigh Risk(2.0以上)者の割合は67.0%であった.4)プラークの付着,歯石の付着,歯肉の腫脹および歯肉の出血を認めた産婦は,それぞれ74.6%,73.1%,78.7%そして64.8%であった.
    2.母親の口腔内状態が子供の口腔内に及ぼす影響について
    1)母親に未処置歯を保有する子供は,保有しない子供と比較し2歳時に齲蝕を有する者の割合が有意に高かった(p<0.05).母親のその他の口腔内状態を示す所見と2歳時における齲蝕の有無との間には関係が認められなかった.2)母親に未処置歯を保有する子供は保有しない子供と比較しカリオスタット値が有意に高かった(p<0.05).母親のその他の口腔内状態を示す所見と2歳時におけるカリオスタット結果値との間には関係が認められなかった.3)母親の未処置歯の保有の有無と2歳時での子供の生活習慣との関係はどの項目とも有意差は認められなかった.
  • 矢野 雄一郎, 五十嵐 武, 山本 綾子, 井上 美津子, 後藤 延一, 佐々 龍二
    2001 年 39 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    日本人小児16名(年齢2歳0か月~5歳5か月)のプラークから各人約100株,合計1488株のグラム陽性レンサ球菌を非選択的に分離し,その分離株からStreptococcus mutansStreptococcus sobrinusの2菌種を,菌種特異的DNAプローブを用いたハイブリダイゼーション法により同定した.各被検児ごとに分離したレンサ球菌中の両菌株数の割合(検出頻度)を計算し,齲蝕罹患率(df歯率)との関連性を調べた結果,次のことが明らかになった.
    1)16名の被検児全員がS. mutansを保有していた.
    2)16名の被検児中13名(81.3%)がS. sobrinusを保有していた.
    3)非選択的に分離した全1488株のグラム陽性レンサ球菌のうち,S. mutansS. sobrinusの占める割合は,S. mutans10.9%,S. sobrinus 5.2%であった.両菌株の検出頻度が平均値より低い小児と高い小児に分けて齲蝕罹患率を比較すると,S. mutansでは両群に差はみられなかったが,S. sobrinus では検出頻度の高い群の方が高いdf歯率を示した.
    以上の結果から,S. mutansS. sobrinusの両菌種の保有が齲蝕罹患率に影響している可能性が示唆された.
  • 丘 芳美, 氏家 真由子, 久保 周平, 藥師寺 仁
    2001 年 39 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯の生理的動揺度を歯根吸収程度別に客観的に評価する目的で本研究を実施した.被検対象は,上顎乳中切歯129歯および上顎乳側切歯201歯であり,これら被検歯を生理的歯根吸収の有無ならびに程度により,歯根吸収0および歯根吸収I,II,IIIの4段階に区分した.動揺度測定には,デンタル・モビリティ・チェッカー®(株式会社ヨシダ社製)を使用し,各被検歯の歯根吸収程度別に動揺度の測定を行い,以下の結論を得た.
    1.乳中切歯の各歯根吸収程度別にみた動揺度測定値は,歯根吸収0では3.0から1.9を示し,その平均値および標準偏差は25±0.28であった.歯根吸収Iでは3.8から2.1で平均値および標準偏差は2.8±0.45であり,歯根吸収IIでは6.4から2.1で平均値および標準偏差は4.0±1.08,歯根吸収IIIでは12.6から3.4で平均値および標準偏差は7.4±2.14であり,歯根の吸収程度が進行するに従い測定値すなわち生理的動揺度は増加した.
    2.乳側切歯の歯根吸収程度別にみた動揺度測定値は,歯根吸収0では4.5から1.9を示し,その平均値および標準偏差は3.1±0.50であった.歯根吸収Iでは5.9から2.2で平均値および標準偏差は3.7±0.83であり,歯根吸収IIでは6.6から3.1で平均値および標準偏差は4.3±1.16,歯根吸収IIIでは14.9から3.7で平均値および標準偏差は7.9±2.65であり,乳中切歯と同様,歯根の吸収程度が進行するに従い測定値すなわち生理的動揺度は増加した.
    3.本研究に用いた動揺度測定器は,小児患者にも恐怖心を与えることなく使用可能であり,槌打時の歯牙に加わる衝撃も少ないことから,小児歯科臨床において有効に使用できるものと考えられた.
  • 鈴木 百合子, 大野 弘機, 五十嵐 清治, 遠藤 一彦, 川島 功
    2001 年 39 巻 1 号 p. 42-49
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯の主要構成成分であるハイドロキシアパタイトの結晶性は,歯質の耐酸性に関与する一因子である.結晶性の低下により,耐酸性,抗齲蝕性は低下し,齲蝕に罹患しやすくなる.しかし,ヒト歯質のCa/P比と結晶性の関係について詳細に検討した研究は報告されていない.そこで,本研究では,ヒト永久歯象牙質について,Caを原子吸光法で,Pを比色定量法で測定し,Ca/P比を算出した.さらに,Ca/P比を算出した切片に近接した象牙質切片についてエックス線回折法によって結晶性を評価し,Ca/P比と結晶性の相関関係を検討した.得られた結果は次の通りである.
    1.被験歯18歯から得た象牙質切片324個を用いてCa/P比を算出したところ,象牙質の部位によってCa/P比が異なっていた.
    2.Ca/P比のヒストグラムを作製したところ根未完成歯と根完成歯の間には分布傾向の差は認められなかった.
    3.各部の象牙質切片を微小領域エックス線回折法によって分析した結果,部位によってハイドロキシアパタイトによる回折線強度は異なっていた.
    4.Ca/P比とエックス線回折法で得られた結晶性との相関を調べた結果,正の相関が認められた.
  • 中村 均
    2001 年 39 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    健常小児の混合唾液中に含まれるHerpes simplex Virus type 1(HSV-1)の高感度検出法として,nestedPCR-Southern blot法を確立した.一段階PCR法によれば1~10pg/μlであった検出感度がnested PCR-Southernblot法では,10-8pg/μlにまで上昇することができた.
    臨床応用として,疱疹性歯肉口内炎発症児6名,健常児7名から採取した混合唾液を試料として,nestedPCR-Southern blot法を応用したところ,疱疹性歯肉口内炎発症児6名では一段階PCR法,nested PCR法,nested PCR-Southern blot法のすべてにおいて陽性であった.一方,健常児7名では,一段階PCR法で1名,nested PCR法では5名,nested PCR-Southern blot法では6名が陽性であった.この結果から,混合唾液を用いたnested PCR-Southern blot法はHSV-1の潜伏感染の診断に有用であり,健常児混合唾液中のHSV-1陽性率は,現在までに報告されているものよりも上昇する可能性が示唆された.
  • 大山 洋
    2001 年 39 巻 1 号 p. 55-68
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児期の齲蝕罹患経験や不正咬合が経年的に咬合機能の発達にどのように影響するかを知ることは,将来の健全な発育を促す上でも重要となる.本研究では,咬合機能の発達に与える影響を縦断的に調査するため,小児64名を対象に,デンタルプレスケール®を用いた3年間め経年資料より,咬合接触面積,咬合力および平均咬合圧力を測定した.また,資料は齲蝕罹患状況別,咬合状態別,齲蝕罹患状況・咬合状態別に分類し,各計測項目ごとに経年的推移および各年度ごとに群間を比較検討し,以下の結論を得た.
    1.咬合接触面積,咬合力の経年的推移は,正常咬合CF群(Caries Free),CF・CF・CF群,正常咬合群の増齢的な増加に比較し,不正咬合df群(decayed.filled),df・df・df群,反対咬合群,開咬群の増加は少なかった.平均咬合圧力では,CF・CF・df群の3年度が他の年度に比較し高い値を示した.
    2.各年度の咬合接触面積,咬合力では,正常咬合CF群,CF・CF・CF群,正常咬合群,過蓋咬合群が高い値を,不正咬合df群,df・df・df群,反対咬合群,開咬群が低い値を示した.平均咬合圧力では不正咬合df群,3年度のCF・CF・df群,反対咬合群,開咬群が高い値を,過蓋咬合群は低い値を示した.以上の結果から,齲蝕罹患経験や不正咬合は増齢的に小児の咬合機能の発達に強い影響を及ぼしていることが確認された.
  • 蓜島 弘之, 綾野 理加, 平川 崇, 松田 恵里子, 鈴木 崇之, 蓜島 桂子, 野田 忠, 向井 美惠
    2001 年 39 巻 1 号 p. 69-78
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    口蓋裂患児7名(Hotz床使用児4名,不使用児3名)と健康乳児(1名)を対象に超音波断層法B/Mモードによる吸啜運動の観察を行った.エコーウインドは顎下部に設定し,吸啜運動中の舌の矢状断および前額断画像を描出し,吸啜圧波形をMモード画像上に走破させた.矢状断観察時においては,Mカーソルを乳首の先端部と,舌背上でその前方約1cm,後方約2cmの3カ所に設定し,Mモード波形をオフラインで計測した.吸啜圧波形を基準に計測のための新たな時間軸を設定したところ,舌背3部位の上下動の時間差を求めることが可能であった.あわせて舌運動の深度を計測することで,吸啜時舌運動の波状成分を定量化し得た.エコーウインドを顎下部に設定することで,舌骨の上下動が確認でき,明確な嚥下反射誘発時を同定することができた.
    7名の口蓋裂患児の哺乳運動は様々であった.5名に吸啜サイクルの延長を認めた.6名では舌背各部位の上下動が大きかった.さらに1名については舌背各部位の上下動の時間差が小さく,舌体全体が単純な上下動をしていた.Hotz床使用児のうち3名は,床非装着時に哺乳運動が誘発されなかった.非装着時の観察を行えた1名において,Hotz床使用時には認められなかった不規則な舌の動揺がみられた.
    以上よりMカーソルの位置を変化させた超音波画像と吸啜圧波形を同時に記録することで,吸啜運動の総合的評価が可能であると考えられた.
  • 安井 久人, 西田 郁子, 西岡 孝浩, 横溝 唯史, 打和 智子, 福島 直樹, 野村 信人
    2001 年 39 巻 1 号 p. 79-90
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    亜鉛は必須微量元素の一つであり,成長発育において重要な役割を果たしている.本研究は,亜鉛が脛骨骨幹端における軟骨内骨化に及ぼす影響について検索を行った.
    材料は生後5週齢のWistar系雄ラット(40匹)を用い,対照群,亜鉛欠乏食群,低亜鉛食群(50%),高亜鉛食群(150%)について検索した.
    1.骨塩量
    亜鉛欠乏食群と他の3群の間には有意差が認められ,亜鉛欠乏食群が低値を示した.低亜鉛食群と高亜鉛食群の間にも有意差が認められ,低亜鉛食群が低値を示した.
    2.病理組織学的所見
    対照群と比較して,亜鉛欠乏食群では増殖帯細胞が増加し,肥大帯軟骨細胞の配列は不規則になっていた.柱状間隙の石灰化基質は減少し,石灰化基質を侵食する軟骨吸収細胞は大幅に減少していた.骨梁部分の骨化も遅延し,類骨もみられた.亜鉛摂取量の増加に伴い,軟骨細胞は緻密に配列し,軟骨吸収細胞の増加がみられた.さらに,軟骨組織から骨組織への置換,骨芽細胞の増加,骨梁の緻密化がみられた.亜鉛摂取量が増加した高亜鉛食群では,さらにその傾向が強くなり,対照群と比較しても軟骨内骨化による骨形成の促進が認められた.
    3.血液学的所見
    Ca,Ca/Pは対照群と高亜鉛食群の間,亜鉛欠乏食群と高亜鉛食群の間,低亜鉛食群と高亜鉛食群の間にはそれぞれ有意差がみられ,高亜鉛食群が高値を示した(p<0.01).C1は3群間で高亜鉛食群が低値を示した.Naは亜鉛欠乏食群と低亜鉛食群の間,亜鉛欠乏食群と高亜鉛食群の間,低亜鉛食群と高亜鉛食群の間にも有意差がみられた.LDHは対照群と低亜鉛食群の間,ALPは対照群と亜鉛欠乏食群の間,亜鉛欠乏食群と低亜鉛食群の間にはそれぞれ有意差がみられた(p<0.01).
    以上の結果,成長発育期ラットの脛骨骨幹端において,亜鉛摂取不足は軟骨内骨化による骨形成を抑制する.さらに,亜鉛摂取量を増加させることにより骨形成作用が促進されることが示唆された.
  • 岡崎 好秀, 東 知宏, 村上 知, 山岡 瑞佳, 岡本 安広, 松村 誠士, 下野 勉
    2001 年 39 巻 1 号 p. 91-96
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    新しい齲蝕活動性試験として,唾液緩衝能を調べる CAT 21 Buf テストを開発した.今回,幼稚園児(年長児99名,年中児112名,年少児87名)を対象として新しい唾液緩衝能テストと齲蝕罹患状態との関係について調査した.
    1.唾液緩衝能テストの判定に必要な,刺激唾液1.0ml の採取可能な幼稚園児は,50.0%(149/298名)であった.
    2.幼稚園年長児(99名)の齲蝕罹患者率は61.2%,一人平均df歯数は3.39歯であった.
    3.唾液緩衝能テストの分布は,高緩衝能群が43.3%,中緩衝能群が38.8%,低緩衝能群が17.9%であった.
    4.唾液緩衝能テストの結果が高緩衝能群の齲蝕罹患者率は48.3%に対し低緩衝能群75.0%と,高緩衝能群は低緩衝能群に比べ齲蝕罹患者率は低かった.
    5.唾液緩衝能テストとdf歯数とは高度の相関関係が認められた(p<0.01).
    6.唾液緩衝能テストの結果が高緩衝能群のdf歯数は2.28歯,中緩衝能群は3.65歯,低緩衝能群は550歯となり,唾液緩衝能が低いほどdf歯数は高値を示した(ANOVAp<0.05).
    以上の結果より,唾液緩衝能テスト(CAT21Bufテスト)は齲蝕活動性試験として有用であることが示唆された.
  • 小方 清和, 苅部 洋行, 長谷川 祐子, 荻原 和彦, 大出 祥幸
    2001 年 39 巻 1 号 p. 97-102
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯列における咬合力分布を示すことを目的として,齲蝕がなく顎口腔系に機能異常を認めない乳歯列正常咬合の小児42名(男児21名,女児21名),平均年齢4歳6か月(3歳3か月~5歳9か月)を対象とし,デンタルプレスケール®50H-Rタイプ(富士写真フイルム社製)を用いて咬合力の測定を行った.咬合力分布は,歯列全体の咬合力に対する各歯の咬合力を百分率で表し平均値を求めた.さらに,左右側歯列における咬合力の均等性を示す指標として,左右歯列における咬合力の差が総咬合力に占める比,非対称性指数(A.I.)を求めた.その結果以下の結論を得た.
    1.すべての値において男女児間に有意差は認められなかった.
    2.総咬合力の平均値は430.6Nであり,個歯咬合力の左右平均値は,第二乳臼歯129.5N,第一乳臼歯46.4N,乳犬歯23.8N,乳側切歯9.5N,乳中切歯6.1Nであった.咬合力分布の左右合計は,第二乳臼歯60.9%,第一乳臼歯21.5%,乳犬歯11.0%,乳側切歯4.0%,乳中切歯2.6%であった.
    3.咬合力のA.I.は,8.9±6.5%であり,乳歯列の咬合診査の指標となると考えられた.乳歯列正常咬合を有する小児における咬合力および咬合力分布について検討を行った結果,乳歯列における前後的咬合力分布は82.4%が乳臼歯部に集中しており,特に60.9%を占める第二乳臼歯の咬合に対する役割は大きいと考えられた.
  • 中島 由美子, 伊平 弥生, 八十島 華子, 大森 郁朗
    2001 年 39 巻 1 号 p. 103-109
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小窩裂溝填塞材(以下,シーラントと略す)は幼若永久歯や乳歯の小窩裂溝齲蝕の予防,ならびに齲蝕進行抑制手段として,その有用性が認められ,とりわけ小児歯科臨床領域で広く用いられている.本研究で用いた光重合型フッ素徐放性シーラント(以下,Teethmate-F1®と略す)は,従来のシーラントの物理的齲蝕抑制効果に加えて,フッ素を約1wt%含有し,口腔内でフッ素を徐々に放出して,填塞小窩裂溝ならびに周辺歯質へフッ素を供給することによって,歯質の耐酸性を高める能力を有する1液性の光重合型シーラントであって,市販されていたTeethmate-F®の硬化特性等に改良を加えたシーラントである.これを幼若永久歯に填塞し,平均1年1か月経過後の保持状態を評価するとともに,齲蝕進行抑制効果を検討した.この結果,シーラントの完全保持率は83.5%であり,填塞部位の齲蝕が進行していた症例は認められなかった.
  • 森主 宜延, 金城 幸子, 小椋 正
    2001 年 39 巻 1 号 p. 110-115
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    2歳から5歳の幼児84名を対象に,パラフィンワックス咀嚼をせずに行ったDentocult-SM®Strip mutans(以下DSMs)とDentobuff®Strip(以下DBs)簡易法の信頼性について検討した.DSMsについては,4歳未満児群において,簡易法と通法の値の一致率は55.8%,±1の範囲では85.3%であった.4歳以上児群において,一致率は44%,±1の範囲では78%であった.DBsについては,簡易法と通法の値の一致率は4歳未満児群では28.6%,4歳以上児群では28.3%であった.なお,DBs簡易法では,95%以上がスコア3(high)であった.DSMsでは,両年齢群において,Pearson's相関係数,Spearmanの順位相関を用いても簡易法と通法の値は有意に相関していた(P<0.0001).一方,DBsでは有意な相関を示さなかった.DSMs簡易法とDSMs通法は,4歳未満児群において,齲蝕指数(CSIとdmf)と有意な相関を示し(P<0.01,P<0.05),4歳以上児群においては,DSMs通法のみが齲蝕指数と有意な相関を示した(P<0.05,P<0.01).以上より,DSMs簡易法は,4歳未満において信頼できる方法であることが示唆された.しかしながら,DBs通法は,結果の包括的分析から齲蝕活動性試験として特異性が示唆されないため,その有効性に疑問を残した.
  • 佐藤 輝子, 野坂 久美子
    2001 年 39 巻 1 号 p. 116-134
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    平成7年から12年までの6年間において,岩手医科大学小児歯科外来を訪れた患者(児)を対象に,肉眼的診査では,実質欠損を認めないが咬翼法エックス線撮影により齲蝕を認めた82人永久歯232歯について追跡調査した.また,深在性の隣接面齲蝕を有し,処置に至った患者(児)のうち,23人について,齲蝕活動試験,唾液検査,間食,口腔清掃状態,齲蝕経験歯数など深在性に至った背景について調査し,以下のような結果を得た.
    1.歯種別症例歯数は,下顎第二小臼歯が最も多く,次いで上顎第二小臼歯,上下顎第一大臼歯の順であった.
    2.隣接面辺縁部の着色を認めた年齢分布は9歳から18歳であり,最も多いのが14,15歳であった.
    3.エナメル質1/2以内,または1/2以上の齲蝕歯は口腔管理下で経過観察をしたものが多かった.象牙質1/2以内の齲蝕歯では38.8%が最終的に経過観察となったが,象牙質1/2以上では全て処置に移行した.
    4,隣接面齲蝕が小臼歯に多く認めた原因として,小臼歯の萌出時期が思春期に一致しており,この時期は,食生活を乱しやすい環境要因,また,歯列においては後方歯からの圧迫による隣在歯との接触圧の強さを増強することなどが挙げられる.今後は,隣接面のエナメル質齲蝕の処置に関する再検討,象牙質112以内の処置の有無に関する鑑別法,思春期の小児における隣接面齲蝕の予防法がさらに重要になるものと考えられる.
  • 吉田 良成, 小野 俊朗, 大迫 佳子, 今村 基尊, 土屋 友幸
    2001 年 39 巻 1 号 p. 135-145
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳歯列期に側方歯群の機能性交叉咬合を呈し,クワドヘリックスにて上顎歯列の側方拡大をして被蓋改善を行った症例に対して,早期に治療することの意義を明らかにするために,治療前後の比較検討を行った.
    今回は治療前後の上下顎石膏歯列模型を用い,歯・歯列弓形態および咬合関係について検討し,以下の結論を得た.
    1.上顎歯列弓は下顎歯列弓に対し相対的に幅径が狭く,乳犬歯の早期接触により下顎歯列弓が側方に偏位していた.
    2.上顎歯列弓を側方拡大し下顎歯列弓との正常被蓋を獲得することにより,上下顎歯列弓正中線および左右咬合関係が一致し,下顎の側方偏位を改善することができた.
    3.乳歯列期からの咬合管理は,歯列および顎の健全な育成を図る上で重要である.
  • 釜崎 陽子, 福本 敏, 久保田 一見, 吉田 至純, 斎藤 幹, 福本 恵美子, 後藤 讓治
    2001 年 39 巻 1 号 p. 146-158
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    従来のハロゲン光照射器に比較し,レジンの重合に要する時間を飛躍的に短縮できるとされるキセノン光照射器について基礎的研究を行った.
    1.牛歯象牙質に対してLiner Bond 2®システムとClearfil AP-X®とを用いて剪断接着試験を行った結果,最も高い接着強さを示していたのは,シェードA2のレジンに対してキセノン光照射器で5秒間照射した群であった.同じくキセノン光照射器を用いてもシェードがA4であった場合,接着強さは半分以下にまで低下した.ハロゲン光照射器の場合,シェードがA2またはA4のどちらの場合も安定した接着強さを示していた.
    2.照射条件を変えて重合させたレジン硬化体のヌープ硬さを測定した結果,シェードがA2の場合は,キセノン光5秒照射によってハロゲン光40秒照射と同程度の硬さが得られ,キセノン光を10秒照射することによってヌープ硬さは有意に高くなった(P<0.01).シェードA4の場合,キセノン光5秒照射ではハロゲン光40秒照射に比較しヌープ硬さが有意に低く(p<0 .01),10秒照射することによってハロゲン光40秒照射と同程度の硬さが得られた.
    3.抜去ヒト小臼歯に象牙質内1mmの深さで形成された窩洞に対する色素浸透性試験の結果,辺縁封鎖性および窩壁適合性が最も良好な結果を示していたのは,ハロゲン光40秒照射群であった.キセノン光による5秒間の一括照射を行った群ではコントラクションギャップの発生頻度が高く,その幅も大きかった.
  • 村松 健司, 大出 祥幸, 荻原 和彦
    2001 年 39 巻 1 号 p. 159-172
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    再植後の根未完成永久歯に行った根管処置がその再植歯と歯周組織におよぼす影響を,ビーグル犬の切歯を用い研究した.
    左右上顎第二切歯の再植を行い,5週目に右側再植歯の歯髄を除去後,水酸化カルシウムを填塞し実験歯とした.左側再植歯は歯髄を除去せず対照歯とした.臨床観察として対照歯と実験歯の動揺度と歯肉炎症指数の測定,口腔内写真および規格化エックス線写真の撮影を行った.組織観察には,蛍光標識を施した非脱灰研磨標本を作製し,マイクロラジオグラフィー,蛍光顕微鏡法,偏光顕微鏡法により歯とその歯周組織における変化を比較検討した.
    1.動揺度および歯肉炎症指数について見ると,再植直後から再植後5週目以前では対照歯と実験歯の間に有意な差はなかったが,再植後5週目の根管処置以後では対照歯の動揺度,歯肉炎症指数は大きく,両者の間に有意な差を認めた.
    2.実験歯の歯根膜腔は歯頸部と根尖部で広く,歯根中央部で狭い砂時計状であったが,対照歯では不均一で,機能的な組織形態は消失していた.
    3.実験歯では歯根膜線維の再生を確認したが対照歯ではほとんど見られなかった.
    4.実験歯では根尖部とその周囲歯槽骨に硬組織の添加が認められたが,対照歯では炎症による吸収が持続していた.以上より臨床的ならびに病理組織学的所見から考えると,再植後5週目に根管処置を行っても,良好な治癒がもたらされることが示唆された.
  • 中村 隆子
    2001 年 39 巻 1 号 p. 173-183
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯科診療では麻酔,切削などの刺激が患者にとって心理的なストレスとなることが多い.そのため,ストレスが患者にどのような影響を与えるかを知り,その原因を取り除くことは歯科診療を快適に行う上で重要である.今まで,心理学的観点,行動学的観点,生理学的観点から歯科診療中の麻酔,切削といった行為がどんなストレスを与えているかが調べられてきた.しかしながら心理学的な変化によって生ずる行動が生理学的観点からどういう意味を持つのかについてはあまり知られていない.そこで歯科診療に伴う不安による行動が鼻部皮膚表面温度の変化におよぼす影響について検討した.
    この研究の対象は,96人の小児患者(男児47名,女児49名)である.
    不安度は日本版児童用状態・特性不安検査(STAIC)と吉田によって改変された歯科不安調査(DFS)により測定した.歯科診療中の行動と経過については2台のモニタリング用カメラとビデオで観察し,3名の評価者により行動の評価および体の部位別の行動記録を行った.鼻部皮膚表面温度はサーモグラフィによって測定した顔面表面温度を記録し,変動係数(CV)および変化幅(Range)を算出した.その結果,歯科治療に対する不安は歯科診療中の患児の行動を反映した.また,状態不安が高いほど鼻部皮膚表面温度の変動係数も大きかった.行動表出が大きいと鼻部皮膚表面温度の変動が大きかった.そして歯科治療中の患児の行動そのものがストレス対処として働き,鼻部皮膚表面温度の変動係数を減少している可能性が示唆された.
  • 穂積 由里子, 千田 皇子, 門馬 祐子, 真柳 秀昭
    2001 年 39 巻 1 号 p. 184-189
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児の咀嚼機能については,近年多数の研究報告があるが,乳歯列期に不正咬合を有する小児で咀嚼機能について調べたものは少ない.本研究は,乳歯列期の各種咬合状態によって,咬合力及び咀嚼能力に差異があるのかを知る目的で,正常咬合者,過蓋咬合者,切端咬合者,垂直型開咬者,水平型開咬者,反対咬合者を対象に,ATP顆粒を用いた咀嚼能力測定法とデンタルプレスケール®を用いた方法によって,各種不正咬合別の咀嚼能力と咬合力を調べ,正常咬合者のそれらと比較した.さらに咀嚼能力と咬合力の関係についても検討した.その結果,以下のことが明らかとなった.
    1.咀嚼能力は,過蓋咬合者群だけが正常咬合者群と比較して有意に小さい値を示した.他の不正咬合者群は正常咬合者群との間に差を認めなかった.
    2.咬合接触面積および咬合力については,過蓋咬合者群が正常咬合者群と比較して有意に低い値を示した.また,臼歯部における咬合接触面積,咬合力および平均咬合圧は,どの群も正常咬合者群との間に有意な差を認めなかった.
    3.正常咬合者群においては,咬合力と咀嚼能力との間,および咬合接触面積と咀嚼能力との間にそれぞれ正の相関が認められた(r=0.330,r=0.340).一方,過蓋,切端,反対咬合者群および水平型開咬者群においては,咬合力と咀嚼能力との間に相関を認めなかった.
  • 鈴木 昭
    2001 年 39 巻 1 号 p. 190-197
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,成人の耳下腺唾液の流れが上顎臼歯部頬側面のクリアランスにどのような影響を及ぼしているかを調べ,今後小児の耳下腺唾液の流れと比較するために,基礎データを得る目的で行った.まず耳下腺排泄導管開口部(以下耳下腺管開口部とする)の印象を採得し,石膏模型上より口腔内の位置を測定した.そして,一定範囲内に位置する被験者を選び,寒天ホルダーを上顎臼歯部頬側面に装着し,寒天中カリウムが唾液中に拡散し,寒天中に残留するカリウム濃度から上顎臼歯部頬側面の唾液クリアランスを求めた.
    一方,人工唾液を用いた口腔外実験から,口腔内の臼歯部頬側面における耳下腺唾液流出速度を推定し,唾液クリアランスとの関係を比較検討し,以下の結論を得た.
    1.耳下腺管開口部位は,各個人で異なっており,13名中近遠心的には約13mm,垂直的には約6mmの差が認められた.
    2.上顎第二小臼歯,第一大臼歯,第二大臼歯のように隣接している部位であっても唾液クリアランスには差がみられ,安静時,刺激時ともに上顎第一大臼歯が最も優れていた.
    3.安静時の耳下腺唾液の流れは,耳下腺管開口部より前方に流れる傾向がみられた.また,刺激時では安静時に比べて,後方に流れる割合が増加した.
    4.唾液の流出速度についても各部位に差がみられ,安静時,刺激時ともに上顎第一大臼歯が最も速かった.
  • 近藤 亜子, 松原 まなみ, 堀 竜平, 中西 正尚, 小林 利広, 田村 康夫
    2001 年 39 巻 1 号 p. 198-205
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    超・極低出生体重児(1000gおよび1500g未満)は,出生後保育器内で全身管理下におかれ経管栄養の期間が数か月と長期にわたるため,歯列を含めた口腔および顎顔面の形態,吸啜・咀嚼機能の発達に多大な影響をおよぼすことが推測される.そこで,満期正常出生児と超・極低出生体重児の吸啜と摂食機能の発達に差があるか否かを検討する目的で,低出生体重児の母親が自覚している吸啜・咀嚼機能の問題についてアンケート調査を行った.
    その結果,吸啜の問題としては超・極低出生体重児に授乳時に困ったことのある割合が高く,咀嚼の問題としては,偏食が多い,硬い食品を好まない,咀嚼した後飲み込めずに吐き出す,食べこぼしなどが多かった.その他の問題としては,おしゃぶりの使用頻度が高く,言語の発達遅滞を感じていることが明らかとなった.
  • 岡崎 好秀, 酒井 美智代, 東 知宏, 福島 康祐, 松村 誠士, 下野 勉
    2001 年 39 巻 1 号 p. 206-214
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    11歯科医院の協力の基に,1~5歳までに齲蝕を主訴として来院し,12歳まで継続的に来院した小児で処置終了後も定期健診を継続的に受診した小児88名(乳臼歯総修復歯数622歯),受診しなかった小児151名(1128歯)に群分けし,定期健診の状況と乳歯修復物の予後,さらに永久歯の齲蝕予防効果について調査した.
    1.定期健診群における,初回処置後の乳臼歯修復物の機能歯率は,1年後で84.6%,2年後で67.5%,3年後で50.6%で,50%機能期間は約3年であった.対照群では1年後で74.1%,2年後で48.2%と50%機能期間は約2年であり,定期健診群では,50%機能期間は約1年延長した(χ2検定p<0.001).
    2.乳臼歯1歯あたりの平均修復回数は,定期健診群1.81回に対し対照群2.41回であり,定期健診群は約0.6回修復回数が少なかった(ANOVA p<0.001).
    3.初回修復物の機能期間は,定期健診群では3.30年,対照群は2.48年であり,定期健診群は約0.8年機能期間が長かった(ANOVA p<0.001).
    4.定期健診群の12歳時のDMF歯数は,2.39歯,対照群では4.52歯であり,定期健診群の方がDMF歯数は約2.1歯少なかった(ANOVA p<0.001).以上より,定期健診により永久歯の齲蝕齲蝕のみならず,乳歯修復物の予後も向上した.
  • 馬場 宏俊, 金城 光也, 三瓶 伸也, 嶋田 出, 松井 大介, 下岡 正八
    2001 年 39 巻 1 号 p. 215-219
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    著者らの行っている視知覚研究は実際の臨床場面で三次元で眼球運動を分析することが理想である.しかし現在のところその方法は確立していない.これまで三次元空間を1mごとの空間に区切り眼球運動の分析を行う方法や,二次元映像の中で奥行き方向の動きに対する眼球運動の三次元的分析を試みた.
    竹井機器工業社製の両眼眼球運動測定装置を用い,臨床場面での停留点の三次元的分析が理論上可能となったが,装置の精度に関しては問題がある.そこでまず眼球運動の三次元研究の導入部として,装置の精度を検証することを目的に実験を行い,分析検討した結果以下の結論を得た.
    従来眼球運動の二次元的分析において停留点は停留部位を注視していると解釈してきたが,停留点を三次元で分析した結果,距離に関して算出した値がサッカーボールまでの距離を示さず,停留点の解釈には単に視線の方向を表している場合のあることがわかった.
  • 甲原 玄秋, 佐藤 研一
    2001 年 39 巻 1 号 p. 220-225
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    5歳の女児の舌にまれな骨性分離腫を認めた.来院の4日前,患児が舌根部の腫瘤に気づき,小児科医院を受診し当科を紹介された.全身的には異常所見はなく,舌正中より左方に1cm偏位した有郭乳頭付近に直径7mm,高さ4mmの硬い腫瘤を認めた.色調は周囲の粘膜と同一であった.CT検査では正中より僅かに左側の舌根部から咽頭腔にかけ小さな類円形で周囲組織より突出した高いCT値を有する像を認めた.同部のCT値は437H.U.を示し,これは石灰化物と推測された.舌良性腫瘍の臨床診断のもとに全身麻酔下で腫瘤を摘出した.摘出した腫瘤は正常な粘膜で覆われ,有茎性でその基部は3mmであった.摘出物は硬くメスで分割はできなかった.摘出した腫瘤のレントゲン写真は3つに分葉した不均一な不透過像を示した.病理組織学的には粘膜下に不規則な層板状構造を呈する成熟した骨梁と骨髄を有する骨組織がみられ,一部には造骨細胞を認めた.
    分葉した骨組織間には疎な線維性組織が介在していた.病理組織学診断は骨性分離腫とした.過去の報告と本症例の64例を分析すると,口腔内にみられる骨性分離腫は,舌正中より僅かに左側の分界溝付近が多い,成熟した骨組織を示す,大きさは平均1.0cmである,女性に多い,20歳代に多い,ことなどが判明した.10歳未満例について検討すると,大きさが平均5.6mmと小さいことを除けば他の特徴は同様であった.
  • 窪田 麻紀子, 船越 禧征, 村岡 亜子, 石川 晴美, 柳田 二美, 杉田 やよい, 大東 道治
    2001 年 39 巻 1 号 p. 226-230
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Peutz-Jeghers症候群は消化管ポリポージス,顔面の皮膚,口唇,歯肉,頬粘膜などにメラニンの色素斑を生じる常染色体優性の遺伝性の疾患である.患児は4歳10か月の男児で口腔内の色素斑を主訴として,兵庫県立こども病院歯科を受診した.口腔内所見として口唇,歯肉,頬粘膜に黒褐色の色素斑が多数認められた.Peutz-Jeghers症候群を疑い当院外科に対診した.
    外科で毎年,ポリープの有無を検査していた.9歳8か月時(歯科受診4年10か月後),上部消化管のエックス写真(胃,小腸部)および内視鏡検査の結果,胃および小腸に多数のポリープが認められ,内視鏡下にポリープを切除した.11歳時,胃全体に山田I型ポリープ,また胃の大弯側に比較的大きな山田III型ポリープを認め,これも内視鏡下にポリープを切除した.また11歳7か月時,胃の噴門部にポリープを認め内視鏡下にポリープを切除した.以後,ポリープの発生はなく,現在,経過観察中である.本症のごとく口唇,歯肉,頬粘膜などに特徴的な色素斑をみることがあれば,本疾患の診断のきっかけになることがあるので,本症をみたら外科に対診することが必要である.
  • 阿部 真紀, 畑 弘子, 金田一 孝二, 真柳 秀昭
    2001 年 39 巻 1 号 p. 231-237
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    永久歯の歯冠の完成後から,萌出までの問に特発性歯冠吸収を起こしたと思われる2症例を経験した.
    症例1の男児では,6歳0か月時のデンタルエックス線所見で,上顎中切歯の歯冠は完成しており,特に異常は認められなかったが,8歳6か刀時には,萌出中の上顎右側中切歯の歯冠に実質欠損が認められた.エックス線所見では歯冠の近心側1/2,切縁側1/2付近までおよぶ透過像を呈していた.患歯の舌側の欠損部を満たしていた歯肉と連続した軟組織を除去したところ,点状露髄が認められたため歯髄掻爬術を施行した.
    症例2の女児では,7歳1か月時のパノラマエックス線写真で,下顎右側第二大臼歯の歯冠はほぼ完成していたが,歯冠に形成異常を疑わせる点状の透過像が認められた.10歳6か月時に齲蝕診査のため咬翼法エックス線写真を撮影した際,未萌出の下顎右側第二大臼歯の歯冠中央部に大きなエックス線透過像を発見した.咬合面相当部の歯肉を開窓したところ咬合面形態に異常はなく,歯表面から内部へ通じる欠損は検出できなかった.約1か月後,患歯付近に自発痛が生じたため咬合面の裂溝を開拡したところ,直径1mmの露髄を伴う大きな象牙質の実質欠損が認められたため,直接覆髄を行った.
    2症例で認められた歯冠の部分的な実質欠損は,形成不全や齲蝕による結果とは考えにくく,歯冠の完成後に生じた歯冠部の特発性吸収であると推察される.
  • 池田 幸代, 星 仁史, 大森 郁朗
    2001 年 39 巻 1 号 p. 238-247
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    幼児期まで吸指癖がみられ,咬唇癖を伴う異常嚥下癖を原因とする歯列弓の狭窄を伴った上顎前突が認められた小児の咬合管理を,バイトプレートを用いて永久歯咬合に至るまで行ったので,その治療経過を報告する.
    バイトプレートによる習癖除去と上顎前突を改善するとともに,上顎歯列弓幅の側方拡大も同時に行う目的でバイトプレートに側方拡大ネジを付属させた.本装置を9歳7か月から2年6か月間使用することにより,歯列弓の狭窄を伴う上顎前突は改善した.その後,1年10か月間保定装置を装着した.この間,口腔習癖の再発もなく,機能的および審美的に満足できる永久歯咬合が得られた.
  • 八十島 華子, 山崎 賢, 井出 正道, 大森 郁朗
    2001 年 39 巻 1 号 p. 248-260
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    口腔習癖と異常嚥下癖を原因とする両顎前突が認められた2症例を対象に,混合歯列期から永久歯咬合に至るまで可撤装置を用いて咬合管理を行ったので,その経過について報告する.
    症例1:8歳0か月時に咬爪癖,咬唇癖,異常嚥下癖の除去と両顎前突の改善を目的としてバイトプレートを装着したが,嚥下時に舌がプレーン部を越えて突出するため,8歳9か月時にバイトプレーンにフェンスを付与した.2年11か月間の装置の使用により習癖が除去され,咬合が改善した.その後1年9か月間,保定装置を使用した.
    症例2:8歳11か月時に異常嚥下癖の除去と両顎前突の改善を目的として,フェンス付バイトプレートを装着した.11歳7か月時に習癖が消失したためフェンスを除去し,4年1か月間の装置の使用により咬合が改善した.その後,保定装置を装着し,経過観察を行っている.本報告の2症例は,フェンス付バイトプレートの使用により異常嚥下癖を除去し,舌の異常な動きを制御して,口腔周囲筋との調和が得られるようになったため,上下顎前歯の歯軸傾斜が改善し,機能的および審美的に満足できる永久歯咬合が得られたものである.
  • 尾形 玲子, 青木 明子, 大間 範子, 片野 尚子, 齋藤 亮, 橋本 吉明, 田中 光郎, 高木 裕三, 浜野 英也
    2001 年 39 巻 1 号 p. 261-269
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯科治療を希望する重度のアレルギー体質である6歳9か月の男児に対して, 使用する可能性のある歯科材料の諸検査を行い,陽性反応を示すものを排除することにより,アレルギー性反応の増悪化などの合併症をみることなく処置を完了することができたので, その詳細を報告する.
    患児は,小児科にて気管支喘息, アトピー性皮膚炎,ダニ・カビ・食物アレルギーと診断されている.他院にて齲蝕治療のため応急的にグラスアイオノマー仮封と思われる処置を受けたところ,その直後に行われた小児科の血液検査(特異IgE抗体検査: 半年に一度定期的に行われている) にて牛乳の抗体値が急上昇したため,グラスアイオノマーセメントを含む歯科材料の過敏症が疑われ,小児科医のすすめにより精査と齲蝕治療を希望し,当科を受診した.
    齲蝕治療に先立ち,使用する可能性のあった歯科材料15種のパッチテストおよび局所麻酔薬2種のスクラッチテストを行った.その結果, グラスアイオノマーセメントは陰性,エッチング材については弱陽性反応,セルフエッチングプライマーについては, 48時間後より1週間後まで,紅斑,浮腫, 小水泡を伴う強陽性反応を示した.また, 局所麻酔薬2種(塩酸リドカインと塩酸プロピトカイン) については陰性であった.さらに,治療において乳歯冠の使用が必要となったため銀合金, Ni-Cr,Tiのパッチテストを追加して行ったところ, どの金属に対しても陰性であった.
    以上の結果をふまえ,セルフエッチングプライマーについては感作が疑われたため,歯冠修復には銀合金インレー修復および既製乳歯冠修復を中心とした治療を行った.その結果アレルギー性反応の増悪化をみることなく治療を完了し, 良好な予後が得られている.
  • 島村 和宏, 金子 實, 齋藤 高弘, 鈴木 康生
    2001 年 39 巻 1 号 p. 270-275
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    先天性全身性リポディストロフィー(Congenital Generalized Lipodystrophy; CGL)は,常染色体劣性遺伝による,全身性の皮下脂肪組織の萎縮および消失を特徴とするきわめて稀な疾患である.全身所見として,身体の成長促進,多毛症,皮膚の色素沈着,インスリン抵抗性糖尿病が認められる.病因は未だ不明であり,根本的治療法もない.
    今回著者らは,長期にわたり歯科的管理を行ってきたCGL患者の口腔内状態およびその経年的変化について報告する.
    本症例に認められた口腔内所見は以下の通りであった.
    1.永久歯歯胚の早期石灰化および早期萌出
    2.永久歯のエナメル質石灰化不全
    3.歯列および咬合の異常
    4.歯周疾患
    5.口唇肥厚
    6.巨大舌および溝状舌
    7.口蓋垂裂
    8.口蓋扁桃肥大およびアデノイド
    永久歯列が完成するころから,歯肉炎が顕著となった.パノラマエックス線写真より,歯槽骨が徐々に吸収していくのが観察された.また歯の動揺も認められ,増齢とともに歯周炎が進行した.
  • 清水 武彦, 朝田 芳信, 前田 隆秀
    2001 年 39 巻 1 号 p. 276-284
    発行日: 2001/03/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    遺伝性エナメル質形成不全症を疑う患児の口腔管理と並行して,アメロジェニン遺伝子の構造解析を行ったところ以下のような知見を得た.
    1.初診時の年齢は3歳7か月であり冷身的には異常は認められなかった._??__??__??_が萌出しており,_??__??__??_にはエナメル質の広範囲な欠損が認められ,象牙質が露出しており,_??__??__??_に冷熱過敏が認められた.肉眼所見より残存エナメル質はほぼ正常な厚さを有し,エナメル質の硬さは健常児よりやや柔らかく,エックス線写真上ではエナメル質は象牙質と比較しわずかに強いエックス線不透過度を示し,エナメル質の低成熟な状態であった.遺伝要因以外の原因は問診により除外され,遺伝性エナメル質形成不全症と診断した.
    2._??__??__??_には乳歯用金属冠,_??__??__??_にはコンポジットレジンにより歯冠修復を行った.
    3.本症例は家系調査と臨床所見からは遺伝様式を決定することが困難であった.そこで遺伝様式の判定のために,X染色体上のアメロジェニン遺伝子のexon塩基配列の決定を試みた.その結果,健常者のアメロジェニン遺伝子構造と完全に一致し,本症例の遺伝様式はX連鎖性遺伝ではなく,常染色体性遺伝性エナメル質形成不全症である可能性が示唆された.
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