小児歯科学雑誌
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45 巻, 5 号
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  • 微小部エックス線回析法による解析
    平賀 貴子, 鈴木 克政, 廣田 文男, 荻原 和彦
    2007 年 45 巻 5 号 p. 571-577
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    出力の異なる連続波CO2レーザー照射条件下において,乳歯エナメル質照射表面はガラス様光沢の透明あるいは乳白色を呈し,中心部は陥凹し辺縁部が隆起したクレーター状形態を示していた。これらのレーザー照射領域を含むように縦断した薄切試料を偏光顕微鏡を用いて観察した結果,照射中央部は透明または灰白色で,その周りを干渉色の異なる半円形状のいくつかの層が取り巻いており,それらの干渉色は中心部から周辺へ,黒褐色,赤褐色,黄色,青などに変化していた。これらは周囲の正常なエナメル質とは異なった干渉色を呈しており,レーザー照射により歯質が変性した結果生じたものと示唆された。
    微小部エックス線回析法を用いてこれらの変性層を分析した結果,レーザー照射中心部からはα-Ca3(PO4)2,Ca4O(PO4)2,などのHAPの高温相とβ-Ca3(PO4)2およびα-,β-,γ-Ca2P2O7などの準高温相が同定された。また,照射中心から離れるに従って高温相と準高温相の混在から準高温相へ,準高温相から正常なHAPへと変化していることが認められた。これらの結果は,CO2レーザーの特性を示すものであることが確認された。
  • 原 麻子, 関口 浩, 竹内 智子, 山下 治人, 四ツ谷 賀央里, 藥師寺 仁
    2007 年 45 巻 5 号 p. 578-583
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    平成17年10月から平成18年9月までの1年間に本学千葉病院小児歯科に来院した初診患児1,110名のうち,歯科診療所あるいは一般病院から診療情報提供書あるいは紹介状を持参した患児313名を調査対象とし,患児の来院時年齢,診療依頼内容,医科疾患・発達障害の有無ならびに紹介元医療機関の所在地および来院患児の居住地について調査し,以下の結論を得た。
    1.全調査対象患児313名のうち,来院時年齢は3歳から7歳の173名(55.3%)が最も多く,半数以上を占めていた。
    2.診療依頼内容で最も多かったのは齲蝕治療139件で,次いで過剰歯,歯の外傷,萌出遅延・埋伏歯,歯列・咬合不正の順であった。
    3.齲蝕治療では6歳以下が6割以上,歯の外傷では1~2歳が4割を占めていることから,紹介元医療機関では低年齢児の処置が困難であることが推察された。
    4.医科疾患・発達障害を有する患児は44名(14.1%)で,精神発達遅滞,心疾患,喘息,自閉症が多かった。
    5.医科からの紹介患児は7名(2.2%)で,小児科4件,形成外科1件,精神科1件,産婦人科1件であった。
    6.紹介元医療機関の所在地ならびに患児の居住地域の双方とも,千葉市が最も多かった。
    7.積極的な病診連携により,本学千葉病院小児歯科では地域医療機関からの紹介状を持参して来院する患児数が増加傾向にあった。
  • 進賀 知加子, 仲井 雪絵, 紀 瑩, 守谷 恭子, 瀧村 美穂枝, 加持 真理, 竹本 弘枝, 森 裕佳子, 山中 香織, 下野 勉
    2007 年 45 巻 5 号 p. 584-592
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    妊婦の口腔内ミュータンスレンサ球菌群(MS)の菌数レベル,喫煙習慣,食事習慣に関する実態調査を目的として,産婦人科医院を受診した妊娠3-6か月目の妊婦400名(平均年齢29 .2±4.2歳,19-43歳)を対象にデントカルトSMを用いた唾液検体中のMS菌数レベルの測定,食事調査および喫煙習慣に関する質問調査を行ったところ,以下の結果を得た。
    1.各SMスコアの割合は,8.5%(SM=0),35.3%(SM=1),38.0%(SM=2),18 .3%(SM=3)であった。MS菌数レベルがハイリスク(SMスコア>2)を示した者は半数以上(56 .3%)であったにも拘らず,歯科医院を受診中の者は1割未満であった(7.8%)。その中で受療目的が「予防」であった者の割合は29.0%であった。歯科医療者と妊婦に対し,妊娠期の口腔衛生管理の重要性について認識を広めるための社会的啓蒙活動や教育が必要である。
    2.喫煙習慣の既往がある妊婦はMS菌数レベルがハイリスクになる傾向を認めた(10 .7%vs.6.3%;P=0.08)。
    3.「シリアル(無糖)」「アイスクリームまたはシャーベット」「ドーナツまたはマフィン類」「クッキー」「チョコレート」「あんパンまたはジャムパン」「まんじゅう」「ようかん」の8項目の食品においてハイリスク群はローリスク群より有意に摂取頻度が高かった。
  • 内上堀 伸作, 西田 郁子, 藤田 優子, 牧 憲司
    2007 年 45 巻 5 号 p. 593-602
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    近年,レプチンが骨代謝に関与することが明らかになったが,レプチン欠乏と下顎骨との関連について検証された報告はない。そこで今回著者らは,ob/obマウス(レプチン欠乏)群とleanマウス(野生型)群の下顎骨と大腿骨をセファロ分析による2次元的形態計測とperipheral Quantitative Computed Tomography(pQCT)による3次元的骨密度,骨強度計測法を用い,骨構造と力学的特性の比較評価を行った。また両骨組織の病理組織標本を作製し観察を行った。
    平均体重はob/ob群がlean群より全ての週齢で有意に高値であった(p<0.01)。大腿骨長はすべての週齢でob/ob群がlean群より有意に短かった(p<0.05)。下顎骨ではCd-Id,Al-Id',Cd-Biの9週齢と12週齢でob/ob群がlean群より有意に低値を示し,Al'-Meは全ての週齢でob/ob群がlean群より有意に高値を示した(p<0.01)。
    pQCTを用いた計測では,大腿骨で12週齢の皮質骨とStress Strain Index(SSI)でob/ob群がlean群より有意に低値を示し(p<0.05),下顎骨で海綿骨塩量と断面積以外の計測値でob/ob群がlean群より有意に高値を示した(p<0.05)。またob/ob群の大腿骨の骨髄には脂肪細胞の浸潤が見られた。結論として,ob/ob群の下顎骨は大腿骨とは異なる成長・骨構築し,局所的な骨量低下を惹起しにくい可能性が示唆された。
  • 何 陽介, 岡本 佳三, 野村 隆子, 吉村 薫, 本川 渉
    2007 年 45 巻 5 号 p. 603-610
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,Nd:YAGレーザー照射後のビッカース硬度,耐酸性能の変化,エックス線回折による歯質の結晶学的変化について検討した結果,以下の知見を得た。
    1.Nd:YAGレーザー照射後のエナメル質は,照射出力100mJでビッカース硬度の有意な上昇が認められた。
    2.象牙質への照射においてもエナメル質と同様に照射出力100mJでビッカース硬度の有意な上昇が認められた。
    3.耐酸性試験の結果,QLF測定値のΔF(平均脱灰深さ)は,レーザー非照射群(コントロール)-9.68±1.90に対して,レーザー照射群は-7.75±1.31を示し,両群間に有意差が認められた。
    4.レーザー照射後のエナメル質表面のSEM像は,滑らかな表面像と無数の不規則なマイクロクラックおよび大小多数のマイクロホールが観察された。
    5.エックス線回折の結果,レーザー照射後のエナメル質の一部がβ-TCPに熱分解・生成している事が明らかとなった。
  • 2001年と2005年の比較
    手島 陽子, 伊田 博, 船津 敬弘, 高田 貴奈, 矢野 雄一郎, 鈴木 崇夫, 鈴木 基之, 山本 松男, 井上 美津子
    2007 年 45 巻 5 号 p. 611-616
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    中国吉林省長春市にある小学校にて口腔保健調査を,2001年および2005年に実施し,2回にわたる調査結果を比較することによつて中国地方都市部における歯科疾患状況にどのような変化が現れているかについて検討を行った。
    対象は小学校に在籍する6歳から12歳の小児である。2001年は194名(男児97名,女児97名),2005年は214名(男児101名,女児113名)の延べ408名を対象とした。
    齲蝕罹患者率,一人平均齲蝕経験歯数,一人平均齲蝕経験歯率の割合はいずれも2005年の方が大きい数値を示した。重症齲蝕の割合は齲蝕全体の52.3%であり,修復歯の68.9%が二次齲蝕に罹患していた。調査結果から中国長春市の齲蝕は増加傾向にあることが判明した。
  • 森田 渉, 姚 睿, 清水 武彦, 永田 敦子, 能美 誠, 韓 娟, 前田 隆秀
    2007 年 45 巻 5 号 p. 617-622
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    EL/Seaマウスは100%の頻度で第三臼歯を欠如しており,歯欠損成因解明の有用なモデルマウスである。また,てんかんおよび上顎第一臼歯歯根の癒合のモデルマウスとしても知られている。著者らは過去にEL/Seaマウスの第三臼歯先天欠如の原因遺伝子を探求し,EL/Seaマウスの第3番染色体の61.8から662センチモルガン(cM)の間に野生型MSM/Msマウスの染色体を導入したELコンジェニックマウスを作製し,当該領域に欠如歯の原因遺伝子が存在することを証明し,この遺伝子をabsence of the third molars(am3)としたことを報告している。今回ELコンジェニックマウスを用い,第三臼歯の欠損部位を上下顎左右側別に記録し,am3の効果が部位ごとに差があるかどうかを検討した。また,ELコンジェニックマウスにおける上顎第一臼歯歯根の癒合と痙攣の発症頻度を求め,am3と癒合根およびてんかんの発症が独立しているか否かを検討したところ,以下のような知見を得た。
    1.ELコンジェニックマウスが有した第三臼歯数は上顎が下顎よりも有意に多く,このことからam3は上下顎ともに第三臼歯欠如に影響するが,上顎第三臼歯欠如に対する影響の方が強いことが示唆された。
    2.ELコンジェニックマウスで認められた上顎第一臼歯歯根の癒合と痙攣の発症頻度は,EL/Seaマウスの発症頻度と統計学的に差がなかったため,am3は癒合根およびてんかん発症には関連が低いことが示唆された。
  • 八若 保孝, 岩渕 英明, 伊藤 佐智子, 加我 正行
    2007 年 45 巻 5 号 p. 623-631
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    有病小児,とくに内部障害を有する小児は,全身管理の困難性,易感染性や止血の問題などにより,一般の歯科治療では対応できない面が多い。このような現状の中で,我々は,有病小児に関する歯科治療ならびに口腔管理において,今後医科と歯科の連携がさらに重要となることを考慮し,当科における内部障害を有する有病小児の最近7年間(平成12~18年)について実態調査を行い,以下の結果を得た。
    1.初診患児における有病小児の占める割合は,おおむね一定であり,約10%であり,1~3歳の年齢層の有病小児が最も多く認められた。
    2.北海道大学医学部附属病院ならびに北海道大学病院医科診療科からの紹介が全体の67.4%を占めていた。
    3.疾患別では,血液疾患が最も多く,ついで心,脳,腎,肝疾患の順であった。
    4.歯科疾患実態調査と比較して,対象となった有病小児は一人平均DMF歯数,一人平均def歯数が大きな値を示し,有病小児に齲蝕が多い傾向が示された。
    5.未処置歯を有する有病小児は,有病小児全体の36.5%で,大きな値を示した。
    6.病院の統合前と統合後についての比較の結果,大きな差異は認められなかった。
    以上のことより,有病小児は健常児に比較して,口腔内管理がより重要であるにもかかわらず,良好な口腔内状態を有していないことが示された。今後,有病小児の口腔管理が円滑に行われるよう,今回の結果をもとにさらなる医科との連携強化の必要性が示唆された。
  • 1991年と2006年との比較
    押領司 謙, 齋藤 珠実, 正村 正仁, 中山 聡, 水谷 智宏, 楊 静, 李 憲起, 岩崎 浩, 宮沢 裕夫
    2007 年 45 巻 5 号 p. 632-638
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本学小児歯科学講座では1989年から中国各地における園児の歯科健診を実施している。今回,1991年と2006年に実施した中国石家庄市の同一幼稚園の歯科健診結果を比較し,さらに日本の歯科疾患実態調査結果と比較検討を行った。
    調査は石家庄市第一鉄道幼稚園,1991年は4歳児と5歳児,男児252名女児199名の合計451名,2006年は4歳児と5歳児,男児55名女児119名の計174名を対象とし,咬合異常,歯の異常,歯肉炎状況,齲蝕状況を診査項目として実施した。2006年の結果を1991年と比較すると,咬合異常,特に上顎前突と歯の異常は増加傾向が認められた。歯肉炎は1991年(10.2%)と比較すると51.1%へと著しい増加傾向が認められた。齲蝕罹患者率,齲蝕罹患歯率,一人平均齲歯数を1991年と比較すると4歳児,5歳児ともに減少傾向にあり,5歳児では日本と同程度の割合であった。齲蝕処置率は増加傾向がみられるものの日本に比べ著しく低い割合であった。齲蝕進行度別未処置歯率では1991年と同程度の割合であった。また,日本と比較すると4歳児では軽症齲蝕が多く,重症齲蝕は少ない割合を示し,5歳児では軽症齲蝕は少なく,重症齲蝕が多かった。
    今回の調査結果を1991年と比較すると,乳歯齲蝕罹患率の著しい低下が認められたが,齲蝕処置率は依然として低く,さらに歯肉炎罹患率は増加傾向を示した。また,対象人数の相違はあるものの齲蝕進行度別未処置歯率が低いことから,低年齢児の軽症齲蝕は放置される傾向を示した。その背景には歯科医師数の不足と齲蝕予防プログラムを含む口腔の健康増進システムの未確立が要因として考えられた。
  • 水谷 智宏, 中山 聡, 押領司 謙, 楊 静, 岩崎 浩, 宮沢 裕夫
    2007 年 45 巻 5 号 p. 639-644
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    乳幼児は,目に映る様々な物を口腔内へ入れる特性を有している。今回当科を受診した2歳11か月の女児で,下顎前歯部に長期間ストロー様異物が嵌入していたと考えられた1例について報告する。
    症例:患児は生後9~10か月頃の転倒により下顎乳前歯部に外傷を負い,その頃より歯の形態異常が認められていたが,約2年間歯科受診を行っていなかった。その後2歳11か月時に,下顎左側乳中切歯の疼痛を主訴として紹介により当科へ来院した。口腔内診査で下顎左側乳中切歯歯頸部に乳白色異物を認め,エックス線写真検査では歯槽骨が異物と一致するような形で高度の歯槽骨吸収をきたしていた。診査の結果から異物嵌入による歯周炎と診断して摘出術を行った。摘出物は乳白色をしたストロー様異物であり,後に,かつて使用していた枕の中身と判明した。その後,定期的な検診を行い,異物除去から6か月後に,僅かながら近遠心方向より歯槽骨の回復傾向が認められた。
    異物迷入事例は,迅速かつ的確な判断の後に慎重な異物除去を行う必要があり,異物除去後の歯周組織の回復傾向を確認することが望ましい。また,保護者や保育関係者等に対しては,乳幼児が異物を口腔内へ入れてしまうことで発生する為害性に対する知識の普及をこれまで以上に広める必要がある。
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