小児歯科学雑誌
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46 巻 , 4 号
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  • 室賀 麗, 遠藤 圭子, 杉本 久美子
    2008 年 46 巻 4 号 p. 407-414
    発行日: 2008/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    歯科保健医療の専門家が,どの程度児童虐待に関する義務等について認識しているかを明らかにし,その児童虐待防止・早期発見における役割を検討するため,歯科診療所の歯科医師,歯科衛生士と保健所等の歯科衛生士にアンケート調査を行った。
    その結果,児童虐待について関心を有する者の割合は,保健関係歯科衛生士100%,歯科医師93.6%,診療所歯科衛生士69.6%であり,診療所歯科衛生士は他群より関心度が低かった。児童虐待に関する情報源について,診療所歯科衛生士では「学生時代の授業」という回答が多く,卒業後知る機会が少なかったと推察された。また,児童虐待の通告義務について知っている者は,保健関係歯科衛生士で81.1%,歯科医師で66.0%,診療所歯科衛生士で44.9%であり,診療所歯科衛生士で認知度が低かった。通告義務に関して,守秘義務違反に問われないことを知っている者は多かったが,立証責任がないことを知っている者は少なかった。
    実際に虐待が疑われるケースの経験がある者は,保健関係の歯科衛生士で73.0%であったのに対して,歯科医師で36.2%,診療所歯科衛生士ではわずか4.4%であった。さらに,経験を有する歯科医師のうち76.5%が通告しておらず,通告時に不安を感じることが一要因と推測された。また,虐待防止にむけた子育て支援に取り組んでいる診療所は未だ少なく,意識的取り組みの必要性が示唆された。
  • 吉村 剛, 鈴木 淳司, 中岡 美由紀, 坪井 文, 大谷 聡子, 大原 紫, 香西 克之
    2008 年 46 巻 4 号 p. 415-422
    発行日: 2008/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児口腔から検出されるプラークは多くの場合白色であるが,しばしば黄褐色のプラークが認められる。本研究では,黄褐色プラーク(以下黄褐色群)と白色プラーク(以下白色群)の相違点を臨床的・細菌学的に明らかにすることを目的として,当科を受診した患児30名を対象とし,プラークの菌種構成,酸産生能,齲蝕罹患状態,プラークより分離された齲蝕原性菌(S.mutans,S.sobrinus)株の耐酸性について比較検討を行い,以下の結果を得た。
    1.齲蝕罹患者率と平均齲蝕罹患歯率を比較したところ,黄褐色群は白色群より有意に低かった。
    2.プラークの酸産生能についてカリオスタットを用いて検討した結果,黄褐色群のリスクが有意に低かった。
    3.菌種特異的なPCRを用いて,プラークに含まれる菌種を分析した結果,黄褐色群では,齲蝕原性菌の検出率は低く,S.mutansS.sobrinusの混合感染も確認されなかった。また,非齲蝕原性菌(S.sanguinis,S.mitis)の検出率が高かった。一方,白色群では,齲蝕原性菌の検出率が高く,S.mutansS.sobrinusの混合感染も多く認められ,非齲蝕原性菌の検出される割合も低かった。
    4,各プラーク群より分離された臨床株を用いて,耐酸性能を検討したところ,白色群から得た分離株は黄褐色群から得た株よりもやや高い耐酸性能を示した。
    以上より,黄褐色プラークは,菌種の分布,齲蝕誘発性が異なるために白色プラークよりも低い齲蝕リスクを示すことが明らかとなった。
  • 湯浅 真理, 山田 亜矢, 岩本 勉, 丸谷 由里子, 野中 和明, 福本 敏
    2008 年 46 巻 4 号 p. 423-430
    発行日: 2008/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    唇顎口蓋裂は出生約500に1名の割合で発生する先天性奇形のひとつである。裂による顎変形や哺乳障害のみならず,歯の形成異常を認めることが多い。しかし齲蝕罹患性の高さから,これまで唇顎口蓋裂児の歯の形成異常,なかでも乳歯の形成異常に関する報告は少ない。
    著者らは,この齲蝕罹患性を低下させるために,唇顎口蓋裂児の乳歯の形成異常の中でも特にエナメル質形成不全に着日し,裂形との関連性や齲蝕有病者率の実態を知り,検討を行う目的で本調査を行った。調査対象は,九州大学病院小児歯科外来で定期管理を行っている乳歯列の唇顎口蓋裂児とした。本調査および分析の結果,以下の所見を得た。
    1.顎裂を有する児では,裂の存在する上顎破裂側に乳歯の形成異常が認められることが多い。一方で裂の存在しない反対側,あるいは下顎にも乳歯の形成異常を生じる事が確認された。
    2.本調査対象児では,軟口蓋裂単独児において右側の乳歯の形成異常を認めなかった。
    3.齲蝕有病者率は歯科疾患実態調査で報告されている健常児のそれと比較して低率であった。
    今回の調査から,顎裂児と口蓋裂児ともに乳歯の形成異常の出現を予測し,無歯期から保護者に対する口腔衛生指導を行うこと,また長期にわたる齲蝕予防処置を含む歯科的定期管理を唇顎口蓋裂児に対して行っていくことが大切であると考えられた。
  • 庄内 聡子, 小方 清和, 割田 幸恵, 苅部 洋行
    2008 年 46 巻 4 号 p. 431-439
    発行日: 2008/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究は,ウシエナメル質を用いた脱灰・再石灰化処理のpHサイクリング実験において,CPP-ACP(カゼインホスホペプチド-非結晶性リン酸カルシウム複合体)配合ペースト(MI Paste®,GC社製)が齲蝕予防に果たす役割について検討した。0.01%フッ化ナトリウム(NaF)溶液とCPP-ACP,キシリトールそれぞれの単独使用もしくは併用での再石灰化促進効果を知るため,0.5時間の再石灰化処理を行い,0.1M乳酸-乳酸ナトリウム緩衝液(1mM CaCl2,0.6mM KH2PO4:pH5.3)に23.5時間浸漬する操作を4日間繰り返した結果,以下の結論を得た。
    1.CPP-ACPは,脱灰溶液中でエナメル質表層を維持する作用を示し,キシリトールとの共存で,中層から深層における再石灰化促進効果も同時に認められた。
    2.CPP-ACP非存在下でキシリトールを作用させた場合には,エナメル質表層を維持する効果は弱かったが,エナメル質中層から深層における再石灰化効果が認められた。
    3.キシリトール非存在下でCPP-ACPを作用させた場合には,エナメル質表層を維持する効果は高かったが,エナメル質内部の再石灰化が低く,結果としてミネラル喪失量は高くなった。
    以上の結果から,フッ化物存在下でのMI Paste(R)の応用はCPP-ACPによるエナメル質表層の維持と,キシリトールによるエナメル質内部の再石灰化促進を示し,齲蝕予防に有効であることが示唆された。
  • 佐橋 喜志夫, 石原 摩美, 今泉 三枝, 近藤 俊, 今村 基尊
    2008 年 46 巻 4 号 p. 440-445
    発行日: 2008/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    5歳4か月から7歳10か月までの16名の対照群と5歳3か月から9歳7か月までの14名の著しく高位に付着する上唇小帯を切除した切除群の上唇小帯の付着位置,口唇閉鎖力,上下の口唇圧および上下口唇圧比を指標とした口唇閉鎖と上唇小帯切除との関連を調べた。これらは対照群の前より有意に小さい値を示していた切除前の上唇小帯の付着位置と口唇閉鎖力と下唇圧および対照群の前と有意差がなかった上唇圧は,それぞれ切除後に有意に大きい値を示していた。さらに,経過観察後も対照群の後と同様に有意に大きい値を示していた。また,切除後と経過観察後の下唇圧は,対照群の前後と同様に上唇圧より有意に大きい値を示していたが,切除前では上唇圧と有意差がなかった。切除前に有意に大きい値を示していた上下口唇圧比は,切除後と経過観察後も対照群の前後と同様に有意差がなかった。以上の結果より,小児の著しく高位に付着する上唇小帯を切除することで口唇閉鎖の機能は向上したことが示唆された。
  • 筒井 睦, 嘉藤 幹夫, 大東 道治, 富沢 美惠子
    2008 年 46 巻 4 号 p. 446-454
    発行日: 2008/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児の歯科診療時の心理状態の把握方法は種々報告されているが,それらを障害児に応用するには,意思の伝達方法などから困難な場合が多い。そこで,今回,大阪歯科大学小児歯科・障害者歯科外来を受診した知的障害児・者17名と健常児17名を対象とし,診療開始前と終了後に7色の歯ブラシを用いた色選択法を表情指摘と併せて実施し,歯科診療時の心理状態の把握方法としての有効性について検討した。
    1.障害児・者群と健常児群では,色・形分類検査,診療室への入室態度,診療前に選んだ色,診療内容,診療前に選んだ色が好きな色と一致したかどうかの項目に有意の差が認められた。
    2.診療前と治療後に選択した色が異なっている者は,障害児・者群17名中15名,健常児群17名中12名と多く,両群とも色の変化の有無と診療内容に関連が認められた。
    3.診療前と治療後で選択した色の変化の有無と表情指摘の変化の有無との関連については,有意の差は認められなかった。
    4.各色に対して選択した顔の表情は必ずしも一致しないことから,色のイメージは固定したものではなく個人によって異なると考えられた。
    5.色選択法は障害児・者にも簡便に用いることができ,今後,各個人の色に対するイメージ調査を加えることにより,心理状態の把握方法として応用できるのではないかと考えられた。
  • 海原 康孝, 角本 法子, 番匠谷 綾子, 光畑 智恵子, 財賀 かおり, 鈴木 淳司, 香西 克之
    2008 年 46 巻 4 号 p. 455-462
    発行日: 2008/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    某病院小児歯科で歯科健診を受けた1歳児1,529人を対象として,健診結果と健診時の保護者の相談内容について集計した。その結果,以下の結論を得た
    。1.萌出歯数は1歳0か月では7.5本,1歳6か月では13.8本であった。
    2.齲蝕に罹患していた小児の割合は3.6%であった。また,1歳0か月~1歳5か月までの3.2%,1歳6か月~1歳11か月までの10.7%の小児が齲蝕に罹患していた。
    3.齲蝕に罹患した小児のうち,85.5%が卒乳していなかった。また,61.8%に就寝前または夜間の母乳の摂取,29.1%に哺乳瓶による就寝前または夜間の飲料の摂取の習慣があった。
    4. 1歳児を持つ保護者への「何か気がかりなことはありますか」という質問に対し,最も多かった回答は「歯みがきを嫌がる」であり,以下順に「歯ならび」,「歯みがきの方法」であった。
    5.歯科健診を受けた1歳の小児のうち,43.0%が健診を契機に引き続き同病院小児歯科を定期的に受診するようになった。そのうち,健診をした時点で齲蝕に罹患していたのは4.4%であった。また,定期的に受診するようになった小児の保護者のうち,44.4%が歯科健診時に「特に気になることはない」という回答をしていた。このことから,齲蝕治療などの特別な動機がなくても,1歳時の歯科健診を契機に定期的に小児歯科を受診するようになる小児が多く存在することが判明した。
  • 奥 猛志, 井形 紀子, 豊島 正三郎, 重田 浩樹, 山崎 要一
    2008 年 46 巻 4 号 p. 463-468
    発行日: 2008/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児の歯科治療に対する年齢別適応性ならびに笑気吸入鎮静法の使用有無別でのトレーニング回数を調査し,以下の結果が得られた。調査対象は,742名(男児390名,女児352名),平均年齢6歳3か月(1歳~15歳)の健常児である。
    1. 3歳未満の小児では歯科治療に対して協力を得ることは難しかった。3歳児は協力度が57 .7%と歯科治療に対する適応・不適応のターニングポイントであり,それ以降は暦年齢の増大とともに増加した。
    2.トレーニング回数は3歳児の平均が2.0回であり,暦年齢の増大とともに減少した。
    3.笑気吸入鎮静法を使用した患児のトレーニング回数は使用しなかった患児と比較して多い傾向が認められた。
  • 利根川 茜, 黒下 礼奈, 高森 一乗, 田中 庄二, 渡部 茂
    2008 年 46 巻 4 号 p. 469-476
    発行日: 2008/09/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    ブラキシズムは,歯の咬耗を引き起こすのみでなく,歯周疾患や顎顔面痛,顎関節症などのリスクファクターの1つであることが知られている。それは発生する時間帯により,覚醒時及び睡眠時ブラキシズムの2つに大別される。覚醒時のブラキシズムの原因においては不明な点が多いものの,近年の生理学的手法を応用した検索により睡眠時のブラキシズムにおいては,微小覚醒に引き続く咀嚼様の顎運動(Rhythmicmasticatory muscle activity:RMMA)より生ずると考えられるようになってきた。
    一方で,小児期のブラキシズムに関する報告は非常に少なく,その生理的な役割や加齢による変化についての詳細はいまだ明らかでない。
    今回,下顎乳前歯の動揺と同部の出血を主訴に来院した,1歳7か月女児への歯科的対応を通して,睡眠時のブラキシズムがその原因であると考えられた症例に遭遇したので,治療経過も含めその概要を報告した。
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