小児歯科学雑誌
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46 巻 , 5 号
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  • 吉原 俊博
    2008 年 46 巻 5 号 p. 497-500
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    母子関係が成長後の視床下部機能に与える影響を調べ,以下の結果を得た.
    (1)母子分離経験ラットの視床下部一下垂体一副腎皮質系(hypothalamus-pituitary-adrenocortical以下,HPA系)は,成長後,ストレス反応が亢進し,母子分離の時間が長いほど亢進の程度は大きかった.また,ストレス反応に影響を与える母子分離を行う時期には臨界期が存在した.
    (2)母子分離経験ラットのストレスに対するHPA系の反応亢進にはネガティブフィードバック機能の低下が関与している可能性が示唆された.
    (3)メタンアンフェタミン投与により時計遺伝子発現周期は変化するが,母子分離経験マウスではその変化が大きかった.
  • 松本 道代
    2008 年 46 巻 5 号 p. 501-504
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    口腔内のバイオフィルムは,細胞間のシグナル伝達システムであるクオラムセンシングと呼ばれるシステムのもとで形成される.Streptococcus mutansにおいて,このシステムは,comC遺伝子により産生されるcompetence stimulate peptide(CSP)により調節されていることがわかっている.そこで,comC遺伝子の欠失株を用いて,テトラサイクリン(Tc)に対する感受性を調べたところ,親株と比較して有意に感受性が上昇していた.一方,この実験系にCSPを添加しても,感受性が元の状態に戻ることはなかった.データベース上のS.mutansの遺伝子配列を検討したところ,comC遺伝子の上流にBacteriocin immunity protein(Bip)をコードするbip遺伝子が存在することがわかった.そこで,このbip遺伝子の欠失株を作製し,Tcの感受性を調べたところ,comC欠失変異株と同様にTcへの感受性の上昇が認められた.また,GS5株の培養液中に低濃度のTcを添加すると,bip遺伝子のmRNAの発現が,無添加時と比較して顕著に上昇することがわかった.以上の結果は,S.mutansのBipが抗生物質の取り込みに深く関係しており,菌の抗生物質への感受性に関与していることを示唆している.
  • 佐々木 康成
    2008 年 46 巻 5 号 p. 505-510
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    胎生期からの顎顔面頭蓋の成長発育過程で発揮される成長の潜在能力を解明することは,小児歯科臨床において応用するために重要である.口唇口蓋裂(cleft lip with cleft palate)は,顎顔面頭蓋領域に発現する発生異常の中でも頻度が高く,裂型の中でも重症型であり,小児の成長発育期を通しての歯科的管理が重要であるが,口唇裂に続いて起こる口蓋裂の成長のメカニズムについてはほとんど分かっていない.そこで臨床において,4症例の偏側性唇顎口蓋裂に対する手術前の治療条件の違いが,口唇裂手術時までの口蓋の成長に与える影響を調べた.結果は,装置の使用期間が長い方が,鼻・歯槽の形態のみならず,裂部の閉鎖方向への成長にとっても有効であることが分かった.また,基礎研究においては,口唇裂自然発症系統マウスの胎児期の口蓋棚成長能力について,分子生物学的手法を用いて調べたところ,口唇裂自然発症における口蓋棚細胞の増殖の低下が認められたが,器官培養系においては組織学的に癒合した.こうして分かってきた口蓋の成長の潜在性は,顎顔面頭蓋成長メカニズムの解明につながるのみならず,出生後早期からの治療についての保護者へのカウンセリングやインフォームドコンセントにも有用であると考えている.
  • 森田 渉, 清水 武彦, 前田 隆秀
    2008 年 46 巻 5 号 p. 511-516
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    EL/Seaマウスは100%の頻度で第三臼歯を欠如しており,ヒトにおける先天性欠如歯の原因解明に有用なモデルマウスである.EL/Seaマウスにおける歯の欠如は常染色体劣性遺伝性であると報告されているが,歯の欠如の原因遺伝子は未だ明らかにされていない.著者らは過去にEL/Seaマウスの第三臼歯先天性欠如の原因遺伝子を探求し,EL/Seaマウス第3番染色体の123.1から136.9メガベースペア(Mbp)間に野生型MSM/Msマウスの染色体を導入したコンジェニックマウスを作製し,当該領域に欠如歯の原因遺伝子が存在することをin vivoにて証明し,この遺伝子をabsence of the third molars(am3)としたことを報告している.今回,この第9世代のコンジェニックマウス(N9マウス)を用いて交配実験を行い,MSM由来の染色体の導入領域をさらに限局したマウスを作製し,第三臼歯の欠如率を評価することで,am3の存在領域をさらに狭い範囲まで限定し,候補遺伝子を選定することを目的とした.コンジェニックマウスの第三臼歯欠如の頻度と遺伝子型の結果から,マウス第3番染色体の130.7から131.7メガベースペア(Mbp)間の領域に第三臼歯欠如の遺伝要因が存在することが明らかとなった.この領域内に存在するLef1,Hadh,Cyp2u1,Sgms2,Papss1の5遺伝子が候補であることが示唆された.
  • 香西 克之, 鈴木 淳司, 内川 喜盛, 木本 茂成, 田村 康夫, 中島 一郎, 小野 俊朗, 有田 憲司, 新谷 誠康, 福本 敏, 海 ...
    2008 年 46 巻 5 号 p. 517-523
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本邦における小児歯科学教育の現状を調査するために,全国29歯科大学・大学歯学部の小児歯科学担当講座(分野)に対してアンケート調査を行った.アンケートは小児歯科学授業(講義),基礎実習,臨床実習の3項目について行った.アンケートの結果から以下の実態が確認された.授業では,ほとんどの大学で小児歯科,あるいは成長,発達などの小児歯科学と関連のあるシラバスの科目名称を有していたが,小児歯科学単独のシラバスを持たない大学もあった.授業時問は平均55時間程度であったが,最も少ない大学と多い大学では6倍の差があった.基礎実習は平均35時間行われていたが,国公立大学の平均に比べ私立大学は有意に多かった.臨床実習実施期間は平均11.9か月で大学間の差は少なかったが,実施時期は国公立大学に比べ私立大学が約6か月程度早期に行われていた.また,臨床実習での学生の参加形態や評価方法などは大学問で大きな差があった.
    以上のことから,小児歯科学の教育は各歯科大学・大学歯学部で大きな差があることが確認された.特に授業時間や実習時間は私立大学が多い傾向にあった.また臨床実習の実習期問は大学問で大きな差はないが,開始時期は私立大学が国公立大学に比べ有意に早いことが示された.
  • 園本 美惠, 大東 道治
    2008 年 46 巻 5 号 p. 524-532
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    不快ストレスは歯科診療に支障をきたす場合があり,歯科診療時に患児が不快ストレスをどの程度受けているかを把握するため,不快ストレスを客観的に迅速評価することは重要な課題である。本研究では唾液のα-アミラーゼ活性をチェアーサイドで測定し,歯科診療時の健常児と障害児におけるストレスの比較検討を行った。対象は大阪歯科大学附属病院小児歯科・障害者歯科外来を受診した2歳から15歳までの健常児58名,障害児34名とした。診療前後のα-アミラーゼ活性は携帯型アミラーゼ活性分析装置(ヤマハ発動機(株)製)を用いて比色法で測定した。不適応行動により健常児ではα-アミラーゼ活性は有意に変動した(p<0.05)。一方,障害児では有意な変動は認められなかった。障害児は健常児と比較して診療前後ともにα-アミラーゼ活性が有意に高くなっていた(p<0,05)。また,種々の診療内容による分類においてα-アミラーゼ活性の変動は認められなかったため,障害児のストレスを唾液のα-アミラーゼ活性を用いて定量的に評価するのは困難であった。一方,健常児のストレスを客観的に評価する方法として唾液のα-アミラーゼ活性の測定は有用であった。障害児においてストレスに対する反応が健常児と異なる可能性があり,障害児のストレスを客観的に評価するためには唾液のα-アミラーゼ活性に替わる新規バイオマーカーが必要であると示唆された。
  • 何 陽介, 岡本 佳三, 馬場 篤子, 本川 渉, 松家 茂樹
    2008 年 46 巻 5 号 p. 533-541
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    近年,レーザーの普及に伴い齲蝕予防,保存,外科等のさまざまな臨床の場で応用されるようになってきた.レーザー照射面は表面が凹凸形態を呈していることで,その面に嵌合効力を期待してレジンを接着させる試みも行われており,リン酸エッチングが不要であるという,いわゆるレーザーエッチング効果があるとも言われている.臨床的には,レーザー照射による歯質強化を優先し,その後,シーラント填塞を行うと歯質の耐酸性の向上と齲蝕の好発部位である小窩裂溝部のシーリングの相乗効果が生じ,より高い齲蝕予防効果が期待できる.そこでCO2レーザー照射による耐酸性向上した牛歯エナメルにシーラント処置を行い,その接着強さ,接着界面,微細構造,ならびにエックス線回折を行った.その結果,レーザー照射のエナメル質表面においてα-TCPが析出していることが明らかとなったが,シーラントの接着強さについては,リン酸エッチングと比較し,有意に低いことが明らかとなった.
  • 吉田 美香子, 市川 智久, 巣瀬 賢一, 中川 貴美子, 白 正華, 黒下 礼奈, 林 恒彦, 利根川 茜, 時安 喜彦, 松原 暁, 高 ...
    2008 年 46 巻 5 号 p. 542-547
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児の医療環境や患児の歯科医療への要望は時代とともに変化している.その変化を十分に把握するために,1992年から1996年までの5年問,1997年から2001年までの5年間における初診患児の実態について報告してきたが,今回は2002年から2006年の5年間調査を行い,以下の結論を得た.
    1.初診患児の年間平均来院数は569名で,前回調査の324名(第1回調査),462名(第2回調査)より増加していた.
    2.初診時年齢は3歳が最も多く(約14%),6歳未満が全体の約60%を占めていた.この傾向は,前回の調査と同様であった.
    3.通院距離は半径5km以内が最も多く(約30%)占めていた.しかしながら半径15km以上の者も全体の約25%を占めていた.
    4.初診時主訴は齲蝕・痛みが約50%と多く占め,前回調査と同様であった.
    5.一人平均齲歯数はdf歯数,DMF歯数共にこの5年間に大きな変動は認められなかったが,前回調査よりやや減少していた.
    6,紹介患児は全体の33.4%を占め,前回調査(約25%)よりやや増加していた.年齢では3歳児,通院距離では半径5~10kmが最も多かった.
    7.心身障害児は総数91名と前回よりわずかに増加し,全体の3.2%であった.
  • 藤田 規正, 竹安 正治, 大東 道治
    2008 年 46 巻 5 号 p. 548-554
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    今回の研究では,ラット歯髄細胞のin vitroにおける軟骨細胞系譜への分化能について検討した.ヒト骨髄で行われているin vitro分化誘導系を応用して軟骨分化誘導を試みた.骨髄細胞と同様に歯髄に存在する細胞にも多分化能があると考え,これまでに骨芽細胞,神経細胞への分化能について報告した.また,歯髄に存在する幹細胞の特性についても報告してきた.そこで今回は,歯髄細胞における軟骨細胞への分化誘導を試みた.実験動物として5週齢のWistar系ラットを用いた.分化誘導材として,L-プロリン,アスコルビン酸二リン酸,リノレン酸,インシュリントランスフェリン,デキサメタゾン,TGF-β1,BMP-2を用いた.初代培養開始後の分化誘導前において歯髄にAGC1およびCOL2A1を発現する細胞は存在しなかった.このことから,歯髄細胞には軟骨細胞の存在は示されなかった.また,mRNA発現定量解析においてAGC1は,分化誘導前と比較して分化誘導後において約1.67倍の発現を示した.一方,COL2A1については,mRNA発現定量解析から,分化誘導前と比較して分化誘導後の方が1.62倍の発現が認められた.分化誘導後におけるアルシアンブルー陽性細胞数の増加や,mRNAにおけるAGC1,COL2A1が発現していることから,歯髄細胞が軟骨細胞系譜への分化過程にあることが示唆された.以上の結果から,ラット歯髄細胞に多分化能を有する可能性が示唆された.この多分化能を有する歯髄幹細胞が今後の組織工学や再生医療にとって非常に有用であると思われる.
  • 藤原 百合
    2008 年 46 巻 5 号 p. 555-565
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    カルシニューリン(CN)は,脳に豊富なカルシウム/カルモジュリン依存性セリン・スレオニンプロテインホスファターゼで,活動依存性なシナプス可塑性発現に関与していることが知られている.今回,体性感覚野ニューロンにおけるCNの発現を明らかにする目的で,マウス大脳皮質バレル領域を免疫組織化学的に解析した.共焦点レーザー顕微鏡法では,CNがMAP2陽性の樹状突起の表面や内部に豊富に分布していた.皮質由来の軸索終末のマーカーであるVGLUT1との2重染色では,CNの強い反応はVGLUT1陽性終末の内部ではなく,むしろそれとの境界領域に観察された.包埋前免疫電子顕微鏡法により,CNの局在を示す金コロイドは興奮性ニューロンの樹状突起とスパインに豊富であったが,そのシナプス前部要素となる神経終末は低かった.一方,抑制性ニューロンの樹状突起は,興奮性ニューロンのそれより低いレベルであった.以上の結果は,CNが広範な細胞発現と細胞内分布を示し,特に興奮性ニューロンのシナプス後部に豊富であることを示している.シナプス可塑性はシナプス後部のグルタミン酸受容体の活性化を引き金として主に興奮性シナプスに起こる現象であることを考慮すれば,今回の所見はCNがその下流の細胞内過程において体性感覚系の情報処理やシナプス可塑性発現,さらには活動依存的なシナプス回路発達などにも関与している可能性を示唆する.
  • 齊藤 正人, 佐藤 標, 倉重 圭史, 野呂 大輔, 倉重 多栄, 堀内 美帆子, 丹下 貴司, 廣瀬 弥奈, 池田 和博, 川上 智史, ...
    2008 年 46 巻 5 号 p. 566-569
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    近年,口臭に関する社会的関心が高まっており,小児の口臭に不安を訴える保護者が増加してきている.成人の口臭では,口腔清掃不良,歯周病,齲蝕,および内科・耳鼻科疾患が原因となる揮発性硫黄化合物濃度(VSCs総量値)の検索は多数あるが,小児においてはほとんど報告されていない.そこで今回著者らは,4~6歳までの幼稚園児のうち保護者に同意を得られた59名(男児29名女児30名)を調査対象とし,ポータブルガスクロマトグラフィーOralChroma®を用いて,口臭測定を行い,硫化水素,メチルメルカプタン,および硫化ジメチルのVSCs総量値を測定した.また,口腔内検査として,df歯数と歯垢の付着程度,および性差に関して比較検討を行ったところ,以下の結論を得た.
    1.df歯数とVSCs総量値の関係を多重比較検定したが,相関関係は認められなかった.
    2.歯垢の付着程度とVSCs総量値の比較では,歯垢の付着程度が増加することによりVSCs総量値の有意な上昇が認められた.
    3.性差におけるVSCs総量値の比較では,有意差は認められなかった.このことから,小児において口臭はdf歯数との相関関係は認められないが,歯垢付着程度に影響をうけることが示唆された.
  • 韓 娟, 姚 睿, 李 萌, 横屋 知恵子, 朝野 崇, 横山 伸夫, 松村 東栄, 阿保 憲興, Elif Bahar Tuna, 前田 ...
    2008 年 46 巻 5 号 p. 570-577
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    本研究の目的はマウス唇顎口蓋裂の自然発症と環境要因の一つである母体環境との関連性を検討することである.著者らは近交系A/WySn系統マウス(以下,Aマウスとする)と近交系C 57BL/6系統マウス(以下,B6マウスとする)を用いて遺伝学的に交配し,N2[A×F1(A×B6)](× の前が母獣,× の後が父獣.F1;AとB6の交雑マウス)とN2[A×F1(B6×A)]であるN2[A×F1]およびN2[F1(A×B6)×A]とN2[F1(B6×A)×A]であるN2[F1×A]戻し交配マウス(以下,N2マウスとする)胎仔を得た.以上の4群に分類したN2マウスにおいて母体によっての胎仔の吸収状況,胎仔の生存状況,唇顎口蓋裂仔を妊娠した母獣の状況,また,生存胎仔において唇顎口蓋裂の発症率を調べた.その結果,N2[A×F1]はN2[F1×A]と比較し,胎仔の吸収率が高く,胎仔の生存率が低かった.また,N2[A×F1]の方が唇顎口蓋裂の発症率が高く,そのうち両側性唇顎口蓋裂の発症率が片側性唇顎口蓋裂の発症率より高かった.また,A×F1において唇顎口蓋裂仔を妊娠した母獣Aマウスの比率は高く,さらに2匹以上の唇顎口蓋裂仔を妊娠した母獣が認められた.一方,F1×Aにおいて唇顎口蓋裂仔を妊娠した母獣F1マウスの比率は低く,2匹以上の唇顎口蓋裂仔を妊娠した母獣は認められなかった.従って,A母体の環境は胎仔の吸収率を高め,胎仔の生存率を低め,また唇顎口蓋裂を発症しやすく,胚胎の成長発育に不良な環境を提供すると考えられ,唇顎口蓋裂発症は母体の環境に影響されることが強く示唆された.
  • 隈元 美貴子, 柳田 元継, 保富 貞宏, 西田 綾美, 玄 松玉, 杜 小沛, Omar M. M. Rodis, 假谷 直之, 西村 美 ...
    2008 年 46 巻 5 号 p. 578-584
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    コミュニケーション能力が発達途上にある小児の歯科診療において,歯科医は患児の心理状態を的確に把握する必要がある.これまでに,鼻部皮膚温度と心理状態との関連性に関する研究が行われてきたが,ストレス負荷時に限定された報告が多く,ストレス状態からの回復過程における研究はほとんど行われていない.そこで,本研究では,ストレッサーとして氷刺激を手掌部に与え,特に,ストレス状態からの回復過程における心理状態と鼻部皮膚温度との関係を明らかにすることを目的とし実験を行った.まず,実験期間中の知覚レベルおよび不安レベルをTimes eries Visual Analog Scale(T-VAS),および日本語版状態・特性不安検査(STAI)を使って調べた.同時に,鼻部皮膚温度は,サーモグラフィを使って5分毎に測定した.その結果,氷刺激による痛み等の知覚レベルおよび不安感が増大する時は,鼻部皮膚温度は低下した.また,氷刺激停止後に痛みや不安感が時間の経過とともに減少する時,鼻部皮膚温度は上昇し,刺激前の温度にまで回復した.よって,これらの関係性を利用することで,サーモグラフィによる鼻部皮膚温度の測定から痛みや不安のような心理状態の評価を行える可能性が強く示唆された.
  • 市橋 豊雄, 岡野 哲, 近藤 亜子, 中原 弘美, 飯沼 光生, 田村 康夫
    2008 年 46 巻 5 号 p. 585-601
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    小児の成長による発音の変化を,持続母音およびVCV音節語後続母音の周波数解析で検討した.被検児は3歳から8歳の36名(各年齢男児3名,女児3名)である.
    その結果,1)持続母音/a/~/o/と,各VCV音節語後続母音における性差は認めなかった.2)年齢間では持続母音の基本周波数F0,第1フォルマント周波数F1では,増齢に伴い優位に低下していたが,母音間ではF0で有意差は認められず,F1と第2フォルマント周波数F2では認められた.3)VCV音節語後続母音のF1,F2,F2-F1(差)では年齢群との間に相関がみられた音節語と年齢にほとんど影響されない音節語がみられた.4)発語明瞭度では,[s]行,[r]行は低年齢児が不明瞭で,増齢とともに明瞭になっていた.5)上下顎乳犬歯間幅径と持続母音のF1,F2,F2-F1(差)との間ではいずれも有意な関係はみられなかった
  • 吉田 登志子, 守谷 恭子, 仲井 雪絵, 平川 貴之, 山中 香織, 松村 誠士, 下野 勉
    2008 年 46 巻 5 号 p. 602-608
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    大学附属病院の初診患児における歯科恐怖の実態を把握することを目的に,平成16年6月から18年3月までの間に岡山大学病院小児歯科を初めて受診した3-8歳の患児224名(男児118名,女児106名;平均年齢5.9±1.6歳)を対象に,保護者回答用日本語版Dental Subscale of Children's Fear Survey Schedule(CFSS-DS)を用い,歯科恐怖に関する調査を実施した.その結果,以下の結論を得た.
    1.CFSS-DS合計点の平均値は34.0±11.5点であり,すでに報告されている他の国や岡山近郊のほぼ同年齢を対象とした結果より高い値を示した.また,男女間に有意差は認めなかったが,年齢との間に負の相関を認めた.
    2.CFSS-DSの項目別平均点の高い3項目は順に,「歯を削られること」,「注射される」,「息がつまること」であり,他の報告とほぼ同じ結果であった.
    3.本研究対象者の52.7%が歯科恐怖を有しており,恐怖を有する患児は有していない患児と比較して年齢が低く,受診経験がなく,未処置歯を多く有し,不協力を理由に紹介された割合が多かった.
    4.不協力を紹介理由に受診した紹介患児の平均CFSS-DS合計点は,それ以外の一般患児と比較して有意に高い値を示した(45.3±12.5点vs 32.5±10.5点).
  • 掛川 達彦, 大橋 英夫, 林 恒彦, 黒下 礼奈, 高橋 昌司, 鈴木 昭, 稲葉 大輔, 渡部 茂
    2008 年 46 巻 5 号 p. 609-616
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    牛歯脱灰切片における再石灰化の評価を光誘導蛍光定量法,{Quantitative light induced fluorescence(QLF法)}とマイクロラジオグラフ画像定量法(MR法)とで行い,QLF法の信頼性について確認するとともに,フッ化物の牛歯脱灰切片,および口腔内における永久歯脱灰歯面に対する再石灰化に及ぼす影響をQLF法で評価した.測定項目はMR法ではΔZ,QLF法ではΔF,エリア,ΔQの3項目とした.牛歯脱灰切片を25日間,再石灰化溶液に浸漬させ,フッ化物塗布群(FV群)と非塗布群(コントロール群)との比較を行った.ヒト口腔内においては,ホワイトスポットを呈する歯にフッ化物塗布と,フッ化物溶液洗口(450ppm)を行い,2か月間の再石灰化効果を調べた.その結果,以下の結論が得られた.
    1.QLF法のΔF値,MR法のΔZ値での比較では,両者に有意な相関が認められた.
    2.牛歯脱灰切片を25日間再石灰化溶液に浸漬した際のΔFの回復率の平均値は,コントロール群が7.7±2.9%を示したのに対し,FV群は18.0±3.4%を示した.
    3.口腔内においても,同様に2か月後のQLF値は再石灰化が促進され,平均では19.9±5.9%の回復率が示された.
  • 大道 士郎, 中江 寿美, 宮本 順美, 旭 吉直
    2008 年 46 巻 5 号 p. 617-621
    発行日: 2008/12/25
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    Sturge-Weber症候群を有する12歳男児の歯科治療を経験した.患児は整形外科手術目的で入院中であった.顔面と口腔内の一部が血管腫によって覆われており知的障害を有していた.齲蝕が多数歯に認められ入院中に全ての齲蝕歯を治療する計画が立てられた.先ず,ブラッシング指導から始めて行動調整を約2か月に渡って進めたが,時間的制約などの事情ため3回の全身麻酔下の治療によって齲蝕の治療を完了した.1回目の全身麻酔の後にパニック状態になり自傷行為を行い,額を傷つけたが大出血には至らなかった.その他には問題は発生しなかった.本症候群を有する患児に関しては血管腫,知的障害,てんかんなどさまざまな問題をはらんでいるので,普段から保護者,歯科医師,歯科衛生士,小児科医師が連絡を取り合い,できるだけ観血的処置にいたらないように持続的な口腔衛生管理を行う必要があると考えられた.
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