小児歯科学雑誌
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47 巻 , 3 号
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総説
  • 王 宝禮, 渡部 茂, 前田 隆秀, 宮沢 裕夫
    2009 年 47 巻 3 号 p. 419-426
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2015/03/11
    ジャーナル フリー
    喫煙は喫煙者だけではなく,間接的に非喫煙者の健康に対しても悪影響を及ぼすことが知られている。また,口腔疾患における環境面からみた最大のリスクファクターであり,その発症や進行,治療効果の低下に関与していることが報告されている。タバコの小児に対する健康被害は計り知れない。このような背景から,2004 年に日本小児アレルギー学会,日本小児科学会が「禁煙推進に関する宣言」を行い,さらに日本小児科学会,日本小児保健協会,日本小児科医会の3 団体が「子どものための無煙社会推進宣言」を行った。さらに,2006 年歯科医学の関連学会である日本口腔衛生学会,日本口腔外科学会,日本歯科医学総会,日本歯科医師会で「禁煙宣言」がなされ,日本歯科衛生士会でも「禁煙推進宣言」がなされた。つまり,喫煙対策は医療者である歯科医師,そして歯科衛生士の使命なのである。本稿では,タバコの小児に対する影響を基礎医学,臨床医学の面から考察する。
原著
  • 猪狩 和子, 小関 健由, 塚田 満男, 天野 三榮子, 小菅 玲, 福本 敏
    2009 年 47 巻 3 号 p. 427-432
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2015/03/11
    ジャーナル フリー
    地方の政令指定都市であるS 市では,実態に即した効果的な齲蝕予防の実践とその評価のために,市全体の保育園(所)・幼稚園における歯科健診の標準化と健診結果集約・分析システムを構築した。本システムにより平成19 年度には,0〜5 歳の保育園・幼稚園児23,222 人の健診結果が集約され,分析を行い,保育園児と幼稚園児の齲蝕罹患状況を比較したところ以下の結果を得た。1 .齲蝕有病者率,一人平均齲歯数は,3〜5 歳のいずれの年齢でも保育園児のほうが幼稚園児より高かった。保育園・幼稚園とも乳歯齲蝕罹患の経年的減少傾向は認められたが,2〜3 年前の全国平均の値に相当した。2 .齲蝕有病者における処置完了者の割合,齲歯数における処置歯の割合はいずれも3〜5 歳のどの年齢においても保育園児のほうが幼稚園児より有意に低かった。幼稚園5 歳児を除いたすべての年齢において保育園・幼稚園とも齲歯における処置歯率は20〜40%程度で,半数に満たなかった。以上より,保育園児では幼稚園児に比較して齲蝕罹患傾向が高いにもかかわらず,治療がなされていない状況が明らかになり,早期よりの集団への齲蝕予防のための介入の必要性が示唆された。また,幼稚園児においても齲蝕罹患状況は良好とは言えず,同様に適切な歯科健康管理が行えるような支援が必要と思われた。
  • 高木 純一郎, 佐野 富子, 田口 洋, 三富 智恵
    2009 年 47 巻 3 号 p. 433-441
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2015/03/11
    ジャーナル フリー
    下顎第二小臼歯は様々な局所的要因により萌出が障害されるが,本研究では特発的な歯胚の方向異常により下顎第二小臼歯の萌出が障害された症例について検討を行い,臨床的対応法についてフローチャートを考案した。調査対象は1979 年から2008 年までに新潟大学医歯学総合病院小児歯科診療室で処置した,歯胚の方向異常に起因する下顎第二小臼歯萌出障害の11 症例15 歯で,診断時年齢は8 歳0 か月~13 歳11 か月,片側性7 例,両側性4 例であった。15 歯中14 歯が遠心に傾斜しており,歯胚形成度が低いものほど遠心傾斜度が大きい傾向にあった(R>0.70)。 また,片側性と両側性の2 群に分けて傾斜度を比較すると,遠心傾斜度は片側性で有意に大きい値を示した(P<0.01)。診断後に全症例で先行乳歯を抜去していたが,傾斜度の大きい場合には,その後歯胚形成がすすんでも傾斜度はわずかに改善するのみで,初期歯根形成期から歯根長1/4 形成期頃にかけて骨開窓や牽引,誘導等の複雑な対応を必要とする場合が多かった。したがって,形成遅延が顕著に認められる場合には,早期に先行乳歯を抜去すると保隙期間が長くなるため,下顎第二小臼歯の歯根形成開始を待って対応した方が良いと考えられた。
  • 小山 和彦, 阪本 光伸, 長谷川 信乃, 田村 康夫
    2009 年 47 巻 3 号 p. 442-452
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2015/03/11
    ジャーナル フリー
    混合歯列期小児の側方滑走運動時における咬合接触点数,荷重値および咬合重心の時系列的変化について検討されたものは数少ない。そこで,成人被験者を対象に姿勢が咬合状態に及ぼす影響について検討した後に,混合歯列期小児の側方滑走運動時における咬合接触関係について観察した。その結果,アップライト姿勢,仰臥位共に咬合接触面積は,咬合第1 接触から咬頭嵌合位にかけて経時的に増加するが,咬合の左右バランスは,アップライト姿勢の方が仰臥位よりも早期に安定する傾向が認められた。混合歯列期小児のocclusion time, disclusion time は成人よりも短く,側方滑走様式は主に片側性平衡咬合を示すが,両側性平衡咬合を示す者もみられた。混合歯列期小児ではdisclusion time とオーバーバイト,オーバージェットとの有意な相関はみられなかったが,disclusion time と荷重値の変化との間には有意な負の相関が認められた。混合歯列期小児における側方滑走運動時の平衡側咬合接触点数変化率および荷重値変化率は,滑走運動前半の変化率が小さく,滑走運動後半の変化率が大きかった。また混合歯列期小児の咬合重心位置は,滑走運動前半よりも後半に大きく移動する傾向が認められた。 以上のことから,混合歯列期小児の側方滑走運動時における咬合接触状態の変化は,上下顎歯の咬耗に伴う咬合小面の増大や上下方向への移動が小さいといった顎運動の特徴を反映し,成人の側方滑走運動時の咬合接触関係とは異なることが明らかとなった。
  • 福島 伸一, 野口 真紀子, 田口 洋, 野田 忠
    2009 年 47 巻 3 号 p. 453-459
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2015/03/11
    ジャーナル フリー
    知的障害者の歯科診療への適応状態を,長期間に渡って良好に維持することは,障害者の口腔内の長期的な管理を行う上で重要である。著者らは,知的障害者の歯科診療への適応状態について,その長期的な変化を調べる目的で,新潟県知的障害者総合援護施設「コロニーにいがた白岩の里」に入所している,最重度の知的障害者16 名を対象に,歯科診療時の5 つの状況において,行動評価を行った。その結果を,20 年前に同様の基準で行った,初回調査の治療開始時から治療終了時までの歯科診療時の行動評価の結果と比較し,年代間での適応状態の比較および各個人の適応状態の経年変化を調べ,次のような結論を得た。1 .年数を経るに従い,「適応あり」と評価された者が,全ての状況で増加しており,特に本調査時で有意に増加した。また,経年的適応群(経年的に評価が良くなった群と,「適応あり」の評価のまま推移した群)は,全ての状況で増加していた。長期間の定期診査によって歯科診療に慣れてきたことと,増齢によって心身ともに落ち着いてきたことが,その理由として考えられた。2 .各々の状況で適応性の経年変化が異なっていた。治療台に寝て歯科治療を受けている間は,短期間で適応性が良くなりやすい状況であり,入り口から治療台までの間は,最も適応性が良くなりにくい状況であった。
  • 何 陽介, 岡本 佳三, 馬場 篤子, 本川 渉, 松家 茂樹
    2009 年 47 巻 3 号 p. 460-470
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2015/03/11
    ジャーナル フリー
    著者らはCO2レーザーを出力別および照射モード別に牛歯エナメル粉末へ照射し,FT-IR ならびにエックス線回折を行い,照射出力や温度の影響による結晶学的な検討を行った。1 .FT-IR スペクトルの吸光度比の比較から1W 照射では,いずれの照射モードにおいても約800℃程度まで温度が上昇していた。3W ではCW モードは800℃~1000℃まで上昇し,SP 1 モードとSP 2 モードは1200℃以上まで上昇していることが示唆された。5W 照射ではSP 1 モード,SP 2 モード,CW モードの順で上昇温度が高く,いずれの照射モードにおいても1200℃以上まで上昇していることが明らかとなった。2 .レーザー照射後の試験粉のSEM 像は,1W では平坦な構造物の表面に大小さまざまな微粒子が見受けられた。3W では1W と比較して析出物のサイズが大きく,かつ凹凸が少ない像が確認された。5W ではいずれの照射モードにおいても表面状態は溶融しており,ほとんど大きな差は無く,全体的に滑沢な表面が見受けられた。3 .エックス線回折から1W および3W 照射ではα-TCP のピークも確認された。5W 照射においては,CW, SP 1 およびSP 2 モードのどの照射モードにおいてもα-TCP とTTCP のピークが確認された。
  • 大野 裕美, 下岡 正八, 田中 聖至
    2009 年 47 巻 3 号 p. 471-481
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2015/03/11
    ジャーナル フリー
    現在著者らは,小児の性格の違いで視知覚による情報探索の仕方に違いがあるか,非接触型眼球運動測定装置Free View を用いて研究している。今回は,各性格群(依存群,標準群,自立群)と各年齢群(7 歳未満:A 群,7 歳以上10 歳未満:B 群,10 歳以上13 歳未満:C 群)との間で見方の違いを詳細に検討した結果,性格と年齢の関係について,以下の結論を得た。1 .性格群別でみると,依存群,標準群では年齢による見方の差を認めないが,自立群において増齢的に目,鼻,口といった顔の諸部分への停留点の分布,サッケードは増加傾向にあった。2 .年齢別でみると,A 群,B 群では性格的な見方の差を認めないが,C 群では自立群の見方と,依存群,標準群の見方が違う傾向にあった。3 .C 群では自立群において依存群,標準群と比較して,外観や背景への停留回数,停留時間は減少傾向にあった。以上のことから,小児の顔の見方には性格と年齢とがともに影響しており,特に10 歳を過ぎる小児の対応において,成人と同様の配慮の必要性が示唆された。
臨床
  • 佐藤 厚, 加藤 智史, 奥村 志保美, 鶯塚 英雄
    2009 年 47 巻 3 号 p. 482-493
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2015/03/11
    ジャーナル フリー
    上顎第一大臼歯の異所萌出は,小児歯科臨床においてときどき遭遇する異常の一つである。その治療は,ごく局所的な対応で解決する症例から,長期的な視点を持って対応をしなくてはならない症例まで様々である。治療の基本は,上顎第二乳臼歯にロックしている上顎第一大臼歯の遠心移動であるが,それを治療初期段階で達成できても,第二乳臼歯が早期に脱落し,第一大臼歯の保定が必要となったり,上顎第二小臼歯が舌側から萌出したりする可能性がある。さらには,第二大臼歯の咬合関係にも注意が必要になる。一方,個別にその他の不正咬合の問題を持っている場合もある。問題が起きる度に治療方法の説明をしていたのでは,患児・保護者から見れば,ゴールが非常に見えにくいものとなることは十分想像できる。その問題を解決するために,著者らは第一大臼歯の異所萌出対処フローチャートを考案した。このフローチャートは,術者の治療指針になるとともに,患児・保護者にとっても,今どの部分の治療が行われているのかをより具体的に理解できる利点があると考えられる。本論文では,そのフローチャートを紹介するとともに,フローチャートの流れ別の5 症例を提示する。
  • 一瀬 智生
    2009 年 47 巻 3 号 p. 494-499
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2015/03/11
    ジャーナル フリー
    萌出障害の原因を確認するため,萌出遅延とされた第一大臼歯の歯冠周囲歯肉の組織学的検査がなされてきている。いちのせ小児歯科において,口腔内視診とエックス線写真で歯原性腫瘍や歯牙腫,あるいは異所萌出を認めない第一大臼歯の未萌出症例のうち,歯胚の位置,歯根の形成状態,他部位第一大臼歯との比較等により,萌出遅延と診断された4 例に対し,歯冠周囲歯肉の病理組織検査を行い検討した。1 .口腔内視診とエックス線写真では明らかな病変を有さず萌出遅延と診断された第一大臼歯4 例(上顎3 例,下顎1 例)の歯冠周囲歯肉には,歯原性上皮小塊を多数含む過誤腫病変が認められた。2 .これら第一大臼歯は,エックス線写真では歯槽骨内から歯肉内への萌出(顎骨内萌出)が障害されていた。3 .処置として,開窓を行い経過観察したところ,3 例で萌出傾向が認められた。萌出傾向が認められなかった1 例には,牽引処置を行い適切な位置に萌出させることができた。4 .第一大臼歯の歯胚の形成に遅れが認められる場合は,処置を行わず経過観察する1)。しかし,歯胚形成が正常である場合,第一大臼歯の萌出遅延は,咬合育成のためにできるだけ早期に着手するのがよいと思われた。
  • 井上 友紀, 藤田 晴子, 小野 芳明, 岡田 憲彦, 高木 裕三
    2009 年 47 巻 3 号 p. 500-505
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2015/03/11
    ジャーナル フリー
    東京医科歯科大学歯学部附属病院小児歯科外来において,口蓋粘膜にエプーリス様の腫瘤を認め,その病理組織診断では歯原性過誤腫性病変であるとされた症例を報告する。患児は2歳6か月の男児で,既往歴および家族歴,全身所見に特記すべき事項はなかった。上顎左側乳中切歯部の口蓋粘膜に表面平滑な歯肉色の隆起性病変を認め,エックス線写真ではその腫瘤の基底部相当部にエックス線不透過像を,また,上顎乳中切歯間には順生埋伏過剰歯1歯を認めた。全身麻酔下に腫瘤と腫瘤直下の石灰化物を摘出し,同時に順生埋伏過剰歯を抜去した。術後の経過は良好で,再発は認められない。腫瘤の病理組織では粘膜上皮下に豊富な粘液腫様性間葉組織の増殖がみられ,索状あるいは微小胞巣構造を呈した歯原性上皮成分が少量混在していた。また,エナメル上皮成分や異形成象牙質と思われる硬組織の形成も認められたので,歯原性過誤腫性病変と診断した。さらに,腫瘤の直下に存在した石灰化物は歯牙様構造を呈しており埋伏過剰歯といえるが,この石灰化物の存在が何らかの刺激となって腫瘤が形成されたものと考えた。
  • 牧村 美穂, 折野 大輔, 韓 娟, 松根 健介, 前田 隆秀
    2009 年 47 巻 3 号 p. 506-513
    発行日: 2009/06/25
    公開日: 2015/03/11
    ジャーナル フリー
    Oral-facial-digital syndrome(OFD症候群)は,特異顔貌,口腔異常(分葉舌,小帯異常,歯槽異常),指趾異常(短指,合指,彎指,多指)を主徴とする遺伝性症候群である。本症例は,OFD症候群と某市立病院にて診断され,口腔内清掃と咀嚼・嚥下の指導を主訴に来院した,4歳5か月の二卵性双生児の女児である。両症例に認めた口腔所見は,唇・頰小帯の異常,歯の形成不全および歯数の異常であり,X線画像所見では,側切歯の先天性欠如であった。全身所見においては,両眼隔離のような特異顔貌がみられた。OFD症候群の患者は,口腔異常を伴う頻度が高いため,摂食機能,嚥下機能,構音機能への配慮を要すると考えられる。よって長期にわたった口腔健康管理が必要であると考えられる。
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