小児歯科学雑誌
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48 巻 , 3 号
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総説
  • 藤原 卓
    2010 年 48 巻 3 号 p. 367-373
    発行日: 2010/06/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    ヒューマンエラーは人間の本来持っている特性と,人間を取り巻く広義の環境がうまく合致していないために引き起こされるものと定義される。現在のリスクマネージメントにおいては,ヒューマンエラーはゼロにはできないので,医療事故は必ず発生するということが基本となっている。またヒューマンエラーだけでなく,構造的な危険(リスク)もゼロにすることは不可能で,安全とは受け入れがたいリスクが無いことと定義される。したがってリスクマネージメントに加え,医療事故が発生した後の対策としてのクライシスマネージメントが重要になる。小児歯科の医療従事者は,パルスオキシメーターなどのモニター機器を活用するとともに,救急蘇生術を習得しておく必要がある。AHA のBLS ヘルスケアプロバイダーや二次救命としてのPALS コースがそれに適している。院内感染対策は標準予防策が基本となる。血液を媒介とする肝炎やヒト免疫不全ウイルス感染症について,その感染確率や予防法,治療法について知っておく必要がある。麻疹,水痘,流行性耳下腺炎,風疹などの小児期によくみられるウイルス感染症対策も重要で,医療従事者は抗体価測定とその結果に基づくワクチン接種が必要である。
  • 山田 亜矢, 岩本 勉, 中村 卓史, 福本 敏
    2010 年 48 巻 3 号 p. 374-380
    発行日: 2010/06/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    近年の再生医学研究の進展から,人工的な歯の形成や,歯由来細胞を用いた組織再生が実用可能なものとして期待されている。その一方で,歯の再生を考えた場合,機能的な形態を有する歯の構築が必要となるが,その中でもエナメル質の形成は,最も困難と考えられている。したがって,人工的にエナメル質を構築する為にも,エナメル芽細胞の分化メカニズムの理解は大変重要な課題と言える。著者らは,エナメル芽細胞の分化を理解するために,歯の発生段階で,特にエナメル芽細胞の分化に関わる分子群のスクリーニングとその機能解析をおこなってきた。その中で,エナメル基質の1 つであるアメロブラスチンが,エナメル芽細胞分化の鍵となる分子であることが明らかとなった。アメロブラスチンは,エナメル芽細胞の足場蛋白としての機能を有するとともに,細胞の極性決定に関わり,一定の方向にエナメル基質を分泌させる作用を持つ。この作用により,エナメル質は均一な層盤構造と縄状のエナメル小柱を形成し,非常に固い組織でありながら,咬合力に耐えうる柔軟性を持つ。また歯原性上皮腫瘍の原因遺伝子としての側面も持ち,アメロブラスチン遺伝子や蛋白が,本疾患の治療に応用できる可能性も示唆されている。本稿では,エナメル芽細胞分化過程におけるアメロブラスチンの機能と,再生医療への応用について考察する。
原著
  • 一瀬 智生
    2010 年 48 巻 3 号 p. 381-387
    発行日: 2010/06/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    いちのせ小児歯科を受診した92 名において,歯髄腔の閉塞を呈する122 歯の外傷乳前歯の経過と処置について集計・検討した。歯髄腔の閉塞がエックス線写真で確認されるようになるのは,受傷後6 か月~1 年が最も多かった。経過観察中97 歯には臨床上問題となる異常を認めなかったが,25 歯に臨床的異常が認められた。異常所見で最も頻度が高かったのは内部吸収で,一度発症すると自覚症状がないまま急速に進行するケースが多いと考えられた。その結果,歯牙破折,歯髄壊死に至るが,早期に定期診査で判明したケースでは,抜髄処置による保存が有効であった。その他の異常には,歯髄壊死,後継永久歯の萌出障害が認められた。無症状のうちに早期喪失や永久歯の萌出障害などの異変が発生していることから,歯髄腔の閉塞を呈する外傷乳前歯では定期診査と管理の継続が望まれた。
  • 小林 英樹, 松山 順子, 三富 智恵, 佐野 富子, 川崎 勝盛, 田口 洋
    2010 年 48 巻 3 号 p. 388-396
    発行日: 2010/06/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    小児の咀嚼パラメーターが,学校給食の献立内容,特に主食の種類の違いによってどのような影響を受けるのかを明らかにする目的で,小学校6 年生の男児3 名,女児3 名の計6 名を対象に観察研究を行った。麺類,米飯類,パン類の主食毎に2 種類ずつ,計6 種類の給食について食事中の咀嚼をビデオ撮影し,咀嚼回数や時間などの各パラメーターの変化を比較検討した。さらに,保護者などの一般の方が,どのような学校給食の献立内容を望んでいるかを知る目的で,20 歳以上の170 名の成人を対象にアンケート調査を実施し,今後の給食内容のあり方についても検討した。今回対象とした給食では,主食が変化しても咀嚼パラメーターへの影響はほとんどないことが明らかになった。給食回数についてのアンケート結果では,米飯給食を週3~5 回実施するのがよいとする回答が全体の80%を超えていた反面,米飯以外の給食も週に0.5~1 回出して欲しいとの回答が約65%あった。米飯給食に比べると他の4 種の給食は栄養バランスに明らかな偏りがみられ,食育基本法の制定目標の趣旨から考えても,米飯給食を主体とするのは適切であろうと考えられる。一方,本研究結果から主食の種類の違いによる咀嚼への影響はほとんど考慮しなくてもよいことから,子どもの給食への楽しみと保護者の希望に配慮し,米飯以外の給食も月に数回は選択してもよいのではないかと考えられた。
  • 日本小児歯科学会医療委員会, 品川 光春, 田中 光郎, 犬塚 勝昭, 大原 裕, 國本 洋志, 鈴木 広幸, 福本 敏, 藤居 弘通
    2010 年 48 巻 3 号 p. 397-408
    発行日: 2010/06/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    低年齢児の診療導入に関する実態調査をするために,小児歯科専門医である日本小児歯科学会の役員117 名にアンケート調査を行った。その結果,56 名(47.9%)から回答があり,低年齢児434 名について検討したところ以下のような結果を得た。1 .医療機関選択の理由は,専門医だから33.2%,他医からの紹介32.3%,知人家族等の紹介31.3%の順に多く,地域での小児歯科専門医の役割を示している。2 .保護者の希望は,多少の泣き嫌がりは仕方ない50.7%,泣き嫌がってもしてほしい44.7%,泣き嫌がる時はやめたいは4.6%であった。3 .保護者の69.8%が診療開始から終了まで入室を希望していた。4 .診療中の子どもの反応は,泣き動くため抑制34.6%,おりこう31.6%,泣き動きそうだがおとなしくできる19.1%,泣き動くが抑制せずに何とかできる14.7%であった。5 .術者の対応は,必要な対応法を取りながら計画治療を実施が71.9%で最も多かった。6 .診療に要したスタッフ数は,子どもの年齢の増加とともに減少し,平均人数は2.7 名であった。7 .診療の所要時間は,4 歳児が最も長く42.8 分で,平均38.6 分であった。また,泣き動くために抑制の方が,おりこうの場合より所要時間が長かった。8 .小児歯科専門医としての診療の説明および診療の評価は,ほとんどが良好であり,小児歯科専門医を受診した患者の満足度が高いことが示された。
  • 大谷 聡子, 吉村 剛, 坪井 文, 角本 法子, 太刀掛 銘子, 鈴木 淳司, 香西 克之
    2010 年 48 巻 3 号 p. 409-413
    発行日: 2010/06/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    歯科疾患と全身疾患の関連は従来より多く報告され,医療現場における医歯連携が重要視されている。今回は,当院医科からの紹介により当科を受診した患児を調査し実態を把握して,小児医療における小児歯科の役割について考察した。1996 年4 月から2009 年3 月までの13 年間に,当院医科より紹介され当科を受診した初診患児373 名について調査,検討を行い以下の結論を得た。1 .医科より紹介され当科を受診した患児数は,2008 年度では1996 年度と比較して約3 倍に増加した。年齢分布では就学前の患児が約半数を占めており,低年齢での受診が多いことが示された。2 .患児が有する全身疾患は悪性腫瘍が全体の半分以上を占めていた。疾患名では白血病が最も多かった。腫瘍性疾患と非腫瘍性疾患を合わせると造血器疾患が多かった。3 .紹介理由は感染巣の探索を目的とした口腔診査の割合が最も多く,年々増加している。2006 年度以降には齲蝕治療を紹介理由とした患児数と逆転した。4 .小児病棟スタッフの口腔管理に対する意識は,小児歯科との連携を継続することにより向上した。
  • 坂田 充穂, 浅里 仁, 荒木 和之, 岡野 友宏, 井上 美津子
    2010 年 48 巻 3 号 p. 414-427
    発行日: 2010/06/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    乳臼歯隣接面齲蝕の診断には臨床的な経験が必要であり,低年齢での多数歯齲蝕発生の減少に伴って,齲蝕の初発が臼歯部隣接面となる症例が少なくない現在では,乳臼歯隣接面齲蝕の的確な診断の重要性は高い。最近,コーンビームCT とは異なる理論に基づく,低被曝線量で簡便な三次元的画像診断法であるVolumetric Tomography(VT)が登場した。そこで,VT による乳臼歯隣接面齲蝕診断能の検討を行った結果,以下の結論を得た。1 .乳臼歯隣接面齲蝕の検出能について,ROC(receiver operating characteristic)解析による検討を行った結果,口内法とVT に有意な差は認められなかった。2 .乳臼歯隣接面齲蝕の診断能について,カイ二乗検定を行った結果,上顎第二乳臼歯の象牙質1/2 を越えるが歯髄に至らない齲蝕について,VT が口内法に対して有意に優れていた。また,歯種を限定しない場合と下顎第一乳臼歯に限定した場合での,齲蝕がないものについて,口内法がVT に対して有意に優れていた。3 .評価者による口内法とVT での齲蝕診断の傾向について,二次元度数分布相関表を作成し検討を行った。その結果,やや過大評価の傾向が認められた。以上のことから,乳臼歯隣接面において初期齲蝕の診断には口内法が,象牙質に至る齲蝕の診断にはVT が口内法と同様に有用である可能性が示唆された。
  • 金沢 英恵
    2010 年 48 巻 3 号 p. 428-438
    発行日: 2010/06/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍を持つ小児の寿命は,治療の進歩によって延びつつある。これに従い,治療の晩期障害についての対策が課題となっている。放射線治療によって歯科領域に認められる晩期障害としては,歯牙欠如や矮小歯,短根歯,顎発育不全などが挙げられる。これらの障害は,放射線照射量が多いほど,また低年齢で治療を受けた症例ほど,重度であった。これより,著者は小児の放射線治療において,放射線から発育中の顔面口腔領域の組織を保護するための装置,アテニュエーターが必要であると考えた。そこで,表在性腫瘍に対して行われる電子線治療に注目し,アテニュエーター作製にふさわしい材料の検討として,まずその素材の候補となる遮蔽材と被覆材の電子線減衰能力を測定した。なお,本研究において,有効な遮蔽能力とは,減衰率を99.50%以上とした。その結果,鉛板2.0 mm の両面を被覆材で覆った場合,すべての組み合わせにおいて減衰率99.54%以上を達成できた。また,鉛板2.0 mm の上下にアクリル板3.0 mm を重ねた場合に最高の減衰率99.62%となることがあきらかになった。次に,この組み合わせでアテニュエーターを作製,装着した場合の顔面口腔組織各部位における仮想電子線吸収線量を算出した結果,アテニュエーターの臨床的有用性が強く示唆された。よって,小児悪性腫瘍に対する電子線治療においては,アテニュエーター装着により,顔面口腔領域の晩期障害の予防が期待される。
  • 佐藤 公子
    2010 年 48 巻 3 号 p. 439-447
    発行日: 2010/06/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    広島県下の中学1 年生の1 クラス34 名を対象に学校の歯科保健教育においてカリエス・リスク検査を用いた場合,経費や要する時間,マンパワーの点から実施可能の可否を検討し,続いて齲蝕予防に関わる生徒のmotivation の向上に関する教育効果を評価した。この結果,学校教育現場で唾液検査を実施する場合,スタッフ教育を充実させ検査時間の短縮を図ること,検査項目を唾液分泌速度,MS(Saliva)と唾液緩衝能の3 項目にすることが示唆された。唾液検査の実施には自己負担も必要となることから,検査結果を利用した歯科保健指導を充実させ,生徒や保護者に検査の有効性の理解を得ることが示された。唾液検査後の調査結果から女子では家庭と十分な連携を取って歯科保健教育を進めること,男子では学校教育を利用して知識や歯科保健に関心を向けさせる必要が示唆された。
臨床
  • 比嘉 和, 馬場 篤子, 尾崎 正雄, 久芳 陽一, 内田 竜司, 本川 渉
    2010 年 48 巻 3 号 p. 448-453
    発行日: 2010/06/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    今回,齲蝕処置を希望して本学医科歯科総合病院小児歯科外来を受診した10 歳女児に対し,パノラマエックス線撮影を行ったところ,偶然上顎右側第二大臼歯歯胚の咬合面上部に歯牙腫を認めた。歯牙腫摘出と上顎右側第二大臼歯歯胚の回転を行い,約6 年間経過観察したところ,上顎右側第二大臼歯の萌出がみられた。歯冠はエナメル質の低石灰化を呈していたため既製冠を用いて歯冠修復処置を行った。歯牙腫の発生原因については,第三大臼歯の歯胚が先天的に欠如していることから何らかの原因により第三大臼歯の歯胚が変化したものと考えられた。更に上顎右側第二大臼歯が歯牙腫によって埋伏する可能性が考えられたため,早期に歯牙腫を摘出し,上顎右側第二大臼歯の萌出方向の異常を外科的に回転させ,1 年2 か月後に萌出を認めた。これは歯牙腫という萌出を阻害している原因を除去し,また,歯根形成の開始期に萌出方向を修正したことで正常な位置に萌出したと思われた。しかしこの外科的処置のため近心根の彎曲や遠心根の発育停止に至った可能性が考えられた。エナメル質の低石灰化の原因は,低年齢児から歯牙腫の影響があったこと,萌出方向修正時の外科的処置による影響の可能性もあると考えられた。したがって小児の咬合発育過程を正常に導くためには,これを障害する異常や口腔疾患を予防し,適切な時期に治療することが必要であると思われた。
  • 高田 里絵, 室伏 菜緒, 古川 智代, 中川 克美, 中嶋 美由貴, 副島 之彦, 岩崎 浩
    2010 年 48 巻 3 号 p. 454-459
    発行日: 2010/06/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    小児歯科臨床では乳歯外傷に遭遇する機会が多い。とりわけ脱臼歯の予後は患児の協力状態の良否や固定源の有無により左右される。また,外傷乳歯が後継永久歯に与える影響について保護者に理解して頂き,後継永久歯の発育完了まで定期管理を長期に亘り行う必要がある。今回,生後11 か月の乳児の両側下顎乳中切歯の外傷性脱臼に対して,萌出途中の乳側切歯唇面歯肉を切除して固定源を求め,整復固定により両側乳中切歯の保存を試み,現状まで経過良好な一症例について報告を行う。
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