小児歯科学雑誌
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48 巻 , 4 号
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総説
  • 小方 清和
    2010 年 48 巻 4 号 p. 481-488
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    幼若永久歯の初期齲蝕病変に対する再石灰化の向上と脱灰抑制のため,実験的に表層下脱灰病変を作成し,エナメル質の脱灰・再石灰化反応を的確に観察,計測する方法を検討した。1 .初期齲蝕病変を修復するために極めて重要な要素であるエナメル質表層を,視覚的,数値的に評価するため,マイクロラジオグラムや偏光顕微鏡を用いた病理組織学的検討は有効であった。2 .反応領域深度やミネラル喪失量で数値的に脱灰・再石灰化反応を比較検討することで,客観的に再石灰化や脱灰抑制の効果を確認することができた。3 .本実験でエナメル質の反応領域深度は,処理条件に関係なく脱灰は進行していた。再石灰化は脱灰の何倍もの時間がかかり,また表層に白斑が存在するあいだは,機械的刺激に極めて弱い状態にある。齲蝕予防を考える上で,脱灰と再石灰化のバランスがきわめて重要で,再石灰化を強化するばかりでなく,脱灰しやすい生活習慣をあらため,脱灰を抑制するような生活習慣を身につける指導を行っていくことがまず必要であることが確認できた。
  • 柿野 聡子
    2010 年 48 巻 4 号 p. 489-494
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    透過型光電脈波法は歯髄血流の有無を指標に歯髄の生死を診断する,非侵襲的,客観的な歯髄診断法である。乳歯や幼若永久歯の外傷歯のように感覚閾値の高い歯であっても診断が可能であるため,従来の歯髄電気診の欠点を補い,小児や障害者の歯髄診断に有用であることが報告されている。しかしその一方で,歯の構造的な特殊性から歯髄脈波の発生機序については不明な点も多い。外傷後に歯髄脈波の形状や振幅の変化が見られたが,そのような歯の透過光量変化に影響する因子は複雑であると考えられた。本研究では,LED の波長特異性を利用して歯髄脈波の発生機序や透過光量変化の関連因子を明らかにし,歯髄の病態についての情報を得ることを目的とし,多波長のLED によるヒト上顎中切歯の光学測定を行った。その結果,歯の中での光伝播の様子が明らかになり,歯髄脈波発生に関わる因子として被験者の年齢や病態による歯髄の血管密度変化や血流量変化,歯髄腔の大きさなどが関与すると推察された。また,ヘモグロビンの非等吸収波長を用いることで歯髄血液の酸素飽和度の変化を定性的に検出することができた。今後,目的に合わせた波長の選定や歯の測定に特化した光学系の工夫により,歯髄の病態に関する多くの情報を引き出せる可能性が示唆された。
  • 船山 ひろみ
    2010 年 48 巻 4 号 p. 495-504
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    骨吸収抑制薬bisphosphonate(BP)は,骨吸収亢進を伴う疾患に広く応用されている。しかし,顎骨壊死とそれによる顎骨の露出という 予期せぬ副作用が最近続発している。顎骨壊死は窒素を含むBP(以後NBP と略)により発症する一方,窒素を含まないBP(以後non-NBP と略)のclodronate(Clo)とetidronate(Eti)による明らかな発症例は無い。私たちはNBP の炎症性副作用について,以下を明らかにした。①マウスへのLPS の静脈注射は顎骨にヒスタミン合成酵素(histidine decarboxylase, HDC)を誘導し,この誘導はNBP 投与マウスで著しく増強される。②成長期マウスへのBPs の1 回投与が脛骨にエックス線低透過帯(BP-band と呼称)を発現し,骨吸収抑制作用を評価する有用な指標となる。③Clo とNBP の併用投与は,NBP の炎症作用を抑制するが,骨吸収抑制作用は抑制しない。④一方,Eti とNBPs の併用は,NBP の炎症作用と骨吸収抑制作用の両方を抑制する。⑤マウス耳介へのNBPs の皮下注射による壊死作用に対しても,Clo とEti は,強い抑制効果を示し,LPS は増強・促進する。これらの結果は,口腔組織由来LPS とNBPs 相互による炎症増強→顎骨壊死というシナリオを強く示唆する。また,NBPs の炎症・壊死作用がnon-NBP で制御できることを示す。さらに,Clo はNBPs の副作用を予防・軽減する併用薬として,また,Eti はNBPs の代用薬として有効である可能性が強く示唆された。
  • 中村 由紀
    2010 年 48 巻 4 号 p. 505-510
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    レプチンは脂肪細胞から分泌される飽食因子であり,主に視床下部に存在するレプチン受容体(ObR)を介して摂食抑制やエネルギー消費亢進に関与し,最終的に体重減少を誘導する肥満抑制ホルモンとして知られている。著者らはこれまでにマウスとヒトを用いた研究から,この肥満抑制ホルモン・レプチンが末梢の甘味受容細胞に作用して,甘味感受性を抑制することを明らかにしてきた。また,甘味受容体は味細胞のみならず腸管や膵臓にも発現していることも明らかになってきている。これらのことから,レプチンは,食欲中枢のみならず,末梢の味覚器(腸管・膵臓)にも作用し甘味感受性を調節することにより,体内エネルギーバランスの維持に寄与している可能性が示唆された。本稿では,レプチンによる味覚感受性の調節システムについてこれまでの著者らの研究を中心に,肥満・糖尿病との関連について考察する。
  • 藤田 一世
    2010 年 48 巻 4 号 p. 511-514
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    齲蝕病原性細菌であるStreptococcus mutans の菌体表層にはグルカン結合タンパク(Gbp)が存在する。Gbp はこれまでのところGbpA, GbpB, GbpC, GbpD の4 種類が検出され,それぞれをコードする遺伝子が特定されている。これらの中でGbpB は齲蝕の発生に強く関わっているGbpA やGbpC とは異なった性質を持つことが遺伝的に示唆されている。本研究では,Gbp を欠失させたS. mutans の変異株を作製し,GbpB の生物学的意義について検討を加えた。GbpB 欠失変異株では,親株と比較して,齲蝕病原性に強く関与していると考えられるスクロース依存性平滑面付着能においては有意な差を認めなかったものの,増殖速度および耐酸性の低下,レンサの長さの増加が認められた。また,電子顕微鏡で菌の表層を観察すると,GbpB 欠失株では表層構造が不明瞭であった。以上の結果は,GbpB は細胞壁を構成する成分の一つとして細胞の維持や分裂において重要な役割を果している可能性が高いことが示唆された。
原著
  • 吉田 聡子, 国本 絢子, 原 直仁, 本山 正治, 嘉藤 幹夫, 大東 道治
    2010 年 48 巻 4 号 p. 515-519
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    精神性手掌発汗は,不安,恐怖,怒りなどの情動変化が生じている現象と言われている。そのため,診療室における小児の精神的不安や緊張度を把握する目的で,発汗装置を使用して小児の精神性手掌発汗量を測定した結果,次の結論を得た。1 .診療室での発汗量について男児および女児ともに,発汗量は,チェアー誘導時が最も大きく,次いで窩洞形成時,ブラッシング時となり,待合室待機時が最も小さくなった。また,男児では,待合室待機時とチェアー誘導時との間とチェアー誘導時とブラッシング時との間で有意差を認めた。さらに,女児では,待合室待機時とチェアー誘導時との間,チェアー誘導時とブラッシング時との間とチェアー誘導時と窩洞形成時との間で有意差を認めた。2 .男児および女児別の発汗量について診療室での待合室待機時,チェアー誘導時,ブラッシング時および窩洞形成時のすべてにおいて女児の方が男児よりも発汗量が大きくなった。しかし,男児と女児との間では有意差を認めなかった。今回の研究は,自分の意思を十分に訴えることができない小児の精神状態を定量的に把握できるため大変有効な方法であると考えられる。
臨床
  • 田村 博宣, 高木 愼, 矢部 孝, 樋口 満, 柳田 可奈子, 中川 豪晴
    2010 年 48 巻 4 号 p. 520-525
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    含歯性嚢胞は,歯牙交換期に好発する歯原性嚢胞であり,下顎小臼歯,下顎智歯によく発生する。これまで,本嚢胞の研究では臨床統計学的研究や病理組織学的な検討がなされることが多く,含歯性嚢胞内に埋伏する歯牙に関して,萌出後の長期経過および長期予後についての報告はほとんどみあたらない。本症例は初診時において,嚢胞の大きさ,含まれる埋伏歯の深さ,埋伏歯の角度,埋伏歯の近遠心的位置のいずれにおいても深刻な状態であったが,これに対し,速やかに嚢胞を摘出し処置後10 年間の長期経過を見たところ良好な治療結果を得ることができた。これにより,含歯性嚢胞内に存在する埋伏歯は,できるだけ早期に摘出することができれば,嚢胞の大きさ,埋伏歯の深さに関わらず自然萌出が期待できることが示唆された。このことは今後の含歯性嚢胞に対する処置の参考に成りうるものであり,小児歯科臨床にとって意義のある症例であると考えたため報告することとした。
  • 仲井 雪絵, 進賀 知加子, 村上 香織
    2010 年 48 巻 4 号 p. 526-531
    発行日: 2010/09/25
    公開日: 2015/03/12
    ジャーナル フリー
    外傷性嵌入は乳歯列では高頻度に遭遇する受傷様式であるが,永久歯列においては比較的稀である。本症例では,8 歳3 か月児の外傷によって嵌入した上顎右側中切歯に対して牽引処置を施術し,その後3 年8 か月間にわたる経過観察を経験したので報告する。外傷性嵌入の予後に寄与する主たる因子として,文献的には「歯根の発育度」と「嵌入量」が挙げられる。本症例の受傷歯は嵌入量が5~6mmの根未完成歯であった。Royal College of Surgeons of England のガイドラインにしたがって,まず自然な再萌出を期待して3 週間経過観察した。しかし,自然萌出の傾向が全く見られなかったため牽引処置を施術したところ,38 日後に反対側同名歯と同レベルまで再萌出した。受傷から3 年8 か月経過した現在では,反対側同名歯と比較すると歯根長がやや短く,さらに歯髄腔狭窄を認めるものの,進行性の歯根吸収,歯髄壊死や根尖性歯周炎等の発症は認めない。また明らかな辺縁骨吸収も認めず,良好な結果が得られた。根未完成により歯根膜組織と歯髄との接する面積が大きいため脈管再生が生じやすく,また,根未完成期の歯槽骨は比較的弾性に優れており,そのために歯周組織への損傷が減じられた可能性も推察される。治療方法の種類に関わらず,外傷性嵌入歯は長期間にわたって定期的に臨床所見の確認とエックス線検査を実施し,歯根吸収,骨癒着,歯髄腔狭窄,歯髄壊死等の合併症を早期発見し,早期対応する必要がある。
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